任意売却は不動産の所有者が不動産を売るという行為ですが、通常の不動産売買と少し異なる部分があります。
少し異なる部分は後ほど説明しますが、まず、任意売却を詳しく知るために、何か比較対象をハッキリさせると、より分かりやすくなります。
その比較対象とは、裁判所で扱われる不動産強制競売事件(以下、競売)です。
任意売却について知りたい方は、自身が当事者となり自宅等の不動産が、競売の可能性も感じながら情報収集していると思われます。
つまり、任意売却は常に不動産の競売と比較して優る部分があるのか?
メリットを享受できなければ、競売より任意売却を選択する意味はありません。
任意売却のメリット
任意売却のメリットは1つ、競売の精神的負担を軽減することができます。
1 競売の精神的負担の軽減
競売は裁判所のホームページに詳しい資料と共に写真付きで掲載されます。
簡単に書いていますが、自身の不動産が競売物件として誰かれ構わず、人さまの目に触れてしまうことを考えれば、恐ろしくも感じます。
早期の任意売却であれば、この様な事態を回避できる可能性が残されています。
『競売を避けたい理由は任意売却との精神的負担の差』の記事もどうぞ
不動産売却時の経済的負担の軽減
競売との比較ではありませんが、通常の不動産売却では相応の諸費用が必要になり、その費用を経済的に苦しい状況から捻出するのは、依頼者にとって大変な負担であり、そもそも不可能かもしれません。
しかし、任意売却は不動産売却に必要な諸費用のほとんどを売却代金から払うことを金融機関が認めてくれますので、経済的負担をお客様が心配する必要はありません。
任意売却のデメリット
任意売却のメリットに対してデメリットは無いのか? そんなことは、ありません。
いくつかありますが、代表的な2点をここで挙げます。
1 引渡し時期が早くなる
競売と比較して単純に競売の前に任意売却で取引を終えるため、必然的に不動産を手放す時期も、競売より早くなります。
2 任意売却の失敗もある
任意売却は必ず成功する訳ではありません。失敗もあり得ると覚悟を持って臨む必要があります。
その反面、一度、競売の申立てをされると、何も対処せずに放っておけば、落札されるまで競売は進みます。
※ 任意売却の失敗とは任意売却を希望しても様々な要因で、その後、競売で不動産が落札されてしまうことを意味します。
詳しくはページ下部の任意売却ができない場合まで
『任意売却のデメリットは失敗の可能性も未知数』の記事もどうぞ
任意売却の仕組み
では、冒頭の通常の不動産売買と少し異なる部分を説明します。任意売却という言葉を聞くと非常に難しく感じますが、その仕組みはシンプルです。
任意売却は住宅ローンを含む不動産を担保にしたローンの残高より、低い価格で不動産を売却できます。
もちろん、足りない金額を現金で用意できる場合は任意売却に該当せず、その様なケースは単純な不動産の売却となります。
従いまして、任意売却の場合は不動産の資産価値を上回る借金があり、尚且つ、その借金の返済が出来なくなった方が金融機関と交渉して不動産を売却する方法になります。
住宅ローン等の滞納が続き、金融機関から不動産を競売に掛けられた方にとって、任意売却は有効な手段です。
任意売却を更に詳しく
住宅ローンや不動産担保のローンが払えなくなると、金融機関は裁判所を通じて強制的に不動産を処分します。これが皆さんの恐れる競売です。
それに対して、競売の前に自らの意志で不動産を売却するため任意売却と呼ばれています。
最大の特徴は借金の残額よりも不動産の売値が低くても金融機関との合意で売却できます。通常の売買では家を売って、ローンの残高より安くなってしまうと現金の持ち出しが必要です。
しかし、任意売却はオーバーローン(債務超過)の状態でも売買が可能になります。
上の図を例にみると、2000万円なら買手がいる一戸建てですが、住宅ローンの残債(残り)が3000万円ある場合、売っても1000万円の現金を追加で返済しなくては金融機関は抵当権の抹消に応じません。
しかし、任意売却では1000万円足りないけれど、金融機関と交渉し抵当権を抹消してもらい、通常の売買に近い状態にして取引をします。
不動産が値下がりして売れないと、悩んでいた方でも精神的負担が大きい競売を回避することが可能なのです。
払わないと払えないは違う
任意売却をためらう気持ちは誰でも同じです。それでも住宅ローンを払わないではなく、払えないのです。似た言葉ですが意味合いは全く違います。
頑張っても払えないのであれば、次の展開を考えなければなりません。
大切なことは、この状況を続けることが、ご家族にとっても、金融機関にとっても良い結果にはならないことです。
突き詰めると、任意売却は経営不振に陥った企業と同じで、個人版リストラ策と言えるでしょう。
売らないから競売で処分
金融機関は住宅ローンの滞納は想定内であり、求めているのは速やかに自宅を任意売却してもらうこと。
言い換えれば、任意売却しないから競売の申立てに移行するのです。
金融機関は費用の掛かる競売より、一般の不動産市場で売却すれば格段に速く不良債権の処理が行えます。
つまり、任意売却は競売回避を望む方と、早めの回収を望む者にとって、思惑は一致しているのです。
後悔しないため注意すること
任意売却についてインターネットで調べるのは当たり前の時代、住宅ローンが払えない方に対して『売らずに済む』や『住み続けられる』、大変魅力的な言葉が出てきます。
そのため、他のホームページで都合のいいキャッチフレーズを目にし、本当なの!?と疑っている方も多いのではないでしょうか・・・
しかし、これには前提条件があり、ほとんどの方は該当しません。
都合のいい言葉に注意
何故、この様な言葉が並んでいるのでしょうか? 任意売却が必要な方は日々不安な夜を過ごしています。
そこへ甘い言葉が目に入れば、駆け込み寺のように相談してしまいます。つまり、客寄せにはとても優れた言葉なのです。
任意売却の相談をして、都合の良い話に振り回されると、一番大切な時間を無駄にしてしまいます。
絶対必要な確認事項
どうしても任意売却が必要との結論に至ったとき、絶対に確認が必要な注意点があります。
それは、その業者で本当に任意売却が可能なのか?に尽きます。
相談先に不動産業の免許はありますか?
任意売却業者は依頼者の不動産を全国の不動産業者のみが利用できるネットワークへ、売却物件として情報公開します。
それゆえ任意売却の依頼を受けるには、不動産業(宅地建物取引業)の免許が必要になります。
任意売却業者は情報公開することで、他の不動産業者に希望条件の合致するお客様がいれば、両社の共同仲介により売買成立となります。
この流れは任意売却を限りある時間の中で行うために大変重要なことです。
不動産業(宅地建物取引業)の免許の無い者が任意売却を行うとした場合、任意売却する不動産の情報公開もできません。
そうなると債権者の求める適正価格での売却は、ほぼ不可能なのです。
分かりやすい例ですと、フラット35の住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫含む)に対して、任意売却を希望する場合、任意売却に関する申出書という書類を提出しますが、その中にはしっかりと『任意売却を仲介する業者名』記載欄があります。
これを見ても分かるように、任意売却を行うには不動産業の免許が必要なことは、改めて理解できると思います。
つまり、後悔しない任意売却は業者選びが最重要ポイントになります。あなたの相談先は本当に任意売却が行えるのか今一度、ご確認下さい。
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任意売却ができない場合
住宅ローンが払えないから、いくら希望しても諸事情によっては任意売却が出来ないこともあります。
時期が遅すぎる
競売の手続きが進行し開札間近では時間不足のため任意売却はできません。
債権者の同意が得られない
金融機関が同意しない原因は複数あり以下は一例です
○ 滞納後も全く連絡に応じない、郵便物の受取を拒否など金融機関との関係が悪化している場合
○ 過去に問題となった商工ローン(自営業者や中小企業が利用するノンバンクの不動産担保ローン)など金融機関によっては会社の方針で任意売却を認めていない場合
○ 競売の申立て後は任意売却に応じない金融機関の場合
任意売却には金融機関の同意は絶対条件です。
他の差押えが解除できない
税金や国民健康保険料の未納が続くと、自宅などの不動産が役所から差押えられます。
未納額が少なければ、任意売却時に売却代金からの支払いを認めてくれます。
しかし、金融機関の許容範囲を超えますと、自ら用意するなどしなければ任意売却を進めるうえでの障害になります。
また、一度、差押えられると解除は容易ではなく、任意売却後に分割で支払うなどの話し合いで解決できる場合もありますが、全く認めない役所もあります。
差押え解除の目途なくして、任意売却は難しいでしょう。
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共有者の同意が得られない
自宅を夫婦の共有名義で購入することは珍しくありません。
任意売却を行うには共有者の同意は必要であり、離婚している場合でも協力して取り組まなければ、任意売却は出来ません。
連帯保証人の同意が得られない
お金を借りる際に連帯保証人(連帯債務者も同様)を立てた場合でも本来、任意売却を行うのに連帯保証人の同意は必要ありません。
しかし、金融機関から連帯保証人の同意も得るよう求められます。
任意売却後の残債の取扱い方によっては、連帯保証人にも請求が及ぶことの確認でもありますので、慎重に対応していかねばなりません。
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担保提供者(物上保証人)の同意が得られない
一戸建てなどで身内名義の土地を借りて建物を所有しているケースでは、建物と同様に土地も担保に入っていることがあります。
この場合、任意売却を行うには土地建物を同時に売却するよう、金融機関から求められるので、土地所有者の同意も必要になります。
当たり前のようですが身内からすると、土地を失うため関係が悪化してしまい同意を得られないと任意売却は出来ません。
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任意売却よくある話
インターネットでは様々な情報が溢れいます。
任意売却も同じでお客様に対し、とても有利な条件で、まるで救いの手が差し伸べられたかのような事例を示されている事もあるでしょう。
しかし、本当に該当する方は多いのでしょうか?
特殊なケースを誇張していたり、実際は対象となる方が少ないように思われます。
任意売却は残債の額や債権者の数、税金未納による差押え等、人それぞれケースは全く異なり、そのような状況の中でお客様の財産を売却する行為です。
都合のいいキャッチフレーズに惑わされる事なく、お客様自身が任意売却を正しく理解する必要があります。
競売より高く売れる?
任意売却では債権者と近隣相場等を勘案して売出価格を決め、全国の不動産業者にも情報公開します(業者間ではレインズ登録と言います)。
しかし、任意売却の開始が遅く、買手探しが間に合わないと競売に至ってしまうケースがあります。
ところが落札金額に関、しては任意売却時に設定した金額を上回ることが過去に何度もありました。
他の業者様とは反対になってしまいますが、競売より任意売却のほうが高く売れるというのは根拠の無い話で、本当は競売で落札されるまで誰にも分かりません。
当事務所では任意売却により、精神的負担のかかる競売を回避することを最大の目標として掲げております。
現金の持出しは無し?
印鑑証明書の取得費、契約書に貼る印紙代、マンションの場合は管理費・修繕積立金の延滞金にかかる遅延損害金、駐車場・駐輪場使用料の延滞金などは、住宅金融支援機構は売却代金の中から支払うことを認めてくれませんので用意する必要があります。
引越し費用がもらえる
任意売却をしたら多額の引越し費用がもらえるような表現を多々見かけます。
依頼する場合なぜ可能なのか、しっかり確認しましょう。
引越し費用は必ず認められるものでなく債権者の厚意により支払われます。
また、債権者との関係を悪くしていると、全くもらえない場合もあります。
当事務所ではお客様の生活再建に欠かせないものとし、しっかり交渉し引っ越し費用を捻出してもらうよう努力いたします。
任意売却後の残債
残債について心配は無用的な説明も見かけますが、絶対に楽観視は禁物です。
また、不動産売却後の残債の減額や放棄の交渉は債務整理に該当し、弁護士等の法律家しか金融機関と直接交渉することは認められていません。
不動産業者は売却する際に金融機関と抵当権抹消に必要な金額の交渉をしています。
当事務所では任意売却をされたお客様に対して、返済計画等の立案をサービスで提供しております。
これはお客様自身が金融機関と真摯に向き合い、残債ついて解決するための重要なアドバイスになります。
ご覧いただいた、お客様に対して明るい選択肢を提供できず心苦しいですが、現実的には任意売却で不動産を手放すか、競売により手放すかの二択を迫られる方がほとんどだと思います。
ただし、悩んでいるだけで時間を過ごすよりは、他社様でも構いませんので早めに相談することが生活再建の第一歩だと考えております。
3つの約束
当事務所では競売を回避し任意売却を成功させる為、依頼の際お客様には3つの約束をお願いしております。
1.内見の際は
『内見』あまり聞きなれない言葉ですが不動産業界では・ないけん・と言います。
これは購買意欲のあるお客様が建物内部を見に来ることです。
つまり、気に入っていただければ任意売却成功のチャンスです。
そのため『内見』に備えて建物内部やベランダの清掃と整理、一戸建であれば簡単な庭木の手入れや草むしり等、不動産をきれいに見せるようお願いします。
当たり前のように思えますが任意売却をされる方、特に競売の期日が近づいてしまうと、ヤル気を無くし家が荒れ放題のままにしてしまうケースがあります。
2.買主に対して
任意売却成功のカギは、債権者の納得できる金額で買主が現れるかの一言に尽きます。
そして買主とは売買契約を結ぶ際に引渡しの期日を決めます。
つまり、家を明け渡す日を決めるということです。
それに伴い次の引越し先を決めなくてはなりません。
契約事なので引越し先が見付からないから延ばしてくれなどは通用しません。
逆に違約金の請求をされる可能性もあります。
何故なら、買主も住宅ローンの申し込みや現住居が賃貸の場合、退去の手続きを進めているからです。
せっかく現れた買主です期日は必ず守り任意売却を成功させましょう。
3.債権者に対して
債権者は競売や任意売却等により債権の回収は望んでおりませんが他に方法がなく、やむを得ずこのような対応になります。
任意売却の後には残債が残ります。
しかし、取られる物もないからと、そのままにはせず債権者とは真摯に話し合いをしてください。
その際には当事務所としても様々な提案をご用意させていただきます。
今後の生活状況等を考慮した前向きな話し合いができるので本当の再スタートとなります。
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