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任意売却の契約後にサービサーへ債権譲渡された!
最近では、ネット銀行の住宅ローンが人気です。
一見すると保証料が無いなど、諸費用も少なく済むケースや金利の低さもあり、大変魅力的です。
ただし、借りてしまえば返済するのみとなり、その後は違いを実感することは少ないかもしれません。
実はこの、保証料の有無は「保証会社の利用の有無」となり、決定的な違いが生じることがあります。
それは住宅ローンの滞納時、任意売却に与えられる時間が極端に少なくなってしまう場合があります。
この記事は、当事務所が依頼を受け「任意売却の契約後に銀行からサービサーへ債権譲渡」されてしまった特殊な事例を紹介します。
住宅ローンが担保付きでサービサーへ債権譲渡された方、その他の不動産担保ローンでお悩みの方が、少しでも参考になればと思い記事にしています。
本記事については、前段の記事があります。
文字数も多くなるため触れませんでしたが、実際は本記事のサービサーへの債権譲渡後の任意売却となります。
興味があれば、ご参照ください。
任意売却の取引終了前にサービサーへ債権譲渡
まず、結論から先に書きます。
任意売却で無事に取引を終えることはできました。
しかし、任意売却の契約後(買主への引渡し前)にサービサーへ債権譲渡されいます。
その後、サービサーとも任意売却の交渉の末、買主に引渡すといった取引となりました。
前段の記事もご覧になった方は、より一層困難な任意売却だったと感じるのではないでしょうか。
それでは、詳しく流れから説明していきます。
〈今回の任意売却の流れ〉
- 住宅ローンの返済を自ら停止
- 銀行と任意売却の交渉→時間切れ
- 条件付きの任意売却
- 買主と売買契約
- 銀行からサービサーへ債権譲渡
- サービサーと任意売却の交渉→了承
1.住宅ローンの返済を自ら停止
もともと、この案件を依頼されたとき、住宅ローンの滞納はしておりません。
しかし、依頼者の返済が徐々に厳しい状況となってきたため、手放すには「住宅ローンの残債以下の金額で売却」する必要がありました。
当事務所より、住宅ローンの返済を「自らの意思で滞納させること」を提案しました。
その理由は、この一線を越えれば任意売却へ進めるからです。
もちろん、住宅ローンの残債以上の価格で販売を試みてきたうえでの判断です。
任意売却を提案し住宅ローンの返済をストップ!
2.銀行と任意売却の交渉→時間切れ
住宅ローンの滞納から3か月後、「期限の利益喪失予告書」を経て「期限の利益の喪失」告げる「相殺通知書」が届きました。
上記は実際に送られてきた「相殺通知書」です。
期限の利益喪失と共に、銀行口座にあった預金残高も回収されてしまいます。
冒頭で住宅ローンの「保証会社の利用の有無」に触れていますが、ネット銀行ではありませんが保証会社はありません。
それ故に、銀行が保証会社などを利用せず貸付ける、「プロパー融資」となります。
※ プロパー融資については、後で説明します。
銀行も任意売却を進めることには、快く受け入れてもらいました。
問題は「任意売却に与えられた時間と販売価格」です。
任意売却に与えられた時間は3か月!
↓
競売、又は債権譲渡
3か月を過ぎると銀行が競売で処分するか、サービサーへ債権譲渡のどちらかになると伝えられました。
そんな中で任意売却のスタートです。
しかしながら、銀行が任意売却を認める価格では、物件を見に来る者すら、ほぼ居ない状況が続きます。
任意売却でありながら価格に魅力が無いことは、分かっていました。
次にできることは、銀行に価格変更の打診となります。
その結果、当事務所の査定価格で任意売却を進めることになりました。
不動産の売却で販売価格の引下げは非常に効果的!
価格変更が功を奏して、何とか購入希望者(以下、買主)を見付けることができました。
ただし、実際は更なる問題が発生したのです。
買主は見付かったのですが、肝心な任意売却を与えられた時間を過ぎてしまいました。
「任意売却の依頼者」、そして購入を決断してくれた「買主」、両者のためにも、ここで諦める訳にはいきません。
銀行と更なる交渉を重ね、条件付きではありますが任意売却に応じる可能性を告げられました。
任意売却に課せられた条件とは?
3.条件付きの任意売却
条件付きの任意売却とは、一体どういうことでしょうか?
銀行の方向性としては、サービサーへ債権譲渡する方針でした。
しかし、当事務所で見付けた「買主とサービサーの債権買取価格を比較」して回収額が多くなる方に決めることになりました。
〈銀行から提示された任意売却の条件〉
- サービサーの債権買取額<買主の購入価格
- 任意売却に決まったら1週間以内で取引を終了させること
任意売却時の諸費用を差し引いた、実際の回収額とサービサーの買取り価格を比較し、高いほうに決定。
任意売却に決まった場合、1週間以内に決済(物件の引渡し)をして下さいとのこと。
買主は一般の方で購入に住宅ローンを利用します。
かなり無茶なスケジュールであるのは間違いありません。
それでも買主の購入希望価格は、残債の80%を銀行は回収できます。
これを上回る金額でサービサーが買取しない限り、銀行は任意売却に応じるということなのですが、両てんびんにかけられた状態です。
ただし、物件がどの程度の価格で評価されているのかは不明です。
今回のケースでサービサーが担保付きとはいえ、オーバーローンの不良債権を残債の80%を超える金額で買取るとは到底考えられません。
そうなると任意売却にも、かなり望みはあります。
あとは買主にきちんと状況を説明し、一旦契約を見送るか判断してもらうほかありません。
任意売却を進めるか否かは買主が決定
4.買主と売買契約
結局、買主はサービサーに債権譲渡され解約になる可能性もあるが、物件を気に入ってくれたので購入を決断し、契約も済ませました。
そうは言いましても、買主も購入には住宅ローンを利用します。
審査を申込んだ銀行に事情を説明し、住宅ローン借入の契約を直前まで待ってもらう手はずを整えました。
あとは「サービサーの入札日を待つだけ」です。
任意売却に決定なら住宅ローンの借入契約
5.銀行からサービサーへ債権譲渡
そして、銀行の担当者から連絡が入りました。
なんと・・・『サービサーに債権譲渡が決まりました』
『金額は分かりません。○月○日に譲渡します。』
その後、依頼者のもとには「債権譲渡通知」も届きました。
結局、銀行からサービサーへ債権譲渡されることが決定されました。
サービサーの債権買取価格が上回った?
6.サービサーと任意売却の交渉→了承
本当に残念なことですが、現実はサービサーへ債権譲渡されてしまいました。
ただし、これで終わった訳ではありません。
もうこの時点で、元の銀行とは縁が切れています。
そして、正式に債権者となった「サービサーと任意売却の交渉」という手段が残されています。
〈買主の希望は?〉
- 買わないか?
- 買いたいか?
あとは、買主がこの物件の購入を見送るか?
あるいは、サービサーと任意売却の交渉を希望するのか?
どちらかを選択してもらうことになりました。
悩んだ末に買主は、物件が欲しいので「任意売却の交渉を希望」しました。
依頼者である売主も競売を回避するために、やはり任意売却を強く希望されました。
ここで問題なのが任意売却は可能でも、「サービサーが同じ価格で応じるのか?」
その保証は、ありません。
もしも、売買価格が上がってしまえば買主の住宅ローンも、ほぼ絶望的です。
そのため、債権譲渡前に売買契約を済ませた価格で、任意売却を進めなければなりません。
サービサーは不動産を現金化して回収する必要があり、現状で債権額の80%を回収可能です。
不良債権の回収であることを考慮すれば、決して悪い話ではありません。
その点は、サービサーも十分認識していました。
そして交渉を重ねた結果、買主の売買価格のまま、任意売却に応じてもらえる運びとなりました。
サービサーも元の売買価格で任意売却了承
買主の金融機関は難色を示す
買主が住宅ローンを利用する予定の金融機関は、売買契約後に債権譲渡されてしまったことが初めてのケースであり、当初は住宅ローンの融資に難色を示しました。
そこで、金融機関に対して変更点は何かを説明させていただきました。
〈サービサーへの債権譲渡の前後で変わったこと〉
- 不動産:変わらず
- 売買価格:変わらず
- 売主:変わらず
- 買主:変わらず
- 抵当権を設定している債権者:異なる
唯一違うのは、抵当権を設定している「債権者が銀行からサービサーへ変わった」ことです。
しかも、買主が購入することで、サービサーの抵当権も消えます。
買主の住宅ローンを融資する金融機関にとって、何も影響しないことがハッキリしています。
前代未聞であったことは確かですが、事実を認識した結果、買主の住宅ローンも承認されました。
そして交渉事が山ほどありましたが、任意売却を経て買主へ不動産を引き渡すことができました。
任意売却で取引終了
プロパー融資とは
今回の任意売却では、「プロパー融資」という言葉が出てきました。
事業者でない限り、あまり馴染みがないと思います。
住宅ローンを例に説明しましょう。
銀行などで住宅ローンを借りる場合、もちろん銀行に申込みます。
ただし、実際に住宅ローンを借りる際は、保証会社もセットで利用するケースがほとんどとなります。
当然ながら、保証会社には保証料を払い込む必要があります。
上記の保証会社を利用しないで、金融機関がお金を貸すケースを「プロパー融資」と呼んでいます。
保証会社の利用無がプロパー融資
全てのリスクは銀行が負う
プロパー融資は、保証会社を利用しません。
借手は保証料が不要となり、銀行としては保証会社による保証がありません。
銀行が独自の審査基準により貸付けるため、貸し倒れリスクは銀行がすべて負います。
保証会社を利用していれば、借手が返済不能となっても保証会社が返済を肩代わりするため、銀行の損失を抑えることができます。
返済を肩代わりする保証会社が無いため、銀行にとってはリスクのある融資となります。
保証会社は銀行のため
プロパー融資も任意売却は可能だが時間が少ない
住宅ローンも含めプロパー融資の場合も、大抵の銀行は任意売却可能です。
しかし、問題となるのが任意売却に許される時間が少ないことです。
今回の紹介事例も同様でしたが、任意売却可能な時間はおおむね3か月~6か月程度となります。
従いまして、滞納が始まってから任意売却を決断しても、3か月程度の場合は間に合わないケースもあると認識して頂きたいのです。
保証会社がある場合は?
借手が住宅ローンを滞納したとします。
銀行は延滞が続くと、保証会社から代位弁済してもらいます。
この時点で、住宅ローンを借りた銀行とは縁が切れ、今度は保証会社から請求されることになります。
そして、ここから任意売却がスタートできます。
しかし、保証会社のないプロパー融資の場合、延滞が始まり返済不能であれば銀行と速やかに交渉し、任意売却を始める必要があります。
プロパー融資は銀行の対処も早いので注意
担保付きで債権譲渡も
プロパー融資でも、金融機関によって不良債権の処理方法に差はあります。
しかし、任意売却に与えられた時間を過ぎてしまうと、紹介事例のようにサービサーへ担保付きで債権譲渡されてしまうのが主流です。
思いのほか、債権譲渡が早い金融機関もありますので注意が必要です。
金融機関の不良債権処理は迅速
任意売却を可能にした3つの要因
今回の任意売却は、途中でサービサーへ債権譲渡されてしまうなど、特殊な状況下での任意売却となりました。
任意売却業者の中には、「債権譲渡の可能性があるなら契約しない」と言い切る業者もあると思います。
それでも、買主が本当に理解のある方だったため、当事務所としては踏込んで契約まで進みました。
その決断が、結果的には早期の任意売却を成し遂げることができました。
また、要因を挙げるとすれば、以下の3点が大きかったと思われます。
〈今回の任意売却を可能にした要因〉
- 買主が債権譲渡後、すぐに決済(物件の引渡し)ができる準備をして待って頂けたことでサービサーにとっては早期に回収が可能
- 買主の購入価格が適正価格である根拠をしっかり提示し、サービサーに納得して頂いたこと
- 買主の利用する金融機関もスケジュールの調整など、かなり協力してくれたこと
この任意売却に関わる者すべてが、「同じ方向を向いて取組んでくれた」ことに、改めて気付かされた取引でした。
銀行の担当者に債権譲渡の詳細は伝わらない
結果は良かったのですが、疑問が残ります。
銀行の担当者の説明では、「サービサーの買取り金額が買主様の購入金額を上回っているはず」ですが・・・・。
それでは、サービサーが買取り金額以下で任意売却に応じたことになります。
実際のところ銀行の担当者にまで債権譲渡の詳しい情報自体は、伝えられてないのが実情なので仕方ないのかもしれません。
また、サービサーへの債権譲渡は、個々の案件1つに買取価格を付ける訳ではありません。
バルクセール呼ばれ不良債権をまとめてセットで売却するため、債権譲渡された案件1つの価格は基本的には分からないのです。
サービサーへの債権譲渡されても任意売却のチャンスはありますので、諦めずに早期に相談することです。
必ずや道は開けると信じて、前に進みましょう。
任意売却の相談は専門知識を有する者へ!