期限の利益の喪失【前後】で遅延損害金は大きく異なる

期限の利益の喪失【前後】で遅延損害金は大きく異なる

 住宅ローンが払えなくなると、自宅を手放すことも考えるようになり、同時に住宅ローンの残高も大変気になるところです。

任意売却が必要とされる方でも、自宅の売却によって住宅ローンを完済し、無借金の状態から再スタートできる方も少なからずおります。

多くの方が任意売却後の残債について悩む中、その点に関しては救われます。

しかしながら、自宅の売却によって住宅ローンが完済できそうな方こそ、特に注意して頂きたいことがあります。

それは、住宅ローンを滞納しても完済できるからこそ、問題となる遅延損害金の存在です。

実は、「期限の利益の喪失」前後で遅延損害金の額が、驚くほど違ってきます。

この記事は、FP&不動産コンサルの有資格者が「期限の利益の喪失【前後】で遅延損害金は大きく異なる」理由を詳しく解説します。

繰り返しますが、任意売却でも住宅ローンが完済できる可能性がある方は、本当に注意してください。

目次

遅延損害金は「毎月の元金返済額」又は「元金」に対して算出される

 まず遅延損害金とは、返済の約束期日を守らないことによるペナルティのことで、ある金額に遅延損害金の割合(○○%)を掛け合わせ請求されます。

ある金額とは「元金」又は「毎月の元金返済額」のどちらかを指します。

また、遅延損害金の割合は「年率〇〇%」として金融機関ごとに定められています。

住宅ローンの遅延損害金は、どこの金融機関も概ね年率14%(以下、年率の記載を省略します)以上が多いでしょう。

〈遅延損害金の計算式〉

  • 「毎月の元金返済額」×「〇〇%」=「遅延損害金」
  • 「元金」×「〇〇%」=「遅延損害金」

※ 〇〇%は遅延損害金の年率割合
※ 計算式は年間の遅延損害金が算出され、365で割れば1日あたりの金額となります。

遅延損害金の計算は「毎月の元金返済額」又は「元金」のどちらちらかに、遅延損害金の割合を掛けて計算します。

それでは、遅延損害金の計算は「毎月の元金返済額」又は「元金」のどちらを基準にするのでしょうか?

続いて、判断基準を説明します。

期限の利益の喪失【前後】で「毎月の元金返済額」か「元金」か決まる

 ご自身の遅延損害金を「毎月の元金返済額」で計算するのか?

又は「元金」で計算するのか?

その違いは、期限の利益の喪失【前後】がポイントになります。

まだ「期限の利益を喪失」の方は「毎月の元金返済額」で計算

もう「期限の利益を喪失」の方は「元金」で計算

期限の利益の喪失前か後かの違いと覚えておけば大丈夫です。

期限の利益の喪失とは?

滞納の回数が一定数(3回~6回)を超えると多くの金融機関で期限の利益を喪失してしまい、以後、分割での返済は認めてもらえません。

〈期限の利益の喪失前後の違い〉

  • 「期限の利益の喪失前」は、まだ分割返済は可能
  • 「期限の利益の喪失後」は、もう分割返済は不可

「分割返済ができるのか?・分割返済ができないのか?」の違いです。

「期限の利益の喪失」は金融機関から必ず、「期限の利益の喪失」した旨の通知や「期限の利益の喪失予告」なる書面が届くので、捨てずに目を通していれば気付きます。

詳しい説明は以下の記事を参考にしてください。

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それでは、上に載せました〈遅延損害金の計算式〉に当てはめてみます。

〈遅延損害金の計算式〉

・期限の利益の喪失
 「毎月の元金返済額」×「〇〇%」=「遅延損害金」

・期限の利益の喪失
 「元金」×「〇〇%」=「遅延損害金」

遅延損害金の計算が「毎月の元金返済額」か「元金」のどちらを基準にするのか分かったと思います。

次は、「期限の利益の喪失前」と「期限の利益の喪失後」で、実際に計算してみましょう。

期限の利益の喪失前の遅延損害金の計算

 期限の利益の喪失前の遅延損害金の計算は、以下の式になります。

〈期限の利益の喪失前の遅延損害金の計算式〉

「毎月の元金返済額」×「〇〇%」=「遅延損害金」

※ 1年分の遅延損害金が算出されます。

ここで「毎月の元金返済額」について少し補足しておきます。

毎月の元金返済額とは

利用者の大多数を占める元利均等払いのケースで簡単に説明します。

元利均等払いは金利の変動が無ければ、毎月同じ返済額となります。

また、返済額は同じですが、内訳は元金返済額と利息に分けられます。

(例):7万円の返済額に対して内訳は元金返済額4万円の場合、利息3万円となります。

内訳は返済が進むにつれて元金返済額の割合が増え、利息の割合が減ります。

毎月の返済額が7万円(元金返済分4万円+利息分3万円)として実際に計算してみましょう。

本記事内では、住宅金融支援機構の遅延損害金を用いて年率14.5%とします。

〈期限の利益の喪失前の遅延損害金の計算例〉

・4万円×14.5% =5,800円
※ 年率のため1年間の遅延損害金が5,800円として算出します。

・1日の遅延損害金は?
 5,800円÷365日=約16円(四捨五入)

・2週間の遅延損害金は?
 16円×14日=224円

・1か月の遅延損害金は?
 16円×30日=480円

※ 元金返済分4万円に対して遅延損害金が課せられます。

1日あたり約16円

2週間(14日)で僅か224円

1カ月で480円と500円にも満たない額となります。

正直なところ、それほど負担の大きい金額ではありません。

期限の利益の喪失前は遅延損害金の負担は少ない

期限の利益の喪失前の遅延損害金は滞納3回~6回まで

 期限の利益の喪失は金融機関によっても異なりますが、概ね3回か6回と覚えておいて差し支えありません。

3回としていますが、3か月分の返済額が滞った状況です。

6回の場合は、6か月分の返済額が滞った状況となります。

先ほど、〈期限の利益の喪失前の遅延損害金の計算〉として1年間の遅延損害金が5,800円と書いていますが、遅延損害金の割合が年率○○%としているためです。

現実としては、多くても6回滞納したら期限の利益を喪失してしまうので、あくまでも計算上であることをご理解ください。

従いまして、期限の利益の喪失前の遅延損害金が請求される期間は短く、その額も少ないため特に気に掛ける必要性はあまり感じられません。

ただし、全くの0円ではありませんので、経済的に厳しい状況を考慮するなら、無駄な支出を少しでも抑えられるよう努力することは大切です。

多くても滞納6回で期限の利益は喪失

期限の利益の喪失後の遅延損害金の計算

 期限の利益の喪失後の遅延損害金の計算は以下の式になります。

〈期限の利益の喪失後の遅延損害金の計算式〉

「元金」✖「〇〇%」=「遅延損害金」

※ 1年分の遅延損害金が算出されます。

住宅ローンを例にとり元金を2,000万円として計算します。

遅延損害金は住宅金融支援機構の年率14.5%とします。

〈期限の利益の喪失後の遅延損害金の計算例〉

・2,000万円×14.5%=290万円
※ 年率のため1年間の遅延損害金が290万円となります。

・1日の遅延損害金は?
 290万円÷365日=約7,945円

・2週間の遅延損害金は?
 7,945円×14日=111,230円

・1か月の遅延損害金は?
 7,945円×30日=238,350円

ひとたび、期限の利益を喪失してしまうと遅延損害金の額は跳ね上がります

元金2,000万円に対して1年で、なんと290万円の遅延損害金が発生します。

1日あたり約8,000円

2週間で11万円オーバー

そして、1か月でなんと約24万円ほどになります。

毎月24万円を返済しても、元金は1円も減らない計算です。

いかに恐ろしいペルナルティなのか、ご理解頂けることでしょう。

期限の利益の喪失後の遅延損害金はもはや懲罰的な制裁金

保証会社が遅延損害金を請求するときも同じ

 この遅延損害金はいつから発生するのかというと、返済が遅れた日からになりますが、元金全額に対して請求されるのは、期限の利益の喪失後と上にも書いてきました。

それでは、民間の金融機関(銀行や信用金庫など)の多くは、住宅ローンを融資する際には保証会社を利用します。

保証会社を利用している場合、遅延損害金はどうなるのでしょうか?

ここでまた「期限の利益の喪失」が登場します。

保証会社を利用していると期限の利益の喪失後は銀行など金融機関の手を離れて、管理が保証会社へ移ります。

これを代位弁済といい、保証会社が銀行などへ肩代わりして返済します。

その代わり、保証会社が銀行などに代位弁済した額に対して、遅延損害金を付されて請求されます。

保証会社は、代位弁済したときから遅延損害金を計算し請求します。

〈保証会社の遅延損害金の計算式〉

「代位弁済額」✖「〇〇%」=「遅延損害金」

※ 1年分の遅延損害金が算出されます。

元金から代位弁済額に代わっただけでと見れば、分かりやすいでしょう。

保証会社についても遅延損害金は住宅ローンの場合、概ね14%以上と覚えておいてください。

住宅金融支援機構やプロパー融資等の保証会社の利用が無い場合、代位弁済されません。

保証会社は代位弁済後に遅延損害金の請求

※ プロパー融資とは銀行や信金等が保証会社や保証協会を利用せずに直接貸し付けている融資のこと。

期限の利益の喪失後は遅延損害金も莫大

 住宅ローンが払えなくなると分かった時点で、売却によりローンが完済できそうな場合、期限の利益の喪失前に売却を済ませなければ、手元に残せる現金が遅延損害金によって、あっという間に減ってしまいます。

任意売却により残債が発生してしまう方とは異なり、金融機関は回収可能な場合は、一切妥協せずキッチリ回収します。

つまり、不動産の売却代金が元金にも満たないケースでは、金融機関も遅延損害金どころの話ではありません。

その反面、回収が望める方からは遅延損害金も含めトコトン回収し、それでも残ればやっと残額を受取れると理解して下さい。

従いまして、売却で住宅ローン完済の目途が立つならば、期限の利益の喪失前に売却を済ませることは金銭面でも非常に有効です。

その結果、より多くの現金を手元に残せる可能性があります。

現金が多ければ、再スタートも楽になり、その後の選択肢も広がります。

滞納の積み重ねにより、期限の利益の喪失後に元金又は代位弁済額に対し、年14%を超える遅延損害金が請求されることは非常に大きなハンデキャップとなります。

多額の遅延損害金で貴重な現金を失うより、早めに行動するほうがメリットは大きいのではないでしょうか。

完済の目途があれば早期の売却が金銭面でもメリット大

期限の利益の喪失【前後】で遅延損害金は大きく異なる

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この記事を書いた人

小田嶋譲のアバター 小田嶋譲 代表取締役

 有限会社 O&Trade代表 大学卒業後、不動産会社と譲渡債権回収の金融機関での勤務経験を経て独立。競売間近の自営業者の不動産担保ローンや不動産投資の失敗による相談など、お金と不動産の専門家として難易度の高い任意売却に精通し、「不動産に関わるお金の悩みの解決」に取組んでいます。この度、「ADR」と呼ばれる法務大臣認証の裁判外紛争解決機関(一社)日本不動産仲裁機構の調停人として登録しました。

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