住宅ローンの滞納を続けると、債権者(金融機関)から督促状や催告状が届きます。
督促は数ヶ月にわたり続きますが、その間に何の対処もしなければ家や土地は「競売」にかけられることになります。
競売が完了すると、残念ですがそれ以上は持ち家に住み続けられません。大切な家や家族の生活を守るには、競売は何としても回避する必要があるでしょう。
この記事では、競売とは一体何かをわかりやすく解説します。競売以外で住宅ローンの滞納問題を解決する方法も紹介しますので、競売に関する通知が届いた方はぜひ参考にしてください。
競売とは|債権回収のために不動産を強制的に処分すること

競売は、債務者の家や土地を売却し、その代金を債権回収にあてる手続きのことです。
債権者の申し立てを受けた裁判所が強制的に執行するもので、競売がはじまるとそれ以降は返済計画の相談には応じてもらえません。
買手が見つかり、購入代金の支払いを終えるとその時点で所有権が変更され、対象物件からの退去を命じられます。
競売は「けいばい」と「きょうばい」どちらで読んでも正解です。
法律用語では「けいばい」と読むため、弁護士や司法書士など法律の専門家は「けいばい」を使う傾向にあります。(相談者様には「きょうばい」とお伝えするケースもあります)
一方、テレビやラジオなどで競売のニュースを取り扱う時は「きょうばい」と読まれることがほとんどです。一般の方にはあまりなじみのない言葉なので、放送業界では「きょうばい」の読み方で統一したという歴史があります。
競売の種類

競売は大きく2つの種類に分けられます。
- 担保不動産競売
- 強制競売
ここからはそれぞれの特徴や違いを解説していきます。
その①担保不動産競売
住宅ローンの滞納が続くと、金融機関は債権回収のために抵当権※を行使し、対象の不動産を強制的に売却します。
家や土地などの不動産を担保にする権利のこと。住宅ローンの返済が滞った時、債権者が抵当権を行使すると家や土地をもって弁済を受けられる。
担保不動産競売は、抵当権を実行することによって行われる競売のことです。日本で行われる競売の大半は、担保不動産競売に該当します。
前項にて競売は強制力があるとお伝えしましたが、厳密にいうと担保不動産競売は強制執行ではありません。しかし、次で説明する強制競売の規定を準用する部分が多いため、手続き上は強制競売と同じルールが適用されます。
その②強制競売
強制競売は、債権者が債務名義(判決や和解調書など)に基づいて債務者の不動産を強制的に売却する手続きのことです。
先の担保不動産競売は、抵当権が設定された不動産が対象となります。一方、強制競売は抵当権を持たない債権者によって行われるものです。
強制競売となる例には、
- 裁判で支払いの判決を受けたが支払いに応じなかった
- 和解が成立したにも関わらず支払いに応じなかった
などがあります。少々わかりにくいですが、裁判沙汰になっている事案=強制競売になると考えるとわかりやすいでしょう。
競売は、担保不動産競売が全体の9割を占めるのに対し、競売はわずか1割ほどと件数が少ないです。また、強制競売では不動産以外にも自動車や船舶、建設機械などが対象となります。
競売はどんな時に行われるか

競売が行われるケースとして考えられるのは次の3つです。
- 住宅ローンの滞納が続いた時
- 住宅ローン以外の借金滞納が続いた時
- マンション管理費の滞納が続いた時
ここからはそれぞれのケースをより詳しく見ていきましょう。
ケース①住宅ローンの滞納が続いた時
住宅ローンを数ヶ月にわたって滞納すると、返済の意思がないものと見なされ、債権者が裁判所へ競売を申し立てます。
競売は、1〜2回滞納したからといって即手続きが進められるわけではありません。一般的には、滞納開始後6〜9ヶ月ころにはじまることが多いです。
債務者は「競売開始決定通知書」という通知を受け取ることで、競売開始の事実を知ることが多いようです。
ケース②住宅ローン以外の借金滞納が続いた時
競売が行われるのは、住宅ローンの滞納だけではありません。
カードローンやリボ払い、消費者金融などの借金も、返済が滞ると家や土地が競売にかけられる可能性があるのです。
また、事業主が事業資金として借入をした場合も、不動産を担保にしていれば競売にかけられる可能性があるでしょう。
国税や地方税の滞納を続けると、「公売」という方法で不動産を売却されることがあります。
滞納を続けた時に執行される点はどちらも同じですが、公売は各自治体が、競売は裁判所が主導となって行われるという違いがあります。
公売は、競売に比べて手続きが簡易的です。しかし、競売のような強制力はなく、明け渡しには訴訟を起こさなければなりません。
ケース③マンション管理費の滞納が続いた時
マンションの管理費も、滞納が続くと競売にかけられる可能性があります。
マンションの管理費は、エレベーターやゴミ置き場などの共用部分の管理に使われるお金です。(備品の購入や清掃員の人件費、防犯カメラのレンタル料などがおもな使い道です)
長期にわたって管理費を滞納すると、マンションの維持に影響を及ぼします。また、ほかの区分所有者との公平性を保てなくなるため、マンションの管理組合が競売の申し立てをするのです。
競売開始に関する書類が届いたら

住宅ローンの滞納により競売開始決定通知書が届くと、3〜6ヶ月ほどで競売がはじまります。
ここまでくると、競売開始までの時間は残りわずかです。この時点で何らかのアクションを起こせば競売を回避できる可能性がありますが、放っておけば近い将来家や土地を失うことになるでしょう。
裁判所の執行官による現況調査が行われる
競売開始が決定すると、1〜2ヶ月ほどで裁判所が任命した執行官が家にやってきます。
目的は物件の調査(現況調査と呼ばれます)をすることで、室内外の写真撮影をしたり居住者への聞き取りを行います。競売は強制力がある措置ですから、現況調査を拒否することはできません。
仮に施錠をして入室を拒んでも、彼らには強い権限があるため鍵をこじあけてでも中に入ってくるでしょう。
入札開始日を過ぎると競売の取り下げはできない
現況調査の内容が資料にまとめられると、入札期間や落札期日などが記された通知が届きます。
入札がはじまる前であれば、まだ競売を回避できる可能性があります。しかし、入札開始日を過ぎてしまうとそれ以降は競売を取り下げることはできません。
落札者が決まり、買主が売却代金を支払うと、その時点で不動産の所有権は新たな買主に変更されます。
競売を回避する唯一の方法「任意売却」

競売は、言ってしまえば債権者にとっての最終手段です。
そもそも競売は、住宅ローンを滞納してすぐに執行されるものではありません。競売に至るまで債権者は数回にわたり督促をしていますから、その時点で何らかの行動を起こしていれば競売は回避できます。
競売以外で住宅ローンの滞納問題を解決するには「任意売却」がもっとも有効な方法です。
ここからは、任意売却がどのような手続きなのかをわかりやすく解説していきます。
債権者の同意の上で不動産を売却する方法
任意売却は、借金の残高よりも低い金額で不動産を売却する方法です。
競売では強制的に不動産が処分されますが、任意売却は本人の意思によって行われます。(任意売却を行うには宅地建物取引業の免許が必要なので、手続きは専門家に相談して進めるのが一般的です)
「ローンを完済できない不動産は売却できないのでは?」と思う方もいるでしょう。この質問に対する答えは「債権者が同意すれば可能」です。
また、諸条件をクリアできれば今の家に住み続けられる可能性も残ります。家を売却するという点は競売と共通していますが、競売に比べて精神的負担を大幅に軽減できる方法なのです。
任意売却できるのは期限の利益の喪失後6ヶ月頃まで
任意売却ができるリミットは、期限の利益喪失後6ヶ月頃までです。
支払い期日まで返済を待ってもらえる利益(メリット)のこと。通常、住宅ローンの返済は「毎月◯日」と決まっていて、その期日があることで債務者は履行が猶予される(=返済を待ってもらえる)利益を得ている。期限の利益を喪失すると、債務は全額一括で支払わなければならない。
期限の利益を喪失するまでの期間は、滞納開始から3〜6ヶ月ほどが目安です。つまり、滞納を9ヶ月〜1年続けると任意売却はできなくなると思っていてください。
任意売却は開札日の前日までに完了させる必要がある
手続きが完了するまでには、早ければ1ヶ月ほど、煩雑な処理が続くと半年ほどかかることがあります。
入札開始日を過ぎると競売の取り下げはできないとお伝えした通り、すべての手続きは開札日前日までに完了させなければいけません。
落札者が代金を支払い、所有権が変更されると、当然ですがそれ以降は家を立ち退かなければいけなくなります。
任意売却は時間との勝負なので、住宅ローンの返済が困難になった時点ですぐに行動することが大切です。
住宅ローンの滞納問題は早めの対処が必要

住宅ローンの返済に待ったは通用せず、滞納を続けると大切な家を失う可能性があります。
競売はインターネットに所在地や室内外の写真が掲載されるため、プライバシーを守るのは極めて困難です。精神的負担も大きく、下手をすれば家族全員が路頭に迷うこともあるでしょう。
督促を無視し続けていれば、事態は悪化の一途をたどります。取り返しがつかなくなる前に、早め早めの対処を心がけましょう。
当事務所では、これまで数多くの住宅ローン問題を解決してきました。収入減少などで返済ができずお困りの方は、ぜひ一度当事務所までお問合せください。