ハンコ代でしくじり?任意売却に不慣れな業者の珍配当案!

ハンコ代でしくじり?不慣れな業者の珍配当案!

 任意売却の取引において、しばしば「ハンコ代」と呼ばれる金銭のやり取りが生じるケースがあります。

任意売却で「ハンコ代」が必要となるのは、住宅ローンを含む不動産担保ローンを2社以上から借りている場合と考えて差し支えないでしょう。

この記事は、当事務所に寄せられた相談内容で「知り合いの業者に任意売却を依頼したらハンコ代で失敗」してしまった事例を紹介します。

先に失敗の原因を挙げるとすれば、間違いなく「任意売却が経験不足の業者へ依頼」してしまったことです。

任意売却に精通し、債権回収に携わっていたFP&不動産コンサルの有資格者が「任意売却のハンコ代」について。

そして、任意売却で失敗しないためにハンコ代の予備知識も含めて解説します。

任意売却を検討中で、2番抵当や3番抵当などの後順位抵当権者の存在が不安な方は、是非参考にしてください。

目次

ハンコ代についての相談とは?

 法人が所有する事業所(土地建物)の任意売却について「ハンコ代」が問題となってしまった事案です。

相談者は、知り合いの不動産業者に任意売却を依頼、銀行とは売却価格についても話が付いていました。

そして、もう既に買主も決まり、何も問題ないように感じたのですが・・・

よくよく話を聞くと、銀行は任意売却に協力的です。

しかし、銀行の他に2番抵当も設定されていました。

その2番抵当権者が受取る「ハンコ代の金額」が今回の問題となっていました。

相談者の最終的な希望は「知り合いの業者に任意売却を依頼したらハンコ代で失敗」したものの、何とか任意売却を進めたいとのことです。

以下、相談者の状況を記載します。

相談者が依頼した不動産業者は、売買価格1億5千万円で任意売却に応じると銀行から返答を得ておりました。

〈相談者の状況〉

  • 売却価格    1億5千万円(土地建物)
  • 1番抵当 銀行 2億5千万円
  • 2番抵当 法人 5千万円

銀行は1億5千万円で任意売却を認めてくれています。 

※ 説明上、分かり易くするため、数字を簡素化し諸費用等も考慮していません。

ここで簡単な問題です。

上記の状況で1億5千万円の売買価格で任意売却した場合、2番抵当の法人は、通常いくら(ハンコ代として)受取れるでしょうか?

以下「1、2、3」の中から1つ選ぶとすれば、どれが適切でしょう。

〈ハンコ代で適切なのは?〉

  1. 銀行は半分以上回収できるので、500万円~1,000万円
  2. 抵当権を解除してもらう手間として数十万円
  3. 1番抵当が全額回収できないので2番抵当は0円

を選びたいのは気持ちとしては、よく理解できます。

は競売と変わらないので、2番抵当権者が任意売却に協力するメリットはありません。

そうなると、答えは「」です。

任意売却業者ならば、迷うこともない問題です。

相談者の任意売却を進めるならば、2番抵当が受取れる「ハンコ代は数十万円」です

ハンコ代は僅か数十万円

不可能なハンコ代を提示していた!

 なぜ、ハンコ代が問題となってしまったのか?

相談者の依頼を受けた不動産業者は、こともあろうに2番抵当の法人に対して、不可能なハンコ代を提示していました

〈提示したハンコ代の金額〉
500万円~1,000万円

2番抵当の法人に『500万円~1,000万円回収できますので、任意売却に協力して下さい!』と事前に説明していたそうです。

2番抵当が金融機関であれば、あり得ない話と思いながら、聞き流すかもしれません。

しかし、残念なことに相談者と取引があり、その代金が未払いのために抵当権を設定した普通の法人でした。

結局、銀行が認めてくれた2番抵当権者への支払金額(ハンコ代)は数十万円です。

つまり、最初に『500万円~1,000万円回収できます!』と説明されたものが、あとから『数十万円になりました・・・』ということです。

あり得ないハンコ代が前提の任意売却

誤った説明で任意売却が成立するか不透明に

 そもそも、ハンコ代として数十万円の金額が妥当なのか?

相談者は、とても気に掛けていました。

結論としては、銀行の認める数十万円のハンコ代について、「その程度の金額が普通」となります。

まだ幸いにも、交渉が完全に失敗に終わった訳ではありません。

仕切り直して2番抵当の法人に対しては事情を理解してもらい、協力してもらう以外ありません。

成否のカギはハンコ代の認識を理解してもらうこと

2番抵当・3番抵当の対応

 任意売却において、法人や自営業者所有の不動産、また個人の住宅でも2番抵当や3番抵当(以下、後順位の抵当権)が設定されていることは珍しくありません。

そして、不動産の所有者は任意売却が成立しなければ、その先は競売しかありません。

一方で後順位の抵当権も、競売になれば受取れる金額が¥0の可能性もあります。

後順位の抵当権は競売では¥0のリスクも

そのため現実を見れば、「競売よりは僅かなハンコ代でも無いよりはマシ」との考えで任意売却に応じるケースも往々にしてあります。

もちろん、拒否される可能性も十分にあります。

どちらにしても、任意売却の際は後順位の抵当権があれば、その債権者の協力も必要になり、きちんと話を決めなければ取引は成立しません。

任意売却は後順位抵当権者の協力は不可欠

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抵当権は上位が有利

 抵当権の優先順位は競売時に、落札金額から受取れる順番でもあります。

1番抵当が競売で全額回収できなければ、2番抵当に配当が回ってくることはありません

つまり、回収額は0円となります。

その抵当権の順位が、任意売却時にも優先されることになります。

ただし、任意売却で何も配当が無ければ競売と同じなので、後順位の抵当権者は協力する意味もありません。

そこで、次に説明するハンコ代という慣例によって、対処するようになっています。

ハンコ代は任意売却への同意

差押えがあるケースも同時に交渉

 任意売却では、後順位の抵当権者の同意が必要と説明しました。

後順位の抵当権者の存在は、いわゆる多重債務の状態です。

そうなると、税金などを滞納し「不動産が役所の差押えられているケースも」往々にしてあります。

仮に後順位の抵当権者が任意売却に同意しても、差押え解除の見込みがなければ、これまた任意売却は成立しません。

差押えも同時に要解除

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ハンコ代とは

 今更ですがそもそも、ハンコ代とは何でしょうか?

抵当権を解除してもらう手間も含めて、通称「ハンコ代」と呼んでいます。

要するに、抵当権解除の書類に押印してもらうための費用であり、任意売却の協力金として捉えることもできます。

最も競売になると後順位の抵当権では、ほぼ間違いなく¥0と考えられる状況が前提にあります。

その際、任意売却に応じれば、ハンコ代として数十万円を上位の抵当権者の取り分から分けてもらうイメージです。

同じ意味で「担保権抹消承諾料」とも言います。

このハンコ代は本来¥0だったものが、幾らかにでもなるというのが基本にあります。

そんな中でも、任意売却を成立させたい不動産業者の足元を見て、常識はずれなハンコ代を要求する後順位の抵当権者も存在します。

また、ハンコ代の受領を拒否して、競売でも構わないとする抵当権者に出くわすケースもあります。

この様な場合は任意売却には応じる気が無いため、早々に競売を見据えた対応に切り替える必要があります。

任意売却の協力金がハンコ代

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ハンコ代の予備知識

 ハンコ代については、厳密にいえば相場はありません。

しかしながら、住宅金融支援機構では任意売却促進のため一律に基準を定めています

他の金融機関も、ある程度の目安にしているように感じますが、基本的には金融機関によって異なります。

【住宅金融支援機構のハンコ代】

  • 2番抵当   30万円(又は残元金の一割以下で、その低い額)
  • 3番抵当   20万円(又は残元金の一割以下で、その低い額)
  • 4番抵当以下 10万円(又は残元金の一割以下で、その低い額)

上記を見ても、2番抵当で上限30万円です。

相談者のケースで見ると、2番抵当のハンコ代が「500万円~1,000万円」を提示していました。

住宅金融支援機構のハンコ代を基準にする必要は、決してありません。

しかし、任意売却の現場に携わる者からみれば、非常に違和感のある金額です。

住宅金融支援機構のハンコ代は目安になりつつある

ハンコ代で失敗した原因は?

 少し話を戻して、今回紹介したハンコ代で失敗した根本の原因は、何でしょうか?

相談者に原因はありません。

完全に「任意売却を依頼された不動産業者の落ち度」です。

そもそも、任意売却について不慣れなのか?

未経験なのか?

正確な判断はできません。

しかし、あり得ないハンコ代を事前に提示するなど、不可解な点から推測すると任意売却の経験が乏しいのは間違いないでしょう。

失敗の原因は任意売却に不慣れだった?

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あえて言うならば、抵当権の優先順位の重みを、全く理解していない業者へ依頼した結果、問題をことさら大きくしてしまいました。

そういった意味では、相談者にも落ち度があったのかもしれません・・・

基本的には売買メインの不動産業者であれば、任意売却の業務は扱えると、当事務所では考えております。

しかし、任意売却が全くの未経験の業者には「少々ハードルが高いのでは?」と思えるケースもあります。

もしかしたら、今回のケースが該当していたのかもしれません。

任意売却に精通していれば起きないトラブル

依頼者が不安に陥る典型例

 今回の相談者は、任意売却の依頼中に不安になってしまい、他業者へ相談する典型的な例です。

しかも、不安が的中し、任意売却が脅かされる事態に直面していました。

任意売却に手慣れた業者であれば、相談者が悩むような内容ではありません

かえって問題を複雑にしてしまい、このまま競売になれば、無念としか言いようがありません。

不安が解決せずに他業者へ相談

任意売却についてはインターネットでも情報収集は可能なので、一見すると簡単そうに見えます。

しかし、状況は個々に異なり、ケースバイケースで判断が必要になります。

任意売却に精通する業者でも、競売回避は容易ではありません

従って、その可能性を少しでも上げるには、やはり任意売却の専門知識を有する業者への依頼する。

その判断が、後悔しない任意売却に繋がるのではないでしょうか。

任意売却は専門知識を有する業者へ

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