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親子間売買の任意売却が難しい理由
今回は同業者から相談された親子間売買の任意売却について、同様の疑問を持った方も多いと思われますので記事にしています。
相談内容については以下になります。
『破産管財人から売却を依頼されている不動産があり、自己破産した父親の自宅を息子が購入できないか?』 という相談でした。
裁判所から選任され、破産者の財産を調査し換価処分(お金に換える)後、金融機関などの債権者へ配当します。
通常、破産管財人は弁護士が選任されます。
親子間売買に関する内容で、いわば身内間で不動産を任意売却するケースになります。
「親の自宅を購入したい」「親族の不動産を購入したい」など、この親子間売買・親族間売買は希望者も多い反面、任意売却を成立させるのは難しいのが実情です。
現役のFP&不動産コンサルの有資格者が、難易度が高い「親子間売買や親族間売買の任意売却」について解説します。
また、親子間売買や親族間売買で住宅ローンを利用する際の3つのポイントも合わせて紹介します。
任意売却を含め、親子間売買や親族間売買で悩んでいる方のお役に立てれば幸いです。
親子間の任意売却で住宅ローンの利用は困難なケースが多い
筆者の経験からすると、親子間売買で任意売却を成立させるのは非常に難しいと最初に結論を書きます。
もちろん、完全にムリではなく、父親の自宅を購入したいとする息子の状況が結果を大きく左右します。
詳しく聞いてみると、自己破産された中小企業の経営者の自宅で息子さんが、住宅ローンを利用して購入を希望しているとのこと。
では、息子さんについて確認すると以下のようでした。
〈息子の状況〉
- 仕事は起業して1年未満の法人代表者
- 住所は父親と同じ(同居)
この2つを聞いた時点で、まず息子さんが住宅ローン利用するのが難しいと伝えました。
父親の自宅や任意売却に関係なく、他の不動産を購入するとしても住宅ローンの審査をパスする可能性が限りなく低いのです。
仮に年収で計算すると、1千万円を超える可能性があったとしても、決算を一度も終えてない会社の代表者に融資はしないでしょう。
息子自身が住宅ローンを借りられない
なぜ、住宅ローンの審査をパスしないのか?
息子さんの状況を詳しく見ていきましょう。
1.仕事は起業して1年未満の法人代表者
法人の代表者とは、世間一般でいうところの会社の社長です。
響きは良いのですが、業績好調な会社とは言えません。
また、設立1年未満で決算を一度も終えていない会社となり、実績がありません。
昨年度の売上も無いため、民間金融機関の住宅ローン(銀行や信用金庫など)であれば、ほぼ門前払いと言っても差し支えないほどです。
法人の代表者が住宅ローンを利用するには決算期を3年過ぎているなど、ある程度の実績を示せないと難しいと認識してください。
2.住所は父親と同じ(同居)
息子が購入しようとしている不動産は自己破産する父親の自宅です。
更に、その息子さん自身も現在同居中です。
父親の借金が原因で自宅を手放しますが、同居している息子があえて親の家を購入する理由は何でしょうか?
単純に住宅の取得が目的ではなく、父親の借金返済の手助けに住宅ローンを利用とも受け取られ、審査条件に合致しないとなります。
今回は、自己破産しているため借金の返済の手伝いとは幾分異なりますが、金融機関から見れば純粋な住宅の購入とは認識してもらえません。
「純粋な住宅の取得」と聞いても分かりづらいので、少し付け加えておきましょう。
〈純粋な住宅の取得とは?〉
息子が親の自宅を購入するとした場合を想定
相続人が複数いるため、長男が実家をどうしても欲しいときは親子間売買により購入するなどが該当します。
更に今回のケースのような借金の問題は発生していない状況であれば問題はありません。
相談された時点で、息子の他に相続人が存在するのかは不明ですが、同居の息子が破産した父の自宅を購入するのでは、住宅ローンは適さないと金融機関は判断します。
同居の親子間売買は純粋な住宅取得でなければ困難
親子間売買の任意売却はどうすれば成立する?
住み慣れた我が家が人手に渡るのは悲しいことで、何とか残したいと身内ならば誰でも考えます。
仮に身内に助けを求め、協力が得られるとしたら何が重要となるのでしょうか?
それは、協力する身内が資金的に余裕のある者であることが絶対条件です。
先に解説しましたが、低金利の一般的な住宅ローンを利用しての親子間売買は、条件が整わないと難しいのが現実です。
そうなると、現金の用意できる者、もしくは金融機関との取引が元々あり親子間売買でも容易に融資が可能な場合はこの限りではありません。
言い換えるなら、購入資金が用意できれば親子間売買であっても、そう難しいものではありません。
親子間売買や親族間売買が成立しない原因の多くが購入資金の工面ができないことが挙げられます。
任意売却の場合は適正価格での取引
ここまでは、任意売却の部分については触れてきませんでしたが、注意が必要なのは売買価格です。
任意売却なので当然ですが適正な金額での売買となり「親子間なので多少低めで!」などは債権者が承諾しません。
任意売却は債権者が認める適正価格での売買が基本
なぜ、あえて適正価格と書いているのか?
少し説明が必要になります。
任意売却で親子間を含め身内で売買する場合、債権者も「価格が相場よりも低くないのか?」など当然ながら警戒します。
そのため、任意売却であれば最初から親子間売買が前提ではなく、なかなか買手が現れないため債権者が認める価格で身内が購入する流れが取引としてはスムーズにできます。
あるいは、残債の一括返済が可能な金額で購入するなど、価格面では決して有利ではない条件で買受けるなど、問題解決に協力する姿勢で臨む必要があります。
売買価格は相場以上を覚悟する
親子間売買の実例
親子間売買はどのようなケースであれば金融機関が住宅ローンを貸出すのか?
成立する条件を実例を交えて2つ紹介します。
〈親子間売買の実例〉
- 親と同居するため次女が購入
- 親の老後資金を捻出するため一人息子が購入
以下、読み進めれば分かりますが購入理由がどちらも自然です。
1.親と同居するため次女が購入
親が持っている家ならば、いずれ相続で手に入りますが、兄弟がいれば分けなければなりません。
一戸建ても特別大きければ、分けることも可能でしょうが、一般的な100㎡前後の建物の一戸建では、そうはいきません。
そのため、シングルマザーの次女が両親と同居するために、住宅ローンを利用して買取った実例となりました。
2.親の老後資金を捻出するため一人息子が購入
母一人、子一人で母親が老人ホームへ入居するための資金を捻出するため、母親のマンションを一人息子が住宅ローンを利用して購入。
母親はマンションの売却代金で、老人ホームの入居費用を確保しました。
母親も息子が住んでくれるなら大喜び、そして息子は親孝行できた実例です。
親子間売買が成立する3つのポイント
住宅ローンを利用した親子間売買を2つ紹介しましたが、意外と簡単そうに見えるかもしれません。
しかし、実際に親子間売買で住宅ローンを借りるには、共通する3つのポイントがあります。
〈住宅ローンで親子間売買3つのポイント〉
- もともと親子別に暮らしている
- 売る側に住宅ローンの滞納等が発生していない
- 不動産業者が仲介している
1.もともと親子別に暮らしている
親と子は別々の場所に暮らしていて、子が親の家を購入して、その家に住むことを前提で住宅ローンを借りています。
そして、それなりの理由がハッキリしています。
購入する家とは別の場所に住んでいる
1のポイント
例えば、子が親の家を購入する場合、子は以前から別の場所に住んでいて、購入をきっかけに移り住むことができる。
子に家族がいれば、全員の住民票を求められる等、本当に引っ越しが可能なのか調べられます。
金融機関によっては、家族が多いのに3LDKの間取りで本当に住めますか!? など根掘り葉掘り質問してくることもあります。
別の場所から越してきて理由も明確でないと怪しまれることもあります。
2.売る側に住宅ローンの滞納等が発生していない
売手となる親が住宅ローンの滞納や税金の差押え等が発生していないため、金銭面でのトラブルは確認できない。
確認できないとしたのは、仮に親も住宅ローンの返済中で滞納があり、競売の申立まで進行してしまうと登記事項に差押えの登記をされます。
また、税金の滞納も同様で役所による差押えで登記されてしまいます。
こうなってからでは、住宅ローンを貸す金融機関も何やらお金に困って子供に買ってもらうのでは・・・ 疑われてしまいます。
その反面、経済的には苦しい状況にあっても、住宅ローンなどの滞納前であれば表面上では判断できません。
滞納が始まる前に、早めに親子間売買を進めてしまうといった方法は非常に有効です。
売る側が経済的に困窮していると悟られない
2のポイント
住宅ローンや税金等、金銭面の都合で親子間売買を検討する際は、まず滞納等が発生する前で、苦しいけれど何とか支払いはできている状態なのか?
又は滞納等はあるけれど、税金も含め差押えの登記は無いか確認する。
3.不動産業者が仲介している
売手と買手が決まっているのに、わざわざ不動産業者に仲介手数料を払ってまで依頼しなければならないの・・・ と感じると思います。
しかし、親子といえども個人間の売買のため、住宅ローンを利用するには不動産業者が仲介に入ることを条件にしている金融機関がほとんどです。
個人間取引で住宅ローンの利用は仲介が必須
3のポイント
親子間売買や親族間売買に全く縁が無い不動産業者も多くあります。
分かりやすいのは、インターネットで情報発信している不動産業者であれば対応可能です。
いずれにしても、親子間売買や親族間売買でも住宅ローンを利用するならば、不動産業者による仲介はほぼ必須となりますので、検討される方は事前に不動産業者へ相談するのが得策です。
住宅ローンの融資基準も一律ではない
住宅ローンは多くの金融機関から様々なプランが提供されています。
また、その条件は日々変更されていますので、これまでは不可だった基準が撤廃されて審査が緩くなっていることもあります。
また、上に記載した3つのポイントについても、必ずしも絶対条件ではありません。
少々難しいような親子間売買でも勤務先や勤続年数などの評価で、住宅ローンを利用できることもありますので、まずは早い段階で相談することをお勧めします。
その他、親子間売買・親族間売買と共にリースバックについての相談も多くあります。
インターネット上では簡単そうに見えてしまいがちですが、どちらも実際は条件が厳しく成立させるには協力者が不可欠で該当者はわずかと理解してください。
住宅ローンの条件も金融機関で異なる