なぜ任意売却が有効なのか?逆の立場で考えればハッキリすること

なぜ任意売却が有効なのか?逆の立場で考えてみる

 住宅ローンやアパートローン、その他の不動産担保ローンの返済が困難になったとき、インターネットで調べれば「任意売却が有効な手段」となる説明を目にするものと思います。

それでも、任意売却はローン残高よりも低い金額で不動産を売却するため、なぜ金融機関は損をしてまで協力してくれるのか?

今ひとつピンと来ない方もいるでしょう。

そこで、任意売却を分かりやすく説明するため「貸す側・借りる側」の立場を入替えて考えてみましょう。

「金融機関側から見た任意売却を認める理由」について、実際に債権回収の現場に携わっていたFP&不動産コンサルの有資格者が詳しく解説します。

目次

お金を貸した側はどうしたいのか?

 逆の立場で考えるため、住宅ローンが払えなくなった人がいると仮定して、金融機関はどうしたいか?

なかなか金融機関側の視点で考えるのも難しいので、まず自分自身で誰かにお金を貸していると想像して下さい。

友人に10万円を貸して、月々1万円の10回払いで返済してもらう約束をします。

〈友人にお金を貸す〉

  • 貸付金額:10万円
  • 返済方法:月々1万円の10回払い

しかし、5回返済したのち、その後は返済がストップしてしまう・・・

その時、あなたが貸した側の立場なら、どう思うでしょうか?

〈貸した側の希望は?〉

  • 返済がストップして1~2か月程度なら、分割での返済を再開して欲しい
  • 3か月以上も返済がストップするなら、もう全額を一括返済して欲しい
  • 遅れた時点で、一括返済して欲しい

人それぞれ感じ方も違いますが、分割での返済を再度望むか・・・

もう、約束と違うので即全額返済して欲しいと考えると思います。

では、話を金融機関に戻します。

金融機関も考え方としては全く一緒です。

金融機関も同じ

住宅ローンを含め不動産担保ローンは、貸付金額も高額なため長期での返済がほとんどとなります。

そのため、長い年月の返済の中で、時には遅れたり滞ってしまうこともあります

しかし、金融機関も鬼ではないため、多少のことがあっても再度、正常な返済を継続してもらえれば貸し剥がすようなことは通常ありません。

できることならば、約束通りの返済再開を望んでいるのです。

金融機関も正常な返済再開を望んでいる

金融機関の場合は厳密な約束がある

 上の説明では『金融機関も鬼ではないため、多少のことがあっても再度、正常な返済を継続してもらえれば貸し剥がすようなことは通常ありません。』と書きました。

多少のこととは、どの程度のことでしょうか?

それは、「期限の利益の喪失」するまでは、返済に遅れが生じても目をつぶってくれます。

期限の利益の喪失前までは分割返済可!

期限の利益の喪失については、別のページを参照していただきたいのですが、これは金融機関との約束です。

軽く触れると、〇か月分滞納すると一括返済を求めるという決め事になります。

金融機関によって3か月~6か月と違いがあり、民間の金融機関(銀行や信用金庫)の住宅ローンの場合は3か月分とする金融機関がほとんどでしょう。

また、フラット35に代表される住宅金融支援機構の場合は6か月分となります。

従いまして、金融機関は滞納額が3か月~6か月分相当額になると、返済の再開を待つことは諦め本格的な回収へと舵を切ります

ただし、住宅金融支援機構や一部のネット銀行などを除いては、「期限の利益の喪失後」は貸し手の金融機関からは手を離れ、保証会社から請求されます。

違いは住宅ローン利用時に保証会社を『利用している・利用していない』で判断しますが、この点についてはもう少し後から説明します。

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滞納が許されるのは2か月or5か月

なぜ任意売却で損をしても大丈夫なのか?

 友人にお金を貸してあげて損をするのでは、たまったものではありません。

それでは、金融機関は損をしてまで任意売却を受け入れるのは、なぜでしょうか?

友人はお金に困っていたため、助けてあげたい気持ちで貸してあげるのが普通でしょう。

しかし、金融機関は「お金を貸して利息を受け取る」という商売のために融資しています。

商売である以上、失敗も付き物です。

貸し倒れの一定数は想定済み

ある程度の損失は、商売上織り込み済みです。

そうであるならば、住宅ローンなどの滞納者が出れば対処法も決められており、早々に見切りをつけることが求められます。

簡単に言ってしまえば、「任意売却なら早々に対処できるので進めてしまいましょう」が分かりやすい表現です。

そして、損失が出ても他の貸し付けで利益があるから問題ないとなります。

早期の任意売却は時間も手間も少なく済む!

担保の不動産をどうするのか?

 友人に10万円貸したのと金融機関とで決定的に違うのは、住宅ローンの場合は担保の不動産が有る点に尽きます。

当然、金融機関も分割での返済ができないなら、全額一括の返済が希望ですが、貸付金額も高額であり簡単にはできないことも想定済みです。

しかし、住宅ローンは上にも書きましたが、不動産を担保にお金を貸しています。

金融機関の最終手段は、返済がストップしたら担保の不動産をお金に換えて、貸付金を回収する方法が残されております。

このことを『担保の処分』と呼びます。

最終的な回収は担保の処分

金融機関は不動産を自由に売買できない

 返済が滞ってしまったら、金融機関は「担保の処分」により貸付金を回収します。

ところが、金融機関は担保の不動産を所有者の意志に反して、勝手に売買することは認められていません。

そのため、担保の不動産を売却するには、所有者に『不動産を売却して下さい』と頼むか・・・

競売により不動産を強制的に処分する』方法しか残されておりません。

ここまで見てみると、お金を借りた側が返済しないのに、貸した側が『不動産を売って返して下さい・・・』とお願いしなければなりません。

これでは筋が通らない、自分なら即競売の申立てを行うと考える方もいるでしょう。

その考え方も間違ってはいないのですが、ここで大きな問題が発生します。

返済しないなら即競売もアリだが他の問題も・・・

競売の費用は誰が負担するのか?

 実は裁判所に担保不動産の競売を申立てるには、貸した側が多額の費用を負担する必要があります。

もちろん競売の結果、貸した金額すべてが回収できて、更に余剰があれば、競売の申立費用も回収可能です。

しかしながら、競売で落札されても貸出金額に満たないケースがほとんどなので、競売の申立費用までの回収は現実的ではありません。

ただでさえ、貸したお金が戻ってこないのに、更にお金を掛けなければ、競売の申立てができません。

競売は手間+費用も金融機関が負担

競売は費用面でも楽ではない

 不動産の競売申立に費用が掛かることは、分かりました。

では、その費用は一体どれくらいでしょうか?

申立てる裁判所により差はありますが、不動産競売の申立てに関して、少なくとも70万~80万円程は必要になります。

お金を貸した側から見ると、この国の制度は一体どうなっているのだと、文句の一つも言いたいでしょう。

しかも、競売に関しては落札されるまで価格は分からず、かなり不安の大きい部分でもあります。

金融機関側から見ると、実際に回収しようとすると大変な手間と負担にプラスして、かなりリスクもあることが分かります。

競売は終了するまで回収額が分からない

任意売却で早期に解決できれば金融機関も好都合

 ここまで見てくれば、住宅ローンや他の不動産担保ローンが払えなくなったとき、自ら進んで任意売却を申し出ることが金融機関にとって、どれだけ有り難いことか良く分かると思います。

また、競売と違い早く買手が決まれば、その分回収も早く済みます。

競売では申立後、軽く6か月は必要となるため、時間と費用を合わせ見ても、任意売却は貸した側にも都合の良い手段なのです。

それゆえ金融機関は任意売却が可能ならば、全額回収に満たなくても応じてくれる理由です。

更に言えば、滞納が続いてしまい返済の目途が立たなければ、速やかに任意売却を決断してくれると金融機関側から見れば、非常に誠意ある対応と見て取れます。

もちろん、相場とかけ離れた安値での売却は当然ながら認められませんが、適切な売却価格であることが前提となります。

適切価格での任意売却は金融機関も前向き

続いては、先に触れました保証会社を『利用している・利用していない』などの違いから、任意売却を申し出る相手が変わりますので、その点について説明します。

保証会社を利用している場合

 一部のネット銀行などを除き、民間の金融機関(銀行や信用金庫)の住宅ローンは保証会社の利用が条件となります。

上で触れた「期限の利益の喪失」すると、借り手に代わって保証会社から金融機関へと返済を肩代わりしてくれます。

これが「代位弁済」といい、その後は保証会社から借り手に請求されることになります。

保証会社の利用がある場合、滞納が続くと期限の利益の喪失後に金融機関から「代位弁済通知」が届きます。

その時点で元の貸し手である金融機関との関係は終了し、任意売却を希望するには保証会社へ申し出ることとなります。

少し駆け足で説明してきましたが、保証会社の利用は特別ではありません。

むしろ、普通で民間金融機関であれば、保証会社を利用していないケースのほうが少ないでしょう。

住宅ローンでは保証会社の利用が一般的

そのため、滞納が続き「代位弁済」まで進んでしまったら、完全に分割返済の道は閉ざされています。

その時が任意売却決断の時期となり、早々に保証会社へ任意売却の意思表示を申し出るタイミングとなります。

保証会社も任意売却には前向きなため、断る理由はほぼありません。

メガバンクや地方銀行、信用金庫の住宅ローンは基本的に保証会社の利用が必須です。

従いまして、住宅ローンを滞納したら「任意売却は保証会社へ申し出る」と覚えておいて差し支えありません。

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保証会社も任意売却には積極的に応じてくれる

保証会社の利用がない場合

 先に一般的な民間金融機関の住宅ローンは、保証会社の利用が必須と書きました。

それでは、一部のネット銀行などを含む保証会社を利用しない金融機関については、どのような流れになるのか簡単に触れておきます。

ここには、フラット35の住宅金融支援機構も含まれます。

住宅ローンの滞納が続けば、昔はよく聞かれた言葉で『不良債権』として金融機関からみなされます。

不動産担保付き不良債権のため、その処理方法は以下2つに分かれます。

〈保証会社なし不良債権の処理〉

  1. 自社で回収(任意売却または競売)
  2. 他社へ売る(サービサーへ担保付きで売却)

早い話し、代位弁済で肩代わりしてくれる保証会社もないため、「自社で回収する・他社へ売る」のどちらかとなります。

住宅ローンを含め銀行や信用金庫が保証会社(保証協会も含む)を利用しない貸付のことを「プロパー融資」と呼んでいます。

プロパー融資=保証会社なし

1.自社で回収(任意売却または競売)

 自社で回収するということは、言い換えれば担保付きのまま他社(以下、サービサー)へ売却しない場合を指しております。

サービサーへの売却とは、難しい言葉ですが「債権譲渡」のことです。

債権譲渡しないため貸付けた金融機関が直接、「任意売却の窓口になる・競売の申立てを行う」ことになります。

ただし、以下のようなケースもあります。

少し混同しがちですが、サービサーへ債権譲渡しない場合でも、サービサーへ回収業務を委託することがあります。

このケースは正に、住宅金融支援機構が該当します。

そのため、サービサーへ売却はしないけれど、サービサーが本来の貸し手となっている金融機関から回収を委託されてます。

また地方銀行なども、関連会社のサービサーへ回収業務を委託するケースも目にします。

その際は、サービサーが窓口になり「任意売却を受付ける・競売の申立てを行う」などの回収業務を担当します。

いずれにしても、プロパー融資で任意売却を希望するならば、まずは借りている金融機関へ連絡し、サービサーへ回収業務を委託している場合は案内されます。

民間金融機関のプロパー融資は、不良債権の処理スピードが速い場合が多いので注意が必要です。

滞納解消の目途がなければ、早急に任意売却を決断しなければ、アッという間に競売まで進行してしまうこともあります。

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サービサーは回収業務の委託もあるので債権譲渡と間違えないで!

他社へ売る(サービサーへ担保付きで売却)

 自社のでの回収は行わず、サービサーへ債権譲渡してしまうことを指しています。

しかし、実際は任意売却は受け付けるけれども、時間を要する場合などに債権譲渡してしまうケースが主に該当します。

任意売却は受け付けるけど時間的な余裕はない!

基本的には、プロパー融資であっても任意売却には前向きですが、やはり不良債権の処理スピードが求められるため、早々に任意売却の意思表示がなければ債権譲渡されてしまいます。

もっとも、任意売却前にサービサーへ債権譲渡されてしまっても、その後はサービサーと任意売却の交渉は可能です。

そうは言いましても、任意売却が可能ならば債権譲渡前に解決することをお勧めします。

その理由は、任意売却が済むことによって気持ちの整理もつくからとなります。

不安定な状況が続くのは、精神的にも辛いものです。

また、サービサーと任意売却の交渉も売却価格で折り合いがつかずに長引く可能性もあります。

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任意売却が可能ならば任意売却がベストな選択!

競売申立後の任意売却は簡単には認めないことも

 一昔前ならば、競売の申立後に任意売却を希望するのは、当たり前の時代でした。

しかし、現在では任意売却についての情報も比較的容易に集められるため、競売の申立て前に任意売却で処理することが普通になりました。

逆に競売の申立後に任意売却を申出ても、金融機関(ここから先は保証会社も含め金融機関としむます)から見れば何を今更言っているの・・・

売却金額次第ですが、もう競売で処分しますからと断られてしまうことも、あり得ます。

そのため、競売よりも任意売却を希望するならば、競売の申立前に行動することが重要なポイントとになります。

ここまで、住宅ローン利用時の保証会社の有無も含め、プロパー融資についても敢えて書いてきたのは、金融機関も任意売却には前向きです。

しかし、そこには時間的な問題もあり「迷いに迷った挙句、やっと任意売却に向けて重い腰を上げた」では、金融機関にとって任意売却のメリットが少ないケースもあります。

何よりも金融機関の立場からすれば、『手間もなく、費用負担もなく不良債権が速やかに処理できる

そのことが、損をしてでも任意売却を認めてくれる理由となります。

繰り返しになりますが、一昔前の任意売却とは異なり、競売の申立て前に任意売却を希望するから金融機関も前向きに対応してくれます。

その意味で、任意売却は早期の決断が何よりも重要となることが「2003年から任意売却に携わってきた筆者の伝えたいこと」となります。

住宅ローン、アパート・マンションローン、他の不動産担保ローンの返済でお悩みの方は、一刻も早く相談することをお勧めします。

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この記事を書いた人

小田嶋譲のアバター 小田嶋譲 代表取締役

 有限会社 O&Trade代表 大学卒業後、不動産会社と譲渡債権回収の金融機関での勤務経験を経て独立。最近では特に自営業者の不動産担保ローンや不動産投資の失敗による相談が数多く寄せられ、お金と不動産の専門家、FP宅建士として難易度の高い任意売却に精通し、不動産に関わるお金の悩みの解決に取組んでいます。

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