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リスケジュールで身内を巻込み老後破綻
住宅ローンが払えなくなると、人は何とかしなければと必死になって金策に走ります。
多くの場合、その甲斐も虚しくお金の工面は叶いません。
この段階になると、もう支出を削減しようにも減らせるものは無いため、最後に手を付けるのは「住宅ローンの返済額」となります。
具体的には、月々の返済額を減らせないか、金融機関に相談することになります。
意外にも、金融機関は柔軟に貸付条件の変更を受付けてもらえます。
この貸付条件の変更をリスケジュールと呼んでいます。
本記事では、リスケジュールで身内を巻き込んだ挙句、老後破綻してしまった相談事例を紹介します。
現役のFP&不動産コンサルの有資格者が「その場しのぎのリスケジュールは解決策ではない」との注意喚起になればと思い書きました。
リスケジュールを検討されている方は是非参考にしてください。
安易なリスケジュールで身内を巻き添え
住宅ローンの返済が苦しくなった、ある夫婦が金融機関へリスケジュールを願い出たところ、1つの条件を提示されました。
リスケジュールの条件は「息子2人を連帯保証人」にするよう求められました。
あろうことか、息子2人も応じてしまいました。
今となっては、ただのリスケジュールで済まない、悪魔のような要求が金融機関から突きつけられたのでした。
連帯保証人の引受けは驚くほど簡単
連帯保証人も巻込む老後破綻
連帯保証人を引受け、リスケジュールで何とか両親の自宅が守れるとならば、息子2人は協力しました。
この時点で、連帯保証人の息子2人には何も問題は生じません。
ところが数年後、また返済が困難になりそうだと分かったのです。
それは、再就職後の定年を迎える直前、年金収入だけでの生活が近づき、どう頑張っても足りないことを改めて自覚したときです。
最近、特に問題となっている住宅ローンで老後破綻が目前に迫ったのです。
定年直前で年金収入不足が判明
連帯保証人は無傷ではいられない
もう、この時点で自宅を手放しても、残債があれば確実に連帯保証人の元へ請求されます。
そして、ひとたび引受けてしまった連帯保証人が、返済を逃れる手段はありません。
そもそも無理なリスケジュールを強行し、身内を道連れにした老後破綻となってしまいました。
しかし、よく考えていただきたいのですが、ご自身が受給できる年金額は日本年金機構の「ねんきん定期便」を見れば分かります。
その年金で住宅ローンが払えるのか?
単純な計算で答えは出てしまいます。
要するに分かっていながら、その場しのぎのリスケジュールが息子2人の不幸を招きました。
もちろん、金融機関もある程度は承知しているため、息子2人を連帯保証人としているのです。
連帯保証人を道連れの老後破綻
リスケジュールとは?
安易にリスケジュールに飛びついてしまったことが、今となっては悔やまれます。
もともとリスケジュールは、一時的な返済の苦境を乗り越えるための対策でした。
具体的には、一定期間だけ返済額を減らします。
これが基本となり、返済条件はリスケジュール時に決定されます。
そして、期間経過後はリスケジュール時に決められた方法で返済します。
その方法は、遅れた分の返済を「増額して返済」又は「返済期間を延長」基本的にはこの2つとなります。
〈リスケジュール期間経過後〉
- 増額して返済
- 返済期間を延長
増額して返済
リスケジュールで一定期間の返済を減額したため、その分の上乗せをして返済していきます。
リスケジュール前の本来の返済額+リスケジュール期間の減額分もプラスされるため、リスケジュール前よりも返済額は増額します。
リスケジュール前より返済額が増加
返済期間を延長
上の「増額して返済」では、リスケジュール後の返済が厳しくなってしまうため、返済額はリスケジュール前の返済額のままに戻ります。
そして、返済額は変更しない代わりに返済期間を延長します。
この場合、更に返済期間は長くなり、住宅ローンに縛られた生活が続くことになります。
本来であれば、リスケジュール後に「増額して返済」が本筋なのですが、これでは返済不能となるのが目に見えているので返済期間を延長して対応することになります。
長期の返済が更に延長する
リスケジュールの実情
上の項でリスケジュールついて書きましたが、現状のリスケジュールは少々異なってきております。
リスケジュールは「一定期間だけ」返済額を減らすのが基本でした。
しかし、現状は減額したままの状態を継続してしまうリスケジュールが多く見て取れます。
一旦、下がった返済額を元に戻しての返済が事実上不可能なケースが多く、また、金融庁からの要請も影響しているものと思われます。
この状況が良い結果をもたらしているのかは分かりませんが「返済が厳しいからリスケジュール」といった安易なリスケジュールも行われております。
その結果を見ると、単なる問題の先送りとなる可能性が十分にあります。
リースケジュールが問題の先送り
定年後は住宅ローンが占める支出の割合に注意
最近では定年退職後も再雇用等で、働く場を提供している企業も多くあります。
人手不足と相まって、そのまま働いている方は多くいますが、もちろん給料は今までと同じにはなりません。
現役時代と同等の生活レベルを維持するのは難しいでしょう。
定年を機に支出の見直しを検討しても、節約できない支出として、住宅ローンが大きなウエイトを占めていることが分かります。
定年後の住宅ローンは収入の大半を占めることも
定年後の住宅ローンが払えないとき
再雇用されても、住宅ローンを完済するまで働けるとは限りません。
その後、年金収入だけの生活となり、それでも住宅ローンの返済があれば、現実的に返済しながらの生活は可能でしょうか・・・
どう考えても、返済が厳しくなり、繰り上げ返済が可能な現金が無いと、残る選択肢は2つとなります。
〈定年後の住宅ローンが払えないとき〉
- 自宅の売却
- リスケジュール
自宅の売却
住み慣れた我が家ですが、住宅ローンが払えない、又は生活が苦しくなれば、売却して手放す道です。
条件次第ですが売却してもリースバックで借主として、同じ家に住み続けられる方もいます。
もちろん、売却代金を上回る残債(オーバーローン)があれば、任意売却となりますが、無理な返済を続けるよりは生活は楽になるでしょう。
先にご紹介した、身内を巻き込んで老後破綻してしまった夫婦は、リスケジュールしたところで、問題は解決しないことは明らかです。
息子2人を連帯保証人にする前に、自宅を手放すしか方法はありませんでした。
オーバーローンならば任意売却
リスケジュール
リスケジュールは先に説明しましたが、月々の返済額を一時的な減額では難しいことは明らかです。
定年後では、減額したままの返済を継続させる条件を了承してもらえれば、何とか生活を維持できる方もいます。
ただし、現実は厳しいもので住宅ローンの月々の返済額は減りましたが、借入金額が減少した訳ではありません。
そのため、返済額を減らしたツケが生じます。
定年後の住宅ローンでは、返済期間の延長という形でリスケジュールするしかありません。
返済の終わりが見えない可能性も
リスケジュールの柔軟な対応が問題となる
実は、住宅ローンのリスケジュールについて、金融機関は高確率で応じてくれます。
先述した金融庁からの要請も影響とも書きましたが、データからも結果が見て取れます。
以下は、金融庁発表による金融機関における住宅ローンの貸付条件の変更等の状況について(銀行分・協同組織金融機関分)令和2年3月から令和5年6月末までの実績です。
申込み件数に対して、高い割合で実行されています。
金融庁ウェブサイト金融機関における貸付条件の変更等の状況についてのページに「銀行分」「協同組織金融機関分」の2つのデータがPDF版・Excel版により公開されています。
金融庁ウェブサイト報道発表資料(別紙2)『貸付条件の変更等の状況の推移(PDF:42KB)』住宅ローンは2ページ目です。
もはやリスケジュールは特別ではない!
リスケジュールが8割以上の実行率で続く
少し古いデータとなりますが、過去の推移から見ても分かる通り(別紙2)『貸付条件の変更等の状況の推移』申込件数は減少傾向でも、平成22年から実行率は85%以上をキープしています。
それだけ、リスケジュールは柔軟に対応している状況が分かります。
容易に受付けてしまうリスケジュール
リスケジュールはサラリーマンや年金受給者には馴染まない
もともと、リスケジュールは主に中小企業の救済が目的で、業績の悪くなった企業が約定通りの返済が難しくなったときに効果を発揮します。
一時的に返済金額を減らし、業績が上向いたときにきちんと返済してもらう条件でスタートしています。
そのため、あくまでも一時的であり、減額した分は後回しとなります。
企業は業績の浮き沈みがありますので、実際には救われた企業も多くあるでしょう。
しかし、サラリーマンや年金収入の方がリスケジュールできても、その後、収入が上向く方は稀でしょう。
一旦、減額した返済額を後に増やせない(戻せない)ことになります。
リスケジュールでの生活再建は現実的でない
その場しのぎのリスケジュールは破綻の元
老後を見据え、生活が苦しいからリスケジュールしても、自分自身がきちんとした返済計画が立てられなければ、そのリスケジュールは破綻します。
金融機関が認めてくれたから大丈夫ではありません。
むしろ、リスケジュールで住宅ローンの滞納が先延ばしできるならば、不良債権化する前に早々にリスケジュールを金融機関は認めてしまいます。
そのため、収入の先細りによるリスケジュールは大変危険な選択となることが、ご理解頂けると思います。
そして、最後にお伝えしたいのは、住宅ローンの返済が身の丈に合わなくなったとき、その原因である自宅を手放す決断が、老後破綻から身を守る一つの手段になることです。
無理な住宅ローンが老後破綻を招く