『友人が困っていて、リースバックで助けてあげたい』という相談が時折あります。
友人が困っているからリースバックに協力するのは、よほどの間柄でなければ、ここまで話が発展しません。
信頼し合える友人がいることは、本当に素晴らしいことだと感じます。
友人として協力する場合、リスクは最小限に抑えてリースバックを成立させるには、どうしたらいいのか?
その中でも、特に注意しなければならない問題を実例も交えて解説します。
リースバックに協力するときのポイントが分かる!
リースバックの必要性を考える
どうして友人はリースバックを希望するのか?
この点はとても重要です。
なぜならば、リースバックに協力することは頭で考えるほど簡単ではないからです。
友人のリースバックを成立させるには、不動産の購入資金を用立てなければならず、自動車の購入代金とは訳が違います。
ただただ、友人が住み慣れた我が家を離れたくないなどの理由では、リースバックに協力するのは、あまりお勧めできません。
住宅ローンが払えないとは、収入に不釣り合いな状況が生じているため、何よりも優先して支出する住宅ローンの返済ができなくなっています。
一時的な返済苦であれば、一定期間だけ住宅ローンの返済額を減らす(リスケジュール)ことも金融機関へ相談すれば可能なケースもあるため、その限度を超えた経済状態であることは決定的です。
可哀そうと感じるかもしれませんが、収入に見合わない家にリースバックまでして無理に住み続けることが、友人にとっても将来的にプラスになるのか?
その場しのぎでリースバック後に家賃の支払いにも窮してしまわないか?
協力した挙句、約束が守られずに多大な損害を被ってしまう可能性もあります。
もし、友人のリースバックに協力するならば、その必要性についてもじっくり話し合いましょう。
リースバックに協力するなら相手方の状況を把握
リースバックを希望する友人の状況は、似たような相談内容が多いのですが、その中から下記の実例をもとに進めていきます。
【静岡県在住の男性(50代)からの相談】
『住宅ローンを返済できなくなった友人のリースバックに協力したいけど大丈夫でしょうか?』
【友人(リースバック希望者)の状況】
- 売却すれば住宅ローンを完済
- 買戻しを希望
- 家賃等の取決めはこれから
1.売却すれば住宅ローンを完済
リースバックではなく相場にて第三者へ売却すれば、諸費用等を差引いても手元に現金が残ります。
仮に第三者へ売却して住宅ローンが完済できる状況(住宅ローンを滞納していても)というのは、リースバックに協力する側として条件は悪くありません。
リースバック終了時に第三者へ売却する場合も相場以上の金額で購入していれば、受取った賃料以上に持出しをしないと、リースバック後の不動産を売却できない可能性があります。
その点、リースバックに協力するとの考えならば、相場で購入して賃料を受取れるならば、まずまずといった感じです。
リースバックに協力はするけど、不動産投資と見るならば(賃料にもよりますが)採算性は期待できないことを認識しておきましょう。
2.買戻しを希望
一旦はリースバックで購入してもらい、友人の息子が買い戻しリースバックを終了する。
その期日は3年後を予定しています。
あらかじめ、買い戻すことが決まっていれば、買い手探しも必要ないため、リースバックの期間終了後に協力者としては、元の所有者へ売却するだけなので負担が少ないのは確かです。
3.家賃等の取決めはこれから
家賃について、リースバックに協力するには賃料を受取らなければなりません。
今回のケースは3年後に買戻す予定のため、買い戻す際の価格に必要な諸費用を考慮して賃料を設定する必要があります。
当然ながら、そのあたりのことも分からないため当事務所へ相談した経緯があります。
ただし、賃料設定については支払い可能な現実的な金額でなければなりません。
以下は、2,000万円の物件をリースバックして3年後に買戻してもらう際の参考例です。
リースバックの買戻し価格(参考例)
家賃8万円のケース
購入価格2,000万円+購入時諸費用100万円=2,100万円
家賃8万円×36回(3年間)=288万円
2,100万円-288万円=1,812万円
買戻し価格:1,812万円以上
月々の賃料設定が高くなれば、買戻し価格を低くすることも可能です。
上記の参考例は、あくまでも協力者としてのため、計算上何も利点はありません。
わずかでも多く受取るには、買戻し価格を上乗せしてもらう必要があります。
そのほか、実際にリースバックで協力するならば賃料を受取るため、税務上の申告も必要になり課税されることも考慮しなければなりません。
また、不動産の所有者に課せられる固定資産税もあり、現実を考えると思っているよりも簡単ではないことが、より一層実感できると思います。
本当に協力してあげるならば、相当な覚悟が必要になります。
リースバック開始後のリスク
リースバックにおける購入価格・家賃設定・買戻し価格のすべてが決定すれば、あとは資金を提供してあげれば話しはとんとん拍子で進みます。
しかし、リースバックには最後の最後までリスクが付いて回ります。
【リースバック開始後の問題点】
- 買戻すまで、決めた家賃をしっかり払えるのか?
- 買戻す息子が本当に3年後、住宅ローンを組めるのか?
上記の2点がクリアできれば、晴れてリースバックは終了となりますが、こればかりは3年後でなければ分かりません。
人助けと考えれば、問題ないのではと思いましたが・・・
とんでもない問題が潜んでいました。
リースバックで隠されていた本当の大問題
このリースバックの全体像には、とても大きな問題がありました。
それは、買戻す予定の息子には借金がありました。
住宅ローンの返済が困難になった友人だけでなく、その息子まで・・・。
要するに親子そろって、借金で首が回らない状態だったのです。
そのため、その息子の借金を返済するので、不動産を相場より1,000万円程高く買って欲しいと頼まれていたのです。
リースバックで協力してあげるように見えますが、友人親子の借金返済を手伝ってあげる構図でしかありません。
誰にリスクが及ぶか
このような条件では、リースバックに協力する買主(相談者)のリスクがあまりにも高く、完全にアウトです。
友人はノーリスク
買主はハイリスク
どう考えても友人親子には何のリスクも無く、キレイさっぱり借金も完済できます。
しかし、買主にとっては相場より1,000万円以上も高く購入し、リースバック終了時の買戻しができる保証もありません。
よくこんな都合の良い話を持ち掛けたものだと、少々あきれてしまいました。
買主はどうなる?
もしも、このリースバックに協力して、買戻しが成立しなければ、買値より1,000万円も値下げして売りに出さなければ、売却もままならいことでしょう。
損失を被るのは買主です。
今回のリースバックは、3年後の買戻しが済めば終了となりますが、買戻す予定の息子が住宅ローンの審査に通るのかは疑問です。
まして、買主に迷惑を掛けずに買戻す場合、友人の息子は相場より1,000万円も高く購入しなければならず、その不動産に対して、金融機関が担保価値を認めないと容易に想像できるからです。
友人(売主)はどうなる?
友人の息子は、3年後に住宅ローンを組めなければ、購入を諦めれば済みます。
借金も返済されているので、非常に身軽な状態と言えるでしょう。
例え、住宅ローンの審査をパスしても、その不動産をわざわざ相場より、高く購入してくれる保証もありません。
また、同じ価格で条件の良い物件があれば、目移りしてしまう可能性もあります。
結果、友人(売主)は息子が買戻せなくても、何も困ることはありません。
今回のケースでリースバックするには
実は買主(相談者)は自己資金での用意ができないため、金融機関からの借入を検討していました。
既に金融機関にも融資の相談を持ち込んでおり、購入資金の工面はできそうなので、問題となるのはやはり購入価格です。
相場で売買しても残債は無くなりますので、相場に対して1,000万円も上乗せして購入するのは、きっぱりと断りましょう。
そして、買主は不動産を相場、又は相場以下で購入、リースバック期間終了時に友人の息子が買い戻すことができない場合、不動産は第三者へ売却する条件とすれば、かなりリスクは軽減して、リースバックに協力できるでしょう。
友人・知人あるいは身内などのリースバックに協力する際に気を付けたいポイントを3つ記載しますので参考にして下さい。
【リースバックに協力する際のポイント】
- 購入価格に注意
- 賃貸借契約書の作成
- 買戻特約の登記はしない
1.購入価格に注意
決して、相場以上で購入してはいけません。
なぜならば、リースバックの契約期間終了後は買取る約束なので、それが実現できなければ第三者へ売却することになります。
その際、相場以上の高値で購入していたとなれば、売却することで損失が発生する可能性があります。
買い戻す約束が実現されずに、大損となってしまわないよう友人と言えども線引きは必要です。
賃貸借契約書の作成
親しい間柄といえども必ず賃貸借契約書は作成して下さい。
賃貸の期間をあらかじめ決定、必ず更新がない定期借家契約にします。
できれば公正証書にするぐらいの用心深さは必要です。
その理由は、協力もむなしく残念ながら家賃の未納が発生した場合は、すぐに強制執行(退去させる)の手続きに進め、素早く第三者への売却に行動を移せるからに他なりません。
買戻特約の登記はしない
売主が買戻しを希望していても、買戻し特約の登記はしないで下さい。
【買戻特約とは】
不動産を売却しますが一定期間内に売買代金と契約の費用を返還することで、買戻すことができる特約です。
不動産に登記することで第三者へ対抗できます。
万が一、元の売主が買戻しができない場合でも、買戻し特約の登記を所有者が簡単には抹消できません。
やむなく他の者へ売却する際に住宅ローン等を利用すると、金融機関には抹消を求められ、売却の障害になります。
協力型リースバックのススメ
今回の相談者のケースは、仲介に入る業者も既に決まっており、仕事とはならず単なる相談でしたが、苦慮されていたので対応させて頂きました。
当事務所では見知らぬ第三者、投資家のリースバックは、利益目的のみなので正直なところ、あまりお勧めしておりません。
お世話になった方や友人・知人・身内等が困っているとき、手助けできるリースバック(協力型)で売主側・買主側、双方のご相談を随時受け付けております。
資金調達も含め、リースバックについてのお悩みは当事務所へご相談下さい。