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不動産が差押えられた、どうなるの?
不動産の差押えとは、一体どういうことなのか?
自宅が差押えられたら、大変なことになるのでは・・・
不安になるのは、間違いありません。
実際に「不動産を差押えられたら、どうなるのか?」
そして、「不動産の差押えには、どう対処するべきか?」
「不動産の差押えに悩む方」に対して、FP&不動産コンサルの有資格者が詳しく解説します。
また、役所から「差押の予告」などが届いている方も、参考にして下さい。
不動産の差押えは見た目では分からない
あなたの自宅が、税金の滞納などで差押えを受けたとします。
もちろん、所有者の元へは、「役所から差押通知」は届くことでしょう。
では、隣り近所の第三者が見て「あの家は差押えられた!」と分かるのでしょうか?
その答えは、「まず知られることは無い!」と言っても差し支えないでしょう。
不動産の差押えは見ても分からない!
不動産の差押え前後で変わるのは?
それでは、不動産の「差押え前」「差押え後」の違いは何でしょうか?
不動産が差押えらると登記事項証明書(登記簿謄本)に『差押』と登記(記録)されます。
それでも、その不動産に住めなくなる訳ではありません。
また、差押えられた不動産が売買できなくなる訳でもありません。
差押中と書かれた看板を設置されることもありません。
不動産を差押えられても、「登記事項証明書(登記簿謄本)を見ないと確認できない」のです。
人に例えると、戸籍のようなもので法務局で管理されています。
不動産の面積や所有者、不動産を担保にお金を借りていれば抵当権の有無も記載されます。
その他、差押えの有無も確認できます。
また、過去の経緯は消えずに、抹消という形で記録が残ります。
例えば、差押えを受けると解除されても記録は残ったままとなります。
※ 過去に差押えを受けたことが分かってしまう・・・
○ 過去に競売の申立てが3回、1回は取下げなので任意売却の可能性、2回は落札された登記事項証明書です、参考にどうぞ。
※ 人の戸籍は原則として第三者は取得できませんが、登記事項証明書は誰でも取得可能です。
競売の申立てによる差押えは?
競売の申立による差押えも同様です。
こちらについても、見た目では全く分かりません。
ただし、そのまま放置すれば「競売自体は進行」していきます。
やがて、裁判所のウェブサイトには、競売情報として公開されてしまいます。
そのような状況であれば、早急に競売回避をお勧めします。
競売時の差押えも見た目は分からないが競売は進行する
どのようなとき不動産は差押えられるのか?
不動産の差押えは、どのようなときに行われるのか?
基本的に何かの支払い義務が生じ、その支払いがなされていない場合です。
相手次第とはなりますが、支払いを求めることで「不動産が差押えられます」
原因は、主に下記になります。
〈不動産差押えの原因〉
- 住宅ローンのように不動産を担保にしたローンが未返済
- 裁判所の判決や和解書により金銭の支払いが決まっているとき
- 税金等の未納による役所の滞納処分の一段階目
1.住宅ローンのように不動産を担保にしたローンが未返済
住宅ローンや他の不動産担保ローンは、不動産に抵当権を設定しています。
いわゆる「借金の担保が不動産」です。
不動産が担保となっていて返済が滞ると、お金の貸し手(債権者)は競売の申立てを行います。
裁判所を通して、担保となっている不動産が強制的に処分(売却)されます。
これを、抵当権の実行と言います。
つまり、不動産が担保となっていて、借金が返済できないと抵当権の実行を進めるため、担保不動産競売開始決定通知が裁判所から届きます。
その時点で、既に不動産は差押えられているのが通例です。
競売で処分するための差押え
2.裁判所の判決や和解書により金銭の支払いが決まっているとき
何かの支払いができずに裁判を起こされ、その判決や裁判所で和解をしたときが該当します。
次に、公正証書(要件を備えたもの)により支払い等が決められていた場合となります。
どちらも相手側は、債務名義を取得しているケースに限られます。
不動産を担保にしていなくても差押えは可能!
元々、不動産が担保になっていなくても、その債務名義をもとに、競売の申立てを行い、競売開始決定の通知が裁判所から届きます。
こちらも前項1同様に、既に不動産は差押えられているのが通例です。
ただし、裁判等で時間を要する場合もありますので、事前に仮差押えを済ませて裁判を進めるのがほとんどです。
仮差押えの効果は、債務名義を取得するまでの時間、所有者による不動産の売却等、財産の処分を防ぎます。
債務名義取得までは仮差押え!
差押えされていても不動産の売却は可能なのでは?
すぐ上の項では、「所有者による不動産の売却等、財産の処分を防ぎます」と書きました。
しかし、更に上の「不動産の差押え前後で変わるのは?」では、「差押えられた不動産が売買できなくなる訳でもありません。」とも書いています。
一見すると矛盾する内容で、記事を読んでいる方にすれば迷ってしまいます。
実際は、どちらなのか?
結論から書くと、不動産を売買することは可能です。
しかし、差押えや仮差押え後に売買し、第三者が不動産の所有者になっても、競売は防げません。
差押えや仮差押え中の債権者は、そのまま不動産を競売で処分することが可能です。
従いまして、競売のリスクがある不動産を、お金を出して購入する者は通常いません。
その意味で「所有者による不動産の売却等、財産の処分を防ぎます」という表現となっております。
次の項で説明する「役所の差押え」についても同様です。
差押え後の不動産売買が成立するのは、「差押え解除の見込みがある場合のみ」となります。
このようなケースでの不動産売買は「任意売却で取引される」ことが多いでしょう。
差押え後の不動産は解除の見込みがあれば売買可能
3.税金等の未納による役所の滞納処分の一段階目
様々な支払いの中で、何よりも優先させるのが税金の納付です。
ところが住宅ローンの返済は続けても、固定資産税や国民健康保険料、その他の税金関係を後回しにしている方も多いと思います。
国民健康保険料ではなく、国民健康保険税として徴収する自治体もあります。
どちらも未納があれば差押えは可能です。
自宅や不動産を所有しながら、納付を怠り滞納を続けると、差押決定通知書なるものが届きます。
もともと役所からは、書面で納付を促すものが複数届いていたと思われます。
差押え前は何度も書面で納付を促す!
役所の差押えは、不動産を持っている人のみに対して、行われるわけではありません。
給料なども差押えの対象となりますが、本記事のテーマではないので割愛します。
しかしながら、不動産の所有者は差押えまでされると、納付率が上がるので積極的に行っているようにも見えます。
大抵の役所は1年位未納が続けば、不動産の差押えを行います。
役所は債務名義や抵当権に関係なく差押え可能
差押後に届く怪しいダイレクトメール
不動産が差押えられると一つだけ、いつもと変わった事が起きます。
それは、今まで見たことも無いような封書が送りつけられてきます。
しかも「大至急ご確認下さい」や「重要」「親展」などと記載されています。
何か大切な書類でも入っているような感じさえします。
送り主を見て、心当たりが無ければ、ほぼ任意売却業者か金融業者です。
DMの主は任意売却業者か金融業者
差押の登記が営業に利用されている
最初の項で「不動産が差押えられると登記事項証明書(登記簿謄本)に『差押』と登記(記録)されます」と書きましたが、登記の申請は法務局で受付けます。
詳細は省きますが、法務局の不動産登記受付帳という書類を基に「差押登記がされた不動産が特定」できます。
そして、不動産の登記事項証明書を取得(少々費用は掛かりますが・・・)します。
所有者が確認できるので、任意売却の案内や金融業者がダイレクトメールを送ることが可能になります。
差押登記がビジネスに利用できる
差押えは最悪の一歩手前
他人に売ることもできるので、ダイレクトメールさえ我慢すれば、何も支障が無いように感じます。
しかし、本当に注意しなければならないのは、「差押えは途中経過」に過ぎないことです。
差押えの先は民間(企業や個人)と役所では異なりますが、結果は「ほぼ同じ」です。
差押えは、競売、又は公売に向けての準備段階であることを強く認識してください。
〈差押えの先に起こること〉
- 民間の差押え → 競売の手前
- 役所の差押え → 公売の手前
差押えは「競売・公売」の準備中
民間は競売で動産や不動産を換価(現金に換える)しますが、役所の場合は公売で換価します。
役所が民間のオークションサイトに出品することもあります。
競売・公売に対して、どう対処するか
「抵当権の実行による差押」「債務名義による差押」どちらも不動産の強制競売の手前の段階といえます。
競売手続きが進行中ということになり、そのまま売っても差押の効力は消えません。
競売になれば、落札者に所有権が移ってしまいますので、差押えされたままの不動産を購入する人は皆無なので、売れないと既に説明しました。
この点については、公売も同様です。
つまり、差押えを解除するためには請求金額を支払う以外ありません。
そして「対処しなければ、競売又は公売で不動産は処分される」ことが明白となっています。
請求金額を用意できなければ、競売・公売を回避するのは現実的には、難しいでしょう。
そうなると、実質的に残された方法は不動産の売却です。
差押えられた不動産の売却は、借金の額や同時に役所の差押えも並行してしるケースも多く、専門知識を有する不動産業者でなければ難しい側面もあります。
どうしても売却したい場合は、任意売却となり差押解除の見通しを立てない限り困難でしょう。
差押えられたら競売回避を念頭にする
任意売却の障害となる役所の差押え
役所の差押は公売により回収するのが基本ですが、不動産の差押後は、あまり動きはなくなります。
理由として、不動産を差押えられる人は、経済的な事情により、納付すべき税金を納められずにいます。
そのため所有する不動産には、既に抵当権が設定されていて、公売にしても抵当権が優先されてしまうことがほとんどなので、配当が見込めないと分かっているからです。
問題となるのは税金が納められなければ、その他の支払いも厳しいので、住宅ローンや不動産担保ローンが払えなくなり、任意売却を試みた場合です。
役所の差押が解除できる見通しが無ければ、任意売却を断念せざるを得ないのです。
つまり、役所から差押えられると、任意売却できずに競売となる可能性がかなり高くなります。
任意売却を希望しても差押えで断念
住宅ローンの借換えも不可に
不動産の差押えは、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されます。
どこの債権者が原因で差押えたかも分かります。
役所であれば税金による差押と容易に想像できます。
そして、無事に税金を納めても登記事項証明書(登記簿謄本)には差押登記抹消と記載され、「差押」の履歴が残ります。
過去に経済的に厳しいときがあっても乗り越え、低金利の今、住宅ローンを借り換えたいと考えても、金融機関によっては過去の税金未納を理由に断られることがあります。
差押えの記録は解除後も消えないまま
税金による差押えのツケは意外に大きい
先にも触れましたが、不動産を差押えられると、地域によっては任意売却を勧めるダイレクトメールや金融業者から融資のダイレクトメールが届くことがあります。
しかし、役所の差押えの場合は、住宅ローンなどの抵当権が先行して設定されていると、それ以後は目立った動きがありません。
その結果、しばらくすると慣れてしまい、差押えされたままでも不安が無くなってしまいます。
ところが、経済的に立ち直り、次のステップを考えた時、所有する不動産に差押の履歴が確認されると、相手によっては社会的信用を落としかねない事実として見られるかもしれません。
登録事項証明書(登記簿謄本)は、誰でも自由に取得できます。
可能であれば、マイナスとなる履歴は残さないに越したことはありません。
差押えの履歴はデメリットしかない