代位弁済について、詳しく調べれば『期限の利益の喪失』という言葉もセットで目にしたかと思います。
住宅ローンを例にとると、多くの民間金融機関では3回滞納してしまうと、期限の利益を喪失してしまいます。
そして本来ならば、そこで保証会社から金融機関へ代位弁済されても、おかしくありません。
しかし、実際は6回滞納してから代位弁済されるケースがほとんどで、その後の請求は保証会社からとなります。
では、6回滞納すると、どのタイミングで代位弁済されるのか最近の事例で説明します。
<代位弁済通知>
当社は貴殿が○○銀行△△支店に対し、平成○○年○○月○○日付金銭貸借消費契約証書に基づき負担する借入金債務につき、貴殿の委託により保証しておりましたが、貴殿は同行に対して割賦償還分の約定弁済期日である令和2年7月6日以降の割賦金の弁済をされないため、令和2年12月30日期限の利益を喪失し債務残額を弁済すべき義務が生じました。その後、貴殿からの弁済がないため当社は○○銀行△△支店より代位弁済請求を受け、下記金額を令和3年1月6日代位弁済致しました。
ついては、代位弁済した結果当社が取得した下記求償債権元本(代位弁済金額)および同元本に対する令和3年1月7日以降完済に至るまでの間の年14.0%の割合による遅延損害金を直ちにお支払い下されたく請求致します。
なお、ご返済がないときは法的手段等を実行致しますので念のため申し添えます。※ 某都市銀行の代位弁済通知の文字を起こして記載しています。
代位弁済金額 〇〇,〇〇〇,〇〇〇円
元 本 〇〇,〇〇〇,〇〇〇円
未収利息 〇〇〇,〇〇〇円
損害金 〇〇,〇〇〇円
代位弁済通知のポイント
状況としては当事務所への相談者が、毎月6日が返済日の住宅ローンについて、返済が厳しくなり任意売却を決断し返済をストップしました。
それまでは、滞納も無く毎月返済を継続しています。
銀行へは、7月6日から返済をストップする旨を事前に連絡済みです。
保証会社からの代位弁済通知では、おおむね以下の内容が確認できます。
<代位弁済の概要>
〇 滞納期間:令和2年7月6日~12月6日
〇 滞納回数:合計6回(具体的には記載していないが)
〇 期限の利益の喪失:令和2年12月30日
〇 代位弁済:令和3年1月6日
〇 請求金額:代位弁済金額と令和3年1月7日からの遅延損害金(年14%)
7月6日に1回目の滞納が始まり、12月6日で計6回目の滞納となりました。
同月30日に期限の利益を喪失し、銀行が保証会社へ代位弁済の請求を行う。
その請求に応じて、翌月の1月6日に保証会社から銀行へ代位弁済しています。
保証会社から借り手に対しては、代位弁済した金額を元本とし、その元本に令和3年1月7日から完済するまでの遅延損害金(年14%)をプラスした金額を請求してます。
もちろん、返済がなされない場合には、法的手段等も実行する旨の文言も記載されています。
このケースでは滞納が始まり、ちょうど6か月後に代位弁済されております。
当然ながら、銀行も保証会社へ代位弁済の請求を行うため、もう、この顧客に関しては、今後の返済は無いであろうと想定し、事前に準備していたと思われます。
返済状況は人それぞれ異なるため、返済できた月と返済できなかった月を繰り返し、滞納回数が積みあがってから期限の利益を喪失し、代位弁済に至るケースもあります。
この場合は、単純に6か月後とはなりませんので、保証会社各社の対応を含め、あくまでもケースバイケースとご理解下さい。
代位弁済後は一括返済が基本
もともと任意売却を決めていれば、代位弁済後にやっと任意売却へ進めることになります。
しかし、望んでいない状況で代位弁済されてしまうと、もう保証会社の段階では分割の返済には応じてもらえません。
従いまして、残された選択肢は以下の3つになります。
<代位弁済後の選択肢>
1.一括返済に応じる
2.不動産を売却
3.競売
1.一括返済に応じる
代位弁済されると、保証会社は代位弁済した金額を元本とし、その元本に遅延損害金を含んだ金額を請求してきます。
保証会社の請求金額を払えば、借金が精算されるため問題は解決できます。
しかし、返済できないために、保証会社が代位弁済しているので第三者の協力でもない限り、難しいのが現実です。
2.不動産を売却
前項1の一括返済ができなければ、不動産を維持していくことは、ほぼ不可能となります。
そのため、取れる手段は担保となっている不動産を売却することです。
住宅ローンが代位弁済された場合、担保の不動産は自宅となりますので、簡単には決断はできないことは容易に想像できます。
しかし、保証会社も待ってはくれませんので、売却の意思表示が無ければ次のスッテプの法的手段へと進んでしまいます。
任意売却を選択される場合は、ここからがスタートとなります。
3.競売
前項2の不動産の売却が進まないのであれば、保証会社の最終手段は裁判所へ、不動産競売の申立てを行います。
いくら当人が望んでいなくても、強制的に競売となり落札されれば不動産は人手に渡ってしまいます。
代位弁済後は速やかに売却の決断を!
保証会社から代位弁済の通知が届いたら、あまり悩んでいる時間は正直ありません。
むしろ、望まない競売を回避するためには、自らの意志で不動産を売却する以外方法はありません。
また、代位弁済後速やかに任意売却を希望していても、任意売却と並行して競売の申立てを行うケースもあり、状況により保証会社の対応も様々となります。
代位弁済後のレアケース
代位弁済後、保証会社は分割の返済には応じないと、書いてきました。
しかし、当事務所へ任意売却を依頼されたお客様の中には、代位弁済された後、1年以上も保証会社へ分割の返済を継続している方もいらっしゃいました。
そのため、必ずしも代位弁済後は分割の返済は不可とまでは、断言できませんが、レアケースと受け止めて頂ければと思います。
住宅ローンや他の不動産担保ローンの返済が厳しい状況であれば、早めに専門家へ相談することをお勧めします。