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任意売却の原因は建築トラブル6年経過も未完成で入居を断念
通常では考えられないような案件が、当事務所には舞込むことがあります。
注文住宅の建築で、信じられないようなトラブルに巻き込まれてしまった相談者(以下、Nさん)のケースを紹介します。
Nさんは、土地を購入して注文住宅の建築途中で、当事務所へ相談されました。
Nさんの悩みは、新居の建築が途中でストップ、更に工事を請け負った工務店が夜逃げしていたのです。
少し想像しただけでも、相当深刻な問題と察しがつきます。
結論から先に書くと「建築トラブルで6年以上経過しても未完成」そして「入居できずに任意売却」で手放しました。
任意売却に精通するFP&不動産コンサルの筆者が「困難な任意売却TOP3」に入る程の案件です。
なかなか同様のケースは無いと思われますが、悩んでいる方に「こんな状況でも任意売却が成立する」ことを伝えたくて記事にしました。
困難な状況に直面し、任意売却を諦めかけている方の目に留まり、少しでも励みになれば幸いです。
1年経っても完成しない家
そろそろマイホームが欲しいとを考えたとき、選択肢は色々あります。
建売住宅には無い自分好みの家を建てる場合でも、ハウスメーカーや地元の工務店、紹介された工務店など、建築してくれる業者は様々です。
Nさんが色々迷って最終的に選んだのが、仕事仲間の紹介により自営業で工務店を営む大工さんでした。
不動産の取引も熟知していたそうで、土地の購入から住宅ローンの借入れまでスムーズに進んでいました。
土地の購入までは順調に進んでいた!
ところが、いざ建築が始まると何故か工事の進捗が遅く、工程表の通りには全く進まなかったそうです・・・。
そして、あっという間に1年が経過してしまいました。
1年経過しても完成しないのは「大豪邸だから?」と思う方もいるでしょう。
その反対で、完全な「狭小住宅」に該当します。
なぜなら、土地は平坦で大きな通りに面しているのに、面積が狭いため車庫スペースも取れないほどです。
建築に1年以上かかるのは、異常な事態です。
狭小住宅が1年経っても未完成
建物が完成している風に仕上げ建築代金を受領
不動産業者ならピンとくると思いますが「住宅ローンはどうしたのか?」と疑問になります。
Nさんは銀行の住宅ローンで、土地の購入代金と建物の建築代金を合わせて借りています。
住宅ローンを利用して土地を買って家を建てる場合、最初に土地の購入代金を受取ります。
次は建物の完成後に建築代金となり、2回に分けて金融機関から受取る仕組みになっています。
その建物が未完成では、建築代金が金融機関から受取れません。
建物を張りぼて仕様で偽装
建築代金を早く受取りたい工務店の取った方法には驚きます。
まず、外装を仕上げてしまい完成したことに。
そして「法務局へ建物の登記」を済ませてしまいました。
そして、さっさと建築代金を受領後、残りの工事を進めていたのです。
Nさんは当然素人なので意味も分からず、言われるままに行動し、最終的な建物の完成を願っていたようです。
ここまで1年以上、通常では考えられません。
しかし、これで終わったわけではありません。
まだ内装工事が残っています。
ところがNさんにとって、更に恐ろしいことが始まります。
なんと! 建築代金を受取ってから、しばらくすると工務店と連絡が取れなくなってしまったのです。
工務店が夜逃げ!
頼みの綱はやはり人
もはや建物の完成は絶望的です・・・。
ところが、音信不通となった工務店の仕事を手伝っていた大工さんが、あまりの惨状に見かねてしまい。
残りの内装の仕事を引受けてくれました。
捨てる神あれば、拾う神ありです。
ただし、他の現場もあるので、仕事が空いている時間に内装工事を進めるのが条件だったそうです。
完成の目途は立ったが・・・
6年経過も未完成
実は、当事務所に相談があったのは建築開始から6年以上経ってからです。
それなのに、まだ建物は完成していませんでした。
ただし、もう一息で完成の状態であったため売却の準備を進めまます。
建物完成までもう一息
完成と共に未入居で売却
建築トラブルを乗り越え、何とかマイホームは完成しました。
驚くことに6年以上の歳月をかけて完成させたのに、一度も住むことも無く売却することになりました。
なぜ、売却するの?
いざ売却となると、疑問もでます。
せっかく完成したのに「なぜ住まないで売却なのか?」
その理由は建物完成まで6年以上、その間にお客様の家族が増え、念願のマイホームに住めなくなってしまったのです。
それは、致し方ない事です。
完成しているのであれば、売却するのが最善策となります。
しかも、なんとNさんは居住中の賃貸マンションの家賃とトラブルに見舞われた住宅ローンの2重払いを継続してきているのです。
Nさんをこの返済苦から、解放してあげるのが急務です。
家賃と住宅ローンの2重払いが6年以上!
中古住宅として販売したいのだが・・・
完成したばかりではありますが、法務局の登記事項には6年前の完成年月日が記録されております。
そのため、未入居ではありますが築6年の中古住宅として販売開始です。
ところが、またまた、不動産業者ならピンとくると思いますが「検査済証はあるのか?」
非常に気になります。
答えは、もちろん「ありません」
詳しくは書きませんが建物が完成し、完了検査が済むと役所から検査済証が発行してもらえます。
最近の建物で検査済証が無いと「ナゼ?」 となってしまいます。
特に、売却するので次に購入する方が住宅ローンを利用するとき金融機関に確認されます。
今回のケースでは、大変イレギュラーとなりますので、尚更必要です。
中古住宅の売買で検査済証は重要
検査済証の問題
上の項で検査済証について「ありません」と書きました。
実際は「まだ完了検査を受けていません」が正しい答えでした。
では、役所で建築確認の許可を受けてから6年以上も経過し、完了検査の申込みが可能なのか?
結論としては、何ともラッキーなことに完了検査を申込むことができました。
そして無事に「検査済証の発行」まで漕ぎつけることができたのです。
なぜ、検査済証の発行が可能だったか?
その要因は、幸か不幸か夜逃げした工務店が水道業者に工事を依頼したのですが、その代金が払われていませんでした。
宅地内の水道メーターから先(建物内部の水道管と結んでいない状態)が未接続だったのです。
役所としては、ライフラインが未接続のため、建物も未完成と判断していたようです。
〈役所の見解〉
ライフライン未接続=建物未完成
実際、固定資産税の課税も土地のみでした。
水道業者とも話をつけ無事に水道も接続、ようやく完了検査を受けることができたのです。
検査済証有で買手の住宅ローンは問題無し!
ようやく売却スタートとなるが
Nさんは、かれこれ6年以上も家賃と住宅ローンの2重払いを続けていると上に書きました。
販売開始当初は、住宅ローンの残債+諸経費を足した金額を売却価格としていました。
しかし、相場からすると明らかに高過ぎるため、やはり買手は現れません。
そんな中、何とかやり繰りしながら頑張ってきたNさんでしたが、やはり返済には相当参っておりました。
これ以上、無理して住宅ローンの返済を継続しても生活を犠牲にするだけです。
Nさんに対して、任意売却を勧めました。
もちろん、二つ返事で任意売却を受け入れた訳ではありません。
それでも、現在の状況からすれば、最善の方法と理解してもらえました。
任意売却で返済苦から解放
住宅ローンの返済をストップして任意売却へ臨む
Nさんは、住宅ローンの返済は継続中ですが任意売却へ進むならば、自ら返済をストップしなければなりません。
当事務所の手ほどきで、口座が凍結される前に出金や金融機関への連絡など任意売却の準備を進めます。
そして、実際に返済がストップして予定通りに銀行からは「期限の利益の喪失」を告げる通知が届きます。
今回の銀行は、保証会社もないプロパー融資だったために、代位弁済もありません。
金融機関と交渉し、相場に合わせた適正価格で、早々に任意売却がスタートできました。
金融機関も協力的に任意売却スタート
保証会社が無い場合の任意売却の注意点
保証会社が無い場合の任意売却は、代位弁済も無いため早く任意売却をスタートさせたいときは、好都合です。
しかし、その反面注意しなければならないことがあります。
任意売却に与えられれた時間が、少なくなる可能性が高いのです。
理由としては、保証会社が無ければ不良債権の処理を迅速に行う場合があり、早い段階で競売に進んでしまうことも想定しなければなりません。
今回の任意売却に与えられた時間は「3か月」となりました。
任意売却に許された時間が少ないことも
狭小住宅の買手が見つかる
築6年ですが未入居なので、大変きれいな状態を保っていたこともあり、内外装ともに申し分ありません。
しかし、初めにお伝えした通り本当に狭小住宅のため、住宅ローン控除の対象面積にも満たないのです。
不動産業者ならば、売却に苦戦するのが目に見えています。
それでも、任意売却のため販売価格に欲を出さずに適正価格だったことが幸いして、当事務所にて買主様を見つかけることができました。
また、物件の経緯や事情もしっかり理解していただき無事、取引を終えることができました。
任意売却に至った例としては、かなり特殊な事情でした。
その一方で、住宅ローンを滞納する前に、ご相談いただけたので何とか競売は回避できました。
実際のところ、任意売却をスタートして買主様に引渡すまで8ケ月掛っています。
「任意売却に与えられた3か月」は大幅に超えてしまいました。
原因としては、驚くような問題が金融機関との間に発生していたのです。
ただし、今回は「建築トラブルが原因の任意売却」ということで、そのあたりは別の機会に記事にします。
滞納前の相談だから競売回避に成功できた