不動産を担保にした借金といえば、すぐに思いつくのは住宅ローンではないでしょうか?
その他に事業者であれば、不動産を担保に借入れしているのは珍しいことではありません。
いっぽうで、無担保(以下、不動産に抵当権の設定をしてないことの意味とします)の借金もあります。
もしも「無担保の借金が払えなくなった場合、不動産を所有していると競売に掛けられることはあるのでしょうか?」
この記事は、FP&不動産コンサルの有資格者が「無担保の借金を滞納して不動産は競売になるの!?」という疑問について解説します。
無担保の借金を滞納したら不動産も競売の可能性がある
「無担保の借金を滞納したら、債務者名義の不動産があれば競売に掛けて回収することができるのか?」
結論から書きますと「無担保(不動産に抵当権を設定していない)でも、借金があれば競売の申立ては可能」
ただし、金融機関としては有担保の場合とは異なり、一度、裁判所で借金自体を認めてもらってからの手続きとなります。
最近では、流通系のクレジット会社が自宅を差押えて競売にしたケースを筆者は目にしました。
無担保の借金でも不動産の競売は可!
裁判所で借金を認めてもらうとは?
ものすごく簡単な説明ですが、本当に借金が存在しているのかを裁判所が判断し認めてもらうこと。
このことは債務名義の取得と呼ばれ、その債務名義を以て競売の申立てが可能となります。
債務名義についての記事を見る
その他、契約書(借用書)を公正証書(強制執行認諾文言付き)で作成してある場合も、債務名義の取得と同等の効力があります。
本サイトでは、公正証書(強制執行認諾文言付き)も含めて債務名義として解説します。
債務名義を基に強制競売
不動産の競売は国家権力を用いた強制執行となり、その強制執行には債務名義が必要になります。
それ故、債務名義を基に強制的に競売を行うので不動産強制競売といいます。
それに対して有担保(抵当権の設定あり)不動産を競売にする場合は担保不動産競売といいます。
- 不動産強制競売:債務名義
- 担保不動産競売:抵当権
※ 担保不動産競売の申立てには、債務名義の取得は必要ありません。
従いまして、無担保の借入れでも、金融機関が債務名義を取得すれば、不動産を競売に掛け借金を回収する可能性は十分にあります。
無担保だから競売とは無関係では無い!
無担保の借入れを滞納すると仮差押えから始まる
ここまでは無担保の借金を滞納し、債務者が不動産を所有していたら金融機関は強制執行で競売も可能であると解説してきました。
ただし、無担保の借金は競売を申立てる際、債務名義が必要とも合わせて書きました。
それでは、実際に金融機関が債務名義の取得に動けば、どうなるでしょうか?
不動産を所有する債務者からすれば、裁判所が関わるため、すぐ分かります。
もしかして不動産が競売になる?
競売を危惧した債務者が、第三者へ売却してしまう可能性もあります。
このような制度では、まったく意味がありません。
そのため、この債務名義の取得に関して実務上、まず「不動産の仮差押え」を行います。
不動産を自由に売買できない状態にしてから、債務名義を取得するのが普通の流れです。
金融機関が債務名義の取得に動けば、そのとき不動産は仮差押えの登記がなされた後とご理解ください。
まずは仮差押えで不動産の売買をストップ!
仮差押決定の通知は不動産競売のシグナル
無担保の借金を滞納後「裁判所から仮差押決定の通知が届いたら?」
そのときは既に、不動産の登記記録には仮差押えの登記がなされております。
このことからも、金融機関は本気で回収しようとしている姿勢は感じられ、仮差押えの時点で不動産の競売は予想できます。
不動産の仮差押えは競売の可能性あり
無担保の借金が原因で、不動産の強制競売を実現させるためには、債務名義が必要なのは既にご理解いただけた思います。
それでは、金融機関などの債権者が債務名義の取得にかかる時間は、どれくらいでしょうか?
裁判所が関わり、結果が出るまで最短でも2~3か月は必要です。
その間に不動産等を売却されてしまえば、強制執行が不可能となり債務名義を取得している過程で、回収不能となってしまいます。
正当な債権者に害を与えないために「仮差押え」という制度で対抗します。
仮差押えは債務名義取得の準備期間
金融機関からの通知は目を通す
金融機関から不動産の競売に関する通知が届いた場合、内容をきちんと理解し、本当に競売を開始する旨の通知であれば、即対処する必要があります。
また、裁判所からの競売開始決定通知であれば、本当に競売が開始されたことは間違いないでしょう。
具体的には、競売の申立てが行われ、その競売をストップするには金融機関の請求金額を返済する。
しかし、現実には返済ができないため、不動産の競売にまで進展していることでしょう。
ここまでくると、不動産を手放さない選択肢はほぼありませんので、それでも競売回避を希望されるなら、任意売却を検討することになります。


請求金額を返済が不可能ならば不動産は残せない!
無担保の借金の特徴
金融機関はお金を貸すとき、なぜ不動産を担保に「する・しない」の違いがあるのでしょうか?
無担保と有担保になりますが、その違いは、借入れできる金額が大きく関わってきます。
無担保の借入れは数十万円~100万円程度で、それ以上は債務者の信用度合いによって、借入れ可能な金額に差がでます。
また、借入額が大きくなるにつれて、連帯保証人を求められたりと無担保でも、それなりに条件は厳しくなります。
一方で有担保(不動産を担保)の借入れは、数百万円から数千万円、あるいは数億円ということもあるでしょう。
その他、不動産を担保にする際は、抵当権設定の費用など諸費用も必要となります。
諸費用も債務者が負担するため、例えば数十万円ほどの借入に対して不動産の担保を要求すれば、他社で借りてしまう可能性もあります。
数十万円の借入はほぼ無担保
債務名義の取得は不動産の強制競売だけではない!
本記事は、無担保の借入れでも競売になる可能性について書いていますが、債務名義を取得後はサラリーマン等のお勤め人の場合、給与の差押えも可能となります。
また、事業主の場合は売掛債権の差押えも可能となり、場合によっては取引先との信用問題にも関わるので、深刻な事態と考えて対処しなければなりません。
無担保だから返済にルーズとなると、債権者が本気で回収に動けば手痛いしっぺ返しにあうかもしれません。
債務名義の取得で強制執行の準備は整う
将来の相続も見据える
少し先の長い話かもしれませんが、将来的に相続する財産が見込める方は注意が必要です。
以下の方は、特に注意してください。
〈注意する方〉
- 消費者金融やクレジットカードなど、借金を滞納している方
- 任意売却後の残債を抱えている方
- その他、何かしらの支払いが必要な方
共通するのは、借金の返済や支払いの義務が発生していることです。
現時点で債権者が差押える財産が無くても、債務名義を取得していたとします。
また、ゆくゆくは債務名義を取得の可能性もあります。
その後、幸か不幸か相続により不動産を手に入れたとしたら、どうなるでしょうか?
答えは、簡単です。
債務者名義があれば、不動産の強制競売が可能となってしまいます。
債務者名義の不動産は競売可能となる
無担保でも借金の放置はおススメできない
無担保の借金も放置しておけば、その後の対応は債権者次第ですが、厳しい請求が続く可能性もあります。
返済できないからと向き合わなければ、状況は変わりません。
債務整理や自己破産も含めて、弁護士に相談するのが賢明な判断です。
また、無担保の借金から、所有する不動産が競売のリスクにさらされている場合、状況の確認が必要ですので専門家へ相談し対応を検討する必要があります。
また、仮差押決定の通知が届いていれば、不動産の競売まで残された時間は限られてきますので、早急な対処が必要なのは言うまでもありません。
競売回避を望むならば仮差押えの段階で即対処