任意売却物件の売手と買手、いざ売買契約を結ぶとなると、両者共に疑問点は多くあると思います。
任意売却は住宅ローンなどの借金が売買価格を上回ることが多く、いわばお金の貸し手(以下、債権者)が、借金以下だけど売却を認めることで取引が成立します。
つまり、債権者は任意売却で貸したお金を満額回収することはできません。
そうまでして、債権者が認めてくれた任意売却でも、買手のローンが売買契約後の本審査をパスできず、不調に終わった場合、売買契約はどうなってしまうのでしょうか!?
このような場合の取決めがなければ、売手・買手の両者共に不安がいっぱいの任意売却となってしまいます。
任意売却の契約には特有の条件が2つある
不動産の売買契約が任意売却の場合(買手が一般消費者のケース)、以下3つの条件が付きます。
1 ローン条項
ローン特約とも呼ばれていますが、不動産の売買では買手が金融機関から、お金を借りて購入するケースがほとんどです。
そのため、買手のローンがダメだった場合、現金を用意できない限り購入は不可能なので、契約は白紙解除となります。
このローン条項に関しては、任意売却に限らず買手が一般消費者でローンを利用するケースでは、必ず付されている条件です。
2 手付金の預かり
続いて、前項の任意売却物件の購入を希望して、契約締結後に住宅ローンがダメだったら、手付金はどうなるのか?
買手としては非常に気になりますが、もちろん手付金は返還されます。
その点も、ローン条項の中に詳しく盛り込まれております。
しかし、任意売却は売手の資力が乏しいため、手付金を受取り使ってしまうと、買手のローンが通らなかった場合、返還が困難となることが考えられます。
そのため、任意売却物件の契約時に手付金を授受するときは、当事務所の様な任意売却業者(仲介する不動産業者)が、売手に代わり手付金を預かることになります。
預かった任意売却業者の使込みでもない限り、ローンがダメで買手に手付金が返還されないことは通常ありません。
3 債権者等の利害関係人の同意
冒頭の説明と重複しますが、債権者は担保である不動産の売買代金だけでは、全額回収できないため、損を覚悟で任意売却に応じます。
従いまして、その債権者等、不動産売買の障害となる利害関係人から同意が得られない場合、契約は無かったものとされます。
この『債権者等の利害関係人の同意』と『手付金の預かり』が任意売却特有の契約条件になります。
同意は契約前に得るものだが・・・
ここまでを見ると、なんだ債権者の同意を得ないまま、任意売却を進めたの!? と思いがちですが、そういう訳ではありません。
不動産を担保に2者以上から、お金を借りているケース、その他に税金の滞納による役所の差押がある場合などを主に想定しています。
任意売却では不動産を担保に最初に貸した者(1番抵当)が多くの金額を受取れ、それ以下は、わずかな金額しか受け取れません。
そのため、1番抵当以外も最初は任意売却に応じていながら、突然手のひらを返し、もっと多くの金額を受取れないと、任意売却に応じないとする後順位の債権者も現実には存在します。
万が一に備え、そういった売買の障害となる利害関係人の同意が得られなかった場合、契約は無かったものとされます。
※ 買手が一般消費者のケースとしておりますが、買手が不動産業者等のプロの場合、通常1のローン条項はありませんが、2の手付金の預かり、3の債権者等の利害関係人の同意は必須です。
任意売却の契約は買手の保護は最も重要
競売と隣り合わせの任意売却物件の売手は、買手のローンがパスしなければ契約は白紙解除、手付金は返還、おまけに貴重な時間も失います。
売手にとっては、不利な契約内容にしか思えません。
しかし、任意売却物件でも買手がある程度、安心して購入に踏み切れる条件でもあります。
その反面、債権者の同意が得られなければ、契約は無効にもなりますので、売手にとっても買手に迷惑を掛けずに済みます。
ある意味、売手も買手も弱い部分をカバーできる契約となっております。
厳しい条件でも成し遂げるのが任意売却専門業者
任意売却には特有の条件があるのは、前述の通りです。
このページでは、分かりやすく伝えるため簡単に説明していますが、もう少し細かい内容にも踏み込んで契約条件を決めていきます。
売手・買手双方の事情を考慮し調整しながら契約を成立させ、無事に取引を終えるのが任意売却業者の役割でもあります。
実際には上記3つの他に『契約不適合責任の免責(旧瑕疵担保責任の免責)』等、取引が終了した後のトラブルを未然に防ぐ内容の取決めもあります。
今回は買手のローンがダメになったら、任意売却の契約はどうなるか?にプラスして債権者等の利害関係人の同意についても伝えたくて、書いた記事です。
契約不適合責任の免責について、ちょうど今月は民法の改正もありましたので、また別の機会とします。
遥か昔の任意売却
余談ですが、筆者が任意売却に取組み始めた2000年代初頭の話を紹介します。
任意売却物件と承知で購入を希望した、プロであるはずの不動産業者が『債権者の同意が条件となっているけど・・・』、契約の際に難色を示し、条件を外せないかと相談されたことです。
少し焦りましたが当然無理なので、その場で理由を一から説明し、事なきを得ました。
今でこそ、任意売却に多くの業者が取り組み、債権者の同意を条件にするのは周知の事実です。
当時はまだ、任意売却の認知度も低かったのか、この経験は懐かしい思い出となりました。
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