遅延損害金とは|利率や計算方法、免除の方法などを解説【住宅ローン】

住宅ローンを滞納すると、気になるのが遅延損害金の存在です。

遅延損害金とは、約束の期日までに住宅ローンの返済が行われなかった時に発生するペナルティのことです。住宅ローンの返済が困難な状態で、さらに遅延損害金も別に支払わなければいけないとなれば精神的負担も大きくなることでしょう。

「遅延損害金はどのように計算する?」
「免除できる方法はあるのか」

このように疑問をお持ちの方のため、この記事では住宅ローンにおける遅延損害金についてまとめました。滞納でお困りの方はぜひお読みください。

目次

遅延損害金とは

支払い期日を守らなかった時、一定の金額が遅延損害金として請求されます。

遅延損害金は延滞による損害に対して支払われるお金のことで、毎月の返済額または元金全額に対して一定の利率で計算されます。

遅延損害金は1日の延滞でも発生する

遅延損害金は、返済日が遅れた日から計算されます。

例えば毎月の返済日が27日だとして、返済できなければ28日から遅延損害金が発生することになります。

先ほど遅延損害金は「毎月の返済額または元金全額に対して一定の利率で計算される」とお伝えしましたが、どちらで計算されるかは期限の利益を喪失しているかどうかで異なります。

期限の利益とは

返済日が毎月27日だとして、26日までは返済しなくてもいいという債務者側の利益(メリット)のこと。期限の利益があることによって、債権者が返済期日前に返済を求めることは原則ない。

期限の利益は滞りなく返済している間のみ有効であり、滞納するとその利益を失うこととなります。

住宅ローンの滞納で期限の利益を喪失するのは、滞納後3〜6ヶ月が一般的です。(住宅金融支援機構※1やプロパー融資※2などの保証会社の利用がない場合の目安)

期限の利益喪失前であれば、毎月の返済額に対して損害金利がかけられます。

保証会社の利用があれば期限の利益喪失後に代位弁済※3されるので、保証会社から元金すべてに対して遅延損害金が発生します。

※1)住宅金融支援機構は6回滞納すると期限の利益を喪失する
※2)銀行や信金等が保証会社や保証協会を利用せずに直接貸し付けている融資のこと
※3)保証会社が借主に代わって借金を返済すること

遅延損害金・延滞金・利息の違い

遅延損害金と混同されやすいものに「延滞金」と「利息」があります。

遅延損害金期日までに返済できなかった場合に課せられるペナルティで、私債権(当事者間の契約)に対して対象となる
延滞金期日までに返済できなかった場合に課せられるペナルティで、行政の処分(税金の滞納など)に対して計算される
利息元金とその存続期間に比例して発生する対価のこと

遅延損害金と延滞金は、どちらも滞納した時に発生するお金という点は共通しています。民間の金融機関との契約である住宅ローンは遅延損害金、税金の滞納などに対して発生するのが延滞金という理解です。

これに対し利息は、ペナルティではなく借りたお金に対して発生するお金のことです。意味は利子と同じで、どちらで表現するかは金融機関によって異なります。

遅延損害金と利息はそれぞれ別のものであり、同時に発生することはありません。

遅延損害金の計算方法

遅延損害金は次のように計算します。

遅延損害金の計算方法

遅延損害金=借入額×年率÷365日×滞納日数

※うるう年は366日で計算
※一般的な住宅ローンの年率は14〜14.6%

具体的な計算方法も見ていきましょう。

遅延損害金の計算方法①期限の利益喪失前

元金:2,000万円
年率:14.5%
月々の返済額:100,000円
30日間滞納した場合

100,000円×14.5%÷365日×30日=1,191円

期限の利益喪失前は、毎月の返済額のうち元金に対し付して遅延損害金が請求されます。

遅延損害金の計算方法②期限の利益喪失後

元金:2,000万円
年率:14.5%
月々の返済額:100,000円
30日間滞納した場合

20,000,000円×14.5%÷365日×30日=244,382円

期限の利益喪失後は元金すべてに対して遅延損害金が発生するため、上記の例では遅延損害金だけで1ヶ月に20万以上もかかる計算です。仮に約24万円の遅延損害金を払ったとしても、元金は1円も減らないのです。

民法改正で遅延損害金の法定利率が引き下げに?

2020年4月の民法改正によって、遅延損害金の年率が年3%へと引き下げられました。

これまで住宅ローンの年率は14〜14.6%で定められるのが一般的でしたので、引き下げの改正に安堵された方も多いことと思います。

では、遅延損害金の年率について改正された条文を見ていきましょう。

(法定利率)
第四百四条 利益を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年三パーセントとする。

民法第403条

ここで注目すべきは「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がない時」という文言です。

もし契約書に年率についての記述がなければ、法律の通り利率は3%で計算されます。しかし債権者が利率14.6%として、借主もそれに同意すれば「特段の意思表示」となり、14.6%の利率が適用されることになるのです。

遅延損害金の発生による3つのデメリット

遅延損害金が発生すると、返済額が増えるだけでなく以下のデメリットも生じます。

  1. ブラックリストに掲載される
  2. 裁判を起こされる
  3. 不動産が競売にかけられる

ここからはそれぞれの内容を詳しく解説します。

1.ブラックリストに掲載される

遅延損害金が発生する、すなわち借金を滞納している状態では、いつブラックリストに登録されてもおかしくありません。

信用情報を取り扱う機関は全部で3つありますが、滞納した情報は全機関で共有されます。もし住宅ローン滞納でブラックリスト入りすれば、他社であっても借入ができなくなります。(クレジットカード申込も含む)

また、すでに所有しているクレジットカードもじきに利用ができなくなるでしょう。事故情報は5〜7年で自動的に削除されますが、その間は生活面で不便を感じることがあるかもしれません。

ブラックリスト入りするのは滞納を3〜6回続けた頃が一般的です。

2.裁判を起こされる

借金の滞納を続けていると、債権者から裁判を起こされる可能性があります。

債権者は滞納を確認すると、督促状を送り返済を要求します。その時点で返済に応じる(返済が困難であれば支払い相談をする)などの対応をすれば、即裁判という話にはなりません。

しかし、度重なる督促を無視すれば裁判所から訴状が届く可能性があるでしょう。

3.不動産が競売にかけられる

遅延損害金をはじめ借金の滞納が続くと、最終的に家は競売にかけられます。

競売は強制力のある措置なので、一度手続きがはじまるとそれ以降は返済計画の相談には応じてもらえません。落札者が落札代金を支払えば退去を命じられ、同じ家に住むこともできなくなります。

また、競売は家の所在地や写真などの情報がインターネットで公開されます。自分や家族のプライバシーを守ることは難しく、精神的ストレスも非常に大きなものとなるでしょう。

5年以上放置した遅延損害金に支払い義務はある?

5年以上借金を滞納し、遅延損害金も払わずにいると、借金と遅延損害金どちらも消滅時効が成立する可能性があります。

消滅時効とは

債権者が債務者に対して督促も請求もしない場合、一定期間をもって債権者の権利を消滅させられる制度のこと。

時効成立までの期間は5〜10年で、債権者によって異なります。

時効と聞いて「支払い義務がなくなるまで滞納を続けよう」と考える方がいますが、5〜10年経ったからといって自動的に時効が成立するわけではありません。(時効成立には「時効の援助」という手続きが必要)

実際のところ、住宅ローン滞納で時効が成立するケースはほとんどありません。

遅延損害金が払えない…3つの対処法

遅延損害金の支払いが難しい場合の対処法には以下2つの方法があります。

  1. 金融機関に相談する
  2. 債務整理を検討する
  3. 任意売却をする

ここからはそれぞれの方法を詳しく解説します。

1.金融機関に相談する

借金の返済が困難な時は、まず借入先の金融機関に相談しましょう。

事前に連絡すると、返済日の延長や返済の猶予などに対応してもらえる可能性があります。

債権者としても無断で滞納されることは避けたいと考えるため、事前に返済スケジュールの調整が可能かどうか問い合わせてみることをおすすめします。

2.債務整理を検討する

遅延損害金をはじめ、借金の返済が困難な場合は債務整理を検討するのも一つの方法です。

債務整理には月々の返済額を減らす任意売却や個人再生、借金を全額免除できる自己破産などの方法があります。

どの手続きを行うかは、弁護士や司法書士に相談しながら決定するのが一般的です。

3.任意売却をする

住宅ローン滞納によって遅延損害金が発生している場合、ローン残債よりも低い金額で不動産を売却する任意売却という方法もあります。

任意売却は自分の意志で家を手放すもので、競売のように強制的に家を奪われることはありません。売却後の残債は返済し続ける必要がありますが、返済額が減るため借金による精神的ストレスを軽減できるでしょう。

任意売却をするには、弁護士や司法書士、任意売却を専門とする不動産業者への相談が必要です。

遅延損害金を含む借金のお悩みは早めの対処が肝心

遅延損害金は返済日の翌日から発生します。

期限の利益喪失後の遅延損害金は莫大な金額となるため、早めの行動で借金のお悩み解決を目指していきたいものです。

借金滞納でお困り&任意売却を検討中の方は、ぜひ一度当事務所までご相談ください。一人ひとりの状況に合った方法をご提案いたします。

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