役所の差押えが障害に!税金や健康保険料の未納で競売も

 景気の回復を実感している人が、実際は少ないような報道を見かけます。

その反面で財務省の発表によると令和4年度の一般会計の税収が過去最高となりました。

税収に関する資料:一般会計税収の推移(PDF)

財務省ウェブサイト:税収に関する資料(一般会計税収の推移)

法人税、所得税、消費税と共に上昇傾向にあり、やはり統計上は景気が上向いているとの結果となってしまいます。

しかしながら、所得が多ければ納める税金も増えますが、使えるお金も増えるため消費税も当然ながら増えていきます。

個人所得に関しては格差がかなり広がってきているようにも感じます(あくまでも筆者の感想)。

景気回復の恩恵を受けない個人については、住宅を所有し維持していくことも大変な状況となってしまいます。

住宅ローンの支払いが厳しくなると、固定資産税や国民健康保険料の納付も簡単なことではありません。

そして、多くの方は生活が苦しくて住宅ローンを優先し、税金や国民健康保険料の納付を後回しにして結果的に滞納してしまいます。

生活が苦しく税金を後回しにすると厳しい結果に

目次

税金の未納は放置されない

 税金の未納が続くと、役所も黙って見過ごすことはありません。

個人の場合、役所の取る手段としては、最初に自宅となる不動産の差押えを行う自治体が多いでしょう。

この段階では生活する上で支障がありませんが、次の段階に進むとことは深刻です。

役所からすると住宅ローンの返済は、税金等を滞納しながら資産の形成を行っていると見なされるためです。

〈税金滞納時の役所の見解〉

住宅ローンの返済 → 資産の形成

苦しいながらも、住宅ローンの返済を続ければ、その分住宅ローンの残高は減るため資産が増えるとの認識です。

役所の立場としては容認できる訳もなく、それは何としても、防がなけれ納税者の公平性が保たれません。

それゆえに税金を滞納したまま資産を処分されないよう、自宅不動産を差押えます。

税金を回収するための保全措置のような感じです。

自宅の差押えで資産の処分を未然に防ぐ

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住宅ローン返済口座の差押えは決定的

 役所が不動産の差押えにまで踏み切るには、自治体にもよりますが数十万円単位の税金の滞納が生じているケースがほとんどです。

また、不動産を差押え後は動きが無く何年も差押えたままの場合もあります。

この辺りの事情は各自治体の判断により個別に変わってきますが何年も経過すれば、滞納金額が100万円を軽く超えてしまっている方も過去に見てきました。

差押えられたまま数年経過も珍しくないが滞納金額は膨大

不動産の差押え後も未納付が続き、役所が資産の形成を行っていると判断すれば、最強の手段で対抗することになります。

以前、とある地方自治体の担当者と差押え解除についての交渉時に聞いた話です。

それは住宅ローン返済口座の差押えです。

これをされますと、今まで黙っていた銀行も、もはや返済不能と判断し住宅ローンの一括返済を求めます。

〈口座差押え後の銀行の対応〉

住宅ローンの一括返済 → 当然無理

競売の申立て

税金が納付できない状況で、住宅ローンの一括返済を求められても不可能です。

その結果、銀行は競売の申立てへ進むしか回収の手段が残されていません。

もともと、住宅ローンの契約には第三者から不動産が差押えられた場合は、一括返済を求められるとの約定がありますが、実際のところ黙認しているケースがほとんどです。

それゆえに、住宅ローン返済口座の差押えは一大事となってしまいます。

住宅ローン返済口座の差押えは完全にアウト!

任意売却の可能性はあるのか?

 競売になってしまうなら、あわてて銀行と交渉して任意売却もあり得ない話ではありませんが、新たな問題が発生します。

売却するにも不動産も差押えされているので、滞納分を納付しなければ差押えを解除してもらえません。

膨大な税金の滞納額は任意売却の許容範囲を超えている

自宅を売っても住宅ローンの残債に及ばない場合、そして不足分も用意できなければ、恐ろしい話ですが八方塞がりです。

あまりにも税金の滞納額が多ければ、任意売却もあきらめるしかありません。

つまり、競売以外残された道はありません。

役所の差押えから競売へと進行する最悪のケースでしょう。

役所の差押えが一番厄介

 任意売却に携わる者の意見として、任意売却の障害となる相手方で一番厄介なのは役所による差押えと言って差し支えないでしょう。

その理由の一つとして、役所には損得勘定が通用しないからです。

例えば、税金の未納分と延滞金の合計が100万円あったとします。

任意売却に際して、金融機関が役所の差押え解除の費用として、仮に20万円を認めてくれたとしても、役所は100万円全額納付しないと、差押えの解除を認めないの一点張りとなります。

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差押え解除の目途が無ければ任意売却は不可

 一度でも役所から不動産を差押えられてしまうと、解除に応じてもら唯一の方法は滞納分の解消です。

つまり、延滞金も含めて納付しない限り、ほとんどの役所が応じません。

その結果からでる答えは、任意売却も成立しないということです。

具体的には、役所の差押えが障害になり任意売却ができなった場合、その不動産は競売で処分されます。

大抵の不動産はオーバーローンのため抵当権の優先順位により金融機関などの債権者に配当されます。

差押えの解除に応じないことで、役所は多少でも配当が見込める訳では無く、むしろ¥0の可能性が高いでしょう。

競売で配当¥0でも構わない

つまり、競売になると役所は1円も回収できない可能性が大きいのです。

それならば、任意売却に協力した方が、幾らかでも納付を期待できると民間人なら考えますが、ここが損得勘定が通用しない役所の実態になります。

役所の立場で見れば、過去には任意売却に応じてきたものの、残りの未納分に関しては分割納付の約束を求めても履行されないケースが頻発し、差押えは全額納付しなければ解除しない方針へ舵を切った経緯があります。

税金の滞納分は解消するのが基本

任意売却時の判断基準は?

 役所の差押えは任意売却の障害となりますが、滞納額が十数万円程度までなら、それほど問題ではありません。

しかし、その額が数十万円となると任意売却が成立しない可能性が格段に上がります。

任意売却の場合、金融機関との交渉で差押えの解除費用として、いくらかは認めてもらえる可能性はあります。

しかし、その金額が数十万円~、百万円オーバーとなると、差押え解除費用は別に現金の用意ができないと、ほぼ任意売却は困難となります。

また、未納分の全額納付しか認めない自治体がある一方で、一部納付で差押えの解除、残りは分割納付の確約で認めてくれる自治体もあります。

それでも近年は、どこの自治体も財政難のため、容易には分割納付での差押えの解除は認めてくれないのが現状です。

税金の滞納総額は多くても20万円以内を目安に

役所の差押えを防ぐには

 生活が厳しくなってきても、決して役所の請求に対しては放置しないこと。

早い段階で役所の担当者に現状を説明し、少しづつでも納付する意思表示をして必ず実行して下さい。

役所の担当者は連絡があれば、交渉の記録を残しますので、何かあれば、マメに連絡することを心がけて下さい。

役所への連絡を欠かさず音信不通は絶対に避ける

約束はきちんと守り誠意を示す

 役所の担当者と少額でも納付の約束をしたならば、必ず納付し約束を守る姿勢を示すことで、ある程度は不動産の差押えを先延ばしができることもあります。

そのほか、きちんと役所と話し合うことで、既に差押えをされていても、生活状況から差押えの解除(執行停止の判断)をしてもらえる場合もあります。

しかし、現実的には役所の差押えを先延ばしできても、固定資産税等が負担と感じるならば、現状の生活を維持するのは、困難な状況と思われます。

税金その他の未納が続く前に相談いただけると、最悪のケースを回避することも可能です。

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