保証協会サービサー(保証協会債権回収株式会社)とは

借金の滞納を続けると、貸し手の金融機関に代わってサービサーが債権回収を担うことがあります。

サービサーと聞いて「怪しい会社では?」「取り立てられるのが怖い」と不安を抱く方もいるでしょう。

結論から言いますと、法務大臣の許可を得た会社であれば必要以上に恐れる必要はありません。

サービサーとして許可を得ている会社は複数あり「保証協会債権回収株式会社(保証協会サービサー)」もそのうちの一つです。

サービサーからの連絡に不安を抱いている方のため、この記事では保証協会債権回収株式会社がどのような会社であるかをわかりやすくまとめました。

同社のおもな業務内容や連絡がきた場合の対応方法も解説していきます。

目次

保証協会サービサーとは

保証協会サービサーを知るには、信用保証協会について理解する必要があります。

まず最初に誰でもお金を借りるなら、低金利で借りたいと考えるのは当然です。

そうなると銀行や信用金庫で借りるのがベストですが、それが難しいため国が信用保証協会法まで制定して保証業務を行っています。

具体的には中小零細企業や自営業者が銀行や信用金庫等の金融機関から、融資を受ける際の保証をするのが信用保証協会の役目となります。

心強いことに、信用保証協会という公的機関が保証してくれます。

金融機関は信用保証協会が保証してくれるならば、融資しましょう!となります。

この記事のタイトルでもある保証協会債権回収株式会社(以下、保証協会サービサー)は全国の信用保証協会(以下、信用保証協会)が全額出資して作ったサービサーです。

ちなみに保証協会サービサーの呼称は、保証協会債権回収株式会社のコミュニケーションネームになります。

実際に保証協会サービサーの担当者と筆者がやり取りした時もコミュニケーションネームで名乗っていました。

保証協会サービサーについて

称号:保証協会債権回収会社
法人番号:6010001072536
営業許可年月日:平成13年4月9日
営業許可番号:第47号
本店所在地:東京都中央区日本橋浜町2丁目35番4号
電話番号:03-6810-8363
※2022年11月時点の情報

営業拠点は全国に28拠点あり、お住まいの地域によって対応箇所は異なります。

保証協会サービサーのおもな業務内容

信用保証協会が保証した借金を例に説明すると、債務者からの返済が滞ると金融機関はまず督促を行います。

すぐに返済してくれればいいのですが、滞納が長引くと金融機関は債務者本人からではなく信用保証協会から代わりに返済(代位弁済)してもらいます。

代位弁済後は信用保証協会が債務者本人に請求して債権の回収を行いますが、その際、信用保証協会がサービサーに回収業務を委託することがあります。

その委託先のサービサーが保証協会サービサーとなります。

従いまして保証協会サービサーは、信用保証協会から委託された債権を管理および回収するのが仕事です。

依頼を受けた保証協会サービサーは信用保証協会に代わって債務者にコンタクトを取り、返済の話し合いを進めていきます。

債務者にとって気になる質問が保証協会債権回収(株)『よくある質問』に掲載されておりますので引用します。

Q8 信用保証協会の債権は全て保証協会債権回収株式会社へ委託されるのですか。

A  信用保証協会の委託基準に基づき受託していますので、債権全てが当社に委託されるというものではありません。

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保証協会サービサーと信用保証協会の違い

保証協会サービサーと信用保証協会には以下の違いがあります。

〈両者の違い〉

  • 保証協会サービサー…債権の管理および回収
  • 信用保証協会…融資を受けるための保証

信用保証協会による代位弁済が行われたあと、信用保証協会が債務者に返済を求めますが、その債権回収を委託する場合は保証協会サービサーが委託先となります。

信用保証協会で発生した案件を委託する場合は、保証協会サービサーに委託するとお考えください。保証協会サービサーのホームページに掲載されている情報も引用します。

当社は債権管理回収業に関する特別措置法および、各信用保証協会との業務委託契約に基づき、求償権の管理回収を専業としている株式会社であり、別の組織です。

引用元:保証協会債権回収株式会社|よくある質問

そして、繰り返しになりますが信用保証協会は、自営業者や中小零細企業が金融機関から融資を受ける時に保証をするのが主な役割です。

経営状況が不安定であっても、信用保証協会の保証があれば融資がおりるというのはよくあるお話です。

返済が滞るような事態になったとして、債務者に代わって信用保証協会が返済(代位弁済)してくれるのですから金融機関としては大きな安心材料となります。

保証協会サービサーから連絡がきたら何をすべき?

保証協会サービサーを名乗る会社から連絡がきたら、焦らず慎重に対応してください。

というのも、近年実在するサービサーに類似した名前の業者による架空の債権請求が多発しております。

誤って払ったお金を取り戻すのは困難であり、住所や勤務先などの個人情報を知られてしまう恐れもあります。

保証協会サービサーからの連絡は以下の通り対応しましょう。

まずは営業所の電話番号と住所を確認する

保証協会サービサーを名乗る会社から連絡がきたら、まずは相手が本物であるかの確認が必要です。

債権回収会社の一覧は法務省のホームページで確認できます。(2022年11月時点で全77社あります)

保証協会サービサーは正式名称が「保証協会債権回収株式会社」ですが、請求に心当たりがなければなりすましの可能性も考えられるでしょう。

以下に悪徳業者の手口をまとめたので参考にしてください。

〈注意例〉

  • 目隠しシールのないハガキで請求された
  • ハガキに多数の電話番号が載っている
  • 携帯電話への連絡を指示する
  • 振込先に個人名義の口座を指定する

資力があればすぐに支払う

本物の保証協会サービサーであり、債権回収の連絡であることが判明したら、次は返済のタイミングについて話し合う必要があります。

もっとも、サービサーから連絡が来るような状況での一括返済はほぼ不可能だと思われます。

相手もその事情はある程度理解しているはずなので、相談次第では分割返済に応じてもらえる可能性もあります。

一番やってはいけないのは、返済できないからと連絡を無視することです。

保証協会サービサーは債権回収のプロですから、きちんと対応しなければ差押えなどが進められ、かえって状況は悪化します。

返済の余力があれば前向きに検討し、難しい場合も無視はせずに話し合いを進めていくことが大切です。

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返済が困難であれば債務整理や任意売却を検討する

返済が困難であれば、残された選択肢は債務整理と任意売却の2つです。

債務整理の手続きは弁護士に依頼するのが一般的です。(やろうと思えば自分でもできますが、手続きが煩雑な上に交渉がうまくいかないケースが多いためおすすめはできません)

任意整理や個人再生、自己破産といった方法があり、状況に応じて最善の方法を選択します。

自営業者や中小零細企業が融資を受ける際、代表者の自宅や法人名義の不動産を担保に保証を受ける場合があります。そういったケースでは不動産を任意売却するのも一つの方法です。

任意売却については、各都道府県の信用保証協会や保証協会サービサーと話し合いを進めていきます。

弁護士や一般的な不動産業者は対応できないので、任意売却の専門業者への相談が必要となります。

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保証協会サービサーと任意売却

信用保証協会は金融機関へ代位弁済すると、借手の自営業者や中小零細企業事業者に対し請求することは既に説明しました。

その際、借手が担保となる不動産を所有し、信用保証協会から保証協会サービサーへ回収業務が委託されれば、任意売却の交渉窓口となります。

任意売却の交渉について

任意売却を希望する場合でも、まずは保証協会サービサーから面談を求められますので、その際に任意売却の意向を伝え、任意売却を依頼する業者も決めておくのが理想的です。

保証協会サービサーは、債権者である信用保証協会の意向にもよりますが、任意売却については、非常に協力的であると感じます。

また、予定通りに任意売却が進まないような局面でも、ある程度柔軟な対応で、こちらの要望にも応えてくれますが、それは所有者も積極的で早期に任意売却に臨んだ場合と理解して下さい。

そのため代位弁済の通知が届いたら、任意売却を決断する時期に差し掛かったと考えておきましょう。

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任意売却後の残債

任意売却が終了し、残債が生じれば、その回収についても保証協会サービサーが引き続き行います。

保証協会サービサーは公的機関である信用保証協会からの委託でもあり、生活に余裕が無ければ強引な回収とはなりません。

任意売却後は現状を伝え、きちんと向き合ううことが、残債解決への第一歩となります。

当事務所で任意売却を終えた相談者の事例

 当然ながら、保証協会サービサーも任意売却に至った経緯は把握していますので、経済的に厳しい状況は理解しています。

保証協会サービサーと交渉の結果、年金暮らしの高齢者の場合は年金受給月に2,000円~3,000円程度の返済を続けている方もいます。

その他、年金収入はあってもわずかな金額のため、返済できないまま何年も経過してしまった方もおります。

ただし、最低でも年に1回は連絡はあり状況の確認は求められます。

ある程度は状況を理解してもらえますので、そのまま伝えることが大切です。

包み隠さず、ありのままを伝えよう

保証協会サービサーに時効の援用は認められるか

「借金は払えそうにないが自己破産や競売は避けたい」という希望があると、どうにか借金の時効を成立させられないかを考える方がいます。

結論から言いますと、単に時間が経過しただけでは時効は成立しません。時効を理由に借金を返さなくて済むのは「消滅時効の援用」というアクションをした時だけです。

消滅時効の援用とは

債権者に対して「時効期間が経過したので返済はしない」と意思表示をすること。援用が認められれば法的な返済義務がなくなる。

消滅時効の援用を主張しない限り、いくら時間が過ぎても借金が帳消しになることはありません。

期限の利益喪失から5年経過で時効成立の可能性あり

消滅時効の援用を成立させるには、最後の返済日から5年以上経過していることが条件となります。

もっとも、何の対処もせず5年も悠長に返済を待ち続ける債権者はほとんどいません。時効成立は何としても阻止したいと考えるので、あらゆる手段を使って返済を求めてくるでしょう。

借金の時効を成立させられるかどうかは、専門家に相談して確認することをおすすめします。

時効の主張をしなければ裁判を起こしてくるケースもある

消滅時効の援用を主張しない限り、仮に5年が経過していても借金の時効は成立しません。

時効期間が経過していても裁判を起こすことは可能なので、裁判所から訴状と呼出状が届いた時はきちんと対応する必要があります

すでに消滅時効の援用を主張していれば、裁判所に答弁書を提出することで裁判は取り下げとなるでしょう。反対に、何も対処しなければ時効は認められず、借金は全額返済しなければなりません。

保証協会サービサーは交渉次第で借金を減額できる?

保証協会サービサーは、保証協会から委託された債権の管理および回収を主たる業務としています。

返済を迫られている側からすると怖い取り立て屋のようにも感じますが、悪質な取り立てはしていません。

むしろ、長い時間をかけてでも債権をすべて回収したいと考えるので、状況次第では分割返済に応じてくれる場合もあります。

借金が減額となったケースは少ないですが、少額の分割返済が認められたことはありました

最初から分割返済をあてにするのはよくないですが、交渉の余地がまったくないわけではないということです。

いずれにせよ、保証協会サービサーから連絡が来た時点で話し合いは必要なので、丁寧な対応を心がけましょう。

任意売却を検討中の方は当事務所までご相談ください

中小零細企業や自営業者が自力で事業資金を調達するのは非常に困難なため、どうしても政府系金融機関の日本政策金融公庫や信用保証協会を利用した融資に頼らざるを得ません。

同時に所有する不動産を担保にしているケースもあり、返済が滞ってしまった場合の対処に悩んでいる方も多いと思います。

自宅や会社名義の不動産を担保に借入をした場合、任意売却が借金のお悩みを解決に導く選択肢となる場合があります。

督促を無視し続けると、差押えや裁判といった不利な状況に追い込まれます。それよりもできるだけ早く対処し、もっとも負担の少ない方法で問題を解決するのが望ましいでしょう。

当事務所では任意売却や不動産担保ローンの返済に関するご相談を承っています。お客様一人ひとりに合った最善の方法をご提案します。

任意売却にはリミットがあるので、手続きを希望される方はできるだけ早くアクションを起こしましょう。

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