生命保険を差押え!役所が行う滞納処分の現実

生命保険の解約払戻金を役所が差押えて徴収!!

 住宅ローンの返済をしながら、税金や国民健康保険料(税)の納付を怠り、役所から自宅を差押えられている相談者が年々増え続けております。

特に国民健康保険税(料)の滞納額が多く、それに伴い固定資産税も未納となっております。

サラリーマンの方は社会保険に加入しているため、国民健康保険とは無縁かもしれませんが固定資産税の滞納が続けば、自宅はいとも簡単に差押えられてしまいます。

また、サラリーマンでも生命保険に加入している方は、解約時の返戻金(払戻金)がある場合は要注意です。

この記事では、民間の金融機関などでは困難な『役所だからこそ可能な生命保険の差押えについて』元債権回収の現場に携わっていたFP&不動産コンサルの有資格者が解説します。

税金の滞納を続けながら住宅ローンを返済している方は、この先『どうすればいいのか?』今後の参考にしてください。

目次

役所は生命保険の有無を調査する

 膨れ上がる税金の滞納を役所は、黙って見過ごす訳にはいきません。

そこで、目を付けるのが「生命保険に加入していないか!?

実は役所は念入りに調査しています。

そして、生命保険の契約があれば、満期や解約すると戻ってくる、解約返戻金を差押えてしまうのです。

解約すると戻ってくる・・・!?

役所が生命保険を解約し、戻ってくるお金があれば、徴収します。

この税金の滞納後、役所が「差押~換金して回収する流れを滞納処分」と言います。

自宅の差押えが先か、生命保険の差押えが先かは各自治体により異なり、滞納処分の方針も様々です。

滞納処分は各自治体のさじ加減で異なる

生命保険の解約返戻金を徴収

 驚くことに、役所が生命保険に目を付けると「強制的に解約」されてしまいます。

再加入を考えても一旦解約されてしまうと、当初の加入時と年齢も異なります。

当然、掛け金も高額になり、同様の保険には加入できない可能性もあります。

滞納を続けてしまった結果なので、後悔しても仕方の無いことです。

本来なら住宅ローンの返済ではなく、税金の納付を優先させる必要があったのは言うまでもありません。

支払いは何よりも税金の納付が最優先!

生命保険の差押予告書が届いたら

 役所からの督促を無視し続けると、やがて差押予告書が届きます。

その対象が生命保険の場合、役所は生命保険の存在を確実に把握しています。

そして、差押予告書に記載された期日までに納付できなければ、生命保険は解約され、解約返戻金は徴収されてしまう可能性はかなり高いでしょう。

生命保険の掛け金が払えるならば、税金の納付は当然なのは誰しも理解できることです。

徴収されてしまった場合、後日、以下のような明細書(横浜市の現物の写し)が送られてきます。

役所が差押えた解約払戻金の明細書

届いたときは徴収後

役所は生命保険の加入をどうやって調べるのか?

 単純な疑問で、役所は生命保険の加入の有無を、「どうやって調べるのでしょうか?

簡単なことです。

確定申告されている方、サラリーマンの場合は年末調整を勤務先の会社が行います。

その際、「生命保険の控除額」があることを思い出してください。

控除を受けるのと引換えに生命保険の加入情報が国税を通して役所に筒抜けとなっています。

少し話がそれますが、役所の差押えが関係した不動産売買の取引でのことです。

「以前、法人で掛けていた生命保険を差押さえられたことがある」という会社の社長が、役所の担当者へ『なぜ生命保険があることが分かったの?』と雑談の中で質問していました。

すると役所の担当者は『調査権限があるので税理士に照会すれば即、答えてくれます!』とのことでした。

法人が報酬を支払い依頼している税理士でも、役所からの照会に対して、拒否することができないのです。

税金があって国、自治体が成り立っているため、税金が徴収できなければ立ち行かなくなります。

それだけに強力な調査権限が、国税同様に自治体にも認められています。

国税同様の調査権限が地方自治体にもある!

税金の滞納で不動産を差押え

 役所は税金等の未納があれば、滞納処分を粛々と進め不動産などの財産を差押えた後は、公売で処分し徴収するはずが・・・

不動産の差押え後は、いっこうに手続きを進める気配が感じられません。

そこには、もともと住宅ローンなどの抵当権があり、優先的に回収されてしまうため、公売にしても徴収の見込みが無いケースが多いためです。

また、そうでなくとも生活状況が厳しいのは、役所側も理解しているため悪質な滞納者でもない限り、公売で強制的に徴収するのは、やはり避けたいのが実情でしょう。

その点、役所にとっては生命保険の解約返戻金を差押えるのは好都合ではあります。

理由として、生命保険の解約返戻金を差押えて解約させられても、直ちに生活に影響しないからです。

仮に自宅を公売に掛けたら、どうなる!?

自宅が第三者へ売却されてしまうため、住む場所を失ってしまいます。

税金を滞納しているため当然と言えば当然ですが、やはり役所もそこまでするのは非常にやりづらいのが現実です。

そうなると生命保険の解約返戻金の差押えは役所も徴収しやすいのが良く分かります。

徴収された側も、「生命保険ならば仕方ない」と諦めがつくのも想像できます。

不動産を差押さえても公売はまれ

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不動産の場合は無益な差押えが多い

 本来なら徴収の見込みのない、無益な差押えは禁止されております。

我々がそう主張しても『役所の担当者は無益な差押えかどうかは、現時点では判断できない!』という理由や『債権保全のためである』と対抗します。

従いまして、住宅ローンの返済は継続し滞納は無いものの、不動産を差押えられたまま税金等の滞納分は膨れ上がる、いびつな状況が続いてしまいます

また、相談者はというと不動産を差押えられても、見知らぬ不動産業者や金融業者のダイレクトメールが届く位です。

そのため、生活する上で不都合が生じないため、慣れてしまい安心してしまう方もいます。

役所が不動産を差押さえた後の動きは無い

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税金滞納以外でも差押えの特殊な事例

 市町村が運営する保育園などの利用料も、実は税金同様に滞納処分の対象となることがあります。

以前、任意売却の相談に訪れた自営業者の方が、役所に未納の保育料60万円を預金口座から差押えられてしまったと肩を落としておりました。

仕事用に利用していた預金口座でしたが個人名義のため、結果的には差押えられ徴収されてしまいました。

未納金額も多額のため公平性の観点からも、役所もやむを得ず差押えたのが現実でしょう。

保育料が差押えの対象となることも

役所の差押えは民間と比較にならないほど容易

 ここで少し、同じ差押えでも民間の金融機関等と役所との違いに軽く触れておきます。

民間の金融機関が不動産等の担保が無いケースでは、財産を差押えて回収する場合、まずは裁判所で手続きしなければなりません。

詳細は省きますが、裁判所の手続きを経て『債務名義を取得』します。

そして、債務名義取得後にやっと差押えが可能となり、かなりの時間と手間を要することになります。

しかし、役所の場合は「債務名義」は必要ありません。

差押時の債務名義の有無

  • 民間企業:債務名義必要
  • 国・地方自治体(役所):債務名義不要

 ※ そもそも民間では財産の有無を調査するのも難しい

税金等の滞納があれば、不動産の差押えや預金口座の差押え等も、書類を準備することで可能となっております。

民間との比較では、「役所は非常に容易に差押えが可能」と見て取れます。

個人にせよ法人にせよ、税金の滞納があることは望ましいことではありません。

それ故に、国や地方自治体には、強力な調査権限や回収手段が認められています。

本気で回収しようと思えば、かなりのところまで踏み込むことが可能です。

未然に防ぐには、税金を滞納してしまう状況を回避する以外、方法はありません。

あえて言うならば、突然税金が課税されることは通常ありません。

必ず所得なり財産なり課税される原因が存在します。

課税される原因がある以上、納税に備えておくことが未然防止には重要となってきます。

納税金額は予測可能なため要準備

差押えは目的ではなく途中経過

 この記事では解説する上で「差押え」という言葉を多用してきました。

ひとつ注意して欲しいのは、差押えは目的ではありません。

差押えは途中経過であり、最終的には差押えた財産等を換価して回収することが目的です。

お金になりそうなものを換金して回収

お金であれば、差押えと同時に回収可能ですが、どんなに価値がある物でも、一度、お金に換えなければなりません。

差押えが預金口座であれば別ですが、公売やネットオークションで売却、換金後に滞納中の税金に充当するという流れが必要です。

その途中経過が差押えとなります。

差押え後の財産は換金されて回収

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社会保障費の負担で生活苦

 近年、社会保障費の高騰により、納付したくても生活苦で納付できなくなってしまった方が相談してくるケースが増加しております。

実際のところ、固定資産税(都市計画税も含む)だけが滞納の場合、その額は数万円~数十万円位です。

これに国民健康保険料(税)も滞納となると、軽く100万円を超えてしまう方も珍しくありません。

国民健康保険の滞納は生活苦の象徴

いわゆる社保(社会保険)加入者と比べ、国民健康保険は扶養家族の人数分、負担額も増加します。

また、それとは別に国民年金の納付も必要です。

自営業者などのフリーランスの方にとっては、大変厳しい状況が続いています。

滞納額が膨れ上がった段階で自宅を売却したくても、納付の見込みが無ければ任意売却も困難です。

その挙句、住宅ローンが払えなくなれば恐ろしい話ですが、「競売を待つだけ」となってしまいます。

多額の滞納は解消しなければ任意売却も不可能

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税金の滞納は住宅ローンの滞納と同様

 住宅ローンの滞納は無くても、社会保障費も含め税金の滞納が100万円を超えるようなケースは、生活の苦しい状況が少なく見ても1年以上は続いていると考えられます。

もはや一時的な収入減とは異なり、本来ならば日々の支出を減らさなければ、生活が成り立っておりません。

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即行動に移す必要があるのですが、どうにも身動きが取れなくなってしまう方も少なからずいます。

1つハッキリ言えることは、「住宅ローンが払えないのと同じ状況」です。

もう、これ以上の無理はやめ、自宅を手放す時期に差し掛かっていることを理解するべきでしょう。

税金を滞納しながら持家は不可能と認識する

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任意売却後は役所が敷金を差押え

 役所の差押えが任意売却の障害となることは、上で解説しました。

それでは、税金を滞納しながらも差押え前に、何とか任意売却を済ませれば、心配は無くなるのでしょうか?

そんなに甘くはありません。

 過去に旧住宅金融公庫のゆとりローン(ステップ返済)が払えなくなり、任意売却でマンションを手放した方から、連絡がありました。

話の内容は、その方が告げられた税金の徴収方法です。

生活苦にあえぐ個人にも、かなり厳しく対応しているのに驚きました。

厳しい税金の徴収方法とは?

任意売却されたため、持家はありません。

民間の賃貸住宅にお住まいで、入居の際に大家さんに家賃2か月分の敷金を預けています。

その「敷金を役所が差押える」と言ってきた!

実際に建物の所有者を調べ、大家さんへ敷金の額を確認したそうです。

大家さんが預かっている敷金なので、仮に差引くことがあっても大家さんが優先されます。

実際に差押えられても、大家さんに不都合は生じません

しかし、役所から連絡を受けた大家さんは驚いてしまいます。

大家さんから「もし、本当に敷金を差押えられたら、次回の更新は無しで退去して!」と告げられたそうです。

大家さんにとって、初めての経験であれば不安になるのは当然です。

仕方なくお金を借りて、納税を済ませたそうです。

住まいを失うほど追い詰める役所

役所に納付できない理由は不要

 自営業とはいえ、個人の自宅の敷金です。

事業を営むテナントの敷金や保証金ではありません。

税金ですから、「納税義務があるので納付しない方が悪い」と一言で片付けてしまえば、それまでですが・・・

しかし、自営業者なので収入が安定しないこともあります。

働くすべての方が、毎月決まった収入がある訳ではありません。

納付できない理由を伝えても解決しない!

当然、「分割納付の相談も取り合ってもらえなかった」とのことです。

自宅を追われれば、生活の場がなくなります。

納税どころではなくなりますが、役所の担当者は目の前の徴収率を上げることだけを考え、「人の弱みに付け込めば払う!」と確信してやっているように見えます。

実際には国も地方自治体も、赤字財政が続いているので未納を減らすとなると、弱者にも厳しく対応していくほかないのかもしれません。

国も地方も赤字財政ゆえの結果

支払で優先するのは

 任意売却する際には、固定資産税を未納で自宅を差押えられる方が多くいます。

これは、「税金よりも住宅ローンを優先」してきた結果です。

心境としては、すごく理解できるのですが、税金を納付できない状況は、自宅を維持していくのは困難です。

また、「住宅ローン等の借金は自己破産すれば返済を免れる」ことができます。

税金は自己破産しても免除されません

その意味を考えれば分かり易いのですが、「何よりも優先させるのが納税」ということを肝に銘じてください。

任意売却後の残債についても同じです。

任意売却後にサービサーから厳しく請求されても、まずは税金の納付が優先で続いて残債の返済となります。

サラリーマンの方は源泉徴収されるので、あまり関係ありませんが、自営業の方は納税額も含めて任意売却後の残債の返済額を決めて下さい。

ちなみに、先ほどの自営業の方は、旧住宅金融公庫の残債を月々3,000円返済しているそうです。

最優先が税金、住宅ローンは二の次

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