任意売却後の残債はどうすれば?競売は残債を請求されないの?

任意売却後の残債の行方、競売後の残債の行方

 住宅ローンを含む不動産担保ローンが払えなくなったら、任意売却で対処するのは貸手(債権者)と借手(債務者)の双方にとって合理的な手段です。

しかしながら、任意売却する当事者にとって、一番の心配ごとは、任意売却後の残債(残りの借金)です。

借金を完済できず、一部残したまま不動産を売却しますので、やはり現実的には借金として請求されます。

ただし、残債の請求については、「民間の金融機関(銀行や信金)と住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)」とでは、対応に大きな違いがあります。

この記事は、サービサーの誕生前から債権回収に携わっていた筆者が『任意売却後の残債の対処法』そして、『競売になると残債は請求されないのか?』、その他『任意売却後の残債の疑問』についても合わせて解説します。

住宅ローンが払えず、任意売却を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

残債について正しく認識する

 まず初めに、任意売却後の残債について、正しく認識しなければならないのは、任意売却が原因で残債が発生する訳ではありません。

根本的な問題は、「マイホームの資産価値を上回る借入額(住宅ローン)」が原因です。

この状態を一言で表すと!

オーバーローン債務超過となります。
不動産の資産価値以上に、借金がある異常な状態です。

本来なら、あり得ない不動産担保ローンの過剰融資と、借手の経済状況の悪化が引き金となっています。

そして、もう一つハッキリしているのは、競売でも、残債があれば請求されます。(後の項で説明します)

そのため、残債を心配するあまり任意売却に踏み出せないのは、残債について大きな誤解が生じているからです。

もちろん、住宅ローンを払えれば、このような心配は無用かもしれません。

それでも、長期に及ぶ返済期間を考えれば、懐事情の変化は誰にでも起こりうるもので、決して特殊なケースではありません。

残債の要因は任意売却ではない!

任意売却後の残債について:民間金融機関の場合

 銀行や信用金庫など、民間の金融機関で住宅ローンを借りる場合、保証会社の利用も同時に求められます。

要するに、借手の返済が滞ると、銀行の求めに応じて保証会社が代わりに返済します。

これを「代位弁済」といいます。

〇 代位弁済後は、銀行との関係は終了します。

その後、保証会社が肩代わりした分を借手に請求をしますので、任意売却の交渉は保証会社との間で行います。

任意売却は代位弁済後、保証会社との交渉で行う!

そして、保証会社は任意売却が終了すると、その残債を債権譲渡によってサービサーへ売却し、手放してしまいます。

〇 債権譲渡後は、保証会社との関係は終了します。

債権者が、銀行、保証会社、サービサーと順に代わってしまいますが、心配する必要はありません。

民間金融機関は最終的にサービサーへの債権譲渡が主流

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民間金融機関の場合は債権譲渡が一般的

 本記事は、任意売却後の残債についてがテーマなので、保証会社については、別の記事を見てもらい、債権譲渡後の流れについて解説を進めます。

保証会社についての記事
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サービサーは保証会社から、入札などを経て一括でまとめて購入したのち、個々に請求します。

サービサーに一旦、残債が譲渡されると、今度は保証会社とも一切関係なく交渉ができます。

簡単に流れを説明すると、以下のようになます。

〈債権者の変更の流れ〉

任意売却前(銀行や信金)

任意売却(保証会社)

任意売却後(サービサー)

また、サービサーは借手が返済不能となった、いわば不良債権を一括で大量に購入しています。

サービサーの債権購入額については、諸説ありますが不良債権をまとめて買受けるとなれば、価格もそれなりと考えるのが自然です。

そのため、月々わずかな返済で長引くよりも、ある程度、まとまった金額を一度に返済すれば、大幅な減額での債権放棄に応じる可能性もあります。

サービサーは何よりも、効率よく短期回収を望んでいます。

つまり、ある程度の金額で一括返済してしまえば、任意売却後の残債が消滅し、他の借入金が無ければ無借金となります。

任意売却後の残債を解決するチャンスも!

サービサーについて

 続いてサービサーについて解説しますが、何故このようなことが分かるのか? まず始めに説明します。

筆者はサービサーが日本に誕生する前から、債権譲渡により買取った不良債権を専門に回収する金融会社に勤務しておりました。

主に任売却後の残債同様に、無担保債権の回収を任され、和解案の作成から各地の裁判所へ出向き、訴訟までも担当しました。

実際に回収交渉となると、多くの金額を回収できることが1番の条件となります。

しかし、それには回収にかかる時間も、とても重要になります。

債務者との最初の交渉では、満額の請求をします。

その後、経済状況を確認しながら「和解案を提示」するような流れとなります。

まずは、債務総額を確認してもらうために満額請求!

それでは、当事務所で任意売却を済ませた方へ届いた、サービサーからの和解案を見てみましょう。

任意売却後の残債は約1,000万円でした。

〇〇様 和解案

 上記の和解案は、説明のため簡略化しています。

サービサーからは、当初満額の1,000万円の減額無しで請求されていました。

当事務所のお客様は返済の意思を示しながらも、返済総額の交渉を重ねた結果、和解案を提示されました。

かなり現実的な金額も提示され、残債を解決できる可能性が高まります。

1つ目は一括、2つ目、3つ目は分割払いです。

一括プラン以外は、現実的でないように思えますが、しっかりとサービサー側の思惑もありますので、以下の「和解案の裏を読む」を参照してください。

和解案の裏を読む

一括プラン

 サービサーの希望は、早期に回収して解決することです。

このプランを選んで欲しいと、担当者レベルでも望んでいると思われます。

任意売却で不動産を処分したあとに、このような金額を用意するのは非常に困難です。

それでも、残債がすべて免除されるのであれば・・・

何とかしたいと、思う金額です。

分割プラン1

 一括プランが無理であれば、分割返済でしっかり回収が必要となります。

それ故に、この様な金額を提示します。

また、80回払いは6年8か月になります。

これは、サービサーがファンドから7年という期間で、資金調達をしている場合、そこに合わせていると思われます。

しかし、一括プランが無理なので、このプランを選択してしまうと、何らかの理由で返済がストップしてしまえば、この和解案による金額では、解決できなくなりますので注意が必要です。

分割プラン2

 早期の回収が望めない場合、一生払い続けるかのようなプランです。

しかし、回収する側は全くないよりは、継続して返済してもらいます。

しばらく時間を置き、その後の話し合いを経て再度、和解案を提示し解決することもあります。

※ 長期の分割払いで返済途中に債務者が亡くなってしまった場合、マイナスの財産として相続が発生しますので注意が必要です。

サービサーも方針の違いや即訴訟へ進むケースなど様々ある

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債権譲渡は、いつになる?

 それでは任意売却後、残債がサービサーに譲渡される場合、その時期はいつになるのでしょうか?

あるとき突然、債権譲渡通知が届きます。

また、サービサーへの債権譲渡の時期については、どの金融機関も明確な基準は無く、ここで詳しい時期をお伝えすることはできません。

それでも、任意売却後から数年を経過して、債権譲渡することは珍しくありません。

ただし、時効との関係から概ね2年~3年のうちには、サービサーから請求されると認識しておきましょう。

この空白の時間はとても貴重で、残債をきっちりと解決したいならば、この間にしっかりと現金を蓄えることが必要です。

やがて債権譲渡通知は届きます!

保証会社がないと代位弁済もない

 最近、ネット銀行等では保証会社を利用しない住宅ローンもあります。

実はメガバンクでも、保証会社を利用しない住宅ローンを提供しています。

この場合、住宅ローンを滞納させてしまうと、保証会社による代位弁済がありません。

では、どうなるのか?

金融機関が直接競売の申立てを行うか、担保付きのままサービサーへ債権譲渡となります。

滞納が始まってからの処理のスピードは、幾分早いと言えるでしょう。

担保付きで債権譲渡されたケース
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任意売却後の残債について:住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の場合

 住宅金融支援機構などの公的な金融機関は、債権譲渡をしておりません。

そのため、任意売却後の残債が現在のところ「サービサーに譲渡されることはありません

しかし、実際は住宅金融支援機構から「委託されサービサーが残債の回収業務」を行います。

そして、任意売却成立後には、生活状況報告書の提出を求められ、収入や支出の状況を確認し返済金額を決めます。

当初1年間は同じ支払いが続き、再度見直しを行いながら返済を続けていくことになります。

大抵の方は引っ越し先でも賃料が必要なため、多くの返済は望めません。

月々1万円程度の返済を継続している人が、かなりの数存在しているようです。

債権譲渡は無くても回収はサービサーが担当!

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サービサーについて(住宅金融支援機構の場合)状況に合わせた返済

 上記にも書きましたが任意売却後は、住宅金融支援機構の委託するサービサーが残債を回収します。

サービサーが業務を担当するだけで、回収方針は住宅金融支援機構の意向に沿って進められます。

生活を犠牲にしてまで、無理な返済を要求することは通常ありません。

その反面、毎月の返済額が少なければ、終わりの見えない返済が続くことになります。

残債が多ければ、短期では終わらない

元金の減額交渉は困難

 住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫を含む)の残債については、債権譲渡が無いことは先述しました。

この点について、実はデメリットでもあります。

民間金融機関のように、任意売却後の残債がサービサーへ債権譲渡されないため、減額交渉の望みはありません。

一応、遅延損害金については大目に見てくれますが、元金が無くなるまで返済は続きます

一定期間収入が落ち込み、任意売却したけれど、再度マイホームを所有したいと考えている方は、早いうちに残債の対処が必要になります。

詳しくはこの記事で解説
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住宅金融支援機構が回収を委託するサービサー

住宅金融支援機構が委託する、個人向け債権回収会社(サービサー)は以下の4社です。

〈委託先サービサー〉

  • エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社
  • オリックス債権回収株式会社
  • 株式会社住宅債権管理回収機構
  • 三菱HCキャピタル債権回収株式会社 

上記のサービサー各社は、変更することもありますので、詳細は住宅金融支援機構のウェブサイト「委託先債権回収会社について(機構が行う個人向け融資)」で確認してください。

委託先サービサー公式サイトで確認できる

任意売却後に残債の請求を無視すると、どうなる?

任意売却後に残債の請求を無視すると、どうなる?

『任意売却後に残債の請求を無視していたら裁判になり、このままで大丈夫でしょうか?』という相談が度々あります。

任意売却後に多額の残債が生じてしまうことは、任意売却の性質上、特に問題ありません。

多額の残債は珍しいことではない!

また、任意売却後にある程度の残債が発生することは、当初から予測できていることです。

しかし、その対処を怠り請求を無視し続けた結果、債権者が業を煮やしてしまったという状況です。

任意売却後の残債を放置すると差押えのリスクが生じる

 任意売却後のことですから、どこかの業者に任意売却を依頼したはずです。

残債があれば、何かしらの請求が来るのは説明されていたと思いますが・・・

任意売却後の残債を返済に応じず、放置しておくと債権者も困ってしまいます。

そのため、以下2つの目的のために動くことになります。

  1. 強制執行
  2. 債権の保全

1.強制執行

 債権者の権利を生かし、裁判所を通じて強制的に回収します。

「差押え」により預金口座などの金銭は回収され、動産などの物は競売にて現金化され、回収されてしまいます。

また、お勤め先から直接、給与を差押さえることもできます。

正式に認められた回収方法のため、借り手(以下、債務者)は拒否することもできません。

2.債権の保全

 長い期間、返済に応じてもらえないと時効が成立し、回収不可能となる場合もあります。

その時効が成立しないように時効期間を中断し、債権を保全します。

「1.強制執行」「2.債権の保全」どちらも、債務者が前向きな返済に応じ、話し合いができていれば、多くのケースではこの様な対応とはなりません。

いわば、債権者も仕方なくといった感じとご理解ください。

任意売却後の残債の返済に応じず、放置された場合の債権者の対応を「債権者のできること・第1段階~第3段階」に分けて順番に解説します。

残債の放置は段階を踏んで対処

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債権者のできること・第1段階

 債権者が望んでいることは「スムーズな回収」です。

債務者に『任意売却後の残債があるので返済してください!』との請求に対して『ハイ! すぐに全額返済します』となれば、すべて解決する話です。

当然、そうならないため、以下の手段で債務者に対応します。

〈債権者3つの対応〉

  1. 書面連絡
  2. 電話連絡
  3. 訪問

実際には債権者ができることは、この3つしかありません。

順番に見ていきましょう。

1.書面連絡

 書面によって請求書などを発送して返済を促します。

債権者としては、書面の連絡先に電話をもらい協議できることを望んでいます。

返済計画などや状況が確認できれば、解決につながる話となります。

ここで話がまとまるのが理想的

2.電話連絡

 書面による請求に対して何も連絡がなければ、電話連絡もあります。

ただし、債務者は電話番号によって出る・出ないも自由です。

よく分からない番号は、無視することによって債権者と連絡を絶つことも可能。

番号が変わってしまい、音信不通となることも珍しい話ではありません。

3.訪問

 訪問については、ほぼ無いものと思ってください。

あまりにも効率が悪いため、いきなり訪問するようなことは無いでしょう。

在宅していても居留守を使うこともできるため、無駄骨になる可能性が非常に高い。

どれを見ても、特別なことは無いと感じると思います。

債務者が反応してくれなければ、もう債権者はお手上げです。

第1段階はお手上げ

債権者のできること・第2段階

 ご自身の意志で、債権者の連絡を無視してきました。

債権者としては、その後の対応につても「できることをする」しかありません。

話し合いができなければ、次は強制的に対処することになり、そのためには難しい言葉ですが「債務名義の取得」が必要になります。

債務名義の取得とは

 「債権者のできること・第1段階」で残債の回収に進展がなければ、強制的な執行力のある法的手続きに進む以外ありません。

そのための準備は「債務名義」を取得することからスタートします。

何やら難しい言葉がでてきました。

裁判所のウェブサイト「裁判手続 民事事件Q&A」には、債務名義について以下の記載内容があります。

債務名義とは何ですか。

債務名義とは、強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書のことです。

強制執行を行うには、この債務名義が必要です。債務名義の例としては、以下のものがあります。

  • a.確定判決
    「100万円を支払え。」又は「○○の建物を明け渡せ。」などと命じている判決で、上級の裁判所によって取り消される余地のなくなった判決を言います。
  • b.仮執行宣言付判決
    仮執行の宣言(「この判決は仮に執行することができる。」などという判決主文)が付された給付判決は、確定しなくても執行することができます。
  • c.仮執行宣言付支払督促
  • d.和解調書、調停調書
債務名義について裁判所ウェブサイトからの引用

記事冒頭の『任意売却後に残債の請求を無視していたら裁判になり、このままで大丈夫でしょうか?』という相談の場合、裁判所で出すaの確定判決が債務名義に該当します。

aの確定判決とは、裁判所の判決のことで、覆すこともできない判決のため確定判決と言います。

言葉が難解なため、理解するのも嫌になるかもしれませんが、要するに裁判所が「間違いなく残債(債務)は存在している」と認めたことになります。

その他、上記に記載した「裁判手続 民事事件Q&A」にありませんが、金銭の貸し借りを公正証書を以て借用書を作成した場合、「強制執行認諾文言付き」公正証書であれば「aの確定判決」同様の効力が認められます

すなわち、公正証書(強制執行認諾文言付き)でも債務名義の取得と同等の効力を得たことになります。

債務者が強制執行を承諾する内容が記された公正証書も債務名義の効力がある

第2段階は強制執行の準備

裁判は債務名義取得の準備

 債権者としては今までの請求方法ではダメなので、次にできることが、もう強制執行しかありません。

まずは、裁判所から判決(債務名義の取得)をもらう必要があり、裁判はそのための準備とも言えるでしょう。

任意売却後の残債は、単に借金を返していないのと同じです。

その請求を無視し続ければ、相手は裁判に打ってでるしかありません。

極めて当然な流れ

ここまでの流れは普通に考えれば、予想外のできごとは何もありません。

そして、債務名義の取得については、「2.債権の保全」の要件も満たし時効期間が10年延長してしまいます。

その他、債務者としては訴訟により不安となるため心理的な圧迫も想定できます。

いっぽうで債権者にとっては、普段通りの形式的な対応のため、粛々と進めるだけです。

債権者には想定内の対処

債権者のできること・第3段階

債権者のできること・第2段階」は、債務名義の取得を目的にしていました。

これは強制執行に向けた動きで、債務名義の取得でいよいよ債権者による差押えが可能となります。

もしも、お勤め先が長年勤めてきた職場であれば、かなり事態は深刻かもしれません。

債権者次第ですが、「給与の差押え」が実現できてしまいます。

実際には、長年勤めてきた職場を把握されながら、請求を無視し続ける方はいないに等しいでしょう。

このような状況は、どなたでも察しが付きますので安定した職場にお勤めの方であれば、事前に債権者とは前向きな話を協議しているものです。

第3段階は差押えによる回収

債務名義取得後の債権者の狙いは

 『なぜ、裁判になった時点で、どうしたらいいかと考えるのか・・・?』と思ってしまいます。

もともと、返済義務のある自身の借金ですが、任意売却後に全く払える余裕がなければ裁判になろうと、払えないことには変わりません

問題は実は払える余裕が少なからずあるのに、今まで放置してきた場合は、痛いところを突かれる可能性があります。

払いたくないから放置は手厳しい結果に!

債務名義の取得で覚悟しなければならないのが、郵便貯金や銀行預金の差押え、給料の差押えです。

家財道具や自動車に関しては、あまり心配しなくても大丈夫でしょう。

自動車の差押えについては、後から触れます。

住宅ローンの借入時から同じ職場で働いていれば、債権者も把握してますので給与を差押えることも可能です。

このような場合、裁判になってから慌てて対応しても、債権者としては何を今更と思うでしょう。

そうならない前に、対処しなければならなかったのです。

債権者には、きちんと頭を下げて交渉してみるしかありません。

差押えを防ぐ手段はない

任意売却後の残債で車の差押えや自動車ローンの一括返済を迫られる?

任意売却後の残債で車の差押えや自動車ローンの一括返済を迫られる?

 続いて、任意売却後の疑問で自動車の保有について解説します。

任意売却後も自動車を保有していて大丈夫でしょうか?」という疑問をお持ちの方が多いのも、また事実であります。

任意売却後に残債があると「車を差押えをされるのでは?」という心配が尽きないからです。

また、自動車ローンの返済中であれば「一括返済を求められ、車を引き上げられてしまうのでは?」といった疑問もでてきます。

単刀直入に申し上げて、自宅などの不動産を任意売却した方が、資産価値のある高級車に乗っているようなケースではないと想定して答えるならば大丈夫です。

基本的には問題無い!

車を失えば生活も成り立たない

 任意売却後のお住いは変わっても、ご家族も含めて通勤や通学などの基本的な生活スタイルは変わりません。

特に、自動車は地方にお住いの方にとって、大切な移動手段です。

無くなれば通勤や子供の通学、そしてお年寄りも同居していれば通院もできない可能性があります。

また、当事務所へ相談の多い自営業の方は、職種よっては自動車が無ければ、仕事もできなくなる恐れがあります。

仮に任意売却後に多額の残債があったとしても、生活に必要な車を手放すよう促す債権者では、その後の回収の見込みについては絶望的となってしまいます。

都心を除けば自動車は必需品

自動車が必需品とみなされないケースは?

 任意売却される方の多くは、不動産を売却してもローンを完済できず、残債が生じてしまいます。

その中で週末にしか利用しない自家用車の維持費が高額で、残債の返済が少ないとなれば債権者の理解は得られないかもしれません。

その反面、通勤・通学や仕事で必要な自動車を売ってまで、返済を迫ることは通常ありません。

自動車の利用目的が決まっていて「必要不可欠なものなのか?」

ある程度は、ご自身で判断できると思います。

高額な維持費を負担してまで自動車が必要か?

任意売却後の残債で車の差押えは不可能に近い

 それでは、任意売却後の残債の回収を理由に「車を差し押さえることは実務上可能なのか?」

非常に気になるところです。

結論としては、ほぼ困難と言って差し支えないでしょう。

金融機関やサービサー等の債権回収専門業者が、自動車を差押える場合、どのような条件が必要になるか?

〈自動車差押えの要件〉

  • 債務名義の取得
  • 自動車の登録事項等証明書

上記の2つが必要となります。

自動車の差押えも強制執行のため、やはり債務名義の取得は必要となります。

債務名義の取得」については、上記で解説済みのため「債権者のできること・第2段階」をご覧ください。

自動車の登録事項等証明書

 陸運局で発行してもらえる書類ですが、以前は自動車のナンバープレート(自動車登録番号)のみで簡単に取得できました。

しかし、平成19年11月より犯罪利用の防止や個人情報保護の目的により、自動車の登録事項等証明書を取得するには自動車のナンバープレート(自動車登録番号)の他に車体番号も必要になりました。

従って、自動車を販売した業者であれば分かりますが、その他の者が把握するにはボンネットを開けてみたり、車検証でも確認しない限り調べる方法がありません。

事実上、債務者本人が協力しなければ、車体番号の確認は難しいでしょう。

車のナンバーではなく車体番号が必要

本人名義の自動車の確認自体が困難

 その他の点では、所有者と債務者の名義が一致している必要があります。

家族名義やローン中でクレジット会社名義の場合もあり、その様なケースでは差押えることは不可能です。

そもそも「債務者が自動車を保有しているか?

その確認も債権者側が行わなければならず、仮に所有していれば自動車を差押え、不動産と同様に裁判所での競売は可能となります。

しかし、費用対効果を考えれば、得策とはいえないでしょう。

ちなみに、同じ自動車でも軽自動車の場合は、登録制度自体がないため自動車の差押えではなく、動産として差押える必要があります。

軽自動車も含めて自動車の差押えはハードルが高い

自動車ローンの一括返還を求められる理由は?

 「自動車ローンの一括返還を求められるのでは?」と心配されている方は信用情報機関に登録されることを気にかけてのことだと思います。

自動車ローンの契約条項では「信用情報機関に金融事故の情報が登録(いわゆるブラックリストの登録)されると一括返済を求めることが可能」としているからです。

この一文がとても大きな意味を持ち、ローン会社次第で一括返還を求めることが可能となるからです。

ローン会社は一括返還を求められる!

しかし、自動車のローン会社にしてみれば遅滞なく返済されている限り、何もデメリットはありません。

他社の金融事故を理由に、一括返済を求める可能性は低いでしょう。

しかも、他社のローンは焦げ付いても、自社の返済をきちんと続けてもらえれば利息も付されます。

ローン会社にしてみれば、見込みのない一括返済を求めるよりも、完済してもらうことが結果的に利益も伴います

大抵の方は、住宅ローンと比べれば自動車ローンは返済額も低い傾向にあります。

住宅ローンは滞納しても、自動車ローンは返済を継続しているならば問題は発生しないケースがほとんどです。

ただし、自動車の買い替えなどで新たなローンを組む場合、信用情報の回復がない限り審査をパスしないとご理解ください。

ローン会社は返済の継続でメリットを享受できる

自動車ローンも滞納してしまったら

 現在では自動車ローンは残価設定クレジット等もありますが、こちらも含めて自動車ローンとします。

どちらにしても、自動車ローンも滞納してしまえば、やはり問題は生じます。

自動車ローンを利用する場合「所有権留保」といい、ローンの返済中は所有者が自動車を販売したディーラーやクレジット会社(以下、ローン会社)の名義となっていることがあります。

そのため、自動車の所有者(名義)の違いによって対応が異なります。

〈ローン利用時の自動車の名義〉

  • ディーラーやローン会社(所有権留保)
  • 借りた本人

ディーラーやローン会社(所有権留保)

 自動車の所有者(名義)がローンを借りた本人ではなく、ディーラーやローン会社の名義の場合、所有権留保となり、いわば自動車が担保になっています。

所有権留保でローンを滞納すると「自動車の引き上げ」と呼ばれ、担保の自動車を名義人となるディーラーやローン会社へ引き渡すことになります。

そして、担保の自動車は売却されます。

不動産の任意売却同様に残債があれば請求されることになります。

ただし、自動車ローンの滞納でも自動車自体が古く、無価値のような場合は、引き上げをしてもらえないケースもあります。

引き上げを断られると、残債の返済も含めローン会社と話し合いになります。

所有権留保は自動車の引き上げ

借りた本人

 銀行などから借りた自動車ローンの場合は、こちらに該当します。

自動車の名義は、基本的にローンを借りた本人と同じです。

購入資金は借りてますが、自動車は担保になっていないため「引き上げ」はありません。

ローンを滞納した結果、自動車は残りますが期限の利益を喪失し「一括返還を求められます。

期限の利益の喪失については、住宅ローンも同様のため詳しくは、以下の記事を参照してください。

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滞納すれば一括返還

任意売却検討中で自動車が気掛かりな場合

 任意売却を検討していて、どうしても自動車が気掛かりであれば、ご家族等の身内に売却して、名義変更後に使用させてもらう形を取れば、多少不安は和らぐかもしれません。

その際、任意保険の切替で保険等級が変わり保険料の増額になる事もありますので慎重に検討しましょう。

また、自動車ローンで購入の場合、完済後は早めに所有権解除の手続きを取り、その後、同様に売却・名義変更の流れとなります。

※ 生活に必要程度の自動車の利用についての記載で、決して資産隠し等を推奨している訳ではありません。

任意売却は大抵の方が初めて経験で、分からないことや不安なこともたくさんあります。

けれども、実際に任意売却業者に質問してみると意外に簡単に返答され「大した問題ではなかった・・・」と後で思うこともあります。

どこの業者も任意売却の相談は無料です。

積極的に活用し、後悔しない任意売却を目指しましょう。

不安ならば早めの相談を心掛ける!

残債の問題は借金の有無

 残債に関して、実は根本的には単純な問題で「借金の有・無」だけです。

任意売却前は住宅ローンならば「自宅がどうなってしまうのか・・・」という問題で頭を悩ませます。

しかし、任意売却後は、その問題は無くなり、後は「借金が有るのか・無いのか」のどちらかとなります。

要するに、借金を放置して置いたら裁判になってしまったということです。

残債の相談だけでは、もはや詳しい状況は分かりませんが、払える余裕が無ければ心配する必要はないかと思います。

しかし、借金が払えるのに払わなかったのであれば、そのツケは回ってくるかもしれません。

任意売却後の残債は初めから向き合う

誠意を持って対応する

 任意売却後に残債があれば、きちんと債権者に対して、今後はどう対応していくか説明しなければなりません。

最も債権者によっては、返済能力が無いような方にも、心理的プレッシャーなのか、時効の中断が目的なのかは分かりませんが訴訟してくる場合もあります

債権者としては本当に払えないかどうかを確認する術がないのも事実なので、まずは債権を保全しておくというのも一つの方法なのかもしれません。

債権者も本当の返済能力が分からない

そのような場合も、払えないことには変わりませんので、状況を説明するしかありません。

それでも定職を持ち、働いている方であれば、全く払えないと考える方が不自然で、少しずつでも返していくのが借金の対応ではないでしょうか。

そして、どうしても返済を拒否したいと考えるならば、自己破産も選択肢のひとつです。

残債の不安を解消するなら自己破産も検討!

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競売も残債があれば請求される

 不本意ながら、住宅ローンが払えずに自宅が競売で処分されても、残債があれば請求されます。

 『10年前に競売で自宅を失ったが、最近になって残債を請求され、どうしたらいいか?』という相談を受けたこともあります。

競売でも任意売却でも残債があれば請求される!

競売で不動産が処分された方、任意売却で不動産を売却された方、どちらも残債の請求について悩んでいる方は多いと思います。

同じく残債を請求されるなら「任意売却が競売より精神的負担は少ない」と思います。

それでは、競売も任意売却も含め、残債の請求をされたときの相談は、どこにすればいいのか?

続いて解説していきます。

残債があれば、競売でも終わらない!

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任意売却後の残債についての相談先

 そもそも、任意売却の前に残債については、詳しく説明を受けていると思われます。

残債があれば、請求されるのは当然のことです。

サービサーや金融機関などから残債の請求を受け、対応に苦慮した場合、まずは任意売却を依頼した業者に連絡し、詳しく状況を伝えましょう。

任意売却の専門業者であれば、大抵は無料で相談に乗ってくれます。

それでも不安であれば、法律の専門家に相談して下さい。

任意売却を依頼した業者へ相談しよう!

競売後の残債についての相談先

 競売後の残債について、任意売却業者では対応することができません。

その理由として、もともとは不動産担保ローンでしたが、競売後は単なる無担保債権となってしまいます。

いうなれば、ただの借金の相談を、任意売却を取扱う不動産業者に相談する時点で筋違いです。

自身で対応できなければ、法律の専門家に相談することをお勧めします。

任意売却業者は単なる借金の相談は不可

残債のみの相談は不可

 どこの任意売却業者も同じですが、他社で任意売却した件も含め、競売後の残債等、相談やアドバイスはできません

また、任意売却の前に残債について悩んでいる方が多いのですが、仮に競売になっても、残債があれば任意売却と同じように請求されることは、繰り返し触れてきました。

そして、「残債は単なる借金が残っている状態」と認識してください。

競売になれば、金融機関が勝手に処分するから、「残債も消える・・・」ということはありません。

競売でも任意売却でも「借金を完済ができるか・できないか」で残債の有無が決まります

住宅ローンが払えない状態を続けることは、金融機関にとっても当然、見過ごすこともできません。

それゆえに、競売による強制処分以外、方法がありません。

できるならば、所有者自身が早めに任意売却を決断し、競売の申立て前に売却することが、住宅ローンの滞納問題を解決する有効な手段です。

残債の返済に迷いがあるのは当然ですが、競売より任意売却ほうが精神的負担は少なくてメリットはあると筆者は考えております。

精神的負担が少ないのは断然、任意売却!

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残債の相談先:まとめ

 競売か任意売却に関係なく残債があれば、請求されます。

その残債について、相談するときはどうすればいいか?

残債の相談先

  • 任意売却の場合
     任意売却を依頼した業者に、まずは相談して下さい。
     解決できなければ、弁護士等、法律の専門家へ相談
  • 競売後の場合
     弁護士等、法律の専門家へ相談して下さい。

他社で任意売却された方の相談が多くあります。

どこの任意売却業者も同じですが、他社で任意売却された方の残債の相談、競売後の残債の相談を受け付けることはありません。

他社で任意売却された方の相談には対応できません
残債のみの相談先は法律の専門家へ!

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