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複数の不動産が競売に自宅だけ任意売却は可能?
複数の不動産を所有していると聞けば、何とも羨ましいと思うことでしょう。
しかし、その複数の不動産がまとめて金融機関の担保となっていると、借入金滞納の影響により複数の不動産をまとめて競売に掛けられてしまうことがあります。
もしも、その中に自宅などの不動産も含まれていた場合、まとめて競売となり他の不動産と一緒に落札されてしまうのでしょうか?
この様なケースの多くは企業であったり、中小零細企業の経営者が経営者保証により自宅などを担保提供している際に発生してしまいます。
また、この記事では農業従事者のケースも例に取り上げております。
事業に失敗したとはいえ、自宅が競売となることは何とか避けたいものです。
FP&不動産コンサルの有資格者が「複数の不動産がまとめて競売となった場合、自宅など一部の不動産だけに限って任意売却はできるのか?」について解説します。
自宅など特定の不動産だけを任意売却することは可能
複数の不動産がまとめて競売になった場合、自宅など特定の不動産を選んで任意売却はできるのか?
結論を先に書きますと、まとめて複数の不動産が競売となっても、自宅など特定の不動産を任意売却することは可能です。
ただし、任意売却の原則として競売を申立てた債権者が認めることが前提となります。
任意売却は元々、債権者の同意が無ければ不可能なので、基本に戻れば、それは債権者との交渉次第となります。
債権者が任意売却が競売よりも有利に売却できると判断すれば、任意売却成立の可能性はアップします。
まずは債権者が任意売却を望むか!?
任意売却は債権者の同意で可能となる
前項で「競売を申立てた債権者が認めることが前提」とサラッと書いてしまいましたが、競売を申立てられた事実から元をたどると、もっと前に任意売却のチャンスはあったはずです。
債権者からしてみれば『何を今更、任意売却ですか!?』と言われてしまう可能性もあります。
それだけ、競売申立て後の任意売却はハードルが一段と上がってしまうことをご理解ください。
任意売却については早めの相談が鉄則です。
複数の不動産が競売となった農業従事者の例
複数の広大な農地を所有し、農機具などの設備投資で日本政策金融公庫から借入れたものの、約束通りの返済ができなくなった方からの相談例を見てみましょう。
返済が遅れ遅れとなり状況としては、日本政策金融公庫に相談、リスケジュールを希望したものの、簡単には応じてもらえず、やむを得ず自宅を追加担保として提供することになったのですが・・・
借入金の返済が約束通りにできそうもない場合、一時的に返済額を減らしてもらうなどの対応。
あくまでも一時的なので元の返済に戻すのが原則。
農業も例外なく競争が激しいため、やはり、経営を立て直すことは難しく、やがて自宅と農地を含めると数十以上の不動産がまとめて競売へと進展してしまいました。
相談者は、経営が上向かない以上、農地の部分に関しては競売回避を断念し、自宅だけは任意売却で手放すことを希望しておりました。
複数の不動産がまとめて競売になっても特定の不動産を任意売却する方法
相談者のように複数の不動産の中から、自宅などの特定の不動産だけを任意売却するには、どうしたらいいのか?
裁判所は複数の不動産がまとめて競売の申立がなされると、その中から特定の不動産を複数のグループに分ける場合があります。
グループ分けする理由は後で説明しますが、グループごとにひとまとめになった不動産をセットで売却することになります。
このことを「一括売却」といい、任意売却する場合は「一括売却」とされた複数の不動産がまとめられたものを任意売却する必要があります。
ただし、この「一括売却」の前に、まず最初に複数の不動産が競売では、どの様に売却されるのかを知ることが重要です。
競売では複数の不動産はどの様に売却されるのか?
複数の不動産が競売の申立てへと進行した場合、まとめて落札するような入札者に売却するのでしょうか?
例えば、一戸建てやアパート、別々のマンションが3部屋あった場合など、まとめて複数の不動産を欲しがる者しか入札に参加できなくなってしまいます。
これでは条件としては厳しく、競売で、しかも高値で売却するのは難しいと考えるのは素人でも分かると思います。
まず、競売の話を整理します。
複数の不動産を担保にお金を貸している債権者が、担保の不動産を一度にまとめて競売を申立てると、裁判所では1つの事件番号を割当てます。
例 【 令和5年(ケ)999号 】といった感じです。
複数の不動産があっても、事件番号は1つで不動産ごとに物件番号が付けられます。
不動産が20個あったとしましょう。
物件番号も順番に1~20までとなり、土地や建物も1つの不動産として個別にカウントされます。
そして、各不動産を個別に売却するのが原則となっています。
面白いことに、複数まとめてでは無くて、真逆の個別に売却することになっています。
個別に売却するのが原則だが・・・
複数の不動産でも裁判所の判断で「一括売却」となることも
前項では、個別に売却するのが原則としましたが、それでは不動産によっては有効に利用できず、マイナス面も大きくなってしまう場合があります。
分かりやすいのは、一戸建ては土地と建物に分かれ、個別の不動産ですがバラバラに売却するよりも、土地と建物をセットで売却するほうが高値で売れそうですよね。
そうなると裁判所の判断で複数の不動産をまとめ有利に売却できることになります。
複数の不動産をセットで売却することを「一括売却」といいます。
この一括売却は、裁判所の裁量で決めることができます。
農業従事者を例にすると、相談者の所有する不動産を大きく分けると、自宅以外は点在する農地です。
不動産の種類
- 自宅(土地・建物)
- 点在する複数の田畑(土地)
下の図を見ると、それぞれ場所が異なる田畑は、まとまりごとに一括売却と裁判所が決めていきます。
※ 図は説明しやすいように、13の不動産がまとめて競売になった例としています。
〈13の不動産の競売例〉
- 物件番号1~6
6つの田んぼを一括売却 - 物件番号7~10
4つの畑を一括売却 - 物件番号11~12
土地建物の2つを一括売却 - 物件番号13
畑1つで売却
「物件番号1~6」は田んぼとしてまとまっているので分けずに一括売却となっています。
「物件番号11~12」も同様に分けることは望ましくないので土地建物の一括売却となっています。
任意売却する場合は、当然ながら土地建物を合わせて任意売却する流れとなります。
裁判所は状況に合わせて競売でも、より高値で売却できるよう「一括売却にするか」「個別に売却するか」を判断しています。
そのため、同じ事件番号でも複数に分かれて入札されますので、実際の競売では落札される不動産と落札されない不動産も当然でてきます。
裁判所のウェブサイトが参考になります。
特に地方の物件は同様のケースが多く見られます。
※ 本記事では農地を一般の土地同様に表現し、競売の説明をしていますが、実際の農地の入札には買受適格証明書が必要ですので、買受適格証明書が無い場合、農地の入札には参加できません。
一括売却の不動産から特定の不動産だけ任意売却は?
ここで、ちょっとした疑問が出てきます。
例えば、競売で一括売却となっている複数の土地を特定の土地だけを選んで任意売却したいと希望した場合、任意売却は可能なのか?
(図を例にすると物件番号1~6の6つの田んぼの内、2つの田んぼが欲しい場合など)
先ほど一括売却にするかの判断は、裁判所が決めていると書きました。
まとめることで有効利用できるとの判断から一括売却となっています。
その一括売却となっている不動産の中から、特定の不動産だけを任意売却して下さいと頼んでも、まず、首を縦に振る債権者はいないでしょうから、難しいと言わざるを得ません。
複数の不動産の中から特定の不動産を任意売却する際に注意すること
もともとは複数の不動産を所有していたものの、まとめて競売へと進行してしまい、特定の不動産のみ任意売却を希望する場合に注意すること。
裁判所による不動産の評価額が決まるまでは、任意売却に応じてもらえる可能性は限りなく低いと覚悟してください。
そのため、競売の申立後であれば裁判所の評価額が出る前には、任意売却を依頼する業者とは対応を協議しておく必要があります。
不動産の評価額が決まり次第、債権者と価格の調整を行い迅速に任意売却を進めなければ、時間切れとなってしまいます。
残された時間を有効に使うには、できる限り早く専門家へ相談することをお勧めします。