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飲食店や零細企業の経営者からリースバックの相談
飲食店や中小零細企業の経営者から、事業を継続しながら「リースバックを希望する相談」が増えております。
当事務所への相談例としては、店舗や事務所となる建物(土地も含む)を所有している方が対象者です。
その建築費や改装費用などを借入れて返済してきたけれど、「売上減少や原材料の値上げで限界にきている・・・」という内容がほとんどです。
具体的には、資金繰りが厳しく閉店や廃業は避けたいので『リースバックを検討できないか?』という相談が多数を占めております。
この記事は、FP&不動産コンサルの有資格者が、「飲食店や零細企業がリースバック成立に必要なこと」について。
そして、経営者自身が連帯保証人となっており、『早い段階で任意売却を決断するべきなのか!? 』といった疑問についても、解説します。
リースバックは解決策となるのか?
「リースバックで経済的な苦難から逃れられないか!?」
不動産を所有する経営者であれば、誰でも一度は考えるものです。
しかしながら、「リースバックが抜本的な解決策になるのか!?」というと、疑問がわきます。
その理由として、リースバックを望む場合、所有する不動産を第三者へ売却します。
その際、不動産を担保に借ている借金は全額返済(完済)が必須となります。
実際には相談者で、この条件をクリアすることが困難な方が、非常に多いと感じています。
借金を完済できないとなると、オーバーローン(債務超過)状態で不動産を売却するため、金融機関が損切りする任意売却でなければ不動産の売買はできません。
つまり、借金を完済できない以上、「任意売却とリースバックの組合わせ」で経済的な苦難を乗り越えようと相談者は模索しています。
まずは、多くの相談者が希望する「任意売却とリースバックの組合わせ」については、かなりの確率で成立しないと、認識してください。
厳しいですが、これが現実となります。
繰り返しとなりますがリースバックの成立に必要なこと、それは、不動産担保ローンの完済です。
ここをクリアしなければ、リースバックを解決策として検討することは困難です。
リースバックは不動産担保ローンの完済必須
リースバックが希望でも非現実的
上記で述べたように、不動産担保ローンの返済が厳しくなり「リースバックを検討」するならば、売却に伴い借入金の全額返済(完済)が求められます。
もし、借入金の完済が不可能であれば、リースバックでの対処は難しくなります。
そのため相談者ができることは、借入先の金融機関と交渉し、返済計画の一時的な変更(以下、リスケジュール)を願い出ることです。
特徴的なのは融資している金融機関も、リスケジュールに関しては、非常に協力的で柔軟に対応はしてくれます。
それでも、コロナウィルスの影響以降、すでにリスケジュールはしたものの、想像をはるかに超える経済的な打撃を受け、返済がほぼ不可能な状態まで来ている方が大半です。
リスケジュールは実行済み
返済計画に狂いが生じる経営者が続出
店舗や事務所の建築費用・改装費用など、不動産を担保に借りている場合、その融資金額も少ない方で数百万円~、多い方で何千万円~数億円となります。
当然ながら、毎月の返済額も住宅ローンの数万円~十数万円というレベルではありません。
コロナウィルスの影響以降、あまりにも急激な売上の落込みもリスケジュールで1度は難を逃れたものの、原材料費の値上げと人件費の上昇が重なり、もはや立ち行かなくなっています。
飲食店に限らず、零細企業もほぼ同じ状況です。
数年前とは全く異なる状況で、返済計画に狂いが生じてしまうのは無理もありません。
コロナの影響にとどまらず苦境続き
リスケジュールでは対処不可
コロナウィルスの影響も引きずりながら、零細企業に対し金融機関がいくらリスケジュールに応じても、急激な売上げの回復は見込めません。
また、インバウンドによる恩恵も、零細企業では享受しがたいのが実情です。
しばらくは何とか頑張って、様子を見るような状況でも決してありません。
更なるリスケジュールがなければ、借入金の滞納寸前となってしまいます。
ただし、1度目ならまだしも「2度目のリスケジュールを金融機関が認めるのか?」
こればかりは、『非常に厳しい・・・』と言わざるを得ません。
もうすでに、リスケジュールでの対処可能な域を超えています。
リスケジュールで対処不可の経済状況
ベテランの飲食店経営者ですら苦境に立たされている
小規模な飲食店の経営者が、所有する店舗で営業を行っているケースは多々あります。
大方は相続等で元々所有していた土地に店舗を構えているケース、或は自宅兼店舗の様な営業スタイルとなっております。
これまでは派手に儲かることはなくても、借入れは計画通りに返済し順調に経営してきた方たちです。
そのキャリアはここ数年の話ではなく、10年~20年超といった経歴です。
筆者の主観ではありますが、飲食業は参入はしやすくても、一番と言っても過言では無いくらい経営の難しい業種です。
その難しい業種でありながら馴染みの客を獲得し、今までは経営が成り立ってきた、いわばベテラン経営者たちが立ち行かなくなっています。
ベテラン経営者も岐路に立たされている
今までの対処法は通用しないことも
これまでであれば、相談者の年齢や残債を考慮し、店は閉店しても賃貸の店舗として貸し出したり、売却以外の選択肢も提示できるケースもありました。
しかし、最近では1歩都心を離れ郊外に出ると、立地の良い場所でも空き店舗が多いと感じます。
決して思い過ごしではなく、現状では飲食店に限らず出店しようとする積極的な経営者も少ないのは容易に想像できます。
政府の方針もあり、柔軟な返済方法へとリスケジュールには金融機関も応じてはいます。
しかし、ほぼ返済が不可能となれば、ただ見過ごす訳にはいきません。
その結果、担保となる不動産の処分を求められます。
また、リースバックを希望して断念したとなれば、オーバーローンの可能性が高いでしょう。
その際は、任意売却となってしまうため、金融機関との交渉も必要となります。
あまり判断に迷っていれば、競売のリスク生じてしまいます。
返済不能となれば不動産の処分がルール
簡単には踏み出せない経営者保障の問題
それでは、「早々に不動産を売却してしまえば済むのか?」
ところが、そう簡単にはいかない事情も・・・
最近は減少傾向にあるものの、まだまだ個人事業主や零細企業の経営者は、ご自身が所有する不動産を担保として提供したり、経営者が個人保証しながら事業資金を借入れています。
その他、店舗や事務所だけでは担保価値が足らず、経営者個人の自宅を担保に事業資金を借りているケースも珍しくはありません。
経営者が自宅を担保提供していると、同時に自宅も失ってしまうリスクもあります。
店舗や事務所も自宅と同時に手放すとなれば、仕事も住む場所すらも無くなってしまいます。
更に、オーバーローンのため任意売却となれば、、現実的には任意売却後の残債の問題が付いて回ります。
このような現実もあり、簡単には任意売却を進められない要因となっております。
経営者保障が任意売却の足かせに!
任意売却に関わる者から言えること
これまで経験したことが無い、コロナウィルス感染症による経済の落込みを乗り越え、現在ではすっかり回復したかのように日本経済は見えるかもしれません。
しかし、小さな飲食店や中小零細企業の置かれている状況は、全く異なります。
飲食店の経営者、他業種の中小零細企業の経営者の方々も、このまま事業を継続していいものなのか判断に迷っていると思います。
判断に迷ったら?
これまで数多くの任意売却に携わったからこそ、言えることがあります。
長年事業を続けてきた自営業者や零細企業の経営者は、皆まじめで仕事熱心です。
しかし、事業の継続を優先させるがあまり、借金の返済を借金でまかなう、自転車操業を考えるようになったら要注意です。
必ずや、そこで思いとどまって下さい。
借金を借金でまかなうのは不可
不動産があるが故に、2番抵当や3番抵当を設定し、少額を借入れるのも同じことです。
その先を進めば、多重債務者となり単なる返済苦の先延ばしで、不動産を手放す結果は変わりません。
ただし、同じ不動産を手放すでも、競売と任意売却では大きな違いがあります。
任意売却は競売より精神的負担が少ない
後者を選ぶならば傷が浅く、そして債権者数も少ないうちに決断できれば、計画的に進めることも可能です。
債権者の数が増えれば、債権者同士で配分に納得できず、任意売却を断念しなければならない場合もあります。
その先は、どうなるのか?
競売以外、道はありません。
それでは、リースバックも難しく、借入金の返済が追い付かないことが予想されるならば、どうするべきか?
その答えは、更なる借入は避け、速やかに不動産の売却を決断することです。
たとえ任意売却となり、残債の問題があったとしても、やはり答えは変わりません。
多重債務で借金を増やすより、任意売却により借金総額が減るからとなります。
多重債務者への道は絶対に避ける!
先行きは全く見通せない
日本政府も大規模な経済政策を行ってはきたものの、零細企業の景況感は改善されているとは、誰も感じてはいないでしょう。
むしろ、ジワジワと悪影響が出てきているように思えてなりません。
そのため、多少景気が上向く程度では、状況が改善するほどの実感が持てるかは疑問です。
そして、金融機関もいつまで柔軟に対応してくれるのか、現時点で答えは出ません。
また、柔軟に対応すれば、そのツケを払う時期がやってきます。
状況が好転していれば、さして問題では無いかもしれませんが、そうでなければ考えただけでも恐ろしくなります。
もうこれ以上、無理をしないと決断するのも経営者です。
今までと異なる厳しさを感じたならば、事業を継続するか見定めるタイミングになるのかもしれません。
事業の撤退もすべては経営者の判断に委ねられている!