リースバックの仕組みと計算式

 住宅ローンが払えないとき、誰もが一度は考えるリースバック、こんな方法があるのかと感心しても、現実は厳しいものです。

それでも、淡い期待を込めて検討するならば、簡単な計算方法を試して下さい。

目次

あなたが家賃をいくら払えるか?

 リースバックは一旦、投資家などの第三者に不動産を売却し、購入者へ家賃を支払い住み続ける方法です。

そのため、リースバックを成立させるには、リースバックを希望する自分自身が払える家賃も重要なポイントになります。

まず初めに、家賃として毎月無理なく払える金額はいくらなのか? 一番に考えなけれなりません。

この時点で、今までの住宅ローンの返済額と同じでは到底無理な話です。

住宅ローン>家賃は当然

 家賃として毎月払える金額は、基本的には住宅ローンの返済額より大幅に少なくなければ、今度は家賃の支払いで悩むことになります。

例えば、住宅ローンの返済額が今まで12万円だったから、家賃は月々8万円なら払えると考えたとします。

〈払える家賃で計算〉

  • 月額家賃×12か月=年家賃
  • 8万円×12=96万円

 家賃8万円の場合、投資家は1年間で96万円を受取ることになります。

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リースバックする投資家は何のために購入するか?

 ースバックする投資家の購入理由は、リターンを得ること、年家賃96万円だとすると、投資額に見合うリターンなのかを考えます。

不動産投資では主に利回りが重視され、よく数字で○○%なんて表現を見たことがあるかもしれません。

では、利回り10%を先ほどの例に当てはめると、購入価格はいくらになるのか計算してみます。

〈投資家の買取価格を計算〉

  • 年家賃÷利回り=価格
  • 96万円÷10%=960万円

 投資家は家賃8万円の物件を960万円で購入すると、年間10%の利回りが得られる計算になります。

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利回りの設定は物件次第

 先ほどは利回りを10%で計算しましたが、何%がふさわしいかは物件により異なります。

東京の都心部であれば、よほどの悪条件でない限り、利回り10%の投資物件は御目に掛かれません。

ところが一歩郊外に出れば、利回り10%超でも、見向きもされない物件がゴロゴロあります。

築年数やその他の条件もありますので、利回りを何%に設定すればいいのか判断するのは、なかなか難しいものです。

しかし、今回のテーマはリースバックを考えたとき、その可能性があるかを見極める目安になればと思いますので、不動産投資で考えた場合の利回り10%で、まずは計算してみましょう。

そして、利回り10%で導き出された価格が売買価格として、随分と安いなぁと感じたならば、債権者もまた同じ印象を受ける思います。

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債権者の同意が条件

 一つの目安として利回り10%で計算してみることを提案しましたが、計算式の項を例にすると960万円となりました。

通常の不動産売買では、所有者の売却希望価格で購入者が見付かれば、取引は成立します。

しかし、リースバックが前提の任意売却となれば、そこには債権者(金融機関)の同意も必要になってきます。

もちろん任意売却でも借金が完済できれば、債権者の同意は不要ですが・・・。

先の960万円での購入を希望する投資家がいたとしても、債権者が960万円での売却に同意しなければ、取引自体が成立しません。

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リースバックでの売却価格と相場を比較

 任意売却でリースバックを成し遂げるには、不動産が適切な価格で取引できるかに大きく左右され、売却される不動産は入居者のいる投資物件と見なされます。

不動産価格の傾向として、同じ不動産を入居者のいる投資物件と購入者が住める居住用不動産とで分けて値付けするならば、通常、前者のほうが売却価格は低くなります。

そのため、債権者は任意売却によって借金の回収を試みる場合、安く売る選択肢はありません。

あなたが払える家賃から計算した売却価格が、購入者が住める居住用不動産の相場と比較して差が無ければ、適切な価格と言えるので債権者は同意してくれるでしょう。

しかし、相場より低い価格となれば、債権者の同意は得られないと考えて下さい。

リースバックのための高い家賃設定は不可

 前項では相場より低い価格での、任意売却は債権者が同意しないと書きました。

では、家賃を頑張って払うから高めに設定し、売買価格を相場と同程度にすれば債権者も納得するのでは・・・と考えたくもなります。

確かに一理ありますが、それもまた無理な話と覚えておきましょう。

理由として、高めの家賃設定でリースバックすると、家賃が払えなくなれば、入居者は退去することになります。

それ自体は仕方ありませんが、購入した投資家が同じ家賃設定で次の入居者を募集しても、空室が埋まらない可能性があります。

無理な家賃設定は投資家にとって、空室リスクの高い物件となってしまいます。

リースバックの成立には、家賃設定も近隣相場と比較して割高では、投資家に受け入れてもらえません。

結果的には売却価格も設定家賃も、どちらも適切な金額でなければならず、その上で債権者の同意を得ることは、余程の好条件が重ならなければ不可能です。

リースバックを家賃から逆算して見てきましたが、現実的には投資家の購入金額で借金が完済できなければ、その実現は困難と見るべきでしょう。

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この記事を書いた人

小田嶋譲のアバター 小田嶋譲 代表取締役

 有限会社 O&Trade代表 大学卒業後、不動産会社と譲渡債権回収の金融機関での勤務経験を経て独立。最近では特に自営業者の不動産担保ローンや不動産投資の失敗による相談が数多く寄せられ、お金と不動産の専門家、FP宅建士として難易度の高い任意売却に精通し、不動産に関わるお金の悩みの解決に取組んでいます。

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