離婚して縁を切ったはずの元夫婦が、その後も揉める要因の一つは、お金の問題です。
過去に記事で何度も書いていますが、離婚後に元夫名義の家に元妻と子供が住み続けるケースは、後々問題が噴出します。
元妻と子供が残って、元夫名義の家に住み続けるのには建前として、住み慣れた家を離れたくないという気持ちがあります。
また、それを正当化するための、もっともらしい理由もあります。
- 子供の転校を避けたい
- 元妻は住宅ローンの連帯保証人
1『子供の転校を避けたい』については、よく分かります。
しかし、2『元妻は住宅ローンの連帯保証人』については、目前の厄介な問題には目をつぶって避けているようにも感じます。
連帯保証人だから売却しない
離婚を機に自宅も売却してしまえば、元妻は連帯保証人からは解放されます。
そうするのが理想的ですが、売却しても住宅ローンの残高に満たない(オーバーローン)ため、不足分の現金が必要となり、用意する余裕の無い方は、元夫が住宅ローンを返済しながら住み続けてしまいます。
実際のところ、元妻が住み続けるのは、2の理由がほとんどでしょう・・・
離婚自体は夫婦の合意があれば可能なので、養育費名目で元夫が住宅ローンを返済する条件ならば容易に成立します。
元妻としては、離婚後の生活も案外、環境を変えずにスタートしてしまいます。
住宅ローンの滞納で連帯保証人ができることは?
ある日を境に元夫が住宅ローンを滞納してしまい、連帯保証人の元妻へ金融機関から連絡がきたら、どうなるでしょうか?
当然ながら元妻から元夫に対して、住宅ローンを払うように促しますが、そう思うように事は運びません。
元妻が『とにかく払って!』と一方的に請求しても、むしろ逆効果になることも・・・
それでも、連帯保証人の元妻もできることは、せいぜい2~3か月、元夫に代わり住宅ローンを払うことです。
元夫も払いたくても払えないのが現実で、その状況から執拗に住宅ローンの返済を求められれば、連絡を絶つことも不思議ではありません。
当事務所の相談者で、音信不通になった元夫のもとへ子供と一緒に訪ねたら、警察を呼ばれて退散したという方もいました。
ここまでひどくは無くても、離婚後は元夫も自身の生活があるため、頑なに連絡を絶ってしまうことも珍しはありません。
金融機関は事務的にしか対処できない
住宅ローンの名義人(借りた本人)が返済しなければ、金融機関も待ってはくれません。
返済が無い以上、不良債権となり金融機関の社内ルールに沿って処理されます。
この状態からでは、連帯保証人である元妻が住宅ローンを一括返済でもしない限り、今の自宅を残す方法はありません。
実質的には一括返済が無理で、売却しても住宅ローンが完済できないために、ズルズルと元夫名義の家に住み続けてきた結果です。
ここまできたら、もう手放すことを考えて前に進むのが得策となります。
繰り返しになりますが、金融機関は待ってはくれず、返済が滞っている以上、次の展開は競売手続きにより、強制的に回収する手段に移行します。
任意売却にも元夫婦の関係性が障害となる
元夫からすれば、元妻と子供の住む家が競売によって処分されるため、普通に考えればあり得ない状況ですが、どうにもできないため現実から逃れたいと願うばかりです。
元妻と子供がこの悲劇を避けるには、競売の前に任意売却によって誰かに不動産を買ってもらうしかありません。
しかし、ここで大きな問題があります。
不動産の売却(任意売却も含む)は所有者が行うものです。
従いまして、元夫にその気が無ければ任意売却は不可能となってしまいます。
そして、意味するところは競売だけです。
元夫との関係が険悪であったりすると、例え元妻が連帯保証人となっていても所有者である元夫名義の家を売却することはできません。
実際のところ打つ手も無く、お手上げ状態です。
いずれ競売となることが分かっていれば、精神的負担を和らげるために早めに引っ越す等の対策が必要かもしれません。
元夫の自己破産で任意売却の道は開ける
元夫が金融機関や、或は元妻からの請求に嫌気がさし、知らず知らずのうちに自己破産をしてしまうこともあります。
最悪の状況の中でも、幸か不幸か元夫が自己破産することにより、実は任意売却の可能性が出てきます。
元夫が自己破産したことにより、不動産の売却については破産管財人(通常は弁護士)が行います。
自己破産後であれば、関係性が悪いため元夫の機嫌を損ねないよう等の気遣いも不要になります。
自宅を追われることに変わりはありませんが、住み慣れた家が競売で処分されるより、通常の売却とほぼ同じ任意売却で人手に渡れば、精神的な負担は全く違います。
これまでとは異なり、連帯保証人の元妻がプロ(任意売却の専門業者)の手を借りれば、任意売却の道が見えてきます。
住宅ローンの名義人でもある元夫が自己破産してしまえば、ほぼ不動産の売却は避けられませんが、早期に対応すれば任意売却の可能性は十分に残されています。
もちろん、破産管財人が同意するかは断言できませんが、大抵は任意売却に協力してくれます。
離婚時にもしもの時も想定しておく
誰でも住宅ローンを借りるとき、返済できなくなる状況はあまり考えてはいないようです。
返せなくなったら、家を売ればと軽く考えている方はそれなりにいますが・・・
しかし、実際には売りたくてもオーバーローンだった場合はどうするか?
そこまで想定して住宅ローンを借りている方は、ほとんど見かけません。
或は、その様な方はきちんと対処できるため、問題化していないのかもしれません。
また、妻に連帯保証人になってもらって住宅ローンを借りる際、離婚時はどうするか?
そこまで取決めをして、住宅ローンを借りている夫婦は更に少ないと思います。
しかし、起きてしまった現実は仕方ありません。
離婚後に元夫が住宅ローンの返済を滞らせてしまった場合、自宅は退去することをある程度覚悟しておくべきでしょう。
連帯保証人と離婚は無関係
そもそも連帯保証人の問題は未解決で離婚を進めた結果、大きな問題が表面化し、いよいよ区切りをつける時がきただけです。
元夫と険悪な関係になってからの任意売却は困難を極めるため、連帯保証人の内は返済状況に関しては情報を共有していく必要があります。
そして、いよいよ返済が難しいと判断できるならば、元夫婦協力のもと自宅の売却に向けて行動するのが、お互いの責任と言って差し支えないでしょう。