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住宅ローンで自己破産!自宅はどうやって売却される?
住宅ローンが払えず、自己破産すると現在所有している財産は自宅なども含め、手放さなければなりません。
この点については自己破産を検討される方であれば、ある程度は覚悟していると思います。
ただ、自宅を手放すにしても、実際はどの様にして手放すのか?
どういった手段で人手に渡ってしまうか、大変気になることでしょう。
自宅はどうやって人手に渡るの?
この記事は「住宅ローンが払えず自己破産した場合、その自宅がどうやて売却されるのか?」について、任意売却の現場に携わるFP&不動産コンサルの有資格者が解説します。
住宅ローンが払えなくなり、自己破産を検討されている方はぜひ参考にしてください。
所有者が自己破産した不動産は赤の他人が売却する
自己破産は裁判所が関わる正式な手続きです。
そのため、不動産などの財産が有りながら所有者が自己破産した場合、厳格なルールが定められています。
まず、自己破産する人に財産があると裁判所から破産管財人(弁護士)が選任されれます。
ここで注意したいのは、破産手続きを弁護士に依頼する方が多いと思いますが、その弁護士とは別人となります。
自己破産された方にとって、全く見ず知らずの弁護士が破産管財人として登場します。
そして「所有者が自己破産した不動産は破産管財人が売主の立場となって売却」します。
自己破産された方は、破産管財人によって不動産が売却されるのを見守ることになります。
愛着ある我が家であったならば、少し寂しい気持ちになるかもしれません。
所有者が自己破産した不動産は破産管財人が売却
破産管財人とは?
裁判所では、破産手続き(自己破産も含む)が開始されると、破産管財人を選任します。
破産管財人としては、弁護士が選任されるのが通例となっています。
破産管財人=(ほぼ)弁護士
破産管財人としての業務内容は色々とありますが、本サイトに関連する「不動産の換価処分」について簡単に説明します。
破産手続き(自己破産も含む)される方は、仮に財産が有ったとしてもトータルで見れば総資産はマイナスとなる者がほとんどとなります。
そのため、破産管財人が破産者が有していた財産を換価(お金に換える)することにより、支払うべき相手(債権者)に対して公平に分配(配当)するのが仕事です。
破産管財人は、破産者や何者かに勝手に財産が売却さてしまったり、都合よく処分するのを防ぐため、適切に管理しながら換価処分します。
破産管財人は換価処分まで財産を適切に管理
破産管財人は不動産売却の準備に一苦労
破産管財人は破産者の財産(本サイトでは不動産に限定)を適切に換価処分しなければなりません。
そのため、まず不動産鑑定士へ鑑定依頼が可能であれば好ましいのですが、数十万円の費用が発生するため事実上困難となってしまいます・・・
売却価格をどうやって決めるのか?
複数の不動産業者へ価格査定を依頼することになります。
複数の不動産業者としているのは、裁判所からも売却については公平性を求められているからです。
基本的には1社だけの査定では難しいようで、2~3社の査定書をもとに売却価格を決めています。
価格査定1つとっても、破産管財人が不動産業者へ依頼しなければならず、ある程度は馴染みのある不動産業者でなければ、ほぼ費用も出せないため頼み辛いのが正直なところではないでしょうか・・・。
破産管財人には表向きには見えない苦労がある
破産管財人は破産者の不動産をどうやって売却するの?
下準備が終わって、やっと破産者の不動産を売却する段階となります。
そうはいっても、破産管財人は弁護士です。
弁護士の先生でも、結局は不動産を売却する場合「不動産業者に依頼」することになります。
破産管財人として売却する不動産については、多少のことは破産者からヒアリングしてはいますが、基本的には何も知りません。
早い話、裁判所から弁護士に対して「この破産者の担当です。」と割り振られたような感じのため何も分からなくて当然です。
マンションでも一戸建でも、住んでいる訳でもないので知らなのが当たり前となります。
破産管財人は「何も知らない・分からない」状態で破産者の不動産を売却しなければなりません。
そのあたりの事情は査定依頼も含め不動産業者が関わっていますので、信頼して買い手を探してもらうことになります。
要するに破産管財人は、不動産業者を通じて不動産を売却することになります。
破産管財人としては、よく分からない状況のものを売却しなければならず、一言でいえば過酷な仕事です。
詳細は不明なまま不動産が売却される
所有者が自己破産した不動産はオーバーローンがほとんど
破産管財人が不動産を売却する場合、不動産業者へ価格査定を依頼、その後、不動産業者に買手を探してもらうと書きました。
ただし、価格査定によりある程度の売却価格を決めても、思うようには売却が進められない事情があります。
それは、売却する不動産を担保にお金を貸している金融機関や差押えに登記を行っている債権者の存在があるからです。
所有者が自己破産している不動産には、その資産価値を上回る借金が残っているのが普通なので、債権者の同意無しには売却することは難しいのです。
破産管財人でも売却するのに債権者の同意が必要となると、結局のところ破産管財人が売主となって任意売却をすることになります。
破産管財人の不動産売却は、ほぼ任意売却
破産管財人の任意売却は2通り
破産管財人が任意売却する場合、主に以下の2通りとなります。
〈破産管財人の任意売却〉
- 破産管財人が債権者と交渉し不動産業者へ売却依頼
- 破産管財人が不動産業者へ任意売却の依頼
上記のどちらで任意売却を進めるかは、破産管財人の方針によります。
破産管財人によって任意売却の進め方に違いがある
1.破産管財人が債権者と交渉し不動産業者へ売却依頼
任意売却にあたり、破産管財人が債権者と売却価格の交渉をして、買手のみを不動産業者に探してもらうケースです。
この場合、不動産業者は破産管財人より指示された価格で売却を進めるため、普通の不動産業者でも扱うことができます。
普通の不動産屋で売却可能
2.破産管財人が不動産業者へ任意売却の依頼
こちらについては、債権者と売却価格の交渉も含め、不動産業者に依頼するケースです。
住宅ローンを払えなくなった不動産の所有者と同じ方法で任意売却を行います。
任意売却の依頼者が、破産管財人に変わっただけと見れば分かりやすいでしょう。
ただし、債権者との交渉も不動産業者が行いますので、任意売却に精通する不動産業者でなければ破産管財人も恐ろしくてとても頼めません。
任意売却に精通する不動産業者が債権者も含めて対応する
破産管財人が売却する不動産は誰が買う?
破産管財人は売却する不動産について、仮にいろいろな事情があったとしても耳に入らなければ知る由もありません。
その意味は、購入後に何かトラブルなどが発生しても、買主側で対処してくださいとの立場となります。
従いまして買主にとっては、かなりリスクのある不動産となります。
そのリスクを理解してまで購入できるのは、プロと言えるでしょう。
つまり、買主も不動産のプロフェッショナルとなり、簡単に言えば買取った不動産を転売する不動産屋となります。
もちろん、一般の人が手を出すには相当ハードルの高い物件なので価格も控えめになります。
つまり、破産管財人によって売却される場合、相場とは幾分低い価格で売却しなければならず、購入者側もリスクがあるため致し方ない結果なのです。
購入側のリスクが高いため売買価格は控えめ
買主のリスクをもう少し詳しく
破産管財人が売主の不動産を購入する場合、マンションはきちんと管理組合が機能している物件ならば、購入後に設備の不具合が生じる程度を覚悟しておけば大丈夫かもしれません。
しかし、一戸建や土地の場合など、隣地との間に境界票が無かったり、隣地とブロック塀で仕切られていても、そのブロック塀はどちらの所有かも分からなかったりします。
破産管財人は境界がどこか知っている訳もないので、契約書には境界非明示として取引するのが一般的です。
境界の分からない不動産を普通の人が買うのは結構勇気のいる買物です。
破産管財人の売却は競売の条件に近い
一般人にはハイリスク
当然ながら建物についても同じで、購入後に雨漏りや傾きを発見しても買主で対応することになります。
住んでいる人ならば雨漏りや傾きは知っていると思いますが、破産管財人は住んでいた訳でもないので知りません。
買主はこのような事態も想定して購入することになります。
一般人が購入するならば、比較的築年数の新しいマンションであれば割とリスクは低い可能性があります。
購入後のリスクはすべて自己責任
破産者名が掲載される官報を見て買取希望もある
ケースとしては少ないかもしれませんが、破産すると破産者名と破産管財人名が官報に掲載されます。
その官報を見て直接、破産管財人のもとへ不動産の買取り業者から連絡が入り、破産管財人が買主探しを依頼した不動産業者の関りが無いまま話がまとまるケースもあります。
官報を見ている不動産の買取業者も存在する
破産管財人の任意売却が成立しないこともあるの?
破産管財人が不動産を売却する場合は、買い手にとってのリスクもあるため、どうしても価格は控えめとなると書きました。
そうなると債権者が価格に納得しないケースもあり、当然ながら任意売却が不調に終わってしまうことも珍しくはありません。
その先は、どうなるのか?
任意売却が成立しなければ、やがて競売となります。
破産管財人の任意売却も成立しなければ競売となる
競売までの時間はどれくらい?
金融機関によっては所有者が自己破産すると、すぐに競売を申立てるところもあります。
それでも競売で落札されるまでは時間を要しますので任意売却に応じる債権者も存在します。
要するに「債権者が納得できる価格で売却できるか?」が競売との分かれ道となります。
また、破産管財人も基本的には任意売却から進めますので、債権者としても破産管財人の意向を確認し任意売却には協力してくれます。
具体的に何か月とはお答えし辛いのですが、少なくても3か月程度は任意売却の時間は認めてくれるでしょう。
ここまでくると、自己破産しても、しなくても任意売却できることが、よくわかると思います。
自己破産しても不動産は任意売却か競売
本当に自己破産は必要か?
自己破産を検討する方は当然、借金を背負っています。
自己破産を決断できるのであれば、まず、その前に任意売却で負債総額を減らしてから考える選択肢も残されています。
残債の金額が判明する任意売却後に改めて、本当に自己破産が必要か債権者の対応を含めて判断してみては、いかがでしょうか!?
住宅ローンを含め、不動産を担保に借金している場合、まず不動産を任意売却して借金の総額を減らすことは債権者に対しても誠意ある対応です。
その上で、残債について全く対応できないようであれば、自己破産を選択しても遅すぎることはありません。
残債の負担が大きければ自己破産も有効
不動産があると破産費用も高額に
実は、任意売却後の自己破産には、有利な点があります。
自己破産は弁護士へ支払う報酬以外にも、裁判所へ納めるの予納金というものを準備しなければなりません。
その予納金は不動産を所有していると、何も財産が無いのと比較して高額になります。
任意売却後であれば、その予納金も減るので、破産費用が節約できます。
これは主に、破産管財人に対しての報酬も含まれているからです。
住宅ローンが払えなくなり自己破産を検討中であっても、任意売却で先に不動産を売却すれば残債の額もはっきりします。
どちらが正解かは他人が決めることではありませんが、自己破産を焦ってする必要もないと思います。
住宅ローンが払えない場合、まずは任意売却も含めて、専門家に相談するのをお勧めします。
破産費用を節約するなら自己破産は任意売却の後
自己破産前なら自分で売れる
住宅ローンが払えなくなり、自身が住んでいた家に全く興味が無ければ構いません。
しかし、自己破産の前に一歩とどまり、任意売却ならば自ら売主となって買主に引渡すことができます。
売却価格も取引内容も、通常の売買とほとんど変わりません。
買主にしても所有者から直接購入でき、不具合等は事前に伝えてもらえるので安心できます。
それでも「自己破産前に任意売却する・しない」は、当事者が決めることになりますので、どちらが正しいといった答えはありません。
筆者としては、ご自身が愛着のあった我が家を手放すならば、ご自身の手で任意売却するのが一つの区切りとなるような気がしてなりません。
任意売却する・しないも当事者の判断