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親子間売買で両親の老後破綻を回避したシングルマザーの事例

『両親の家を買いたい』というシングルマザー(以下、お客様)の方から相談がありました。
『両親の家を買いたい』その理由は?
ご両親が働き続ける理由が住宅ローンの返済のため、もう高齢なので仕事を辞めさせてあげたいとの思いが発端でした。
最近特に多い、年金だけでは足りず老後破綻に直結する住宅ローンの問題で、体調を崩せばかなり厳しい状態に追い込まれるのは目に見えています。
実は当事務所へご相談いただく前に、他業者様へ2件相談済みとのことでした。
結果として、お客様の目的は達成できましたが、前2件の相談先には疑問をお持ちでした。
それぞれ専門家へ相談したのに・・・、どのような対応となってしまったのか?
この記事では、FP&不動産コンサルの有資格者が「難しいとされる親子間売買の成立と同時に老後破綻を回避した実例」を解説していきます。
まずは、他業者様の相談結果から見ていきましょう。
相談先とお客様の状況
以下が、前2件の相談先となります。
〈2件の相談先とは?〉
- 法律(弁護士)事務所
- 任意売却を扱う不動産業者
そして、お客様の状況は以下の通りです。
<お客様の状況と条件>
- ご両親と現在のお住まいは別
- 勤続10年超のシングルマザー
- 売買金額は適正価格での取引を希望
- 自宅として購入
相談時の対応を順に見ていきましょう。
相談先1.法律(弁護士)事務所
1件目に相談したのは、法律事務所でした。
そこでの相談結果は、ご両親が住宅ローンという借金から解放されるには、自己破産を勧められました。
お客様からすると、ご両親は返済を継続しており滞納もありません。
売却すれば住宅ローンは完済できそうなので、何か違うと感じ、それまでとなりました。
この判断は、法律の専門家である弁護士であれば最も的確な返答ではあります。
しかし、自己破産をいきなり勧められてしまえば、躊躇するのは当然と言えるでしょう。
親子ローンのトラブル「親の老後破綻で子も道連れに」の記事はこちら
借金の対処法としては的確
相談先2.任意売却を扱う不動産業者
問題は2件目の相談先です。
1件目の相談結果が自己破産でした。
そこまでするなら「自分が両親の自宅を買ってあげれば、救えるのではないか?」と考え、即行動に移しました。
そして、インターネットの広告を見て、任意売却を扱う不動産業者へ相談となります。
もう既に相談目的は、親子間売買となり具体的に進めることになりましたが・・・
住宅ローンの申込に関して、3つの問題が発生し、話は一旦ストップしました。
親子間売買を決断するが思わぬ問題が・・・
住宅ローンの申込をストップした3つの問題とは?
上記の「相談先2.任意売却を扱う不動産業者」では、住宅ローンの申込で少々問題が発生しました。
それは、相談先の担当者が金融機関には、以下のように住宅ローンを申込むよう念を押されたとのことです。
〈住宅ローン申込3つの問題〉
- 問題1 親子関係を伏せたまま金融機関に申込み
- 問題2 変動金利
- 問題3 団体信用生命保険
問題1 親子関係を伏せたまま金融機関に申込み
2件目の業者曰く、親子間売買で住宅ローンを利用するのは相当困難なため、結婚後、姓が変わっているので「親子関係は内緒で住宅ローンを申込み」をしましょうとの提案。
お客様は事実を告げずに、住宅ローンを借りることへ抵抗を感じました。
もし、何かのきっかけで「親子関係が判明してしまったら」と考えると恐ろしくなったそうです。
聞かれても親子ではないとの返答を促された
問題2 変動金利
お客様は将来の金利上昇に備え、固定金利を希望しておりました。
しかし、現状では、固定より変動タイプの方が金利も低いので、強引に変動金利を勧められたのに違和感があったそうです。
固定金利の住宅ローンを利用するには、フラット35の住宅金融支援機構が対象になります。
住宅ローンの審査としては、それほど厳しくはありません。
ただし、融資対象となる不動産がフラット35の基準に合致している必要があり、その証明書(フラット35適合証明書)を取得する必要があります。
その手間を面倒と感じ、民間銀行の住宅ローンを勧める不動産業者が多いのも事実です。
変動金利が現在は有利とアピール
問題3 団体信用生命保険
住宅ローンの返済中、不幸にも死亡してしまう、あるいは高度な障害を負ってしまった場合、保険金により返済が免除される仕組みがあります。
この保険を団体信用生命保険といいますが、その種類も多様で特定の病気が判明すると、保険からの支払いで返済を免除されるタイプも存在します。
お客様はそこも気にされていたため、どうしても譲れない部分でもありましたが、聞き入れてもらえなかったそうです。
希望する団体信用生命保険も無
以上の3点を考慮せず、進めようとする姿勢が腑に落ちず、態度を保留し当事務所へ相談となりました。
お客様の希望に聞く耳を持たない!
親子間売買の問題点とは?
親子間売買に伴う住宅ローンに対して、金融機関は積極的ではありません。
審査も厳しいとされるのが一般的です。
その理由として、以下のようなケースが考えられます。
〈親子間売買に金融機関が積極的でない理由〉
- 親子間の不動産売買が適切なのか?
身内間だから売買金額が安くないかなど - 借金の返済のためではないか?
不当に高く購入するなど疑われる - 単純な住宅の購入目的でない場合を問題視
しかし、親子間の不動産売買自体が難しいのではなく、住宅ローンの利用が難しいので、決して何か障害のある不動産取引ではありません。
では、両親が住宅ローンの返済が難しくなってきているので、今回のケースではどの様に対応するかが成否を分けるポイントになります。
相談者の状況を見極める判断能力が必要

購入後は自宅となる
お客様としては、ご両親が住宅ローンを払えなくなり、第三者へ売却するならば、ご自身が購入し住みたいというのが最終的な希望です。
今回の場合、確かに金融機関が懸念する借金の返済も目的となりますが、お客様は購入後はお子様も含めご両親と同居となります。
しかし現状では、ご両親は住宅ローンの返済は継続しており、滞納や固定資産税の未納等の問題もありません。
すなわち、「純粋にお客様ご自身の自宅としての購入」で間違いありません。
その事実を考えれば、購入価格が適切であれば不動産取引自体も問題はありません。
正式な取引での親子間売買
親子間売買でも売買価格は適正に取引
親子間売買だから価格に手心を加えてはいけません。
売買金額も不動産の適正価格での取引ができるのか、当事務所で不動産の価格査定を行いました。
その結果、適正な売買価格での取引で、ご両親の住宅ローンは完済可能との判断ができました。
適正価格での親子間売買で取引可能
親子間売買でも住宅ローンの条件に合致
親子間売買の成立に欠かせない条件が、子が親名義の家を購入する場合、もともと別の場所から引っ越してきて自宅にするケースでないと住宅ローンは、ほぼ利用できません。
親が子の家を買う逆のパターンも同じです。
つまり、子が親の家を買う場合、親と同居し現在住んでいる親名義の家は、住宅ローンの利用は原則不可となるのが一般的です。
今回のケースは住宅ローンの条件に合致
親子間売買でも住宅ローンの要件を満たしている
断言はできませんが、住宅ローンの利用が十分に可能と判断。
まずは、事前審査となりますが、お客様と当事務所とで申込めそうな金融機関にあたりを付けます。
(もちろん、お客様の希望条件は織り込んでいます。)
親子関係を包み隠さず、正直に伝えることを念頭に申込へと至りました。
そして、お客様の希望する金融機関へ必要書類を準備し手続きを進めたところ、すんなり事前審査はパス。
そのため、早急に売買契約を締結し、本審査へと進みます。
当初の心配をよそに本審査も通過し、問題なく親子間売買は成立しました。
金融機関の条件を確認し問題を整理して取組めば成立した住宅ローン
親子間売買で利用した住宅ローンの詳細
2件目に相談した業者に聞き入れてもらえなかった問題点はどうなったか?
気になるポイントですので以下に記載します。
<相談者が利用した住宅ローンについて>
- 親子関係を正直に申告
- 全期間の固定金利
- 通常の団体信用生命保険プラス三大疾病特約付き
お客様のご希望は「すべてOK」となりました。
何1つ問題はありません。
1.親子関係を正直に申告
金融機関によっては、事前審査の申込用紙には旧姓があれば、記載する項目があります。
そのため親子関係を隠すとなれば、その時点でウソの申告となり、金融機関から見れば一番貸してはならない人物となってしまいます。
今回の金融機関は旧姓の記載項目はありませんでしたが、すぐさま金融機関から親子関係について問い合わせがあり、正直に伝えました。
つまり、記載する項目が無かったため、隠した訳ではありませんが金融機関は親子関係に気付き確認してきました。
これにはお客様も驚き、やはり正直に申告していて助かったとホッとしておりました。
事実を伝えない者に金融機関は厳しい
2.全期間の固定金利
変動金利と比べれば、固定金利はやや高めですが、それ以上の金利上昇はありませんので希望通りとなりました。
2件目の相談先は、固定金利を希望しているのにも関わらず、変動金利を勧めたことに呆れてしまいます。
変動金利と固定金利で、どちらが金利が低いかなどは、当然お客様もご存じです。
そのうえで、固定金利としているのに変動金利をアピールしても信用を失うだけです。
選択するのはお客様自身
3.通常の団体信用生命保険プラス三大疾病特約付き
住宅ローンは長期で組むため、将来的に何が起きるか分かりません。
そのため、通常の団体信用生命保険にプラスして、ガンなどが発覚した場合にも対応できる保険にも加入することができました。
お客さまは、親子関係を隠したまま住宅ローンを申込んだ場合、いざ不幸が生じて団体信用生命保険の支払い段階で親子関係が発覚、不払いとなってしまわないかも当初より心配していました。
当然、その心配もありません。
団体信用生命保険も選択肢がある
結果的には、全てお客様の希望通りとなったので、可能性のある金融機関へ正直に申し込んだ成果と言えるでしょう。
親子間売買で他業者との成否を分けたポイント
今回、当事務所と2件目の相談業者との大きく違う点は、お客様の希望を聞き入れずに取組もうとした姿勢です。
単に親子間売買が可能であれば、何でもいいという訳ではない!
例えば、『親子間売買ができれば、ノンバンクの高利でも返済できればいいでしょう』というのを押し付けるのと同じで、そこにはお客様の希望が反映されていません。
また、親子関係を伏せ、金融機関に申込もうとすることに、お客様は不安に感じていました。
単純なことですが、お客様目線では無かったこと、そのことが、親子間売買の成否を分けたポイントになります。
親子関係を伏せたまま住宅ローンを申込み、金融機関から尋ねられたとき、事実と異なる返答をしていたら、そもそも審査もパスしなかったでしょう。
そして、今回の親子間売買はきちんと対処すれば、かなりの確率で住宅ローンの利用が可能と事前に把握できたのに、それを怠ったことではないでしょうか・・・。
親子間売買は売る側の状況が悪くなる前であれば、成立する可能性も十分にありますので、是非早めの相談を心掛けて下さい。


早めの相談が功を奏した
住宅ローンは不動産業者の関わりが必要
最後になりますが、親子間売買を含め、個人間の不動産売買で住宅ローンを利用するには、多くの金融機関では不動産業者が仲介に入ることが条件となっております。
そのため不動産売買に伴い仲介手数料も必要となりますが、成功報酬のため住宅ローンの審査がパスしない限り、発生しない費用となります。
どうしても不動産売買で住宅ローンを利用するならば、仲介手数料も含めた金額が諸費用になりますので事前に資金計画を立てる場合、忘れないよう注意して下さい。
住宅ローンの利用は不動産業者の仲介が必要