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身内の土地に建てた家の任意売却は意見の一致が必要
家の敷地を身内から借りている方、特に地価の低い地方では深く考えずに、身内名義の土地に家を建ててしまっている方が意外に多いものです。
家の建築代金を現金で用意していれば、左程問題はありません(後に相続などで揉める可能性はありますが・・・)。
ところが住宅ローンを利用している場合、後々発生するかもしれないトラブルについても多少覚悟が必要になります。
住宅ローンを利用して家を建てること自体、珍しいことではありません。
しかし、その住宅ローンが払えなくなったとき、身内から借りている土地の扱いについて、非常に悩ましい事態が発生する可能性が高いのです。
住宅ローンを利用して家を建てたとき、以下のような土地の利用形態であれば注意してください。
〈こんな土地の使い方していませんか?〉
- 親名義の土地に子が家を建てている
- 家の敷地の一部に身内の土地が含まれている
- 同じ敷地内で親・子が各々で家を建てている
どれも本来であれば、あまり好ましくはないのですが、身内だからこそ損得なしで利用させてあげているのも理解できます。
ただし、住宅ローンが払えなくなってしまうと、話がまとまらず身内を巻き込んだトラブルに発展してしまいます。
任意売却に精通するFP&不動産コンサルの有資格者が「身内の土地に建てた家の住宅ローンが払えないときの対処法」について詳しく解説します。
特に、任意売却を検討する方の参考になればとの思いから書いた記事になります。
住宅ローンが払えなければ身内の土地も手放す!
親の土地に子が住宅ローンを利用して家を建てたと仮定しましょう。
〈住宅ローン及び不動産の名義〉
- 住宅ローンの名義 子
- 建物の名義 子
- 土地の名義 親
家を建築するのも、住宅ローンを借りるのも子なので金融機関は建物を担保にします。
この点は、当然と言えます。
では、親の土地は、どうなるでしょうか?
実際のところ親の土地も担保にしなければ、住宅ローンを借りることができません。
住宅ローンで親の土地に家を建てる場合、親の土地も同時に担保とすることは、ほぼ例外なく金融機関から求められます。
その結果、親族は連帯保証人にはならなくても、土地を担保提供することになります。
不動産などの財産を他の者の借金の担保として提供する者を「物上保証人」と呼びます。
そして、住宅ローンが払えなくなると、どうなるか?
答えは1つです。
親(物上保証人)の土地と共に手放す必要があります。
土地建物セットで手放すことは避けられない
土地建物を同時に処分
住宅ローンが払えなくなれば、親の土地と住宅ローンを借りた子の建物を同時に手放す以外方法はありません。
無理もありません、土地と建物は一体として利用するから価値が認められます。
今まで一体として利用してきた土地と建物を別々に利用することは、事実上不可能に近いでしょう。
不動産としての担保価値を最大限生かすためにも、土地と建物は合わせて売却することが求められます。
このとき、土地建物を合わせた価格が住宅ローンの残債以下となれば、任意売却で手放す必要があります。
そして、任意売却の話がこじれると競売の可能性が一段と高まります。
親は物上保証人ではありますが連帯保証人でない限り、返済の義務はありません。
しかし、土地については担保として提供しているので、住宅ローンが払えなくなれば、土地も合わせて失ってしまいます。
この点は、物上保証人としての責任と負担になります。
土地と建物を合わせるから価値がある
担保提供が必要な土地の利用とは?
1つの例だけでは分かりづらいので、4パターンで解説します。
まず、土地について下に出てくる図は「1筆の土地」は見たままですが、「2筆の土地」~「4筆の土地」も一体の土地(一つの土地)として利用しています。
実は複数の土地が合わさって一体の土地として利用していることは、普通によくあることです。
そのため、土地は1筆ごとに区別するための地番という番号が割り振られています。
1つの土地であれば1筆(ひとふで)、見た目は1つでも2つに分かれていれば2筆(ふたふで)の土地となります。
それでは、以下の条件のもと順に見ていきましょう。
〈住宅ローン及び不動産の名義〉
- 住宅ローンの名義 子
- 土地の名義は全て親
- 親名義の建物
- 子名義の建物
土地は全て親名義で建物は子が住宅ローンを利用して家を建てた場合、子の建物に利用している土地(筆)は親が担保提供しなければならない土地となります。
〈親が担保提供する土地は?〉
1筆の土地 | ①の土地 |
2筆の土地 | ②の土地 |
3筆の土地 | ②③の土地 |
4筆の土地 | ②④の土地 |
「1筆の土地」は親の家があるにも関わらず土地全体を担保提供します。
また、「3筆の土地」についても、親の家が上にある敷地の半分を担保提供しなければなりません。
こうして図で見ると何となく不安を感じると思います。
住宅ローンを利用した建物の価値を損なわないための担保を求める
土地の中途半端な売却は価値を既存する
上で図に示した4つのパターンで、もしも子が住宅ローンを払えなくなった場合、現実問題としてどのように売却するのでしょうか?
〈どのように売却するの?〉
1筆の土地 | ①の土地・親の家・子の家を売却(すべて売却) |
2筆の土地 | ②の土地・子の家を売却 |
3筆の土地 | ①②③の土地・親の家・子の家を売却(すべて売却) |
4筆の土地 | ②④の土地、子の家を売却 |
「1筆の土地」については親の家は担保ではありません。
また、「3筆の土地」は①の土地、親の家も担保とはなっていません。
ところが現実は非常に厳しいもので、「1筆の土地」、「3筆の土地」は子の家は当然ですが親の家も土地も合わせて、すべて売却せざるを得ない状況となってしまいます。
従いまして、子が住宅ローンを払えなければ、物上保証人である親の家も土地も合わせて失う可能性が十分にあります。
実質的に分けては売れない
売却の主導権は物上保証人や他の身内が握っている
ここまで、子が借りた住宅ローンが原因で物上保証人の親が家も失ってしまう場合があると書きました。
そこで、実際に売却する場合、子も親も協力して売却する必要があります。
所有者同士が協力して売却する意外な方法は無い
しかし、物上保証人の親に対して子が一人であれば、十分に協力も考えられますが他にも兄弟がいるようなケースでは、当然怒りに任せて口も出してきます。
その結果、売却時には住宅ローンの当事者で家の所有者であっても、ほぼ主導権も無く兄弟の言うことに従うだけの状況となってしまいます。
義理の親の土地に家を建てているケースは、特にこの傾向が顕著です。
義理の親が物上保証人は特に注意
物上保証人である義父が、状況を理解してもらえれば売却がスムーズに進むのですが、他の身内が納得いかず収拾がつかない事態に筆者としても何度も遭遇してきました。
身内からしてみれば、両親の面倒を見るのを条件に土地を使うことに同意したのに話が違うなど、文句の一つも言いたくなるのも理解できます。
更にも増して土地建物を売却しても、住宅ローンの残債に及ばないと状況はより深刻です。
実質的には任意売却が必要となりますが、身内が納得しないため協力して行動することができなくなってしまいます。
そのため、任意売却したくてもできない、つまり競売以外の選択肢が無くなってしまう可能性が十分にあります。
もちろん、家を建てるときは想像もしていなかった事態です。
ただ、起きてしまった現実は受け入れるしかありません。
身内の協力が無ければ競売回避は不可
現状と可能な手段を探る
この様なケースでは、まず住宅ローンの返済ができなくなった張本人が、物上保証人に現在の状況をしっかり説明し、今後取り得る方法を一緒に考える他はありません。
そして、両者で対応を決定した後、その他の身内へ批判は覚悟の上、一緒に報告することになります。
大抵は張本人だけが先走っても、土地の所有者が任意売却を理解してもらえないなど、主導権は土地の所有者に委ねられています。
任意売却するにも、必ず両者で話し合って決めなければ前に進むことは不可能です。
大切な時間をムダにしないためにも、まずは協力して一緒に行動すること以外、対処法はありません。
担保提供の結果、所有者の異なる任意売却は、お互いが同じ方向を向き、意見が一致しないと成功は難しいでしょう。
最善の道は常に協力して対処すること