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リスケジュール後も住宅ローンを滞納する3つの共通点
以前『リスケジュールで身内を巻込み老後破綻』という記事を書きました。
金融機関と相談の結果、リスケジュールしたものの、それでも住宅ローンが払えなくなった方からの相談が相次いでおります。
どうして、そのような事態が発生してしまうのか? FP&不動産コンサルの有資格者が詳しく解説します。
リスケジュールしても住宅ローンが払えなくなる原因
なぜ、リスケジュールしたにも関わらず、住宅ローンが払えないのか?
相談者に事情を伺っていると、3つの共通点が見えてきます。
<3つの共通点>
- リスケジュール後も返済が厳しい
- リスケジュール後の計画が無い
- お勤め人(サラリーマン)のリスケジュール
1.リスケジュール後も返済が厳しい
リスケジュールは貸手となる金融機関と相談の上、月々の返済額を決めることになります。
しかし、金融機関としてはリスケジュールするにしても、なるべく多く返済してもらいたい・・・
借手側の債務者は希望する返済額があったとしても、金融機関が渋り無理な返済額でリスケジュールを決めてしまいます。
立場を考えれば『貸手と借手』どちらに主導権があるかは一目瞭然です。
結果的に月々の返済が厳しいため、リスケジュールを申込んだが、リスケジュール後の返済額でも家計が苦しい状況が変わっていない。
もともと無理な返済が少々負担の軽くなった程度だと、リスケジュール当初は頑張ってみたけど、結局は払えなくなってしまった。
リスケジュールしても無理な返済額
2.リスケジュール後の計画が無い
子どもの進学で出費がかさむ時や一時的に収入が落ち込むなど、一定期間だけ返済額を減らすのが本来のリスケジュールの目的です。
その後(一定期間経過後)は、元の返済額に上乗せして不足分を取り戻すのが基本となります。
また、金融機関との相談で返済期間を延長してもらえる場合もありますが、借手の年齢によっては延長は難しいこともあります。
住宅ローンの完済予定が元々85歳なのに、リスケジュールで延長したら『いったい何歳で完済予定??』となってしまいます。
平均寿命を大きく超えた完済時の年齢では、誰が想像しても無理があると思います。
〈リスケジュールの目的〉
返済が苦しい → 返済額引下げ
本来のリスケジュール期間の不足分を上乗せして返済する計画は持たず、月々の返済額を減らすことを目的に返済期間を安易に伸ばしてしまっている。
コロナ禍等もあり事情は様々ですが、当初予定していた住宅ローンの返済額が払えなくなり、回復が見込めないまま返済額の減額で対応してしまった。
返済額を下げたいだけのリスケジュールは失敗の元
3.お勤め人(サラリーマン)のリスケジュール
お勤め人の方が、雇用先である企業の業績が大幅に伸びたため、すぐに賃金も大幅にアップするかとなれば、そうでもありません。
最近ではボーナスに反映されることもありますが、ベースアップとは異なります。
従いまして、給料が増加するのも減少するのも、企業の業績に左右されますが、そのスピードは極めて緩やかです。
その反面、リストラでもされない限り、ある程度は安定しています。
先のリスケジュール後の計画が無いと重なる部分になりますが、その安定した給料で住宅ローンが払えないとなれば、その先はリスケジュールで減額したまま返済を続ける道しか残っておりません。
リスケジュールでお勤め人の方が救われるのは、定年までに完済、若しくは退職金で完済可能な方(大手企業は例外有)となります。
それ以外の方は、リスケジュール後に再度、住宅ローンが払えなくなる可能性は非常に高く、該当する方は、相当数に上ると思われますが、表面化してくるのは正にこれからでしょう。
サラリーマンのリスケジュールは定年までに完済 or 退職金で完済
住宅ローンが払えなくなる他の要因
社会保障費の負担増も、もはや無視できないレベルにまで到達しています。
財務省によると令和4年度の国民負担率は46.5%見通しが結果的に47.5%となりました。
令和5年度(見通し)は46.8%です。
租税負担率と社会保障負担率を合計した国民負担率について、令和5年度の見通しを推計しましたので、公表します。
- 令和5年度の国民負担率は、46.8%となる見通しです。
財務省ウェブサイト(令和5年度の国民負担率を公表します)
令和3年度(実績) 令和4年度(実績見込み) 令和5年度(見通し) 48.1% 47.5% 46.8%
強制的に徴収されるため、呼称が違うだけで税金と同様でしょう。
そのため、リスケジュールで少々負担が軽くなっても、社会保障費の負担増がじわじわと影を落とし、再度、生活苦に陥ってしまいます。
また、輸入大国の日本は円安が家計にもたらす影響は相当なものです。
食料品の値上げやガソリン価格の上昇を見ても、一般家庭にシワ寄せが来てしまうのは避けられそうにありません。
社会保障費の増加と円安のダブルパンチ
値上げの連続で生活は楽にならない
総じて感じるのは、リスケジュールで家計を立て直そうと、生活を切り詰めても、その分を軽く飲み込んでしまう、負担増や支出が一般家庭に重くのし掛かっています。
〈主な値上げの例〉
- 電気・ガス・灯油・ガソリンなどのエネルギー関係
- 小麦・大豆・トウモロコシなどの食品や家畜飼料となるもの
軽く思いつくだけでもガス・電気・灯油の光熱費、小麦の値上げによって麺類・パンなどの食料品にも当然影響が出ます。
そして、地方在住の方は車の移動が基本なので、ガソリンの値上げは相当厳しいものです。
また、厳しいのは地方自治体も同じでインフラの維持費がまかなえず、水道料金の大幅値上げに踏み切る自治体もあります。
その結果、可処分所得が減り続ける状況で、所得が増えなければ住宅ローンの返済は不可能なレベルまで来ています。
そもそも、住宅ローンの返済が厳しくなり、既に生活を切詰めたうえでリスケジュールを希望しているので、リスケジュール後も一向に生活は楽になりません。
切詰めた後のリスケジュールで値上げの波には勝てない
リスケジュール後に住宅ローンが払えなくなったら
相談者は皆一様に生活を切り詰め、頑張ってきています。
そのうえで本当に気の毒でなりませんが、厳しい生活から解放されるには、負担となっている自宅を手放す必要があります。
ある程度、安定した収入のある方は、その決断は容易ではないでしょう。
しかし、手放さなければ住宅ローンの滞納を続けてしまうため、金融機関も見過ごすことはできません。
リスケジュールで一度は大目に見てくれても、それ以上の救済は認められず、早いうちに任意売却等の対応を検討するべきです。
リスケジュールが有効な方
リスケジュールが有効な対策となるのは以下の主に以下の方です。
〈リスケジュールが有効となる方〉
- 中小零細企業の経営者(自営業者も含む)
- 大手企業のサラリーマン(多少有効)
まず、中小零細企業の経営者や自営業者の方です。
自身で事業を営んでいるため、浮き沈みもあり所得が増えることも減ることも、その年によって異なります。
そのため、売り上げの見通しや先の入金予定等があり、一時的な返済額の減少が経営を続ける上でプラスに作用するケースです。
肝心なことは、一時的な売上の減少であり、この先は元に戻る可能性があること。
また、日本を代表するような大企業にお勤めの場合、業績次第でボーナスにかなり反映する方も多いので、もともと所得も高いかもしれませんがリスケジュールの効果が多少にはなりますが期待できます。
そして、お伝えするのも非常に心苦しいのですが、どうしても事業規模が小さい企業にお勤めの場合はリスケジュールしたものの家計が好転に向かうのは、まだまだ時間が掛かるかもしれません。
中小零細企業にお勤めの方はリスケジュールが厳しい結果になりかねない
お勤め人(サラリーマン)のリスケジュールは馴染まない
繰り返しになりますが、もともと企業(大手は例外有)にお勤めの方が、住宅ローンの返済苦をリスケジュールで対処することは、適した利用法ではありませんでした。
毎月決まった給料を受取るため、収入の増減が激しくありません。
そのため安易にリスケジュールしてしまうと結果的には問題の先送りとなってしまいます。
住宅ローンの返済が厳しくなった時点で金融機関に相談し、リスケジュールすることは返済を継続するため誠意ある対応となります。
しかしながら、リスケジュールによって住宅ローンが完済できなければ、根本的な解決法ではありません。
もし、リスケジュールするか悩んでいるならば、完済の見通しはあるか?
現在の年齢や収入UPの見通しなど、一度じっくり考えてみましょう。
そこが一つの判断基準になるのではないでしょうか。
返済が苦しくなったときのリスケジュールは問題の先送り