連帯保証人と相続人が同じだと相続放棄しても無意味?

相続人と連帯保証人が同じ場合はどうすれば!?

 突如降りかかる相続に関する問題、財産を受取る相続で悩むなら、まだ救われます。

しかし、受取る財産も無く負債しかなければ、うっかり相続してしまうと大変な事態になりかねません。

それなら『相続放棄します!』と考えるのが自然です。

ところが父親の連帯保証人になっている方が、父親が亡くなり相続が発生した場合、そもそも連帯保証人なので、相続放棄することでメリットや違いはあるのでしょうか?

現役のFP&不動産コンサルの有資格者が「連帯保証人と相続人が同じだった場合の相続放棄について」単純な話に置き換えて、分かりやすく解説します。

目次

相続人・連帯保証人が同一人物

 相続人と連帯保証人が同じであることを条件に、以下2つのケースを想定して考えてみましょう。

〈相続人・連帯保証人が同一人物〉

  1. 父親がアパートを借りるとき
    子が連帯保証人
  2. 父親がアパートの建設資金を借りるとき
    子が連帯保証人

上記の1.2.で父親が亡くなり相続が発生した際、連帯保証人の子は相続放棄すると、どうなるのでしょうか?

まず、他のサイトでも色々調べていると思いますが、分かりにくいのは、言葉の意味です。

特に被相続人という言葉が頻繁に出てきます。

ここのケースに当てはめると被相続人は、亡くなった父親のことで、相続人は子になります。

被相続人って書かれると難しく感じますが、亡くなった父親のことだと分かれば簡単に理解できます。

被相続人=父親
相続人=子

※ 相続人は子1人とします。

1.父親がアパートを借りるとき 子が連帯保証人のケース

 相続放棄するか問題となるのは、財産より負債が多いから悩むことになります。

不動産や預貯金、有価証券等も無ければ、相続してしまうと父親が抱えている負債、借金やカードローン、その他に未納の税金等があれば、そのまま引き継ぐことになります。

また、連帯保証人としてでは無くても、相続人としてアパートの未払い家賃があれば、そちらも支払う必要があります。

そう考えると、特に財産が無ければ相続放棄し、アパートの連帯保証人分のみ責任を負うのが、相続人にとって負担が少なくて済みます。

財産無なら相続放棄で連帯保証人分のみを負担

2.父親がアパートの建設資金を借りるとき 子が連帯保証人のケース

 父親が借金はあるけど財産もある場合、判断が難しくなります。

財産はアパートのみで考えると、現時点でアパートを売却すると5,000万円。

それに対し、アパートの建設費用の残債が5,500万円だったとします。

相続時にアパートを売却した場合
5,000万円 ー 5,500万円 = ー500万円

相続時にアパートを売却すると、いわゆるオーバーローン(債務超過)の状態なので借金が500万円残ってしまいます。

しかし、売却しないで所有した場合、アパートの家賃収入で建設費用の返済が足りれば、自らのお金で返済する必要はありません

そのため、返済が進みアパートの価値が借金の額を上回れば、プラスの財産となる可能性があります。

その一方で、相続放棄してしまうとアパートと建設費用(以下、アパートローン)の残債5,500万円は次の相続人が相続する可能性があります。

ところが、相続放棄しても連帯保証人の立場に変わりませんので、次の相続人が建設費用の残債5,500万円を返済するまで、その責任は付いて回ります

したがいまして、連帯保証人である以上、相続放棄するメリットは、ほぼ無いでしょう。

相続し家賃収入で借入金の返済

アパートローンが家賃収入で返済できないとき

 アパートローンが家賃収入での返済不可。

更にオーバーローンで売却してもマイナスが大きいときは、どうすればいいのか?

マイナス分の持ち出す現金が用意できれば問題は解決できますが、それは不可能という前提で解説を続けます。

例に挙げたアパートは、ほぼ負債の塊と言えるので、相続放棄して連帯保証人分の負担のみとした方が幾分マシと考えるべきでしょう。

例えば、ローンの返済のみならず、固定資産税も滞納してしまっているようなケースです。

相続することにより、納税義務も生じてしまいますので注意しましょう。

どちらにしても、アパートの資産価値や収支に大きく左右されますので、不動産があれば一度査定してから『相続放棄する・しない』を判断する必要があります。

また、その際はこれ以上連帯保証人の債務が延滞等で増えないよう、対処することも必要となり専門知識を有する者の手助けは欠かせません。

査定も含めプロに相談

次の相続人も相続放棄したら

 ご自身が相続放棄したなら、次の相続人も相続放棄を検討するでしょう。

そして、次の相続人も同様に相続放棄した場合、通常の流れとしてアパートの建設資金を貸した金融機関(債権者)は、家庭裁判所へ相続財産清算人選任の申立を行います。

相続財産清算人とは

相続人の存在が不明で探す必要がある場合や相続放棄で相続人がいない場合など、財産を清算して債権者などに支払う手続きをする者

オーバーローンのアパートなので任意売却で処分するか、競売で処分するか相続財産清算人と債権者が相談して決めることになります。

このあたりの話は、少し難しいので割愛しますが、子は連帯保証人として父親が借りた借金が無くなるまで責任があります。

仮に任意売却、又は競売で処分されても、連帯保証人は残債があれば請求される立場にあります。

連帯保証人の責任は完済されるまで免れない

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近年、増え続ける空家が問題となっております。

それに伴い不動産の相続時には様々な問題がついて回ります。

今回は、連帯保証人と相続人が同じ場合の説明として、記事にしました。

そのため、分かりやすいように相続人は子1人としましたが、相続人が複数存在するケースや、その内の1人が相続放棄してしまう場合もあります

特に抵当権が設定されている不動産は「相続する・しない」の単純な話ではありません。

また、相続人が複数いる中で1人だけが連帯保証人等、様々なケースがありますので、不動産の相続に関しては状況を把握し、専門知識を有する者との相談の上、検討することをお勧めいたします。

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