住宅ローンが払えなくなると、自宅を手放すことも考えるようになり、同時に住宅ローンの残高も大変気になるところです。
任意売却が必要とされる方でも、自宅の売却によって住宅ローンを完済し、無借金の状態から再スタートできる方も少なからずおります。
多くの方が任意売却後の残債について悩む中、その点に関しては救われますが、自宅の売却によって住宅ローンが完済できそうな方こそ、本当に注意して頂きたいことがあります。
それは、住宅ローンを滞納しても完済できるからこそ問題となる遅延損害金の存在です。
遅延損害金とは
遅延損害金とは、返済の約束期日を守らないことによるペナルティのことで、損害金とあるように元金がある限り一定の金額を請求されます。
一定の金額とは、フラット35の住宅金融支援機構を例にとると、登記事項を見れば分かりますが遅延損害金の割合は年14.5%にもなります。
住宅ローンのような高額の借入れでも、多くの金融機関が遅延損害金は年14%以上としています。
以下、元金2,000万円で年14.5%の遅延損害金を計算してみます。
- 1年 2,000万円 ×14.5%=290万円
- 1カ月 290万円 ÷12 =約24万円
- 1日 290万円 ÷365日 =約7,945円
元金2,000万円に対して1年で、なんと290万円の遅延損害金が発生します。
1カ月で24万円、1日で約8,000円にもなります。
毎月24万円を返済しても、元金は1円も減らない計算です。
いかに恐ろしいペルナルティなのか、ご理解頂ける思います。
遅延損害金はいつから発生するのか?
この遅延損害金はいつから発生するのかというと、返済が遅れた日からになりますが、元金全額に対して請求されるのは、期限の利益の喪失後とざっくり覚えておきましょう。
金融機関により異なりますが、住宅金融支援機構やプロパー融資等の保証会社の利用が無い場合、代位弁済されませんので大抵は3~6回分の返済を滞納すると、期限の利益を喪失し遅延損害金が発生します。
また、保証会社がある場合は期限の利益の喪失後に代位弁済しますので、保証会社から残元金に遅延損害金を付して請求されます。
滞納の積み重ねにより、期限の利益の喪失、又は代位弁済後は元金に対して年14%を超える遅延損害金が請求されます。
もちろ、重要な事なので金融機関からは期限の利益の喪失を通知する書面や代位弁済を通知する書面が届くので、その書面が届いた後は日々、遅延損害金が増え続けることになります。
※ 住宅金融支援機構は6回滞納すると期限の利益を喪失します。
※ プロパー融資とは銀行や信金等が保証会社や保証協会を利用せずに直接貸し付けている融資
期限の利益の喪失前の遅延損害金は?
それでは期限の利益の喪失前は遅延損害金が請求されないの? となると、実はそうでもありません。
滞納すると期限の利益の喪失前でも遅延損害金は発生し請求されています。
ただし、その額が少ないため、この時点ではあまり負担にはなりません。
その理由は住宅ローン等の返済の場合、多くの方が元利均等払いを選択していると思います。
元利均等払いとは、毎月の返済額は一定となりますが、その返済額の内訳は元金返済分と利息分に分けられています。
そして期限の利益の喪失前の滞納は、毎月の元金返済分に対して遅延損害金が課せられます。
期限の利益の喪失前の遅延損害金の計算は下記のとおり。
毎月の返済が7万円(元金返済分4万円+利息分3万円)として計算
- 4万円 × 14.5% ÷ 365日 = 約16円
- 16円 × 14日 = 224円
- 16円 × 30日 = 480円
※ 元金返済分6万円に対して遅延損害金が課せられます。
1日あたり約16円の遅延損害金となり、2週間(14日)で僅か224円、1カ月で480円と500円にも満たない額で済みますが、これが元金全額に対して課せられるとなると大変な金額となってしまいます。
期限の利益の喪失後は遅延損害金も莫大
住宅ローンが払えなくなると分かった時点で、売却によりローンが完済できそうな場合、期限の利益の喪失前に売却を済ませなければ、手元に残せる現金が遅延損害金によって、あっという間に減ってしまいます。
任意売却により残債が発生してしまう方とは異なり、金融機関は回収可能な場合は、一切妥協せずキッチリ回収します。
つまり、不動産の売却代金が元金にも満たないケースでは遅延損害金どころの話ではありませんが、回収できる方からは遅延損害金も含めトコトン回収し、それでも残ればやっと残額を受取れると理解して下さい。
従いまして、売却すれば住宅ローン完済の目途が立つならば、期限の利益の喪失前に売却を済ませることにより、多くの現金を手元に残せる可能性があります。
現金が多ければ、より再スタートも楽になり、その後の選択肢も広がります。
多額の遅延損害金で貴重な現金を失うより、早めに行動するほうがメリットは大きいのではないでしょうか。