残債に利息は付くのか?任意売却後の返済についての疑問

任意売却後の残債に利息は付くのか?返済の疑問

 住宅ローンが払えなくなり任意売却を検討すると、残債の返済についても真剣に考えるものです。

気になるのは、任意売却後の残債を返済していく場合、その残債に対しても利息が付くのか!?

もしも、残債に利息が付くのならば、更に返済額が増えてしまい任意売却後の生活が不安になります。

この記事は、任意売却に精通するFP&不動産コンサルの有資格者が『任意売却後の残債に利息は付くのか?』について解説します。

目次

任意売却後の残債はペナルティも含め請求

 住宅ローンを借りるときの契約書には、滞納した際のペナルティについても、記載されています。

当然ながら、任意売却が必要となるケースでは、滞納時のペナルティに該当します。

そのペナルティとは「遅延損害金」という名目で、元金に対して決められた利率を付して請求されます。

任意売却後の残債に利息は付くのか?

利息ではなく「遅延損害金」が付きます。

その遅延損害金の利率について、大抵の金融機関は残元金に対して14.5%ほどで計算しています。

例えば、残債の元金が1,000万円あると、年間145万円が付される計算になります。

月にすると、約12万円です。

ちなみに、遅延損害金の額なので毎月約12万円返済しても、元金は減りません。

この返済が可能なら、そもそも任意売却も不要だったことでしょう。

滞納後はかなりの高金利

任意売却後の残債の計算方法

 任意売却で残債が生じる場合、その残債はどのように算出されたものか?

簡単に見ていきましょう。

もともと住宅ローンや他の不動産担保ローンを借りたとき、「毎月決まった金額を決まった期日迄に返済する」約束です。

そして、その約束が履行されなければ滞納となり、遅延損害金を計算して請求してくるのが基本となります。

実際は、元金に対して遅延損害金を請求されるのは、「期限の利益喪失後」ですが、この記事では説明上分かりやすくするため「代位弁済」も含め省略しています。

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具体的な例を見ていきましょう。

以下は、住宅ローンの残元金2,000万円(遅延損害金 年率14.5%)住宅ローンの滞納開始から1年後に任意売却(1,500万円で自宅を売却)した場合の基本的な計算例(説明のため諸費用等の控除は省略)

残債の計算式

  1. 遅延損害金の計算(1年間)
     元金2,000万円×14.5%=290万円
  2. 残債総額の計算
     元金2,000万円+遅延損害金290万円=2,290万円
  3. 先に遅延損害金に充当
     売買代金1,500万円-290万円=1,210万円
  4. 後に元金に充当
     元金2,000万円-1,210万円=残債790万円

※ 任意売却後の残債790万円(元金790万円

住宅ローンを含め借金を返済すると、まずは残っている遅延損害金に対して、先に充当されます。

次に遅延損害金が無くなれば、元金に対して充当していきます。

金融機関との約定通りに計算すると元金790万円が残債です。

この計算は間違い

  1. 遅延損害金の計算(1年間)
     元金2,000万円×14.5%=290万円
  2. 残債総額の計算
     元金2,000万円+遅延損害金290万円=2,290万円
  3. 先に元金に充当
     元金2,000万円-売買代金1,500万円=元金500万円
  4. 残債の内訳に注意
     元金500万円+遅延損害金290万円=残債790万円

 任意売却後の残債790万円(元金500万円+遅延損害金290万円)

〇 任意売却後の残債790万円(元金790万円)

単純に元金2,000万円-売買代金1,500万円=元金500万円+遅延損害金290万円が残債とはなりません

任意売却までの遅延損害金も、元金に付されて計算されます。

同じ790万円でも内訳が異なります

早い話、遅延損害金が無くならない限り、元金は減りません。

上記の内訳について、あまり気にならないかもしれませんが、任意売却後の残債がある以上、遅延損害金も請求されます。

その上で、元金が500万円と790万円では、その後の遅延損害金の計算も変わってしまいます。

元金が大きければ、遅延損害金の負担も大きくなります。

残債の元金は?
内訳にも注意!

返済能力のない者からは回収不可能

 金融機関は任意売却後の残債に対しても、遅延損害金を請求することは既に説明しました。

しかしながら、いくら計算上の遅延損害金を請求しても、実際に回収できるか?」は別の話となります。

もともと、住宅ローンが返済できずに任意売却へ至りました。

その後、残債に遅延損害金も含めて返済していくのは、到底無理な話と誰でも感じることでしょう。

まさに無い袖は振れない!

いくら債権回収のプロフェッショナル集団でも、返済能力の無い方からの回収は不可能です。

そうなると数十万円の残債であれば別ですが多額の残債となると、どんなに請求しても単なる机上の空論となってしまいます。

実際に金融機関としては、任意売却後の残債に対して「毎月いくら返済してもらえるか?」が重要となります。

それと同時に残債の遅延損害金は毎月いくら加算されても、特に意味が無いと言っても差し支えないでしょう。

残債総額が大きくても、あまり意味をなさない

任意売却後の残債に返済義務はある

 残債総額の大小については、あまり意味が無くても、決して返済義務が無い訳ではありません。

残債に向き合いを返済する場合、遅延損害金の扱いについてもどうするのか?

請求されて、ただただ返済を続けるのでは先が見えません

金融機関と口頭での約束ではなく、返済計画を書面化することが望ましいでしょう。

任意売却を依頼した業者とも相談しながら、残債に対処してください。

任意売却に精通する業者なら残債の相談も可能!

民間金融機関の場合は債権譲渡される

 この記事は、任意売却後の残債の利息(遅延損害金)について書いています。

そのため、住宅ローンの滞納後の流れについては、大まかに説明しています。

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ここで、民間金融機関の「滞納~任意売却後」について少し触れておきます。

銀行等の民間金融機関の場合、大抵の住宅ローンは「期限の利益喪失~代位弁済」の後に、保証会社と任意売却の交渉をします。

保証会社と話がまとまり、無事に任意売却が済むと残債は「サービサーに債権譲渡」されることがほとんどです。

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任意売却後に残債がある場合、債権譲渡後に新しく債権者となったサービサーと交渉します。

引越し後の新生活を送りながら、無理のない範囲で残債の返済をしていきます。

サービサーも最大限の回収を望むため、残債についても遅延損害金を含めて請求します。

しかしながら、サービサーについても前項の「返済能力のない者からは回収不可能」となります。

サービサーへの債権譲渡は、ほぼ既定路線!

以上が、任意売却後の残債に向き合い、誠実に返済していく基本的な流れです。

任意売却後の残債は利息どころか減額の可能性もある

 民間金融機関の場合、サービサーの債権譲渡について触れてきました。

そして、サービサーも任意売却後の残債に利息(遅延損害金)を請求することもお伝えしました。

ここで、少し明るい話をしましょう。

任意売却の残債がサービサーへ債権譲渡されてしまった場合、今までの金融機関とは無縁となります。

そうなると、何やら今までとは違う交渉相手となることで、大変不安を感じると思います。

しかし、サービサーへ債権譲渡されても、特に心配する必要ありません

むしろ、大幅な減額での和解ができるケースもあります。

更に付け加えれば、任意売却後の残債を一括で返済するとなれば、想像以上(個々に感じ方は異なりますが)に大幅な減額に応じる可能性もあります。

サービサーへの債権譲渡はマイナスではない!

その反面、仮にサービサーが無理な返済を迫るようであれば、自己破産も選択肢としては残っています。

しかも、任意売却後の自己破産は費用面でも負担を軽減できます。

任意売却後の自己破産は費用が少ない
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サービサーとしても、自己破産されてしまうと残債の返済どころではなく、回収額が¥0になってしまいます。

返済能力を失った方に厳しい取立をしても時間の無駄でしかありません。

残債があっても任意売却後は精神的には余裕が出る

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住宅金融支援機構は任意売却後の残債に利息を付けない

 民間金融機関と大きく違うのがフラット35に代表される住宅金融支援機構の残債の取り扱いです。

住宅金融支援機構の場合は任意売却に関する申出書という書類にサインしてから任意売却を進めます。

その中には『残債務を完済できない場合には、延滞損害金を減額又は免除していただくようあらかじめお願いします』という文言が記されており、残債に対して利息(遅延損害金)は付けないとしています。

ただし、住宅金融支援機構は現在のところ、債権譲渡や債権放棄はしないので完済するまで住宅金融支援機構に払い続けることになり、民間金融機関と取扱いが異なる部分です。

とても嬉しい反面、残債の返済について減額の交渉ができないため、残債の元金が大きければ返済の終わりが見えてこない可能性があります。

住宅金融支援機構の残債に利息は付かなくても減額無

住宅金融支援機構はサービサーへ委託する

 住宅金融支援機構は、残債の回収業務をサービサーに委託します。

サービサーから連絡が来ると、任意売却後に債権譲渡されたと思われるかもしれません。

しかし、あくまでも「サービサーが住宅金融支援機構の依頼を受けて回収業務を行っているだけ」なので債権譲渡ではありません。

サービサーに委託されても、住宅金融支援機構の残債の回収方針は変わりません。

任意売却をこれから検討される場合、残債の対処も含め任意売却に精通する業者へ相談することをお勧めします。

任意売却は任意売却に精通する業者へ依頼しよう!

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競売後の残債に利息は付くのか?

 ここまでは、「任意売却後の残債に利息が付くのか?」について書いてきました。

それでは、住宅ローンを滞納して不本意にも自宅が競売になってしまった場合は、どうなるのでしょうか?

自宅が競売になり、その落札価格では住宅ローンが完済できなければ、任意売却同様に残債が生じてしまいます。

自宅の競売後はどうなる?

このケースでは、基本的に任意売却後の残債と同様の対処となります。

そのため、競売後の残債についても、利息(遅延損害金)は付きます

そして、金融機関から見れば「任意売却後の残債・競売後の残債」大した違いはありません。

どちらも同じ残債

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