代位弁済されたら住宅ローンは保証会社から請求される

住宅ローンが代位弁済されたら保証会社は請求するの!?

 民間金融機関で住宅ローンを借りるとき、原則として連帯保証人は不要ですが、保証会社との契約が必要となります。

民間金融機関とは、皆さんが街中でよく目にする「銀行や信用金庫」のことです。

その他、JAなどの信用組合、ろうきん(労働金庫)や一部のノンバンクも同様に保証会社を利用します。

それに対して、民間金融機関以外の住宅ローンとは?

フラット35に代表される住宅金融支援機構が該当し、こちらについては、保証会社の利用はありません。

代位弁済は「保証会社がある場合のみ」該当しますので、この点はきちんと区別してください。

まず、住宅ローンの滞納が続くと、やがて保証会社から「代位弁済通知」が届きます。

代位弁済通知は、「保証会社が借金を立替えた」ことのお知らせです。

もし、あなたの手元に「代位弁済通知」が届いたら、保証会社から住宅ローンを借りた金融機関へ立替えが済んだことを意味します。

住宅ローンが払えないので保証会社が「借金を立替えてくれた」と言えば、聞こえはいいのですが・・・

そんなに都合のいい話ではなく、代位弁済が行われても借金が帳消しとはなりません。

むしろ事態は深刻で、代位弁済後に行動を起こさなければ、ほぼ例外無く競売の手続きへ進むので、対象の「不動産は強制的に処分」されてしまいます。

〈代位弁済の主な疑問点〉

  • 代位弁済通知が届いたら、どうなるの?
  • 代位弁済のデメリットは?
  • 代位弁済が行われた後の対処法は?

この記事は、FP&不動産コンサルの有資格者が「保証会社による代位弁済」について解説します。

代位弁済通知」を受取り不安な方、「代位弁済後の対処法」を知りたい方、住宅ローンが払えなくてお困りの方は参考にしてください。

目次

代位弁済通知が届いたら、どうなるの?

 住宅ローンを滞納すると、まず金融機関から電話や書面での督促が行われます。

この時点ですぐに返済するか、事情を説明した上で今後の返済について相談をすれば、即大きな問題へとは発展しません。

しかし、連絡を無視したり何度も滞納が続くと民間金融機関の場合、保証会社があなたに代わって借金を返済する「代位弁済」が行われます。

この時点で、後戻りできない大問題の発生が確定します。

それは、「住宅ローンを借りた金融機関とは無関係」となることから始まります。

次に、代位弁済通知が届いた後は、保証会社からの厳しい請求が待ち受けています。

保証会社からの厳しい請求がスタート!

代位弁済とは|第三者が借手に代わって借金を返済すること

 ここで改めて、代位弁済についてもう少し詳しく解説します。

住宅ローンの返済が3回~6回(金融機関により違いがある)滞ると、難しい言葉ですが「期限の利益を喪失」します。

期限の利益の喪失とは?

 分割で返済する約束が滞納の結果、無効となり一括での返済を求められること。

後から、もう少し詳しく「期限の利益の喪失」についても解説します。

期限の利益の喪失後は、金融機関は保証会社に対し、債務者(住宅ローンの借手)の代わりに借金を返済するよう求めます。

金融機関から要請があれば、求めに応じて保証会社が借手に代わって、借金を返済してくれます。

そのことを「代位弁済」といいます。

代位弁済は「期限の利益喪失後

代位弁済後は保証会社の請求に応じる義務が生じる

保証会社が借金を肩代わりする」と聞けば、借金が無くなったようにも感じます。

ところが代位弁済が行われても、借主の返済義務は無くなりません。

代位弁済後は、借金がローン会社から保証会社に移るので、それ以降は保証会社への返済義務が生じます。

代位弁済後の住宅ローンの借手は、保証会社から返済を求められる

返済義務が無くならないのは、単に請求される相手が保証会社へ変わるからです。

これは代位弁済した結果、保証会社が、「住宅ローンの借手に対して求償権を得る」からとなります。

求償権とは

 他人の借金を肩代わりした人が、肩代わりした分の返済を、借手に請求できる権利のこと。

借手Aの借金滞納によって、保証会社Bが代位弁済を行った場合、ローン会社Cに代わって、保証会社Bが借手Aに返済を求める権利を持つこと。

求償権を得ると、住宅ローンの残債はもちろん、利息や諸費用など代位弁済に掛かった、すべての費用を請求することができます。

そして、代位弁済後は基本的に「保証会社は一括返済」しか認めてくれません。

保証会社の厳しい請求とは、元の住宅ローンの貸手(銀行など)とは異なり分割返済という選択肢が無いからです。

分割ですら返済できない住宅ローンの滞納者にとって、事態はより深刻であると言えます。

代位弁済後の分割返済は期待できない

代位弁済後のレアケース

『代位弁済後は基本的に「保証会社は一括返済」しか認めてくれません。』と前項で書きました。


しかし、当事務所へ任意売却を依頼されたお客様の中には、代位弁済された後、1年以上も保証会社へ分割の返済を継続している方もいらっしゃいました。

そのため、必ずしも代位弁済後は分割の返済は不可とまでは、断言できません。

しかしながら、レアケースと受け止めて頂ければと思います。

もちろん、その後は競売の申立てへまで進行してしまいましたが。

分割返済も長くは続かない

代位弁済が行われるまでの期間はおよそ6ヶ月

 先に少し触れましたが、代位弁済が行われるまでの期間は、滞納後6ヶ月が目安です。

民間金融機関の住宅ローンの場合、滞納が3回続くと、「期限の利益を喪失」します。

まず期限の利益とは、支払い期日まで返済を待ってもらえる、借手側の利益(メリット)のことです。

「毎月27日に◯万円ずつ返済する」という約束では、期限の利益によって26日までは返済しなくてもいいことを意味します。

期限の利益は、滞りなく返済している間のみ有効となり、滞納すると失ってしまいます。

それ故に、「期限の利益の喪失後は、分割返済不可」となり、残債は一括での返済が求められます。

本来ならば、滞納が3回続いたところで代位弁済が行われても、おかしくありません。

しかし、実際に代位弁済が行われるのは、滞納が6回続いたタイミングがほとんどです。

中には返済できた月と返済できなかった月を繰り返し、滞納回数が積み上がってから「期限の利益を喪失」、「代位弁済」に至るケースもあります。

代位弁済のタイミングは、保証会社により異なる!

滞納後6ヶ月というのは目安であり、上記のケースでは単純に6ヶ月後とはなりません。

あくまでも、ケースバイケースであるとご理解ください。

滞納後6ヶ月が代位弁済の目安

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代位弁済通知の内容は?

 実際の「代位弁済通知」は、どの様な内容が記載されているのでしょうか?

具体的に見ていきましょう。

代位弁済通知

 当社は貴殿が○○銀行△△支店に対し、平成○○年○○月○○日付金銭貸借消費契約証書に基づき負担する借入金債務につき、貴殿の委託により保証しておりましたが、貴殿は同行に対して割賦償還分の約定弁済期日である令和2年7月6日以降の割賦金の弁済をされないため、令和2年12月30日期限の利益を喪失し債務残額を弁済すべき義務が生じました。その後、貴殿からの弁済がないため当社は○○銀行△△支店より代位弁済請求を受け、下記金額を令和3年1月6日代位弁済致しました。
 ついては、代位弁済した結果当社が取得した下記求償債権元本(代位弁済金額)および同元本に対する令和3年1月7日以降完済に至るまでの間の年14.0%の割合による遅延損害金を直ちにお支払い下されたく請求致します。
 なお、ご返済がないときは法的手段等を実行致しますので念のため申し添えます。


代位弁済金額 〇〇,〇〇〇,〇〇〇円
元 本 〇〇,〇〇〇,〇〇〇円
未収利息    〇〇〇,〇〇〇円
損害金     〇〇,〇〇〇円

※ 某都市銀行の代位弁済通知の文字を起こして記載しています。

状況としては当事務所の相談者が、毎月6日が返済日の住宅ローンについて、返済が厳しくなり任意売却を決断し返済をストップしました。

それまでは、滞納も無く毎月返済を継続しています。

銀行へは、7月6日から返済をストップする旨を事前に連絡済みです。

保証会社からの代位弁済通知では、おおむね以下の内容が確認できます。

代位弁済通知の概要

  • 滞納期間:令和2年7月6日~12月6日
  • 滞納回数:合計6回(具体的には記載していないが)
  • 期限の利益の喪失:令和2年12月30日
  • 代位弁済:令和3年1月6日
  • 請求金額:代位弁済金額と令和3年1月7日からの遅延損害金(年14%)

7月6日に1回目の滞納が始まり、12月6日で計6回目の滞納となりました。

同月30日に期限の利益を喪失し、銀行が保証会社へ代位弁済の請求を行う。

その請求に応じて、翌月の1月6日に保証会社から銀行へ代位弁済しています。

保証会社から借り手に対しては、代位弁済した金額を元本とし、その元本に令和3年1月7日から完済するまでの遅延損害金(年14%)をプラスした金額を請求してます。

もちろん、返済がなされない場合には、法的手段等も実行する旨の文言も記載されています。

このケースでは滞納が始まり、ちょうど6か月後に代位弁済されております。

当然ながら、銀行も保証会社へ代位弁済の請求を行うため、もう、この顧客に関しては、今後の返済は無いであろうと想定し、事前に準備していたと思われます。

金融機関からの書類は必ず目を通す!

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代位弁済の目的

 そもそも、なぜ貸手の金融機関は、保証会社を利用するのでしょうか?

その理由は、代位弁済には主に3つの目的があります。

代位弁済3つの目的

  1. 貸倒れの保険
  2. 不良債権の迅速な処理
  3. グループ全体の収益アップ

代位弁済の目的は、意外と奥が深いので順番に解説します。

1つ言えるのは、借手にとっては特にメリットはありません。

いわば、貸手となる金融機関側の都合であることが分かります。

1.貸倒れの保険

 代位弁済は債権者(お金を貸した側)の保険と考えれば、分かりやすいでしょう。

住宅ローンの滞納が続けば、もはや回収不可能となり損失が生じます。

そうなると金融機関は、本来返済してもらえるはずの貸付金を回収できません。

企業としては、そのリスクを軽減させるため、保証会社を利用します。

代位弁済によって、借手が滞納してしまった貸付金を保証会社から、一括で受取ることができます。

メガバンクや地方銀行、信用金庫などの住宅ローンは、ほぼ例外なく保証会社を利用した貸付となります。

 2024年8月1日、みずほ銀行が保証会社不要の住宅ローンを提供開始しました。

保証会社利用時と比較すると若干金利が高めとなり、借入期間が短い方にとっては有利となります。

かつて住宅ローンは、連帯保証人が必須でした。

しかし、現在では勤続年数が短い方や年収や勤め先の関係など、いわゆる「属性が低い」ケースを除いては、連帯保証人を求められることはありません。

また、最初に書きましたが、フラット35の住宅金融支援機構の住宅ローン、その他、支店や窓口の少ないネット銀行などは、保証会社を利用しません

住宅ローンを滞納しても代位弁済されませんので、この点は注意してください。

貸倒損失を軽減させる保険

2.不良債権の迅速な処理

 民間金融機関の中で特に銀行や信金などは、不良債権の処理について迅速さを求められております。

普通に考えれば、借手が住宅ローンを滞納したら、金融機関が借手の自宅を競売で処分することで、不良債権としての処理が完了します。

それでは、実際に保証会社を利用しない場合(簡単に)を想定してみましょう。

住宅ローンの滞納が始まる

期限の利益の喪失(3か月)

競売申立て(6ヶ月)

競売で落札(1年)

上記の一連の流れで、滞納開始から競売で処分するまで、約1年程度(もっと遅いケースの方が多いでしょう)は掛かります。

それまで、不良債権の処理が終わらないため、これでは遅いということです。

金融機関は担保の不動産がある以上、損失として処理できません

そのため、保証会社を利用すれば、貸手の金融機関は不動産に担保設定する必要がありません。

あくまでも「不動産を担保にするのは保証会社」となります。

保証会社を利用すれば、滞納後に目安となる6か月程度で、代位弁済してもらえます。

代位弁済によって、不良債権処理の期間が半分で済み、金融機関にとって、合理的な仕組みとなっています。

不動産を担保にするのは保証会社!

3.グループ全体の収益アップ

 住宅ローンの保証会社は、大きく2つに分けることができます。

それは、貸手となる金融機関の「関連会社」「関連会社ではない」の2つです。

関連会社であれば、子会社の場合など、いわばグループ企業となります。

保証会社自体は、何もタダで借手の保証を引受ける訳ではありません。

決して安くはない保証料という名目で、借手が支払います

保証料は借手の負担!

その保証料により、保証会社そのものは成り立っています。

住宅ローンの取扱件数の多い金融機関であれば、その保証業務を関連会社が引受けることで、相当な売上を確保することが可能です。

その反面、規模の小さい信用金庫などは、自前で保証会社を用意するほどのメリットはありません。

銀行の住宅ローンは、ほぼグループの保証会社

住宅ローンの代位弁済率

 それでは、実際に住宅ローンの代位弁済は、どれくらいの割合で発生しているのでしょうか?

以下は、全国保証株式会社の決算説明資料で公開された情報です。(同社は住宅ローン保証を中心に信用保証事業を展開している会社です)

全国保証の代位弁済率
画像引用:2024年3月期 決算説明資料|全国保証株式会社

2024年3月期の代位弁済率は0.08%で、代位弁済の金額は122億円との報告があります。

122億円の74.8%を回収できていることになります。

数字で見ると代位弁済の割合は、意外にも低いことが分かります。

事業として成り立っているのも納得できます。

また、中小企業庁のデータを参考に、失業率が高い都道府県の代位弁済率はゆるやかながら高くなるとの見解を示す専門家もいます。

参考:財政負担の視点から見た信用保証に関する一考察|経済産業委員会調査室

住宅ローンの保証会社は優良企業

代位弁済のデメリットは?

 続いては住宅ローンの滞納による、代位弁済のデメリットについて解説します。

代位弁済されると、以下の悪影響を及ぼします。

〈代位弁済のデメリット〉

  1. 競売で家を失う可能性がある
  2. ブラックリスト入りする
  3. 遅延損害金が発生する

順番に見ていきましょう。

1.競売で自宅を失う可能性がある

 代位弁済後は保証会社から、一括返済を求められることは、すでに解説済みです。

滞納を数ヶ月続けているような状態で、一括返済は、ほぼ不可能でしょう。

それでも一括返済に応じなければ、保証会社は競売を申立てます。

競売は裁判所が関わる強制執行のため、拒否することは不可能です。

落札者が代金を支払えば所有権は移転するので、それ以上住み続けることはできません。

何とか占拠し続けようと考えても、最終的には退去させられてしまいます。

一番の問題は競売!

2.ブラックリスト入りする

 住宅ローンの滞納により代位弁済がなされると、事故情報として信用情報機関に登録されます。(いわゆるブラックリスト入りの状態)

ブラックリストに登録されると、今お持ちのクレジットカードは強制解約となる可能性もあります。

既にご存じかと思われますが、新たな借入もできません。

事故情報が消えるまでには、借金完済から約5年かかると言われています。

この間はスマートフォンの分割払いや、クレジットカードに紐づけるETCカードも利用できないため、不便を感じることが増えるかもしれません。

代位弁済で信用情報に傷

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3.遅延損害金が発生する

 代位弁済が行われると、残債に対して遅延損害金が発生します。

遅延損害金は代位弁済された金額に対して請求されます。

遅延損害金がどれくらいかかるのか、参考として簡単な計算方法をご紹介します。

元金:2,000万円
年率:14.5%
20,000,000円×14.5%÷365日×30日=244,382円
※ 遅延損害金が14.5%の例

上記の内容だと、約1ヶ月の滞納で発生する遅延損害金は約24万円と大変高額です。

すでに滞納がある状態で遅延損害金を払うのは、ほぼ不可能と言えるでしょう。

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住宅ローン滞納で代位弁済が行われたら?その後の流れ

 住宅ローンの滞納後「代位弁済通知」が届いたら、実際に保証会社はどの様な方法で対応するのか?

ここからは、代位弁済後に住宅ローンや自宅がどのように扱われるかを解説していきます。

保証会社から一括返済を求められる

 既に書きましたが、代位弁済後は保証会社が求償権を持つため、残債は保証会社へ返済することになります。

代位弁済でもっとも重要なポイントは、一括返済しか認められない点です。

返済期日も指定されるので、今まで以上に状況は悪化していくとご理解ください。

分割返済が希望」でも、保証会社が分割返済を認めるケースはほとんどありません

更に、これだけではありません。

保証会社は、「代位弁済した金額」+「遅延損害金」の一括請求を求めてきます。

一括で返済できれば問題解決ですが、そもそも返済できない状況が続いていたわけです。

第三者の協力でもない限り、一括返済は難しいのが現実です。

代位弁済で利息がカットされる?

 代位弁済が行われると利息はなくなりますが、代わって遅延損害金を支払わなければなりません。

一括返済できなければ強制執行される

 代位弁済後は一括返済が基本となりますが、その時点で一括返済もほぼ不可能であると思います。

保証会社への返済ができないとなれば、保証会社は裁判所に対して競売の申立てを行います。

競売とは

 債権(借金)を回収するために、裁判所を通じて財産を強制的に処分すること。

競売がはじまるのは、滞納開始後6〜9ヶ月位が一般的で、「競売開始決定通知書」にて通知される。

競売は強制力のある措置で、所有者の都合は関係なく不動産(財産)の処分が行われます。

また、自宅の情報も競売物件としてインターネット上で公開されるため、プライバシーについても少々不安な面も悩みの種となるでしょう。

そして、落札者が落札代金を納付すれば、不動産の所有権は買主へ移ります。

競売は裁判所の決めたスケジュールで進み、所有権移転後は強制的に退去を求められることになります。

代位弁済後の競売は既定路線

代位弁済後は連帯保証人の返済義務はどうなる?

 住宅ローンの契約時に連帯保証人を立てた場合、代位弁済後は連帯保証人の立場はどうなるのでしょうか?

残念ながら、連帯保証人から外れることはありません。

むしろ代位弁済によって、保証会社からの請求が始まってもおかしくない状況です。

連帯保証人は借金が完済されるまで、請求されます。

仮に競売となり債務が残っても、連帯保証人にはその返済義務も負っています。

連帯保証人はローンの契約者本人と同等の責任を追うため、連帯保証人に財産があればその資産も差押さえの対象となります。

連帯保証人の責任は免れない!

代位弁済後の対処法は?

 代位弁済後は一括返済が求められますが、そもそも滞納が続いていた状況で、一括返済は困難です。

だからと言って、代位弁済後に何もしなければ、競売は既定路線でした。

請求されても返済できずに滞納している以上、遅延損害金も増え続けていきます。

代位弁済後にできることは?

代位弁済後に競売を待つだけではなく、何か対処法は無いのでしょうか?

住宅ローンの滞納で代位弁済されてしまった場合、競売以外に残された選択肢は次の3つです。

競売以外の選択肢

  1. 通常売却
  2. 自己破産
  3. 任意売却

それぞれの対処法を詳しく解説します。

1.通常売却

 住宅ローンの残債よりも、不動産の価値が高ければ、真っ先に検討するべきです。

仮に残債が2,000万円だった場合、不動産の査定価格が2,500万円であれば売却で余剰が出ます。

自宅の売却代金を以って返済すれば、無事完済となり解決できます。

住宅ローンを滞納してしまった事実を考えれば、「自宅を所有し続けるのは困難」だったと理解できるでしょう。

代位弁済後に保証会社に対する遅延損害金が増える前に、早々に売却してしまうのが賢明な判断です。

早々に自宅の売却を!

2.自己破産

 住宅ローンの滞納問題を解決する方法の1つに、自己破産があります。

自己破産は、借金返済が困難な状況であることを裁判所に認めてもらい、「返済義務を免除」してもらう手続きです。

代位弁済前であれば、任意整理や個人再生などの手段を選択できたかもしれません。

しかしながら、代位弁済後では、自己破産以外の方法は難しいでしょう。

ほぼすべての借金をゼロにする自己破産は、不動産や車などの財産があれば、破産管財人によって処分され債権者に配当されます。(生活に必要な家具や99万円以下の現金は手元に残せる)

破産管財人とは

破産者の財産を管理・処分する権利を持つ人(裁判所が選任する弁護士)のこと。

借金がなくなる点は、自己破産の大きなメリットです。

住宅ローンはもちろん、遅延損害金の返済も必要なくなり、精神的ストレスからは解放されるでしょう。

自己破産は、弁護士に相談しながら手続きを進めていくのが一般的です。

代位弁済後、競売が開始されるまで、余り時間は残されておりません。

自己破産を検討する場合、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

自己破産で返済義務が免除!

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3.任意売却

 上記の「1.通常売却」が希望でも住宅ローンの残債が多く、自宅を売却しても完済できないケースは多いでしょう。

任意売却は、住宅ローンの残債よりも低い金額で売却が可能です。

任意売却の特徴

ローンの残債 売却価格

自らの意思(任意)で自宅を売り、通常の不動産売却と同じように売却活動を行います。

競売の情報が出る前に行動できるため、ある程度プライバシーを守れます。

ただし、任意売却をするには、大前提として「保証会社の同意」が必要です。

手続きは一般的な不動産業者より、任意売却の専門業者へ依頼するのがスムーズにことが進みます。

任意売却にはリミットがあり、期限の利益の喪失後6ヶ月以上(目安)すると手続きが難しくなります。

任意売却は保証会社の要同意

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任意売却は保証会社に対して意思表示

 誤解しやすいのが、住宅ローンが払えないため早々と任意売却を希望しても、保証会社からの代位弁済前に行うことはできません。

保証会社の利用がある場合、いくら貸手の金融機関へ任売却の意思表示をしても相手にされません。

担当者からは、「任意売却はできません」の一言で終わってしまいます。

任意売却の意思表示をする相手は保証会社となります。

代位弁済前の任意売却は不可!

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未払いの住宅ローンは5年で時効が成立する?

 住宅ローンの滞納を続けると時効が成立するのか、その答えは貸主によって異なります。

具体的には民間の金融機関でローンを組んだ場合は5年、住宅金融支援機構の場合は10年で時効成立です。

ただし、上記の期間が過ぎたからといって、自動的に時効が成立するわけではありません

なぜなら、時効を成立させるには「時効の援用」という手続きが必要だからです。

また、滞納中に訴訟を起こされると、時効が延期される可能性もあります。

時効に期待は禁物

銀行の住宅ローンでも代位弁済されない例外とは?

 例外と書いてしまうと、特別なケースのように感じますが、保証会社を利用しない「プロパー融資」と呼ばれる方法で、住宅ローンを貸付ける銀行もあります。

ここでは、同じく保証会社を利用しない住宅金融支援機構については、該当しませんので区別してください。

先に少し触れましたが、支店や窓口が少ないネット銀行などが該当します。

低金利のネット銀行はプロパーも多い!

住宅ローンを借りる際も、保証会社の審査は必要なく、銀行の審査のみで判断されます。

住宅ローンが払えなくなった際、違いがあるとすれば、「任意売却の意思表示のとき」になります。

滞納が始まり、任意売却を希望するなら直接銀行へ、その旨を伝え早々に取り組む必要があります。

プロパー融資の場合、滞納が始まっても代位弁済されません。

プロパー融資は代位弁済とは無縁

プロパーは金融機関の処分も早い

 プロパー融資の場合、保証会社が無いので、不良債権の処理も格段に速く、任意売却を終えるまで余裕がある訳ではありません。

そのため、時間を無駄に費やすと、銀行から直接「競売の申立て」や「サービサーに債権譲渡」されてしまう事もあります。

期限の利益の喪失後すぐに処理されることも

インターネットの情報だけを見て、「代位弁済の通知が届かないから、まだ時間はある」 と勝手に判断していると手遅れになります。

プロパー融資で任意売却を検討するなら、早めの相談に越したことはありません。

いずれにしても、住宅ローンが払えない状態を続けることは、金融機関にとってもメリットはありません。

不良債権として適切に処理を行うことを求められます。

プロパー融資は銀行の処分も早い!

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住宅ローンの返済でお悩みの方はご相談ください

 住宅ローンの代位弁済後は、自宅を手放さないままやり過ごすことは、ほぼ不可能です。

では、どうすればいいのか?

当事務所では任意売却や住宅ローンの支払い、競売に関する無料相談を行っています。

借金の悩みは人に相談しにくい内容であり、家族にすら打ち明けられないという方は非常に多いでしょう。

しかし、返済日は刻一刻と近づいて、事態は悪化する一方です。

一人で悩んでいるだけで、問題は解決しません。

任意売却はもちろんですが、自宅を売らずに済む方法があれば最優先でご提案いたします。

住宅ローンの滞納で代位弁済がされた」「競売は何としても回避したい」といったお悩みは、早めに相談することをお勧めします。

手遅れだけは避けるべき!

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