自営業者の自宅兼事務所や多額の借入も任意売却は可

自営業者の自宅兼事務所や多額の借入も任意売却はできる

 自営業の方や中小零細企業でも事業継続のためには資金調達も避けて通れないものです。

そして、経営者が自宅に事務所スペースや作業場を併設した建物に居住しているケースもあります。

仕事とプライベートが密接に関わっていることは、中小零細企業の経営者であれば珍しくはありません。

難しいのは、自宅兼事務所や作業スペース等の不動産が経営者個人名義で、その不動産を担保に融資を受けている場合、当然ながら返済が滞れば担保の不動産も無傷ではいられないことになります。

この記事では、自営業の方や中小零細企業の経営者が自宅兼事務所や作業場等の不動産でも、一般の住宅のように任意売却が可能なのか解説します。

また、担保不動産の価値に見合わないほど、多額の借入金がある場合も任意売却は可能なのかも合わせて説明します。

目次

自宅兼事務所や作業場は任意売却できる?

 自宅兼事務所と聞くとフリーのデザイナーや建築士など机上での作業を連想してしまいます。

この様なケースでは事務スペースが居住スペースに併設されている程度であれば、同業者はもちろんリモートワークなど、最近では一般サラリーマンにも需要はあります。

つまり、需要があれば売れる見込みがあり任意売却は可能です。

では、作業場はどうでしょうか?

実際に作業場となると業種によって必要な作業スペース等にカスタマイズされているため、一見すると使い勝手が悪そうに見えるかもしれません。

建物をそのまま利用する買手が現れることが一番望ましいのですが、なかなか難しいのが現状です。

作業場等があると、それに伴い工具や機材なども建物内に置いてあり、不動産売買となれば不要となる残置物処理費用の工面も注意しなければなりません。

それでも、不要なものを処分した結果、需要者の必要な面積が確保できれば十分に売れる可能性はあります。

簡単とはいきませんが、作業場や倉庫等でも任意売却は可能です。

任意売却では、もともと売主の資力が乏しい為、残置物の撤去は買主負担の場合や債権者に必要経費として認めてもらう等、ケースバイケースとなりますので、まずは任意売却を依頼する業者と相談してください。

建物が古くても大丈夫?

 建物が古く老朽化のため、使えないのでは? そういったケースも実際はあります。

そのまま利用する買手でなくても、先代から引継いで事業を営んでいる場合、立地が良かったり、一般的な住宅よりも面積が広かったりと好条件が揃い、取引がスムーズに行われることもあります。

面積が広ければ、土地を細分化して建売住宅の敷地として不動産業者からの引き合いも発生します。

必ずしも建物を再利用する買手でなくても問題ありません。

古いがゆえに建物も簡素な造りで解体費用が安く済むといったこともありますので、建物の再建築を前提に土地を探している方のニーズも取り込めます。

また、古い場合でもリノベーションを施し理想的な間取りに変更すことも可能なので、任意売却の売手があまり心配する必要はありません。

希少物件の可能性もある

 事業に適した場所は、需要はあっても売り物件が少ないこともあり、めったに出ない場所となれば瞬く間に買手が付くこともあります。

例えば、比較的交通量の多い通りに面した立地は、人目につきやすく、店舗や事務所の利用に適してると言えるでしょう。

このような立地は土地面積に対して建築可能面積が多くなり、ワンルームマンション建築したい投資家の需要も考えられます。

そのため、購入後の買手のプランを売手が想像するよりも、売物件としての不動産情報を広範囲、かつ正確に提供することが重要です。

この辺りのことは、信頼できる任意売却業者に依頼すれば、きちんと対応してくれます。

不動産の価値に見合わない多額の残債

 自営業の方や中小零細企業の経営者が利用する事業用の不動産担保ローンとなれば、金額もそれなりに多いため間違った認識で悩んでいる方もいらっしゃいます。

『借金の額が大き過ぎるから任意売却できない・・・』と思い込んでいる方も多いのですが、決してその様な事はありません。

確かに任意売却は担保の不動産を売却して借金の返済に充てることですが、完済できないから・・・、あるいは残債が多すぎるから金融機関が承諾しないといったイメージが先行しています。

任意売却は残債の多少で売値を決めるのではなく、不動産を適正な金額で売却できれば金融機関も承諾してくれます。

少し考えてみてください、ちょっと極端かもしれませんが5,000万円の借入金があり、担保の不動産が1,000万円ほどの価値しかない場合、金融機関は5,000万円で売れるまで(可能性はほぼ無し)待つでしょうか??

そんなことはありません。任意売却(適正価格の売却)を拒否するならば競売に頼るほかありません。

では競売で5,000万円近い金額で落札される可能性は? ほぼ無いでしょう。

無駄に手間暇かけるならば、任意売却で速やかに回収したほうが結果的には金融機関にもメリットとなります。

金融機関の融資と回収は別部門

 相談者と話していて感じるのは、返済が遅れがちになり金融機関に相談すると任意売却はできないと告げられたと言った声が聞かれます。

しかし、もともとの融資担当者の発言で、不良債権の処理の現場を知らない者だったということもあります。

そのため、返済が完全にストップし期限の利益の喪失後、実際の管理部門の新たな担当者と任意売却について話し合うと答えが変わってきます。

1点注意しなければならないのが、保証協会付けの融資であれば債権が保証協会に移ってからでなければ任意売却はできません。

また、不良債権の処理は競売、又は債権譲渡でしか対応しないという金融機関の方針であれば任意売却はできないこととなります。

自己破産検討中も任意売却が有利なことも

 自己破産の検討をされた方なら分かると思いますが、零細企業でも事業者が自己破産するとなれば破産費用もそれりに必要です。

返済ができなくて悩んでいたのに、自己破産するのにも費用で悩んでしまう二重苦も現実の問題です。

そこで、事業継続が困難になり自己破産を考えているならば、先に所有する不動産を任意売却することで債務総額を圧縮できます。

結果的に破産費用を減額できる場合もありますので、自己破産の前に一歩立ち止まり、任意売却する場合と比較してみるのも選択肢の一つです。

お金と不動産の専門家FP宅建士が自営業者・中小企業のサポートを積極的に行っていますので、お困りごとがあれば早めにご相談ください。

この記事を書いた人

小田嶋譲のアバター 小田嶋譲 代表取締役

 有限会社 O&Trade代表 大学卒業後、不動産会社と譲渡債権回収の金融機関での勤務経験を経て独立。最近では特に自営業者の不動産担保ローンや不動産投資の失敗による相談が数多く寄せられ、お金と不動産の専門家、FP宅建士として難易度の高い任意売却に精通し、不動産に関わるお金の悩みの解決に取組んでいます。

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