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競売開始で税金滞納の差押えを解除する任意売却4つの対処法
競売が開始されることは、それだけでも大事件ですが、更に輪をかけて深刻な状況を招いてしまいます。
住宅ローンなどの返済を優先し、納付を後回しにしてきた税金のツケが回ってくる瞬間でもあります。
驚くとことに競売が開始されると、裁判所から役所にも連絡がいく仕組みになっています。
そのため、税金や国民健康保険料などの滞納があれば、役所は瞬く間に差押えに参加します。
住宅ローンが払えなくなり、自宅が競売の瀬戸際にある方は、かなりの確率で税金を滞納しています。
経済状況を考えれば、住宅ローンが払えなくなり、税金の負担にも耐えきれないことは容易に想像ができます。
その一方で競売回避のために任意売却を希望しても、断念する理由は税金滞納による差押えが解除できないケースです。
任意売却に精通するFP&不動産コンサルの有資格者が「競売開始で税金滞納の差押えを解除する任意売却4つの対処法」について解説します。
多額の滞納税(100万円以上)がありながら、任意売却で競売回避できた相談者の事例も交えて紹介します。
※ この記事では税務署や地方自治体を含め「役所」とし、その役所に納付が必要な税金等をすべて含め「税金」として解説します。
任意売却で役所の差押えを解除する方法は4つ
税金の差押えがあるとき、役所から差押えの解除を認めてもらわなければ、任意売却は実質不可能です。
それには滞納分の全部又は、一部にしても納付が必要になります。
要するに、滞納している税金をまったく納付せずに差押えを解除してもらうことは不可能です。
役所に納付するためのお金(原資)を「どこから用意するか?」で、任意売却の成否が決まります。
金融機関は不動産に抵当権(担保にしている)を設定しているため、原則として売却代金を優先的に受取る権利を有しています。
そのうえで任意売却を成立させるためには、役所に納付するお金(原資)の出どころは、以下の4つの中からとなります。
<任意売却時の税金納付の原資>
- 売却代金から(金融機関の同意)
- 売却代金から(金融機関・役所の同意不要)
- 売却代金から一部納付(金融機関・役所の同意)
- 別に用意する(金融機関の同意)
パット見ただけでは、何が書いてあるのか分かりにくいですね。
住宅ローンが払えなくなった方が、自宅を1,000万円で任意売却する前提で1~4を順番に解説していきます。
税金の滞納額は1~4共通で100万円、住宅ローンの残債につては1~4で異なりますので、この点は注意してください。
※ 1~4とは上の枠内<任意売却時の税金納付の原資>のことです。
任意売却時の条件は、以下とします。
(任意売却時の条件)
- 売却価格1,000万円(1~4共通)
- 税金の滞納額100万円(1~4共通)
- 住宅ローンの残債は1~4で異なる
※ 売却時の諸費用等は省略
ポイントは税金の納付を売却代金から捻出できるか?
1.売却代金から納付(金融機関の同意)
任意売却時に売却代金の中から、税金の滞納金額を役所へ納付することを金融機関に同意してもらう必要があります。
その結果、金融機関の受取金額は以下のようになってしまいます。
〈金融機関の受取金額〉
- 1,000万円で任意売却
- 税金の滞納額100万円
- 住宅ローンの残債1,500万円
1,000万円ー100万円=900万円
売却代金1,000万円の中から100万円を税金分として納付することを金融機関に認めてもらえば、簡単に済みます。
しかし、金融機関からすると住宅ローンの残債が1,500万円あるため、100万円も回収額が減るとなれば、認めてくれることは通常ありません。
任意売却の現場では、金融機関と交渉し20万円~30万円位であれば、認めてくれることもありますが、多くは望めません。
金融機関が公式に基準を示している場合もあり、条件に合致すれば任意売却時に税金の納付が可能となります。
役所は満額回収・金融機関は大幅減額では任意売却成立不可
2.売却代金から納付(金融機関・役所の同意不要)
任意売却時に売却代金の中から、住宅ローンは完済、税金の滞納金額も完納できますので、金融機関・役所共に同意が不要なケースです。
〈金融機関の受取金額〉
- 1,000万円で任意売却
- 税金の滞納額100万円
- 住宅ローンの残債900万円
1,000万円ー100万円=900万円
売却代金1,000万円で住宅ローンは完済、税金の滞納分も解消、金融機関とも役所とも交渉する必要はありません。
住宅ローンも完済、税金も滞納分を完納できるため理想的です。
任意売却でローンも税金もすべて清算できる稀なケース
3.売却代金から一部納付(金融機関・役所の同意)
任意売却時に売却代金の中から、税金の滞納金額を一部役所へ納付することで金融機関の同意が必要となり、同時に役所からも同意が必要なケースです。
〈金融機関の受取金額〉
- 1,000万円で任意売却
- 税金の滞納額100万円
- 住宅ローンの残債1,300万円
1,000万円ー50万円=950万円
売却代金1,000万円の中から、50万円を税金分として納付することを金融機関に認めてもらいます。
役所とも交渉し任意売却時に50万円納付、残りは分割で納付することを条件に差押解除に応じてくれる場合もあります。
上記は滞納税の半分としてますが、役所によっては滞納分の7割納付で残り3割は分割を認める等、対応は一律の基準がある訳ではありません。
いずれにしても少ない可能性ではありますが、任意売却時は役所との交渉が必要です。
金融機関も本来なら1,000万円を受取れるにもかかわらず、税金滞納分として50万円の納付を認めるのは、当然理由があります。
競売時の落札予想価格と比較して、任意売却での売買価格が有利と判断されるなどの好条件が重ならない限り難しいと理解してください。
また、現実には滞納額を完納しない限り、差押解除には応じないとする役所が多く、交渉の余地も無く断られるのは、今となっては普通の光景です。
役所が一部納付で任意売却に応じるのは稀
4 別に用意する(金融機関の同意)
まず、住宅ローンの残債が1,200万円ありますので、1,000万円で任意売却するには金融機関の同意は必要です。
そして、売買価格とは別に税金の滞納額である100万円を用意します。
任意売却する本人が用意するのが筋ですが、場合によっては買主が事情を考慮して用立てるケースもあります。
〈金融機関の受取金額〉
- 1,000万円で任意売却
- 税金の滞納額100万円
- 住宅ローンの残債1,200万円
- 100万円を別口で用意(売買価格とは別)
売買価格の1,000万円
任意売却時に1,000万円を金融機関に返済、税金分は100万円を別途に用意して納付することになります。
しかし、任意売却する時点で、厳しい経済状況だったのに100万円を自力で工面するのは、ほぼ不可能でしょう。
買主も無理であれば任意売却を断念するか、身内等の協力が得られない限り難しいでしょう。
任意売却する当事者では相当厳しい
以上、任意売却で役所の差押えを解除する方法1~4ついて説明してきましたが、この中で任意売却が無事成立する可能性が高いのは、『2.売却代金から納付(金融機関・役所の同意不要)』と『4.別に用意する(金融機関の同意)』となります。
その理由は、金融機関が多額の滞納税によって回収額を減らす必要が無いのと、役所も滞納税が完納されるので差押えの解除には必ず応じるためです。
しかし、現実には『2.売却代金から納付(金融機関・役所の同意不要)』のケースに該当する以外は難しいことがほとんどです。
残債が生じる任意売却は多額の滞納税の解消は困難
多額の滞納税は競売と隣り合わせ
誰しも、いきなり数十万円を超すような、税金の滞納がある訳ではありません。
数万円の滞納から始まり、それを積み重ね延滞金も加わり、やがて驚くような金額になってしまいます。
増えてしまったのは仕方ないので、どうすれば競売を回避するために任意売却ができるかを考えるしかありません。
それでは、記事の冒頭で触れた100万円を超えるような税金の滞納がありながら、競売回避ができた相談者の事例を紹介します。
<相談事例>
- 相談者:自営業男性
- 住宅ローンを1年滞納
- 競売開始の通知後に相談
- 役所の差押え有
相談者は競売回避には、任意売却以外は手立てが無いことは理解しており、大急ぎで任意売却を希望していました。
確認すると、固定資産税、国民健康保険税、市県民税、軽自動車税、延滞金と軽く100万円を超えています。
これは市役所の差押に関する税金のみで、その他に自動車税の滞納もあり、合計すると約150万円程の税金滞納が判明しました。
これだけあると、任意売却の障害であることは間違いありません。
早急に金融機関と連絡を取り、任意売却の準備に取りかかります。
なぜ、競売の通知後に相談なのか?
こんな状況で「競売ギリギリまで何をしていたの?」と感じると思います。
余談になってしまいますが、この相談者は別の業者に任意売却を依頼していました。
しかし、一向に任意売却が進展しないまま、競売の申立へ至ったとのことです。
この点は、金融機関の担当者にも伺いましたが「全くの謎で、なぜ任意売却を依頼されながら進めないのか疑問だった?」とのことです。
とにもかくにも金融機関も非常に協力的で、競売ギリギリの任意売却はスタートできました。
金融機関が協力すれば競売ギリギリでも任意売却は可!
任意売却で多額の税金が納付できるのは稀
結果として早々に買い手が決まり、売買価格が「住宅ローンの残債」と「約150万円の滞納税額」の合計を上回りました。
本当にギリギリでしたが、競売で処分される前に任意売却が成立。
相談者の場合は、幸運にも『2.売却代金から納付(金融機関・役所の同意不要)』に当てはまりました。
もちろん、自宅は失いましたが住宅ローンも完済・多額の税金も完納となり、晴れやかな再スタートを切ることが可能に。
100万円を超えるような税金滞納による差押えがある場合、任意売却時に解決できるケースは本当に極わずかです。
目安としては、任意売却によって住宅ローン等の残債が完済とならなければ、税金の滞納分にあてがう余裕はありません。
また、説明のため省略しましたが、任意売却時には通常の不動産売買と同様に諸費用も発生します。
その分も加味して、任意売却が成立するのは、ほんの一握りの方だけです。
多額の滞納税がある場合、任意売却を断念することは、今では常識となりつつあります。
多額の滞納税は任意売却を断念する理由No1
競売開始で役所へ連絡する理由
記事冒頭で「競売が開始されると、裁判所から役所にも連絡がいく仕組み」と書きました。
競売申立 → 裁判所 → 役所
その理由は何でしょうか?
住宅ローンなどの不動産担保ローンが払えなくなり、それが続くと金融機関は競売の申立てを行います。
裁判所に競売の申立てがなされると、裁判所から役所に税金や国民健康保険料等の滞納があれば届け出るよう催告される仕組みになっています。
それは「競売後にお金が余れば払います」という理由からです。
それゆえ、競売の申立を知った役所は税金や国民健康保険料などの滞納があると、まずは不動産を差押えてしまうのです。
競売の申立後でも任意売却は可能ですが、税金の滞納があれば役所は確実に差押えに参加します。
非常にやっかいな問題となってしまうのは、言うまでもありません。
競売申立時の滞納税は役所は確実に差押えに参加
無意味な差押えも多い
競売申立て後に参加してくる役所の差押えについては、事務的に行われてしまいます。
純粋に競売後の余剰金があれば、その目的も達成できます。
しかし、明らかに余剰金は見込めず、滞納税は回収不可能と思われる場合も多くあります。
それでも差押えを行い、任意売却の障害となり競売に至るケースが数多くあるのも事実です。
任意売却をする場合、税金や国民健康保険等の滞納には気を付ける必要があります。
大変重要なポイントで、決して後回しにできる状況ではないことをご理解ください。
競売開始で税金の後回しは不可能となる
役所によって解除条件は異なる
役所の差押えについて、厳しいことを書いてきました。
そのことに、間違いはありません。
しかし、厳しい中にも例外はあります。
役所に差押えをされても、滞納の額や自治体によって差押解除の基準も、それぞれ異なります。
任意売却の障害になる可能性がありますが、差押解除に向けた交渉の機会は、諦める前に必ず設けてください。
もちろん、任意売却に精通する不動産業者であれば、ご本人と役所へ同行して交渉することも可能ですから、まずは相談してみましょう。
役所とは差押解除に向けた交渉は必須
税金の納付と住宅ローンの返済、どちらが優先?
国民が納税義務を負っていることは憲法に記されています。
従いまして、税金は住宅ローンの返済よりも優先して納付しなければなりません。
税金滞納の時点で住宅ローンの返済もストップしていなければ、順序が逆と言われてしまっても仕方ないものです。
税金の負担が重く感じられ、滞納が1年以上も続いてしまえば、もはや住宅ローンの返済は不可能でしょう。
手遅れとなる前に専門家へ相談し、早めの解決を心掛けて下さい。
税金が納付できなければ、そもそも住宅ローンも払えない