任意売却を決断したら返済は完全ストップ!FPが口座管理のテクニックも大公開

任意売却を決断したら返済は完全ストップ!FPが口座管理のテクニックも大公開

 先の見えない経済状況を背景に、住宅ローンの問題が週刊誌やテレビの特集で取り上げられる機会が増えてきました。

住宅ローンの返済に苦しむ方にとって、こうした報道が「任意売却」という選択肢の存在を知るきっかけとなるのは、とても有意義なことです。

特に、やむを得ず自宅売却を考えたとき住宅ローンの残債が売却価格を上回る、いわゆる「オーバーローン」状態であれば、任意売却で解決できる可能性があります。

それを知るだけでも、心の負担が少し和らぐという方も多いでしょう。

しかし、任意売却を決断したならば、住宅ローンの返済は原則として「完全にストップ」させる必要があります。

そのこと1つ取っても「任意売却は勇気のいる決断」であることに変わりはありません。

もう払わない」と、返済を止めれば「任意売却が進む?」という単純な話ではない!

金融機関とのやり取りや、返済に使っていた「口座はどうなるのか?」といった不安まで出てきます。

この記事は、任意売却に精通するFP&不動産コンサルの有資格者が、住宅ローンを例に「返済ストップの判断」から「任意売却をスムーズに進める口座管理のテクニック」まで、実務目線で解説します。

目次

住宅ローン返済中の任意売却が絶対あり得ない訳!

 返済に不安を感じている方の多くは、現実にはまだ返済を継続中です。

その様な方々が今後も厳しい状態が続くと考え、いざ売却しようと決断しても『オーバーローンだから任意売却でお願いします!』とは簡単にはいきません。

この点については、あまり詳しくは語られていないため、間違った認識に陥ってしまうこともあります。

任意売却は住宅ローンを含め、不動産担保ローンの「返済に行き詰まった方」が対象となります。

完全に返済がストップしてしまい、その担保を売却して借金の返済に充てることからスタートしております。

その際、オーバーローンで全額回収できないという理由で、金融機関が売ることに反対していれば、一銭も回収できません。

まずは、担保の不動産を売れる金額で売却してもらい回収します。

返済できなければ不動産は処分(売却)!

売却しても住宅ローンが完済できなければ、「その後の返済(残債)は相談して決めましょう」というのが原則です。

借手が担保不動産の売却を拒むときは?
→ 金融機関が競売にて処分(売却)します。

完全に不良債権の処理を進める手順です。

もちろん、競売でも残債があれば請求されます。

従って、金融機関からすると『競売もあり得ますよ!』という状態から、やっと任意売却という方法を選択できます。

決して『オーバーローンだから任意売却で!』と気軽に進める訳ではありません。

任意売却は不良債権の処理

金融機関が任意売却を認める状況とは

 具体的には、どういった状況だと任意売却が可能なのか?

詳しく知るには、金融機関との契約書を見れば判断できます。

住宅ローンの契約書(たいていは金銭消費貸借契約書となっています)に「期限の利益の喪失」という文言がでてきます。

要約すると3回~6回滞納すると期限の利益を喪失し、一括で請求するとなっています。

更に噛み砕くと、3回~6回滞納すると、もう分割の返済は認めません。

全部一括で返済して下さい!』となります。

契約書上はそうなっていても、そんな余裕はない・・・

滞納回数については銀行等はおおむね3回、フラット35の住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫も含む)は6回となっており金融機関によって違いがあります。

期限の利益を喪失しない限り、借手は分割返済を主張できるため、金融機関は任意売却を原則認めません

従いまして、任意売却は「期限の利益を喪失し、分割返済ができなくなってから」になります。

そして、この頃になると信用情報機関に金融事故の記録もされてしまいます。

いわゆるブラックリストの登録です。

ここまでくると、誰でも深刻な状況と理解できると思います。

しかし、任意売却については、やっと金融機関と交渉のテーブルについたと考えて差し支えないでしょう。

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後がない状況から任意売却

 金融機関から見ると、返済が滞り競売の一歩手前の状況になって、ようやく任意売却となります。

また、保証会社があれば、期限の利益の喪失後に代位弁済され、保証会社と任意売却の交渉になります。

代位弁済とは?

 銀行などの民間金融機関の多くは、保証会社の利用を条件に住宅ローンの貸付を行います。

理由として返済が滞った場合、保証会社が代わりに返済します。

このことを「代位弁済」と言います。

※ 保証会社の利用が無ければ、代位弁済はありません。

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実際には、金融機関から一括請求された状況でなければ、任意売却をスタートできません。

本当に本当によく考え、それでも将来的には厳しいと感じられるならば、まずは住宅ローンの返済を完全にストップする決断をしなければなりません。

その現実を乗り越えて、ようやく任意売却へ至るため、簡単には決められないのが実情です。

そして、保証会社がある場合、期限の利益の喪失後に代位弁済を経て、やっと任意売却の交渉へとなります。

保証会社の利用が無ければ、期限の利益の喪失後に借手の金融機関と任意売却の交渉となります。

期限の利益の喪失→代位弁済→任意売却

滞納中でも期限の利益の喪失前は?

 少し違ったケースも見てみましょう。

住宅ローンを滞納しているけれど「期限の利益の喪失前に売却したい場合」何か方法はないのか?

非常に気になると思います。

例えば、銀行の住宅ローンで2回滞納しているとします。

期限の利益の喪失前に、どうしても売却したいとなったら。

方法は1つ、残りの「住宅ローン全額を返済」できれば、売却は可能

完済するので当然なのですが・・・。

つまり、オーバーローンではない、又はオーバーローンでも足りない分の現金が用意できるケースでは、期限の利益の喪失前でも売却は可能となります。

完済できれば自由に売却できる

銀行員に「任意売却はできない」と言われてしまう理由

 任意売却は、競売の一歩手前ということは理解できたことでしょう。

住宅ローンの返済が不可能なため借入先の銀行へ相談に行くと、想定と異なる返答に驚くことがあります。

銀行や信用金庫に相談に行ったにもかかわらず、「任意売却はできません」とあっさり断られてしまった・・・

このような経験をされた方は、実は少なくありません。

こうした対応を受けると、任意売却そのものが不可能なのだと誤解してしまいます。

しかし、このやり取りには「金融機関特有の事情」が関係しています。

借りた銀行では任意売却を断られる!

任意売却の交渉先は「保証会社」に変わる

 銀行や信用金庫の住宅ローンは、多くの場合、先に少し触れた保証会社の保証付きで貸し出されています。

このため、返済が滞ると金融機関は、住宅ローンの借手に代わって保証会社から返済を受ける仕組み(代位弁済)になっています。

そして、代位弁済が完了した時点で、住宅ローンの債権は銀行から保証会社へと完全に移行するという点です。

つまり、銀行としては住宅ローンの滞納が続いても代位弁済され、そもそも任意売却する必要が無いため「任意売却はできません!」と返答するのです。

「任意売却はできません」は本当にできない訳ではない!

銀行の担当者が「任意売却には応じられない」とするのは、あくまで銀行が任意売却に応じる立場ではないという制度上のことからくるものです。

しかしながら、説明が不十分だと相談者は「任意売却ができない」と誤解してしまいます。

実際には、代位弁済が済んだ後であれば、保証会社との交渉によって任意売却は可能になります。

つまり、任意売却ができないのではなく、「今はまだそのタイミングではない」だけなのです。

任意売却のタイミングではないことも!

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旧住宅金融公庫の「併せ貸し」には注意!

 任意売却の実務では、旧住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)を利用していた方にも、特有の注意点があります。

かつて旧住宅金融公庫で住宅ローンを借りた際、「公庫住宅融資保証協会」が保証会社として付いていた方も多いでしょう。

現在ではこれらの業務は、住宅金融支援機構が一括で引き継いでおり、任意売却の申出先も住宅金融支援機構へとなっています

住宅金融公庫は2007年3月31日廃止、2007年4月1日付「独立行政法人 住宅金融支援機構」へ業務承継、制度的に再編

問題は 「旧公庫と他の金融機関との併せ貸し(合わせ融資)」を受けていた場合 に起きやすくなります。

とくに、「年金福祉協会や財形住宅融資」などを併用していた方は要注意です。

これらの併せ貸しの中で借入額が比較的少ない場合、月々の返済額もそれほど高額ではありません。

口座の残高次第では、自動的に引き落としされ一方の金融機関だけ「返済が数か月続いていた」という相談者も存在します。

そのため、住宅ローンの返済口座の管理ができていないと、気付かずにアンバランスな返済が続いてしまいます。

アンバランスな返済状況

  • 旧住宅金融公庫(月額13万円)滞納中
  • 年金福祉協会(月額2万円)返済中

※ 口座に12万円あった場合、旧公庫の引落は不可でも、気付かずに年金福祉協会は6ヶ月引落し可

一方は滞納して、もう一方では返済継続中という「アンバランスな返済」が生じるケースがあります。

このような状態が続いてしまうと、任意売却の前提となる代位弁済や期限の利益の喪失前であることが満たされず、「任意売却に進めなない事態」に陥る恐れがあります。

併せ貸しのケースでは「双方のの金融機関が任意売却へと進める状況にあるのか?」、必ず事前に確認することが重要です。

あえて併せ貸しの解説を付け加えたのは、債権者(不動産を担保にしている)が複数いると任意売却の交渉相手も複数になります。

交渉相手が増えれば任意売却の難易度も上がる!

住宅ローンの他に、リフォームローンなど自宅を担保にして借入をしていれば、任意売却の際は同様に交渉相手が増えることになります。

この様なケースでは住宅ローンが1番抵当、リフォームローンが2番抵当と担保設定(抵当権)の順番付がなされます。

抵当権の順番は、競売などの回収時における優先順位を示しています。

このルールは、任意売却時にも原則として有効となります。

任意売却も抵当権の順番は重要

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任意売却を決断したら実行する事

 任意売却は「不良債権の処理」であるとの解説をしました。

また、住宅ローンが払えなくなり滞納が続くと、競売で自宅が処分されることも、理解されたことでしょう。

その上で任意売却を決断したならば、即行動して欲しいことについて触れておきます。

それは、まず住宅ローンの引落しに指定している預金口座の管理となります。

この先も重要となる口座管理

任意売却前に引落し口座の管理

 始めに通帳を記帳し、給料等の振込の予定、残高をきちんと把握してください。

そして、以下の2点を実行してください。

口座管理のポイント

  • 住宅ローンの引落し口座は預金を引出し利用しない。
  • 給料や年金の振込口座と住宅ローンの引落し口座が同じであれば他の金融機関へ変更する。

任意売却に臨むなら、住宅ローンの返済口座の管理は非常に重要です。

なぜ、口座管理は重要なの?

  1. 銀行など民間金融機関の場合は住宅ローンの滞納が続くと、口座が凍結され現金が引出せなくなる。
  2. 二番抵当以下の債権者がいる場合、口座に残高があると気付かずに返済を続けていることがある。

1については、預金が引き出せないのと同時に、残高があれば勝手に引落しされ、返済に回されてしまいます。

2については、先に説明した旧住宅金融公庫の併せ貸しを利用している場合などを想定しています。

 月々の返済が13万円と2万円を例として挙げました。口座に12万円残っていると公庫の返済には足りなくても、2万円なら6か月間は自動的に返済が続いてしまいます。

一方の金融機関には返済をしているのに、もう一方の金融機関には返済していないことが判明すると、金融機関との調整が非常に難しくなる事があります。

クレジットカード・自動車ローンの引落し口座は変更

 預金口座から引落しされるのは、何も住宅ローンに限りません。

光熱費や国民年金の口座振替を利用していた場合、住宅ローンの返済に利用していた口座とは別の金融機関へ変更手続きをしましょう。

その他に、クレジットカードの支払いや自動車ローンの返済をされている方も多いと思います。

任意売却をした結果、必ずしもクレジットカードが利用できなくなる訳ではありません

そのため、クレジットカードの引落し口座を早めに変更し、クレジットカードの支払いを継続していれば、引き続き利用可能なケースがほとんどです。

他の引落しは速やかに口座変更

任意売却するのにマンションの管理費・修繕積立金は払っても大丈夫?

 マンションを任意売却するとき、販売期間中の「管理費・修繕積立金を払うか?

この点については、多くの方が大変悩みます。

任意売却中でも早めに引っ越してしまい、そこに住んでいなければ良いのですが、大抵は買主に引き渡す直前まで住んでいます。

気持ちとしては払いたいけど・・・

先々を見れば、管理費・修繕積立金の支払いはストップする。

月々の支出をなるべく抑え、新生活の準備のため、貯蓄を増やすようアドバイスしたいところです。

 個人情報の保護が求められる現在でも、総戸数の少ないマンションや自主管理の場合、誰が管理費・修繕積立金を滞納しているかなど、噂になる可能性もあります。

せっかく競売回避のために任意売却を選択しても、精神的な負担が大きければ、新生活のためと割り切っても管理費・修繕積立金の支払いを止めることに躊躇するのも理解できます

自分1人ならまだしも、子供の同級生も住んでいるような場合は当然です。

結論としては、管理費・修繕積立金の支払いを続けても問題ありません。

管理費・修繕積立金は払っても大丈夫!

損得勘定だけならば管理費・修繕積立金の支払いはストップ

 マンションの任意売却では管理費・修繕積立金を滞納しても売買金額の中から支払うことを金融機関は認めてくれます。

そんな訳もあり、任意売却中は管理費・修繕積立金の支払いをストップすることを提案します。

お客様の事情で管理費・修繕積立金の支払いを継続されても問題はありません。

また、実際には任意売却だから、管理費・修繕積立金の支払いを止めなければならない理由もありません。

あくまでも損得勘定だけならストップ

住宅ローンの返済は完全にストップ!

 任意売却を検討する人の中には、「金融機関に申し訳ない」と考える誠実な方も多くいます。

真面目な性格の方ほど、「少しでも払っておけば印象が良くなるのでは」という思いを巡らせます。

それでも、任意売却を決断したならば、「住宅ローンの返済は完全にストップする」のが原則です。

中途半端に支払いを続けることで、かえって任意売却に進めないケースも少なくありません。

代位弁済前の返済にメリットは無い

任意売却を決めた顧客に対し、金融機関は尚も返済を求めてくる場合があります。

まれに、金融機関の担当者から優しく声を掛けられ、その通りにすれば「何とかなるのでは?」と考えたくもなります。

上手いことに強硬ではなく『少しでも返済してもらえませんか・・・

やんわりお願いされ、ついつい少額なら応じてしまいたくもなる

約束通りの返済ができずに申し訳ない気持ちがいっぱいの顧客は、何とか誠意を見せたい思いは分からなくもありません。

しかし、その返済が問題を解決することはありません。

何が言いたいかとなると、その返済に応じても任意売却が避けられないのであれば、正直意味が無いということです。

ましてや保証会社が代位弁済し、債権者が変わる場合は尚更でしょう。

実際のところ代位弁済後は一括請求されるため、その前に少額の返済をしても債務残高に、ほとんど変わりはありません。

逆に担当者へ『少しでも返済を続けると、不動産を売らずに済みますか?』と問い掛けてみれば、返済に意味があるのか、すぐに答えが出るかもしれません。

任売却を決断したら返済は完全ストップ

返済は金融機関に好都合なだけ

 金融機関の担当者は代位弁済するまでの過程でも、少しでも貸付金の回収を行っているとの実績作りがしたいのかは不明ですが、全くもって返済不能となった顧客のためとは、決して見て取れません。

返済は金融機関の都合で、状況に変化はありませんのでキッパリと断る

多くの方が、任意売却の経験は初めてのことなので、金融機関の対応に戸惑うことも多々あります。

任意売却によって借金が完済し晴れて、返済の負担から解放されるケースも少なからずありますが、任意売却前の少額の返済では大した違いは生じません。

もしも迷ったら、その場で返答しないで、あなたが依頼する任意売却業者に相談して下さい。

無意味な返済は生活を圧迫する

返済を考えるのは任意売却後

 任意売却となる場合、大半が債務超過(オーバーローン)いわば不動産の価値を借金が上回るケースとなり、任意売却後に残債が生じてしまいます。

そのため、任意売却を決断したならば、もう返済は完全にストップして任意売却に向けた行動へシフトすることは既に解説済みです。

残債の返済については、任意売却後に改めて考えることが自然な流れ

残債の返済は任意売却後に考える理由は簡単で、任意売却後でなければ、正確な残債額も判明しないからです。

そのため、まずは「任意売却によって競売を回避すること」が優先課題。

そして、残債の対応が必要になるのは、任意売却が無事に済んで落ち着いてからとなります。

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住宅ローンを滞納すると口座が使えなくなるの!?

 住宅ローンを銀行や信用金庫で借りていると、その金融機関の口座から毎月の返済額を引落としていると思います。

では、住宅ローンが払えなくなってしまうと、その口座はどうなるのでしょうか!?

上でも触れてきましたが、いずれ使えなくなります。

預金口座は凍結(ロック)される

いつから口座が使えなくなる?

 住宅ローンの滞納が続けば口座が使えなくなることは、何となく予想がつきますが、いつから使えなくなるのか?

住宅ローンが払えなくなった当事者にしてみれば、かなり重要な部分ですよね。

金融機関によって多少の違いはあるものの、1つの目安があります。

それは期限の利益の喪失後となります。

引出し可能であれば凍結前

口座が止まるのは期限の利益の喪失後

 口座が使えなくなることを口座の凍結などと呼ばれていますが、どういうことが起きているのか?

簡単に説明すると、住宅ローンの滞納によって、期限の利益を喪失します。

その結果、金融機関と約束した分割での返済は過去の話となり、一括返済を求められます。

当然そのような余裕が無いのは金融機関は百も承知ですが、まずは即回収できるものに手を付けます

それが、僅かながら残っている口座の預金となります。

期限の利益の喪失で口座がロック

残っている預金は相殺される

 銀行に口座を持っていると預金がぴったり¥0のことって珍しいですよね。

多少なりとも何十円や何百円程度、残っていたりすると思います。

先述しましたが口座が凍結された時点で、口座の預金は住宅ローンの返済に充当、相殺されてしまいます。

その時点で残高が「¥0」となります。

相殺通知書

気を付けなければならないのが、同じ金融機関に複数の口座を持っている場合、その口座も凍結の対象となってしまいます。

同じ金融機関だけど支店が異なるから、大丈夫とはならないのです。

同じ金融機関の口座は支店が別でもアウト!

他の金融機関の口座は大丈夫?

 口座が凍結されてしまうと、もう一つ疑問が湧いてくると思います。

住宅ローン等、金融機関からの返済が滞ると、信用情報機関に事故情報が記録されてしまう、ブラックリストの登録問題との関係です。

実際ブラックリストなるものは存在しませんが、金融事故の記録が残ってしまうと他の金融機関の口座も凍結されないか気になると思います。

結論から申しますと、他の金融機関の口座に関して影響はありません。

A銀行の住宅ローンを①支店の口座から引落し→滞納(期限の利益の喪失)

凍結される(使えなくなる)

  • A銀行①支店の口座
  • A銀行②支店の口座

凍結されない(使える)

  • B銀行の口座
  • C信用金庫の口座

※ 他の金融機関の口座には影響は及ばない

住宅ローンに限らず、銀行や信用金庫から何かしらの借金があり、その借金を滞納してしまうと同じ金融機関の口座が凍結されると考えれば、分かりやすいと思います。

同じ銀行の別支店も凍結の対象

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口座の差押えと口座の凍結は異なる

 混同しがちなのが、口座が凍結されると、差押えられた考えてしまう方も多いようです。

しかし、口座の凍結は口座のある金融機関の判断です。

それに対して、口座の差押えは滞納処分や強制執行によるもので、口座のある金融機関の判断ではありません。

差押えと凍結の違い

  • 口座の差押え
     強制執行や滞納処分(税金の滞納など)によるもの
  • 口座の凍結
     口座のある金融機関の判断によるもの

従いまして、口座の差押えは口座のある金融機関とは無関係の債権者によってなされたものと考えれば分かりやすいでしょう。

例を挙げると、税金や国民健康保険料などの役所に関わる未納で差押える場合は「滞納処分」。

借金なども含め、何かしらの裁判所の判決や公正証書(債務名義の取得)を基に差押える場合は「強制執行」となります。

口座の差押えと凍結は全くの別もの!

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法人の代表者は注意が必要なケースも

 企業の経営者は信用力の問題で、「法人名義の借入れでも、個人で連帯保証人」となっている方も多くいます。

そのため、法人の借金が返済できなければ、経営者個人に請求が及び、個人名義の口座も凍結されてしまう可能性があります。

怖いのは、法人名義での借入れと経営者個人の住宅ローンが同一金融機関の場合、会社の経営が傾き、法人名義の返済が滞納してしまうと、どうなるでしょうか?

 個人名義の口座も凍結され、住宅ローンを返済したくても、自分の口座に入金(預入)できない状態となり、結果、住宅ローンの返済も滞納してしまうこともあります。

いずれにしても、口座の凍結は金融機関の回収がスタートしたことになり、担保となる自宅や不動産をどうするのか、真剣に考える時期に差し掛かっています。

口座の凍結で不良債権の回収が始まる

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