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住宅金融支援機構のシルバー返済特例とは?

定年後も続く住宅ローンの返済が老後破綻の原因となることは、もはや周知の事実です。
しかし、現在定年を迎えてる方にとって、住宅の購入当初は想像できないほどの、景気の低迷や物価の変動もありました。
そこで、住宅金融支援機構には「住宅ローンの返済を20年以上継続された満70歳以上の方限定」の『シルバー返済特例』という救済策があります。
この記事では、現役のFP&不動産コンサルの有資格者が「住宅金融支援機構のシルバー返済特例」について解説します。
住宅金融支援機構の返済に悩む方は、是非参考にして頂けたら幸いです。
目次
住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)のシルバー返済特例
住宅金融支援機構のシルバー返済特例とは、毎月の返済額を利息のみとし、債務者全員が亡くなった後に自宅を売却して返済する方法です。
全くの無収入では、到底無理ですが利息分のみなら返済が可能な場合、生きている間は自宅に住み続け、その後は売却して住宅ローンを清算することが条件になります。
利息分を払える年金生活者にとっては、住み慣れた我が家にそのまま住めるため、ひとまずは安心といった制度ではないでしょうか。
元金に対しての返済が無いため、毎月の返済は幾分楽になります。
利息が払えれば住み続けられる
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売却時の価格は問題にならないのか?
シルバー返済特例を利用して、自分の死亡後は自宅が売却され、返済に充てることは分かりました。
気になるのは、売却時にローン残高より低い価格でしか売れない場合はどうなるのか?
身内などに迷惑を掛けないのか? 心配になります。
ところが、売却後に残債が生じても相続人に請求されないとされていますので、相続人に迷惑を掛けない点では画期的です。
シルバー返済特例は最終的に残債が生じても可!
シルバー返済特例の主な利用条件
住宅金融支援機構のウェブサイトには『シルバー返済特例のご案内』というチラシが見られるようになっています。
〈シルバー返済特例の主な利用条件〉
- 制度ご利用時点で満70歳以上であること。
- 現に融資住宅に居住し、今後も居住を継続する予定であること。
- ご返済を開始してから20年以上経過していること。
- 土地と建物に機構の抵当権が設定されていること。
- 現在遅れなくご返済いただいていること。
- 一定の収入基準を満たすこと
※「年収が機構への年間総返済額の4倍以下」または「月収が世帯人数×64,000円以下」等の条件があります。
住宅金融支援機構ウェブサイト(70歳以上の方)返済方法変更のご案内より引用
20年以上返済を継続し、尚且つ70歳以上というのがポイントになります。
そして、現在もきちんと返済を継続していなければなりません。
払えなくなってからでは間に合いませんので、今後の返済に不安がある時点で検討する必要があります。
すでに滞納している方は対象外
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すでに滞納している場合は任意売却で競売回避
すでに住宅金融支援機構への返済が滞ってしまっている方は、非常に残念ではありますが、シルバー返済特例の該当者と認めてもらうことはできません。
では、やむを得ず滞納が続いてしまう場合、どうすればいいでしょうか?
そのままの状態がつづくと、やがて『自宅は競売となります』この事態を避けるには、自らの意思で自宅を手放す以外方法はありません。
その結果、自宅の競売は回避することができます。
具体的な競売回避の方法は以下のページを参照してください。
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シルバー返済特例の注意点
『シルバー返済特例のご案内』のチラシには、注意点もしっかり記載されていますので以下抜粋します。
〈ご利用にあたってのご注意〉
住宅金融支援機構ウェブサイト(70歳以上の方)返済方法変更のご案内より引用
- 団体信用生命保険にご加入している方は、シルバー返済特例をご利用できません。
- シルバー返済特例の適用後にご返済が困難となった場合、更なる返済方法の変更はできません。
- シルバー返済特例の適用後に毎月のご返済が滞った場合は、債務の全額について一括返済を請求します。毎月のご返済が滞った場合、正当な理由無く融資物件を退去された場合、ご契約者・連帯保証人・担保提供者が反社会的勢力であることが判明した場合等、ご契約の内容に違反された場合は、残債務の全額を一括してお支払いただきますのでご注意ください。
- 変更手数料は無料です。
- 推定相続人(代表者)や担保提供者など全ての利害関係人の方の同意が必要となります。
- 機構との併せ融資を行った福祉医療機構債権は、シルバー返済特例をご利用できません。
注意点を順番に詳しく見ていきましょう。
シルバー返済特例の注意点1
団体信用生命保険についてです。
いわゆる団信と呼ばれ、死亡の際は住宅ローンをカバーするための保険です。
シルバー返済特例を利用する際に加入している場合、この団体信用生命保険を解約する必要があります。
加入していても解約すれば大丈夫です。
シルバー返済特例の注意点2・3
シルバー返済特例を一度、選択してしまうと他の返済方法への変更は認められません。
そのため、返済が滞ってしまうと残債の一括請求となってしまいます。
その他として住宅金融支援機構に何も告げずに勝手に引っ越したり、反社会的勢力との関りが判明すれば残債を一括請求されます。
シルバー返済特例の注意点4
住宅金融支援機構の住宅ローンからシルバー返済特例に切り替える際、変更手数料は必要ありません。
シルバー返済特例の注意点5
シルバー返済特例を利用すると、ご本人が死亡した際は自宅は売却され、その売却代金は住宅金融支援機構への返済に充当します。
そのため、相続人や担保提供者など全ての利害関係人の同意が必要です。
この注意点で分かりにくいのは、担保提供者ではないかと思います。
例えば、親の土地に子が家を建てた場合、建物の建築代金をフラット35を利用していると建物だけでなく、土地も同時に担保となります。
この様なケースでは親が担保提供者となります。
シルバー返済特例の注意点6
住宅金融支援機構のローンと福祉医療機構の関係したローンを組合せて借りている場合、シルバー返済特例の利用は不可となります。
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シルバー返済特例の大きな問題点
シルバー返済特例は利用できそうだけれど、住宅ローンを借りている夫が先に亡くなった場合、残された妻はどうなるのでしょうか?
夫が先に亡くなった時点で、妻は相続人となります。
「シルバー返済特例の注意点5」にも書いておりますが、相続人となる者は、あらかじめ売却されることに同意します。
従いまして、夫に先立たれてしまうと妻は家を明け渡さなければなりません。
その他、同居していた者がいれば、同様に出ていかなければなりません。
ただし、相続人が残債を一括で返済できれば、売却する必要はありません。
残された家族は家を失うリスク
連帯債務者の年齢も要件となる
シルバー返済特例を利用する際、年齢の基準(満70歳以上)がありました。
年齢だけを見ると「自分はシルバー返済特例を利用できそうだ!」と考えてしまいます。
では、奥様が連帯債務者となっていて、年齢が65歳の場合はどうなるのでしょうか?
チラシを見ても詳しい記載はありませんが、結論からするとダメです。
連帯債務者も年齢の基準(満70歳以上)を満たしている必要があります。
〈シルバー返済特例の詳しい年齢基準〉
- 主債務者 満70歳以上
- 連帯債務者 満70歳以上
シルバー返済特例で連帯債務者の大きなメリット
前項の「シルバー返済特例の大きな問題点」でローンを借りている者に先立たれると、残された家族は家を失うリスクがあると書きました。
当事者にしてみれば、本当に深刻な問題です。
ただし、この件に限っては連帯債務者がメリットを享受できる場合があります。
「シルバー返済特例のご案内」のチラシには以下の文言が記載されています
『債務者全員がお亡くなりになられたときに、ご自宅の売却によって残債務(残元金及び利息等)を一括して返済する返済方法』
重要なところは赤字でもアンダーラインでもなく「債務者全員」とある、この部分なのです。
債務者全員とは、主債務者(借りた本人)と連帯債務者も含まれます。
そのため、仮に主債務者の夫に先立たれても、連帯債務者が妻の場合、妻は返済が継続できれば住み続けることが可能です。
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見落としがちなシルバー返済特例のデメリット
シルバー返済特例は頑張って住宅ローンの返済を続け、年を重ねてきた方たちにとって、最後の救済策でもあります。
しかし、実際に利用しようと検討すると思わぬ壁に突き当たるケースがあります。
シルバー返済特例のデメリットとして相談事例を紹介します。
〈シルバー返済特例の相談事例〉
- 相談者:80代男性(以下、Mさん)
- お住まい:一戸建
- 不動産の持ち分:相談者8・妻2
- 相談内容:シルバー返済特例を利用したい
相談者の男性はシルバー返済特例の要件をクリアしていると思われたのですが、実は大きな問題がありました。
住宅金融支援機構からの借入は、Mさん名義です。
奥様は連帯債務者にもなっていませんでしたが、不動産の持ち分が2割あります。
ここで奥様がシルバー返済特例に同意してくれれば、事はスムーズに進むはずでした・・・
ところが、奥様の健康状態が悪く、同時に認知機能の衰えが顕著になりシルバー返済特例を進める場合、成年後見制度を利用しなければならない事態となってしまいました。
成年後見制度については、厚生労働省のウェブサイト『ご本人・家族・地域のみなさまへ(成年後見制度とは)|成年後見早わかり』を参照して下さい。
厚生労働省ウェブサイト成年後見早わかりより
このような状況に備えて、身内を任意後見人として決めておけば、手続きは迅速に行えたかと思います。
しかし、そのような準備万端の方は、ほぼおりません。
その結果、家庭裁判所へ奥様の法定後見制度の申立てを行い、その後、家庭裁判所から選任された法廷後見人による手続きが必要となってしまいました。
その一連の流れにも数か月の時間を要してしまいます。
また、法廷後見人が選任されても『シルバー返済特例事態が本人(奥様)のためになると法廷後見人が認めなければ同意してもらえません』
要するに、住宅ローンの借り手(債務者)であるMさんがシルバー返済特例を望んでも、一人の力ではどうにもならな状況となっています。
ある意味、奥様が不動産の持ち分を所有しているため、この点は仕方ありません。
シルバー返済特例は『不動産の共有者がいる場合、進められないケースや時間を要するケース』があることも念頭に置いておいてください。
『認知症の発覚で預金を動かせず返済不能となった相談事例の記事』
不動産に共有者がいる場合、同意が得られるか?
老後破綻はこれからが本格化する
このシルバー返済特例も含め、リースバックやリバースモーゲージ等の金融サービスも盛んになっています。
また、シルバー返済特例の利用者があまりにも増えた場合、現在の制度が変更されたり、もしかしたら廃止される可能性もあります。
どれも突き詰めると、高齢化社会が現実化し、生活資金に困窮する高齢者が確実に増えている現れです。
しかし、この先リースバックやリバースモーゲージの対象となるエリアが、現在のまま続くかも疑問が残る部分です。
空き家問題が騒がれている中で、更に空き家が増えれば不動産価格も、引きずられるように下落する可能性も否めません。
そのため、リバースモーゲージやリースバックの対象となるエリアも都心の極一部の限られたエリアに、今後は限定されるかもしれません。
現時点で住宅ローンの返済が苦しいと感じているならば、本当にこのまま返済を続け、完済後の自宅に資産価値が残っているのか?
今一度、考えてみてはいかがでしょう。
住宅ローンの返済が厳しいと感じたら、専門知識を有する者へ早めに相談しよう!
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