不動産が差押え、どうなるの?原因、影響、解除方法を徹底解説

不動産が差押えられた、どうなるの!?

 不動産の差押えとは、一体どういうことなのか?

自宅が差押えられたら、大変なことになるのでは・・・

不安になるのは、間違いありません。

実際に「不動産を差押えられたら、どうなるのか?

そして、「不動産の差押えには、どう対処するべきか?

不動産の差押えに悩む方」に対して、業界歴20年超のFP&不動産コンサルの有資格者が詳しく解説します。

また、役所から「差押の予告」などが届いている方も、参考にして下さい。

目次

不動産の差押えは見た目では分からない

 あなたの自宅が、税金の滞納などで差押えを受けたとします。

もちろん、所有者の元へは、「役所から差押通知」は届くことでしょう。

では、隣り近所の第三者が見て「あの家は差押えられた」と分かるのでしょうか?

その答えは、「まず知られることは無い」と言っても差し支えないでしょう。

不動産の差押えは見ても見た目では分からない!

不動産の差押え前後で変わるのは?

 それでは、不動産の「差押え前」「差押え後」の違いは何でしょうか?

不動産が差押えらると登記事項証明書(登記簿謄本)に『差押』と登記(記録)されます。

それでも、その不動産に住めなくなる訳ではありません

また、差押えられた不動産が売買できなくなる訳でもありません

差押中と書かれた看板を設置されることもありません。

不動産を差押えられても、「登記事項証明書(登記簿謄本)を見ないと確認できない」のです。

登記事項証明書とは?

 人に例えると、戸籍のようなもので法務局で管理されています。

不動産の面積や所有者、不動産を担保にお金を借りていれば抵当権の有無も記載されます。

その他、差押えの有無も確認できます。

また、過去の経緯は消えずに、抹消という形で下線が引かれたまま記録が残ります。

例えば、差押えを受けると解除されても記録は残ったままとなります。

※ 過去に差押えを受けたことが分かってしまう・・・

○ 過去に競売の申立てが3回、1回は取下げなので任意売却の可能性、2回は落札された登記事項証明書です、参考にどうぞ。

※ 人の戸籍は原則として第三者は取得できませんが、登記事項証明書は誰でも取得可能です。

競売の申立てによる差押えは?

競売の申立による差押えも同様です。

こちらについても、見た目では全く分かりません。

ただし、そのまま放置すれば「競売は進行」していきます。

やがて、裁判所のウェブサイトには、競売情報として公開されてしまいます。

そのような状況であれば、早急に競売回避をお勧めします。

競売時の差押えも見た目は分からないが競売は進行する

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どのようなとき、不動産は差押えられるの?

 不動産の差押えは、どのようなときに行われるのか?

基本的に何かの支払い義務が生じ、その支払いがなされていない場合です。

相手次第とはなりますが、支払いを求めることで「不動産が差押えられます

原因は、主に下記になります。

不動産差押えの原因

  1. 住宅ローンのように不動産を担保にしたローンが未返済
  2. 裁判所の判決や和解により金銭の支払いが決まっているとき
  3. 税金等の滞納による役所の滞納処分の一段階目

1.住宅ローンのように不動産を担保にしたローンが未返済

 住宅ローンや他の不動産担保ローンは、不動産に抵当権を設定しています。

いわゆる「借金の担保が不動産」です。

不動産が担保となっていて返済が滞ると、お金の貸し手(債権者)は競売の申立てを行います。

裁判所を通して、担保となっている不動産が強制的に処分(売却)されます。

これを、抵当権の実行と言います。

つまり、不動産が担保となっていて、借金が返済できないと抵当権の実行を進めるため、担保不動産競売開始決定通知が裁判所から届きます。

その時点で、既に不動産は差押えられているのが通例です。

税金の滞納があると

競売の申立てをされると、役所にも連絡があり税金の滞納があれば、役所も続いて差押えを行います。

競売で処分するための差押え

2.裁判所の判決や和解書により金銭の支払いが決まっているとき

 何かの支払いができずに裁判を起こされ、その判決や裁判所で和解をしたときが該当します。

〈主な例〉

  • クレジットカードの支払い(最近は増えています)
  • 裁判で確定した損害賠償金
  • 個人間の貸借など

また、「公正証書(要件を備えたもの)」により、支払い等が決められていた場合も該当します。

どのケースも相手側は、債務名義を取得している場合に限られます。

不動産を担保にしていなくても差押えは可能

元々、不動産が担保になっていなくても、その「債務名義」をもとに、競売の申立てを行い、競売開始決定の通知が裁判所から届きます。

こちらも前項1同様に、既に不動産は差押えられているのが通例です。

ただし、裁判等で時間を要する場合もありますので、事前に「仮差押え」を済ませて裁判を進めるのがほとんどです。

仮差押えの効果は、債務名義を取得するまでの時間、所有者による不動産の売却等、財産の処分を防ぎます。

債務名義取得までは仮差押え

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差押えされていても不動産の売却は可能なのでは?

 すぐ上の項では、「所有者による不動産の売却等、財産の処分を防ぎます」と書きました。

しかし、更に上の「不動産の差押え前後で変わるのは?」では、「差押えられた不動産が売買できなくなる訳でもありません。」とも書いています。

一見すると矛盾する内容で、記事を読んでいる方にすれば迷ってしまいます。

実際は、どちらなのか?

結論から書くと、不動産を売買することは可能です。

しかし、差押えや仮差押え後に売買し、第三者が不動産の所有者になっても、競売は防げません。

差押えや仮差押え中の債権者は、そのまま不動産を競売で処分することが可能です。

従いまして、競売のリスクがある不動産を、お金を出して購入する者は通常いません。

その意味で「所有者による不動産の売却等、財産の処分を防ぎます」という表現となっております。

後から説明する「役所の差押え」についても同様です。

差押え後の不動産売買が成立するのは、「差押え解除の見込みがある場合のみ」となります。

このようなケースでの不動産売買は「任意売却で取引される」ことが多いでしょう。

差押え後の不動産は解除の見込みがあれば売買可能

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3.税金等の滞納による役所の滞納処分の一段階目

 様々な支払いの中で、何よりも優先させるのが税金の納付です。

ところが住宅ローンの返済は続けても、固定資産税や国民健康保険料、その他の税金関係を後回しにしている方も多いと思います。

国民健康保険税もあるが・・・

国民健康保険料ではなく、国民健康保険税として徴収する自治体もあります。

どちらも滞納があれば差押えは可能です。

自宅や不動産を所有しながら、納付を怠り滞納を続けると、「差押決定通知書」なるものが届きます。

もともと役所からは、書面で納付を促すものが複数届いていたと思われます。

差押え前は何度も書面で納付を促す

役所の差押えは、不動産を持っている人のみに対して、行われるわけではありません。

給料なども差押えの対象となりますが、本記事のテーマではないので割愛します。

しかしながら、不動産の所有者は差押えまでされると、納付率が上がるので積極的に行っているようにも見えます

大抵の役所は1年程度滞納が続けば、不動産の差押えを行います。

役所は債務名義や抵当権に関係なく差押え可能

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差押えは最悪の「一歩手前」

 他人に売ることもできるので、何も支障が無いようにさえ感じます。。

しかし、本当に注意しなければならないのは、「差押えは途中経過」に過ぎないことです。

差押えの先は民間(企業や個人)と役所では異なりますが、結果は「ほぼ同じ」です。

差押えは、「競売公売」に向けての準備段階であることを強く認識してください。

〈差押えの先に起こること〉

  1. 民間の差押え → 競売の手前
  2. 役所の差押え → 公売の手前

差押えは「競売・公売」の準備中

公売とは?

 民間は、競売で動産や不動産を換価(現金に換える)しますが、役所の場合は公売で換価します。

役所が民間のオークションサイトに出品することもあります。

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競売の差押えによる対処法は? 

 「抵当権の実行による差押」「債務名義による差押」どちらも不動産の強制競売の手前の段階といえます。

競売手続きが進行中ということになり、そのまま売っても差押えの効力は消えません。

競売になれば、落札者に所有権が移ってしまいますので、差押えされたままの不動産を購入する人は皆無なので、売れないと既に説明しました。

この点については、公売も同様です。

つまり、差押えを解除するためには「請求金額を支払う」以外ありません

そして「対処しなければ、競売で不動産は処分される」ことが明白となっています。

請求金額を用意できなければ、競売を回避するのは現実的には、難しいでしょう。

そうなると、実質的に残された方法は不動産の「任意売却」です。

差押えられた不動産の売却は、借金の額や同時に役所の差押えも並行してしるケースも多く、「任意売却に精通する不動産業者でなければ難しい」側面もあります。

どうしても売却したい場合は、任意売却となり差押解除の見通しを立てない限り困難なのは間違いありません。

差押えられたら競売回避を念頭に任意売却

差押後に届く怪しいダイレクトメール

 不動産が差押えられると、いつもと変わった事が起きます。

それは、今まで見たことも無いような封書が届きます

しかも「大至急ご確認下さい」や「重要」「親展」などと記載されています。

何か大切な書類でも入っているような感じさえします。

送り主を見て、心当たりが無ければ、ほぼ任意売却業者か金融業者です。

差押の登記がビジネスに利用される

「不動産が差押えられると登記事項証明書(登記簿謄本)に『差押』と登記(記録)されます」と書きましたが、登記の申請は法務局で受付けます。

詳細は省きますが、法務局の不動産登記受付帳という書類を基に「差押登記がされた不動産が特定」できます。

そして、不動産の登記事項証明書を取得(少々費用は掛かりますが・・・)します。

所有者が確認できるので、任意売却の案内や金融業者がダイレクトメールを送ることが可能になります。

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役所の差押えは、すぐに何か起こる訳ではない

 競売の場合、申立てた側が取下げをしない限り、手続きは落札するまで進みます。

その一方で、役所は税金等の滞納があれば、公売により回収するのが基本です。

しかし、不動産の差押えまで進んでも、その後は一旦動きが止まってしまいます。

理由として、不動産を差押えられる人は、経済的な事情により、納付すべき税金を納められずにいます。

そのため所有する不動産には、多くのケースで既に(住宅ローンなどの)抵当権が設定されています。

公売にしても抵当権が優先されて回収が見込めないと分かっているからです。

回収見込みが無いまま差押えは継続

役所の差押えで住宅ローンの借換えも不可

 不動産の差押えは、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されます。

どこの債権者が原因で差押えたかも分かります。

役所であれば税金による差押と容易に想像できます

そして、無事に税金を納めても登記事項証明書(登記簿謄本)には差押登記抹消と記載され、「差押」の履歴が残ります。

過去に経済的に厳しいときがあっても、現在は乗り越え納税ができまとしましょう。

ところが、金利の変動に備えて住宅ローンの借換えを検討しても、金融機関によっては過去の税金未納を理由に断られることがあります

差押えの記録は解除後も影響大!

税金滞納による差押えの影響は意外に大きい

 役所の差押えの場合は、住宅ローンなどの抵当権が先行して設定されていると、それ以後は目立った動きは無いと先に書きました。

その結果、しばらくすると慣れてしまい、差押えされたままでも不安が無くなってしまいます

ところが、経済的に立ち直り、次のステップを考えた時、所有する不動産に差押の履歴が確認されると、相手によっては社会的信用を落としかねない事実として見られるかもしれません。

登録事項証明書(登記簿謄本)は、誰でも自由に取得できます。

可能であれば、マイナスとなる履歴は残さないに越したことはありません。

差押えの履歴はデメリットしかない

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役所に自宅を差押えられたまでも大丈夫なのか?

 税金の滞納で自宅を差押えられても、住宅ローンは返済を続けている場合、問題は発生しないか?

こんな疑問を感じている方が多いようです。

誤解されがちなのですが、役所から税金の滞納で自宅を差押えられると、誰だって最初は焦ります。

しかし、その後は役所から封書は届きますが、特に何も起きないため、そのままやり過ごしてしまいます。

2か月、3か月と時間が経過しても何も起こらず、すっかり安心しきっている方もいるくらいです。

それゆえ、「住宅ローンが払えていれば大丈夫では?」 と感じてしまいます。

結論を述べると、税金の滞納を解消できる見込みがあれば、通常は大丈夫が答えになります。

滞納分の完納以外は危険な状態

役所の無反応が誤解を生む

 役所は税金の滞納があれば動産や不動産を差押え、公売によって処分して強制的に回収することが基本です。

また、役所の差押えは滞納処分の途中段階であることは、既に解説済みです。

しかし、住民に対して悪質でない限り、強引なことはしたくないのも事実です。

そうなると、不動産の差押えまでは行い、その後は書面で滞納分の納付を促し、そして待つ・・・

全ての役所も調べたわけではありませんが、経験上どこの役所もおおむね、ただ「待つ」という対応をしています。

後ほど説明しますが、この「待つには2つの意味がある」と筆者は勝手ながら解釈しています。

結局のところ、この待つという期間に住宅ローンが払えていれば、金融機関も特に無反応のため、やり過ごすことができてしまいます

しかし、その裏で税金の滞納が続けば、それに伴い延滞金も増え続けることになります。

滞納期間に応じて延滞金は増加中

税金を滞納し住宅ローンの返済を続けるリスク

 ここから、税金滞納者に対する「2つの待つ」について書きます。

税金滞納者への2つの待つ

  1. 売るのを待つ
  2. 残債が減るのを待つ

1.売るのを待つ

 税金を滞納し住宅ローンの返済を続けたとしても、その後、税金の滞納も解消できるならば問題ありません。

しかし、住宅ローンを払いながら、本来納付すべき税金が納付できない経済状態は、もはや健全ではありません

そこまで税金の滞納をしてしまう場合、いずれ住宅ローンの返済もままならなくなってしまいます。

住宅ローンが払えなくなれば、自宅は手放す以外方法はありません

金融機関は住宅ローンの滞納をいつまでも待ってはくれません。

税金の滞納が続き、「自宅が差押えられていると、この手放すときに大問題」となって降りかかってきます。

役所から差押えられたままの不動産を買う者は皆無

役所の差押えは解除しなければ、売却は不可能と言って差し支えありません。

これが、売るときを待つになります。

この時ばかりは、役所も強気で『延滞金も含めキッチリ全額納付して下さい!』となります。

どこの地方自治体も税収不足に悩んでいます。

不動産を売却後に分割納付での差押解除には、交渉の余地が無い自治体が多くなってきております。

つまり、税金の滞納を続けたツケを払う時期が、ついに来た瞬間となってしまいます。

住宅ローンが払えず、売却する必要があれば、滞納した税金は延滞金も含めて清算する必要があります。

1つ目は「売るときを待つ

「売るときに税金が納付できない場合は?

 問題となるのは、任意売却を試みたときに税金が納められないケースです。

税金を滞納した結果、延滞金も加わり高額となった場合、任意売却を成立させるには税金は完納し、役所の差押えを解除しなければなりません。

役所の差押が解除できる見通しが無ければ、「任意売却を断念せざるを得ない」のです。

納付できなければ、任意売却できずに「自宅は競売の可能性」もある最悪の状況となります。

任意売却を希望するなら要注意

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2.残債が減るのを待つ

 税金が納付できない方は、やがて住宅ローンの返済も厳しくなると書きました。

では、何とか税金は滞納のままでも、「住宅ローンの返済が続けられれば大丈夫なの?」と思うかもしれません。

しかし、その様な考えは、すぐに打ち消されます。

まず、税金は住宅ローンよりも優先して納付する必要があります。

この前提だけは、忘れないで下さい。

税金の滞納を続け住宅ローンを返済すると、どの様なことが起きるでしょうか?

住宅ローンがあると、不動産は金融機関の担保となっています。

役所が差押えて強制的に公売を実施しても、まずは金融機関が回収し、余分が出れば役所が回収となります。

事実上2番手では回収が見込めないため、ただ待っているだけのように感じてしまいます。

役所は回収の見込みが無ければ、回収できる時期まで差押えたまま、待つこともできてしまいます。

住宅ローンは毎月返済すれば減っていく
反対に税金は納付しなければ増え続ける

そして、時期が来れば公売に踏み切り、延滞金も含め回収も辞さない考えです。

2つ目の待つは住宅ローン等の残債が減るのを待つとなります。

実際、ここまで税金を滞納される方は事業者等が多く、また固定資産税だけの滞納では見かけません。

それでも、個人宅の公売による回収が実施されているのも、また、事実です。

税金が納付できない状況は、現在の生活が維持できないのと同じです。

役所に差押えされたまま、住宅ローンを返済している方は、一時的な税金の滞納であれば役所も相談には乗ってくれます。

しかし、状況が改善しないまま滞納を続けるのであれば、良い結果にはならないことも知っておく必要があります。

自宅の固定資産税が負担に感じてきたならば、売却を含め検討する時期にきているのかもしれません。

2つ目は「ローンが減るとき」を待つ

差押えて「待つ」には時効も防げる

 税金を滞納し、役所が何も対処しないでいると、やがて時効となってしまいます。

時効が完成し滞納者へ請求できなくなると、他の納税者への示しもつきません。

そのような事態を防ぐためにも、差押えは有効で役所の立場からすると、債権の保全する目的にもなります。

役所が競売を後押しする最強の回収方法

 生活が苦しいながらも住宅ローンは返済し、税金等を滞納している者に対して、最強の回収方法があります。

不動産の差押え後も納付が無ければ、次の手段として「住宅ローンの返済口座を差押える」ことも可能です。

住宅ローンの返済口座には、毎月引落分の金額が入金されているため、金額の多少にこだわらなければ回収できてしまいます。

住宅ローンの返済口座の差押えで起こること

 役所による不動産の差押えには目をつぶってきた金融機関も、ほぼ確実に住宅ローンの一括返済を求めます。

金融機関の一括返済の求めに応じなければ、競売による回収へとなってしまいます。

不動産の登記事項を見れば、取扱いの金融機関及び支店も簡単に確認できます。

役所の担当者が、滞納者の銀行口座を手間暇かけて探す必要もありません。

役所が競売回避に配慮している

差押えは契約条項違反

 そもそも、住宅ローンの契約書(金銭消費貸借契約書)の条項には、第三者から担保となっている不動産を差押えられた時点で金融機関は一括での返済を求められる旨の記載があります。

 役所から不動産を差押えられた時点で、本来ならば銀行等の金融機関は住宅ローンの一括返済を求めることが契約上も可能となっています。

それでも金融機関は、現在の経済状況もしかり、また抵当権の順位で税金よりは優先される可能性が高いので、役所による不動産の差押えで、すぐに一括返済を求めることは、ほぼありません。

役所の差押えは金融機関も黙認

役所の担当者も悩んでいる

 役所の担当者も実際は住宅ローンの返済口座を差押えてしまうと、滞納者も結果的に自宅が競売に掛けられてしまいます。

やはり、そこまではしたくないというのが本音ではないかと思います。

金融機関が競売にしても、滞納分が配当として回ってくるかの判断は難しいところです。

しかしながら財産を持ちながら、滞納を続ける者がいれば、その解消に向けて対処しなければならないのも事実です。

本来ならば滞納処分を進めるのが基本

納付なしには財産の保有はできない

 繰り返しとなりますが、税金等の本来納めなければならない義務を果たさずに、住宅ローンの返済を継続するということは、他の健全な納税者からすると不公平そのものとなります。

住宅ローンの返済口座を差押えずに待ってくれているということは、やはり何とかしてあげたいという役所の担当者の思いがあるからだと感じます。

今現在、住宅ローンをギリギリの状態で返済を続け、役所に対して未納がある方は、差押えの有無に関わらず、まずは担当者ときちんと向き合い今後の納付に対し、どの様にしていくかを伝えましょう。

そして、税金の滞納が続き任意売却が必要となったときも、あまり良い結果とはならないことも念頭に置かなければなりません。

 税金の滞納は異常事態

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役所の不動産差押えを解除する方法

 役所による不動産の差押えを解除できるとすれば、次の4つのケースが想定できます。

〈差押え解除4つのケース〉

  1. 滞納中の税金や国民健康保険料を全額納付した時
  2. 役所と相談し差押えの解除を認めてもらえた時
  3. 差押財産の金銭的価値が失われた時
  4. 任意売却が行われた時

ここからはそれぞれの要件を詳しく見ていきましょう。

1.滞納中の税金や国民健康保険料を全額納付した時

 差押えを解除するもっともシンプルな方法が、滞納中の税金を納付することです。

この場合、滞納分に加えて延滞金も納付する必要があります

もっとも、数ヶ月にわたって滞納が続いているような状況であれば、延滞金も含め全額納付は現実的とは言えないでしょう。

ただし、滞納分を分割しても完納できれば、差押えは解除されます。

差押え解除の基本は全額納付

2.役所と相談し差押えの解除を認めてもらえた時

 役所が財産を差押え、公売に至る手続きを滞納処分と呼んでおります。

それに対して公売の前に差押えを解除する等、途中でストップするには、その滞納処分を執行停止してもらう必要があります。

滞納処分の執行停止は全額納付であれば当然ですが、役所と相談して納付の見込みや分割納付の具体的なスケジュール等が認められれば、自治体によっては稀に認めてもらえる場合もあります。

しかし、全額納付以外は全く取り合わない自治体が多いのが現実です。

滞納分有の執行停止は稀

3.差押財産の金銭的価値が失われた時

 財産に金銭的な価値がないと判断された場合、差押えが解除される可能性があります。

差押えられた建物が火事で燃えてしまった場合などは、分かりやすいと思います。

その他、不動産等の財産以外では、上場企業の破綻によって所有していた有価証券に価値がなくなった場合などがあげられます。

差押えの目的は、換金可能なものを公売で強制的に売却し滞納分に充当することです。

燃えて灰になった建物や紙切れ同然の有価証券は無価値となり、差押えも無意味という理由です。

差押えの意味が無ければ解除される

4.任意売却が行われた時

 任意売却は自らの意思により、不動産を売却します。

住宅ローン等の不動産担保ローンが払えなくなった時、主に競売を回避する目的で行われます

任意売却ならば、ローン残高より低い金額で不動産を売却可能

役所に不動産を差押えられるような経済状況では、任意売却時に税金等の滞納分を別に用意して納付することは困難なケースがほとんどです。

そのため金融機関は、競売よりも任意売却のほうが回収額を多く見込める場合、不動産の売却代金の中から税金の滞納分を役所に納付することを認めてもらえる場合があります。

役所による差押えは、役所に相談の上で任意売却を進めていく必要があります。

各自治体で任意売却時の対応が大きく異なり、全額納付以外は認めないというケースや任意売却後に分割納付を認めることもあります。

税金の滞納による不動産の差押えは任意売却の大きな障害となるため、任意売却を成立させるために差押えを解除したいといった目的がほとんどとなります。

なお、任意売却を行うにはリミットがあるため、希望する場合は早めの対処が必要です。

任意売却を希望するならプロに相談!

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差押えが解除されると通知が届く

 差押えの解除要件を満たすと、通知する義務があります

(質権者等への差押解除の通知)

第八十一条 税務署長は、差押を解除した場合において、第五十五条各号(質権者等に対する差押の通知)に掲げる者のうち知れている者及び交付要求をしている者があるときは、これらの者にその旨その他必要な事項を通知しなければならない。

引用元:国税徴収法第81条

上記については、地方自治体も同様です。

税金等の滞納によって担保になっている不動産が差押えが解除された時は、住宅ローン等の担保設定をしている金融機関にも解除通知が送付されます。

以下は、役所に差押えられたマンションの「差押解除通知書」です。

差押解除通知書
差押え解除には何日かかる?

差押え解除に要する日数は、何をどのような理由で差押えられたかで大きく異なります

例えば税金の滞納で給与や預金口座が差押えられたのなら、滞納分を支払うことで2〜3日後には差押え解除となります。(最短1日というお話もありました)

不動産の差押えに関しては、法務局を経由しますので2週間~3週間程度あれば登記も抹消されます。

補足ですが、自宅の差押えで即刻退去を迫られるかというとそうではありません。

差押えられた家が競売にかけられ、買い手が見つかるまでは住み続けることが可能です。

役所の差押登記がある任意売却について

 先にも少し触れましたが、役所の差押えがある不動産の売買自体はそのままでも可能です。

しかし、差押えされたままで購入しようとする人はいません。

差押登記のある不動産を購入するのは、差押登記が抹消(消される)される予定がある場合となるからです。

任意売却は、債権者の同意を得なければ成立しません。

手続きに関しては、任意売却に精通した不動産業者が段取りを行います

差押えは解除して引渡すため買手に迷惑はかけない

任意売却は競売回避のための選択肢の一つです

 住宅ローン等の不動産担保ローンは滞納を続けると、担保となる不動産を競売により処分して回収します。

自宅等の不動産が競売の可能性があれば、誰しも何とか回避できないものかと考えるのが自然でしょう。

その際、有効な手段である「任意売却が役所の差押えで障害」となってしまうケースが少なくありません。

税金等も含め滞納が続いている状況では、残債の一括返済で競売を回避するのは相当困難です。

税金や借金滞納の悩みは人に打ち明けにくい内容ですが、一人で抱え込んでいても解決はできません

早い段階で相談し、競売回避に向けて行動することをお勧めします。

任意売却の相談は早いほど有効

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不動産が差押えられた、どうなるの!?

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