任意売却で一括査定を推奨しない理由|適正価格が成功のポイント

任意売却で一括査定はダメ!? 適正価格が成功のポイント

 住宅ローンを含む不動産担保ローンの返済が困難となり、任意売却を検討されている方にとって、不動産の査定価格は成功と失敗を分ける重要な要素です。

インターネットで「不動産 査定」と検索すると、多くの一括査定サイトが表示されます。

一括査定の結果、「高額な査定価格なら借金が減って良いことでは?」と、つい考えてしまいます。

しかし、現実離れした高額な査定価格こそが、任意売却を失敗に導く落とし穴なのです。

本記事では、任意売却に精通するFP&不動産コンサルの有資格者が、「なぜ、一括査定を推奨しないのか」、そして「適正価格が成功のポイントとなる理由」について詳しく解説します。

目次

なぜ、任意売却で一括査定を推奨しないのか?

 最近では、インターネットの一括査定サイトが大変人気になっています。

不動産の価格査定を1度の操作で、複数の業者に対して依頼できるため、確かに便利なサービスです。

それでも、任意売却では一括査定を推奨しません

その理由は、一括査定の仕組み自体が任意売却の成功を妨げる要因を含んでいるからです。

任意売却で一括査定は馴染まない

一括査定で高額な査定価格が出る理由

 一括査定サイトを利用すると、意外にも各社の査定価格はバラバラ、中には驚くほど高額な価格を提示する業者も存在します。

その背景には、査定する「不動産業者の営業戦略」があることをご存知でしょうか。

査定を行う不動産業者の目的は、実際に売却の依頼を受けて、売却が完了すれば「仲介手数料という報酬」を得ることです。

一括査定に参加するのは、この「売却依頼の受注」が目的

一括査定である以上、必ず他社との競合が存在します。

更に、正直に査定しても単に査定しただけで終わってしまう可能性も十分にあります。

そうならないため、出てきた対策が高額な査定価格なのです。

高額な査定価格で依頼者に好アピール!

高額な査定価格から始まる価格下落のシナリオ

 不動産業者が査定しただけで終わらず、売却依頼に繋げるためにはどうしたらよいでしょうか?

答えは簡単!

依頼者から査定結果に興味を持ってもらうことです。

競合他社より高い査定価格を導き出すこと!

しかし、同じようなことを考えているのは1社だけではありません。

そのため査定価格にバラつきがあっても、総じて高めの査定価格が出やすくなってしまいます。

そして、一番高い査定価格を出した業者に理由を聞くと、「このエリアで探しているお客様がいます」などと告げられ、納得してしまうことがあります。

「お客様がいます!」は要注意

驚きの高額な査定価格の思惑とは?

 一括査定で高額な査定価格を出した不動産業者に売却を依頼したとしましょう。

このエリアで探していたはずのお客の話も、何だかんだ理由を付けて消えてしまいます・・・

結局は、相場より高いまま不動産を売りに出し、ただただ時間だけが経過していきます。

あるとき「売れそうもないので価格を変更しませんか?」と提案されることになります。

これは不動産業者のシナリオ通りで、そもそも売れない価格で依頼を受け、少し時間をかけながら価格を下げて売却させる戦略なのです。

ジワジワと販売価格を下げさせる方法は、一括査定サイトがメジャーになる前、はるか昔からある手法です。

高額査定で喜ぶのは最初だけ!

通常の不動産売却であれば、このような戦略も通用するかもしれません。

しかし、任意売却ではこの手法は通用しません!

任意売却では、住宅ローンの滞納から競売までの限られた時間内に取引を成立させる必要があります。

売れないので価格を下げましょう」という時間的余裕はないのです。

任意売却を迅速に成立させることが急務

一括査定が任意売却に不向きな3つの理由

 一括査定が任意売却に適さない理由を明確にお伝えします。

一括査定が任意売却に不向きな理由

  1. 時間的な制約を考慮していない
  2. 高額な査定価格による売却機会の損失
  3. 競売リスクの増大

1.時間的な制約を考慮していない

 通常売却を前提とした査定のため、任意売却の時間的制約が反映されておりません。

通常売却でも、可能であれば早期の売却を目指したいものの、適正な査定価格では売却依頼の受注ができないため、必然的に時間がかかってしまう。

販売開始後の値下げが前提

2.高額な査定価格による売却機会の損失

 競合に優るための高額な査定価格により、売り出し初期の重要な機会を逃してしまう。

適正価格であれば、購入したであろう顧客が他の物件へ流れてしう機会損失の可能性があります。

見込み客の取り逃がしリスク

3.競売リスクの増大

 売れないまま時間が経過し、結果的に競売になってしまうリスクを抱えている。

もともと、残された時間が少ない中での「更なる時間の浪費」により、より一層競売のリスクを増加させてしまう。

この状況では、依頼者にとって不安を増長させる結果へとつながります。

時間の浪費にメリットは皆無

一括査定利用時の注意点

 インターネットで検索すれば、「一括査定サイトのメリット・デメリット」も容易に知ることができます。

特に任意売却時は、参考価格にとどめる程度の認識で利用してください。

一括査定の高額な査定価格で判断してしまうと、売れないまま時間だけが過ぎ、結果的に競売になってしまうリスクが伴います。

一括査定に参加する一般的な不動産業者の査定は、時間をかけた販売活動を前提(値下げ戦略)としており、高めの価格設定になりがちです。

一括査定と任意売却査定との違い

販売期間価格
一括査定長い高め
任意売却の査定短い低め(現実的)

任意売却で一括査定は馴染まない

高額な査定価格が任意売却を失敗に導く理由を更に詳しく

 不動産の売却では、売主は誰でも高く売れることを希望します。

任意売却も同様で、高く売れることで売主は借金が減り、金融機関もより多く回収することができます。

高額査定で金融機関は本当に喜ぶのか?

一見すると、高額な査定価格は皆が喜ぶ「WIN-WINの関係」のように思えるでしょう。

しかし、これは大きな誤解です。

高額な査定価格について、一時的に金融機関は喜ぶかもしれませんが、その査定価格で売れなければ、任意売却も成立しません

結果として競売になってしまえば、金融機関も想定したような回収ができない可能性があります。

高額査定は絵に描いた餅

もっと言えば、任意売却が不成立となれば、金融機関は自ら競売費用を負担して競売の申立てをしなければなりません。

時間をかけて更に追加費用では、金融機関もたまったものではありません。

高額な査定価格は金融機関にもデメリット

任意売却の時間的制約という現実

 任意売却を検討される方の多くは、既に金融機関からの督促が始まっており、場合によっては競売申立ての準備に入っているケースも少なくありません。

通常の不動産売却であれば、時間をかけて段階的に価格を調整することも可能です。

しかし、任意売却ではそのような時間的余裕はありません。

その先には競売という現実が迫っており、限られた時間の中で確実に任意売却を成立させる必要があります。

また、買手が決まれば安心なのかと言えば、完全に任意売却の取引成立の目途が立った訳ではありません。

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高額な査定価格に惑わされた結果起こること

 競売になってもおかしくない状況で、高額な査定価格を真に受けて依頼した場合、どうなるでしょうか?

高額な査定価格を真に受けると、どうなる?

売れないので価格を下げましょう・・・」という時間的余裕は、任意売却にはありませんでした。

その間にも、競売手続きは着々と進行し、最終的には競売で処分されてしまいます。

任意売却を希望したものの競売となってしまえば、その代償は大きな精神的負担を負うことになります。

任意売却を望む理由は「売却価格の高い・低い」ではなく、競売の精神的負担を避けたいからです。

任意売却は競売の精神的負担を避けるため

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高額な査定価格は売り出し初期のチャンスを逃す

 任意売却は時間との勝負と繰り返し書いてきました。

売り出した直後に、「どれだけ多くの購入検討者の目に留まるか!?

これは、成功と失敗の分かれ目にもなります。

不動産の売却では、売り出した直後が、最も多くの購入希望者の目に触れる瞬間です。

この最初の印象の強さを「初期インパクト」と呼び、売却をスムーズに進めるうえで非常に重要なポイントとなります。

しかし、一括査定などの高額な査定価格で販売を開始すると、一時的に注目は集めても「価格に魅力がない」ため、誰も興味を持たないまま見過ごされてしまいます

初期インパクトのメリット

  • 多くの購入検討者の注目を集める
  • 価格に魅力があれば興味を引く
  • 早期売却の可能性が高まる

売れ残り物件になるリスク

 初期インパクトにより注目を集めても、相場より高いとなれば「価格に魅力がない」ため、誰も興味を示しません

単なる売れ残り物件となり、売却情報自体も古いものへ

高額な査定価格を信じて依頼しても、大切な不動産が売れ残り物件となる可能性があるのです。

その売れ残り物件から、リフォーム等の手を加えず売れる物件へと変えるには、値下げして新たな価格で情報を更新する必要があります。

情報の更新は価格変更(値下げ)

売却のチャンスを逃さない戦略

 速やかに不動産の売却を希望するならば、結局は値下げすることになるのです。

それならば、最初から適正価格で販売開始することで、売却のチャンスを逃さずに済みます。

任意売却では、この「売却のチャンス」を逃すことは、競売へ移行するリスクを意味します。

価格に魅力があれば注目度もアップ!

適正価格こそが任意売却成功のポイント

 高額な査定価格は、任意売却で求められるスムーズな売却を遠のけてしまいます。

ここでは、任意売却における適正価格の重要性を解説します。

任意売却を依頼する最大の目的は「競売回避」です。

そのために、不動産の一般市場で「速やかに買い手を探せる査定価格」を提示する必要があります。

当事務所では、概ね3か月の販売期間で買い手が現れるであろう査定価格を導き出し、お客様に提示しています。

この査定価格を、ここでは適正価格としております。

これは決して安売りではなく、確実に任意売却を成功させるための現実的な査定価格なのです。

任意売却における査定価格の重要性

  1. 速やかな買い手探しが可能
  2. 金融機関との円滑な価格調整
  3. 競売回避という最大目標の達成
  4. 依頼者の残債軽減の最大化

1.速やかな買い手探しが可能

 任意売却において取引を成立させるには、限られた期間内に購入希望者を確保する必要があります。

あわよくば、高く売れるかも!?

このような楽観的な価格による販売活動を行う時間的余裕はありません。

適正価格であれば、市場相場に合致しているため、購入希望者も探しやすくなります。

高額な査定価格ではなく、適正価格だからこそ売り出し初期から引き合いがあるのです。

販売開始直後から引き合いがある!

2.金融機関との円滑な価格調整

 金融機関に適正価格を受け入れてもらうことが、任意売却成功の重要なポイントでもあります。

もちろん金融機関も高値で売却できるなら、反対する理由はありません。

しかし、売却見込みの無い価格での販売を継続されてもメリットはありません

適正価格であれば「売れる」という可能性を示すことで、金融機関も回収額を算出でき、円滑に同意を得ることができます。

高額な査定価格よりも、現実的な適正価格の方が金融機関との交渉がスムーズに進むのです。

速やかな取引成立は金融機関も歓迎

3.競売回避という最大目標の達成

 任意売却を依頼する最大の目的は「競売を回避」です。

適正価格で速やかに売却できれば、競売申立て前、又は競売手続き中でも間に合う可能性が高まります。

高額な査定価格で時間をムダに費やせば、競売で終わってしまうリスクが高まります。

適正価格こそが、競売回避という最大の目標を達成する唯一の方法なのです。

すべては競売回避のため

4.依頼者の残債軽減の最大化

 適正価格は早期に任意売却を成立させ、依頼者の残債軽減にも繋がります。

任意売却により市場価格に近い価格で売却できれば、結果的に残債を最小限に抑えることができます。

住宅ローンなどの不動産担保ローンは、借入の元金も大きいため滞納が続けば、遅延損害金も驚くほど高額になります。

任意売却を成立させ、早々に区切りを付ける意味でも適正価格が求められます。

任意売却成立ならば債務も削減

任意売却に精通する業者を選ぶべき理由

 不動産の所有者は、高額な査定価格が出れば嬉しいものです。

任意売却でも高額の査定が出れば債権者も喜びます。

所有者にとっても残債が無くなる可能性もあり、良いに越したことはありません。

しかし、現実には購入希望者がいる訳ではありません。

いくら高額の査定価格が出ても、買ってくれる人がいなければ、全く意味がありません。

そのままでは、任意売却が成立しないことになります。

その一方で、お客様の大切な財産を売却が容易だからと故意に低く査定すれば、当然、お客様も不審に思い、信頼関係は壊れてしまいます。

任意売却の場合、一括査定は参考程度にとどめ、任意売却に精通する業者に適正価格の査定をしてもらうのが望ましいでしょう。

当事務所の査定方針

  • 依頼欲しさの高額査定は行いません
  • 業務効率重視の低額査定も行いません
  • 適正な期間での売却を前提とした現実的な価格を提示します

適正価格での査定に意味がある

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一括査定を避ける理由

 一括査定を避ける理由は、一括査定と任意売却時の査定との根本的な違いにありました。

一括査定と任意売却査定との違いを見る

任意売却は限られた時間内で売却!

任意売却に精通する業者の査定であれば、住宅ローンの滞納スタートから競売のスケジュールを考慮した現実的な価格を提示してくれます。

そのため、任意売却時の査定価格は低いと感じてしまいますが、むしろ現実に即した査定価格となります。

一括査定などの高額な査定価格で判断してしまうと、売れないまま時間だけが過ぎ、結果的に競売になってしまうリスクが伴います。

任意売却時の査定こそスムーズな売却が可!

任意売却に精通する業者の強みとは

 任意売却に精通する業者は、一括査定の業者とは全く異なる強みを持っています。

任意売却に精通する業者の強み

  • 競売回避を考慮した現実的な価格設定
  • 金融機関との交渉経験が豊富
  • 迅速な販売活動のノウハウ
  • 債務者の状況を総合的に判断した提案
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信頼できる業者に相談する

 任意売却を成功させるためには、「信頼できる業者」に相談することが先決です。

高額な査定価格に惑わされず、任意売却に精通する業者であれば、適正価格を導き出すことが可能です。

様々な疑問に対しても、その都度答えてくれますので大変心強い存在です

一括査定を済ませても問題ありませんが、まず任意売却を依頼する業者を決め、その業者に査定を依頼しましょう。

一般的な不動産業者の一括査定を先に行うことを否定するつもりはありませんが、その査定価格に振り回されるのだけは注意しましょう。

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早期相談の重要性

 すぐに任意売却の決断ができなくても、まずは不動産の査定価格を知っておくことは、とても重要です。

一括査定ではなく、任意売却に精通する業者に相談することで、競売申立てが行われる前に適切な対応が可能になります。

時間があれば任意売却の成功率も⤴

任意売却に精通する業者であれば、査定も相談も無料で受けられます。

一人で悩まず、まずは相談して今後の選択肢を確認してみてください。

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金融機関との価格調整における現実と課題

 任意売却は、金融機関の同意の上で進める必要があります。

なぜなら、不動産を担保(抵当権を設定)にしている金融機関の同意なしに任意売却することは不可能だからです。

金融機関の同意を得るには、納得する価格での売却が前提となります。

金融機関の考える価格と不動産の一般市場での売却価格には、しばしば大きな乖離が生じることがあります。

金融機関との交渉で起こる問題

  1. 売却希望価格が高過ぎる
  2. 販売期間が短い
  3. 業者の専門的な意見を軽視

1.売却希望価格が高過ぎる

 任意売却の場合は金融機関の同意もセットとなるため、実質的に価格決定権は金融機関にあると言えます。

残念ながら一方的に金額を指定し、その金額以上でなければ競売で処分するような金融機関も存在します。

このような場合、任意売却を依頼された業者の査定価格が、必ずしも反映されるわけではありません。

価格決定権は金融機関にある

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2.販売期間が短い

 任意売却に許される時間が短いと、せっかく現れた購入希望者の資金調達(住宅ローンの申込みなど)が間に合わない可能性も出てきます。

特に保証会社を利用しないネット銀行などは、不良債権の処理スピードが迅速なため注意が必要です。

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3.任意売却に精通する業者の意見が軽視される

 任意売却に精通する業者は、実際の「不動産を調査した結果」や「内見希望者が感じるであろう印象」など、事前に考慮し適切な査定価格を算出します。

しかしながら、個人や零細企業などが所有する小規模な不動産の場合、金融機関は現地確認などの事前調査は行いません。

そのため、任意売却を依頼された業者とで、一方的では無いものの任意売却をスタートさせる価格や販売期間が折り合わないこともあります。

なぜ、この様なことが起きるのか?

実は金融機関も、独自に他の不動産業者に対象不動産を査定依頼しているケースもあります。

査定を依頼された不動産業者は、実際に対象不動産を見ることもなく机上で査定を済ませます

この差が、査定価格に開きが出てしまう最大の要因です。

机上査定と実際に現地で確認した査定とでは、どちらが説得力があるかは考える必要もありません。

結果的に、任意売却に精通する業者の専門的な意見を軽視した故の対応となってしまいます。

金融機関も高めの査定価格になびく

2段階売却という柔軟な戦略

 ここまで、一括査定などの高額な査定価格にメリットが無いことを伝えてきました。

ただし、やみくもに高額な査定価格を受付けない訳ではありません。

一旦は高額な査定結果を受け入れ売却を開始、その後、価格を見直し2段階で売却するケースもあります。

2段階売却が可能な条件

  • 金融機関が指示した売却価格
  • 住宅ローンなどの滞納前

金融機関が指示した売却価格での対応

 任意売却業者の査定価格と金融機関が求める価格が折り合わないケースがあります。

このような場合、まずは金融機関が指定する価格で「一定期間」販売活動を行います。

売却開始から引き合いが無ければ、早々に価格を調整し売却を継続します。

金融機関も「まずは高値でトライした」という希望もあるので、その後の価格調整に応じやすくなります。

初期インパクトの感触も探れる!

住宅ローン滞納前からの対応

 住宅ローンなどの滞納が始まる前であれば、残債額を考慮した価格で販売を開始するなどの方法も検討できます。

まずは、高めの価格で「一定期間」販売活動を行い、買い手が現れない場合は改めて販売価格を調整します。

ただし、この方法は時間的余裕がある場合に限り、競売申立てが迫っている状況では現実的ではありません。

時間的余裕があればこそ!

エリア限定購入者への期待

 本当にそのエリア限定で物件探しをしている方であれば、相場より少し高めの価格でも購入する可能性はあります。

しかし、そこに期待して長期間待つ余裕はありません。

金融機関が求める価格が高かった場合と同様に、引き合いが無ければ「早々に価格調整を持ち掛ける」ことが必要です。

早めに区切る前提で望む!

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査定の仕組みを正しく理解する

 不動産査定の仕組みを正しく理解することは、任意売却を成功させるために不可欠です。

貴金属やブランド品などは、査定と同時にその場で買取りを希望すれば、その査定価格で引き取ってもらえます

しかし、不動産では通常その様なことはありません。

 ※ 常識を逸脱したような安値で売るようなケースを除きます。

不動産の査定に関して、多くの場合は「仲介業者が査定を行う」ため、直接の購入希望価格ではありません。

従って、貴金属やブランドの買取業者のように、提示された価格が高いから即売却とはなりません。

実際は、販売活動をしてみなければ分からない・・・、ということになります。

高額な査定価格 → 即買取は無い!

不動産売却には時間を要する現実

 高額な査定価格は、即買取の価格ではありません。

この点を理解せずに期待してしまうと、「なぜ売れないのか?

期待が大きければ、より疑問と失望につながります。

不動産の売却には、以下のような時間が必要です。

〈販売開始から引渡しまで〉

  1. 販売活動開始~売買契約(1か月~2か月)
  2. 引渡し(1か月~2か月)

 ※ 購入希望者が住宅ローンなどを利用する場合

購入希望者がスムーズに見つかっても、上記の時間は必要となります。

任意売却では、このプロセスを滞りなく進める必要があるため、最初の価格設定が極めて重要になります。

一括査定のような高額な査定価格での、売却スケジュールでは全く持って時間が足りません。

それ故に、適正価格での販売開始が任意売却成功のポイントなのです。

不動産売買を短期に済ますのは困難

まとめ|適正価格が任意売却成功のポイント

 任意売却を成功させるためには、一括査定に出るような高額な査定価格に惑わされず、適正価格での売却活動を行うことが何より重要です。

一括査定を推奨しない理由(再確認)

 本記事で解説してきた内容を改めて整理しましょう。

一括査定を推奨しない理由

  1. 高額査定の思惑
    • 売却依頼獲得のための営業戦略
    • 実際に売れる価格ではない
    • 価格下落のシナリオが想定済み
  2. 時間的制約の無視
    • 通常売却を前提とした査定
    • 競売スケジュールを考慮していない
    • 任意売却の特殊性を理解していない
  3. 売れ残りのリスク
    • 高値では買い手が現れない
    • 売り出し初期のチャンスを逃す
    • 競売への移行リスクが高まる

最終的なアドバイス

 一括査定のような高額な査定価格に惑わされることなく、任意売却に精通した業者による適正な価格査定と的確なサポートを受けることをお勧めします。

  • 任意売却に精通する業者への無料相談
  • 残された時間の有効利用
  • 競売回避という目標の確実な達成
  • 新たな人生のスタートへの準備

住宅ローンを含め不動産担保ローンの返済でお悩みの方は、まずは任意売却に精通する業者への相談から始めてください。

早めの相談を心がけよう!

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