任意売却を含め、不動産の売却を検討していると、買取保障という言葉を目にします。
一定期間内に売却できなければ、販売を依頼した不動産業者から、あらかじめ提示された価格で買取ってもらうことができます。
その買取保障の利用は、任意売却の場合でも大丈夫なのでしょうか?
詳しく見ていきたいと思います。
不動産の買取保障はどこがする?
まず、買取保障で前提となるのは、不動産の売却を不動産業者に仲介で依頼した場合になります。
従って、売却したい不動産の販売活動を一般消費者向けに行います。
その後、売却できなければ、そのまま、販売活動を依頼した不動産業者に買取ってもらう仕組みです。
それゆえ、買取保証付仲介、又は買取保障付媒介契約などと呼ばれています。
買取保障2つのポイント
買取保障では、以下の2つのポイントがあります。
- 一定期間内
- あらかじめ提示された価格
1 一定期間内
任意売却のように時間が限られている場合や早めに不動産を売却して現金が必要なときは、予定が組めるので、資金計画が立てやすいなどのメリットがあります。
特に競売の申立てをされているようなケースでは、期間を区切って販売活動を行い、購入希望者が現れなければ、そのまま不動産業者に買取ってもらえば、競売を回避することが可能になります。
2 あらかじめ提示された価格
実は、ここが最大のポイントですが、「あらかじめ提示された価格」とは、不動産業者が提示した価格なので、所有者が売却したい希望価格とは異なります。
従って、この不動産業者が提示した価格が、納得できる価格であれば、買取保障は依頼者にとっても大変メリットがあります。
また、買取保障の場合、売却を依頼した不動産業者が直接買取りますので、仲介手数料が不要になる点も大きいでしょう。
買取った不動産の行方
買取保障を詳しく知るには、買取保障で不動産業者が買取った不動産をどうするのかを考えてみる必要があります。
不動産業者も、ただ買取った不動産を持っていても仕方ありません。
早い話、その不動産は一旦買い取った後、転売することになります。
転売するには、当然利益を確保しなければならず、利益を上乗せして転売するには、必然的に買取価格を低くしなければ、買取った不動産の転売は成立しません。
つまり、買取保障するときは、同時に転売ビジネスも行うことになります。
買取保障価格=仕入れ価格
要するに転売ビジネスが成立する価格が買取保障の金額となり、不動産業界では転売する不動産の購入を仕入れといいます。
そして、その購入価格が不動産の仕入れ価格となります。
もう一つ付け加えると、同じ転売目的で不動産を買取る業者でも、転売専門の不動産業者の方が買取価格が高い傾向にありますので、買取保証価格で売るよりも、仲介手数料を払ってでも転売専門の不動産業者に売却した方が手元に現金が多く残せる場合もあります。
買取保障で問題は?
買取保障で問題となるのは、価格ということになります。
ここでの問題はトラブルではなく、2の予め提示された価格が、依頼者の売却希望価格とかけ離れていることがあり、たとえ買取保障がされても、その価格では、とても売れませんとなってしまいます。
この点が任意売却では買取保障が、あまり意味をなさない理由でもあります。
任意売却で買取保障は馴染まない
任意売却の現場では、売却するか、しないかは所有者の意志によりますが、その売却価格については、債権者である金融機関に主導権があると言って差し支えないでしょう。
任意売却の場合、オーバーローンのため、不動産を売却しても残債に満たないことがほとんどです。
従って、買取保障のように一定期間経過後は不動産業者が買取るとなると、買取保障=仕入れ価格となり、その価格では債権者が売却を認めないことが容易に想像できると思います。
では、1の一定期間内の説明にありました、任意売却のように時間が限られたときに有効なケースとは、どの様な場合か?
残債を完済できれば有効
任意売却でも売却価格に対して、債権者が主導しない場合があります。
それは不動産を売却すれば、残債が無くなるケースです。
つまり、住宅ローン等が払えなくなり、現在は滞納していても、不動産を売却すればローンが完済できるならば、債権者は価格に口出しする必要はありません。
よって、任意売却で買取保障が有効なのはローンを完済できる場合となりますので、多くの方は該当しません。
それゆえに任意売却で売れなくても、買取保障で競売回避とはならないと考えるのが自然です。