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任意売却物件の買手は住宅ローンを利用できるのか?

住宅ローンで購入した自宅の任意売却を考えたとき、買手は住宅ローンを利用できるか?
心配になる方もいます。
住宅ローンが払えなくなり任意売却するため、見方によれば競売の一歩手前とも言えます。
買手が住宅ローンを利用できなければ、現金を用意できる人のみとなり、買手を見付けるのは相当困難な状況です。
もし、そのことで任意売却を決断できずにいるならば、安心してください。
結論を先に書きますが、「任意売却の買手は住宅ローンの利用は可能」です。
任意売却物件も住宅ローンで購入可能なので、早期に任意売却を依頼し競売回避するため買手を見つけてもらいましょう。
この記事は、現役のFP&不動産コンサルの有資格者が「任意売却と競売にかかわる住宅ローン利用のポイント」を解説します。
競売物件を落札したら住宅ローンは利用できるか?
まず、任意売却物件の前に「競売物件は住宅ローンで取得することが可能か?」という疑問もあると思います。
後から解説しますが、「競売がスタートしたけれど任意売却で買手は住宅ローンを利用できるか?」と混同しないようにしてください。
個人が競売物件を裁判所で入札後、落札した場合、「住宅ローンが利用できるか?」
現在では、落札代金の納付時に所有権移転に必要な書類を渡してもらえるため、理屈上は住宅ローンでも購入できるようになりました。
理屈上としているのは、住宅ローンを融資する金融機関は、お金を貸すのと同時に不動産に担保設定するため、必要書類が揃わないと絶対に貸してくれません。
競売物件の取得でも、その必要書類は、お金を借りるのと同時に用意できるのですが、実際に貸してくれるのか?
となると・・・・。
現実にはスケジュールも含めて、かなり厳しいと思います。
また、フラット35では競売物件の取得にも対応しています。
楽天銀行ウェブサイトより引用
- (住宅ローン フラット35)競売物件を購入する場合でも融資の対象になりますか?
競売物件も融資の対象となりますが、ご注意事項をご確認いただき、ご検討ください。
詳細はこちらよりご確認ください。
フラットの技術基準の適合証明書が必要になるので、フラット登録マンションでなければ、実際の利用は難しいのではと考えてしまいます。
その他に占有者がいる場合など、住宅ローンを利用して競売物件を買うのは実質的には相当困難な状況です。
競売物件の取得は、かなりのハイリスクであると認識するべきです。
競売物件に素人が手を出すのはハイリスク
住宅ローンが払えなくて任意売却されるのに買主は住宅ローンを利用できるか?
先に競売物件の取得に住宅ローンの利用は難しいと書きましたが、任意売却の物件に関しては、問題なく利用できます。
※ もともと任意売却でなくても審査にパスしない不動産であれば、任意売却でも不可とされます。
審査にパスしない不動産とは違法建築であったり、2mの接道義務をクリアしていない場合(再建築不可)などです。
そもそも住宅ローンの融資対象の不動産ではありません。
また、住宅ローンを借りる人が金融機関の融資条件に合致している必要があります。
そのため、購入する不動産が任意売却のため、住宅ローンの審査にマイナスの影響を与えることは無いとするのが正しい答えです。
任意売却は買手の住宅ローンの審査には影響しない
住宅ローンの利用が競売は難しくて、任意売却は大丈夫な理由
なぜ先に競売物件の取得に住宅ローンが利用できるかを説明した理由は、以下の表で比較すると非常に分かりやすいからです。
買手から見て問題となる点を見てみましょう。
任意売却 | 競 売 | |
所有者の協力 | 有 | 無 |
不動産の引渡し | 容易 | 難しい |
仲 介 業 者 | 有 | 無 |
所有者の協力
任意売却は所有者の意志で売却するため、購入前に建物内を見たり、不明な点は質問することも可能です。
その反面、競売は所有者の意志に関係なく進められますので、建物内部を落札前に見せてもらう等の協力はまず得られないでしょう。
また、裁判所の書類(3点セット)の内部写真の状態が落札されるまで維持されているかも不明で、競売はかなりのリスクがつきものです。
競売は建物内部の状況が確認しづらい
不動産の引渡し
任意売却は不動産の売買契約を交わしますので、引渡し期日も決まっています。
その内容に従い、不動産の引渡しを受けます。
しかし、競売は占有者がいる場合は裁判所の強制執行後でなければ、引渡してもらえないケースもあり不確定な要素が多く、ここが競売物件の取得のネックになるところです。
競売は元所有者が引渡しに協力するかは不明
仲介業者
仲介業者とは宅地建物取引業の免許を受けた不動産業者のことで、その取引の仲介をしているかどうかです。
任意売却は不動産業者が金融機関と交渉しながら進めますので、権利関係もクリアになり問題なく取引できます。
一方で競売は不動産取引のプロが介在しませんが、裁判所がかかわるため所有権は取得した者へ容易に移転することができます。
取引終了となる引渡しまで不動産取引のプロがかかわっていないため、不動産取引に精通した者でなければ不安は大きいのではないでしょうか。
それでも現在では、不動産競売の代行業者も複数存在しますので、手を借りることにより住宅ローンを利用できるケースもありますが、それなりの費用は発生します。
任意売却は不動産取引のプロがかかわるので安心

不動産業者の存在は信頼できる取引の証
住宅ローンを利用する上で、宅地建物取引業の免許を受けた不動産業者が仲介をするから、銀行や信用金庫の住宅ローンを利用できると言って差し支えないでしょう。
これは不動産の個人間売買も同じで、不動産業者を介さなければ仲介手数料は不要です。
しかし、不動産業者の仲介が無い場合、ほとんどのケースで住宅ローンは個人間の直接取引では銀行や信用金庫から断られてしまいます。
それだけ金融機関にとっては、宅地建物取引業の免許を受けた不動産業者が仲介するということは、信用され安全な取引と認識されているからです。
不動産業者の存在が住宅ローンの条件となる
任意売却で不動産にケチが付くことはない
任意売却される不動産の登記事項は、契約時において複数の抵当権や差押えの文字が並び、一般の人が見れば驚くことさえ、あるかもしれません。
それでも、その不動産が買手の名義になるときは、複数の抵当権や差押は全て解除(抹消される)され、過去の話となります。
これから任意売却に臨む方にお伝えしたいのは、ご自身の不動産に多額の抵当権や差押、更に参加差押等があっても、不動産の外見からは分かりません。
また、そのことが買手に迷惑を掛けることもありませんので、任意売却中も引き目を感じることなく堂々と生活して下さい。
正式に買手に売り渡すまでは、所有者である事実は変わらないからです。
また、不動産取引のプロである宅地建物取引業者だけでなく、不動産登記のプロである司法書士も取引最終日には立ち合います。
司法書士は、不動産を買手の名義へ変更(所有権移転)、住宅ローンの抵当権を設定するまで責任もって成し遂げます。
不動産取引のプロ・不動産登記のプロが互いに協力
競売がスタートしたけど任意売却だと買手は住宅ローンが利用できるの?
任意売却を検討する上で、迷っている時間が無い方、それは競売が進行中の方です。
このような状況で、買手が住宅ローンを利用できるのか?
間違えないように!
競売はスタートしていても、買手は競売で落札するのではありません。
あくまでも「競売はスタートしているものの任意売却で購入するとき、住宅ローンが使えるか?」について記述しています。
この部分について知っているかどうかで、競売開始の瀬戸際にいる方は、今後の参考にもなります。
競売が開始していても、買手の住宅ローンは利用できます。
ただし、不動産取引のプロである宅地建物取引業者がかかわっている場合となりますが・・・
不動産業者が仲介すれば住宅ローンも可!
競売開始後も住宅ローンで購入できる
競売が進行中でも、不動産そのものに問題が無ければ、住宅ローンは利用可能です。
住宅ローンを提供している全ての金融機関がOKなのかは、正直そこまでの情報は持ち合わせておりませんが・・・。
むしろ、住宅ローンでは、その不動産の建物が適法に建築されているのかが重要です。
例えば、違法建築はもってのほかで、建ぺい率や容積率をオーバーしているケース等も該当します。
以外にも、一戸建てでは割と多い印象です。
その他、建替えが可能なのか?
将来的に建物は老朽化してしまいます。
再建築する際に許可が下りないような物件は、一般的な銀行等の住宅ローンは利用不可となります。
そして、最終的には担保価値があるかで、一戸建・マンションに限らず言えることです。
競売開始でも買手の住宅ローンに影響しない

金融機関が競売開始後に注意する点は?
競売が開始された不動産に対して、買手が住宅ローンを利用する際、金融機関は何を注意するのか?
競売が開始された不動産でも、見た目に違いはありまあせん。
不動産自体に問題が無ければ、残すは権利関係となります。
確認するには、登記情報が無ければ判断できません。
見れば一目瞭然ですが、登記情報の「所有権に関する事項欄に差押と○○地方裁判所担保不動産競売開始決定」と記録されています。
そうはいっても、普通の人が登記情報を取得することは、まずないでしょう。
そのため当事者以外が競売の事実を確認するには、登記情報を入手したときとなります。
その他、競売の手続きが進行していけば、やがて不動産競売物件情報サイトから資料(3点セット)をダウンロードして確認する方法もあります。
競売の申立てをした者が住宅ローンを貸した金融機関等ならば、買手の金融機関も気にすることはありません。
しかし、個人間の金銭の貸し借りや金融機関でもない企業が競売を申し立てている場合は、住宅ローンの貸し手となる金融機関は敬遠するかもしれません。
競売の申立てが金融機関ならば(ほぼ)問題なし
権利関係の何が問題か?
難しい話は抜きにして、競売が開始してる以上、時が過ぎれば競売で他人に落札されてしまいます。
これは所有者であっても、競売を止める権利はありません。
競売をストップする権利があるのは、競売を申立てた債権者にあります。
そのため、買手が住宅ローンを申込めば、その金融機関は競売の取下げがなされる時期等について、任意売却業者にも細かくヒアリングもしてきます。
本当に不動産の引渡しと同時に競売の取下げが可能なのか、話が進めば最終的には司法書士も含めて確認します。
要するに、住宅ローンを貸すと同時に競売が取下げられて、買手に引渡すことができれば、問題は無いということです。
2020年当時のことですが、当事務所が任意売却を依頼され、買手がネット銀行を希望されたことがありました。
金利が低い分、審査が厳しいとされるネット銀行ですが、担当者より『競売の申立てがされてますが大丈夫でしょうか?』と少し不安そうに確認の連絡があったことを覚えています。
『債権者の同意を得ていますので、競売の取下げは問題ありません』とお伝えし審査はパス、無事取引は終了しました。
任意売却の買手がネット銀行を利用するケースは、まだ少なかったのかもしれません。
最終的に競売は取下げは可能か!?に尽きる
住宅ローンは買手の信用力
最終的には住宅ローンを借りる方の状況により、融資の条件が大きく左右されます。
いわゆる、属性と呼ばれている信用力で、売手の競売開始はほとんど影響しません。
金融機関から見れば、公務員や大手企業等の安定した職業に就いているかがポイントとなってきます。
もちろん、買手が信用情報機関に金融事故等の記録が無いことは言うまでもありませんが・・・

これで、競売が開始されていても任意売却が成立すれば、買手は住宅ローンが利用できることをご理解頂けたと思います。
買手に安定した収入があれば住宅ローンはOK
任意売却の契約で買手のローンがダメだったときは?
任意売却物件の売手と買手、いざ売買契約を結ぶとなると、両者共に疑問点は多くあると思います。
任意売却は住宅ローンなどの借金が売買価格を上回ることが多く、いわばお金の貸し手(以下、債権者)が、借金以下だけど売却を認めることで取引が成立します。
債権者は任意売却で貸したお金を満額回収することはできないケースがほとんど!
そうまでして、債権者が認めてくれた任意売却でも、買手のローンが任意売却の契約後の本審査をパスできないことがあります。
万が一にも不調となった場合、任意売却はどうなってしまうのでしょうか!?
買手のローンがダメだと、せっかくの任意売却はどうなるの?
このような場合の取決めがなければ、売手・買手の両者共に不安がいっぱいの任意売却となってしまいます。
売手となる任意売却の希望者にとっては、非常に残念ではありますが契約は解約となります。
簡単に言えば、契約は無かったものと同じ状態になります。
買手のローンが不可なら無条件で解約

任意売却の契約には特有の条件が2つある
不動産の売買契約が任意売却の場合(買手が一般消費者のケース)、以下3つの条件が付きます。
〈任意売却特有の条件は2つ〉
- ローン条項(一般的)
- 手付金の預かり(任意売却特有)
- 債権者等の利害関係人の同意(任意売却特有)
1 ローン条項
ローン特約とも呼ばれていますが、不動産の売買では買手が金融機関から、お金を借りて購入するケースがほとんどです。
そのため、買手のローンがダメだった場合、現金を用意できない限り購入は不可能なので、契約は白紙解除となります。
このローン条項に関しては、任意売却に限らず買手が一般消費者でローンを利用するケースでは、必ず付されている条件です。
従いまして、不動産の売買契約では一般的な条件となります。
買手がローンの利用があれば絶対有
2 手付金の預かり
続いて、前項の任意売却物件の購入を希望して、契約締結後に住宅ローンがダメだったら、手付金はどうなるのか?
買手としては非常に気になりますが、もちろん手付金は返還されます。
その点も、ローン条項の中に詳しく盛り込まれております。
しかし、任意売却は売手の資力が乏しいため、手付金を受取り使ってしまう可能性があります。
買手のローンが通らなかった場合、返還が困難となることも想定できます。
そのため、任意売却物件の契約時に手付金を授受するときは、任意売却業者(仲介する不動産業者)が、売手に代わり手付金を預かることになります。
預かった任意売却業者の使込みでもない限り、ローンがダメで買手に手付金が返還されないことは通常ありません。
この条件があるため、買手も安心して手付金の支払いができます。
手付金の預かりで買手の不安も解消
3 債権者等の利害関係人の同意
上記の説明と重複しますが、債権者は担保である不動産の売買代金だけでは、全額回収できないため、損を覚悟で任意売却に応じます。
従いまして、その債権者等、不動産売買の障害となる利害関係人から同意が得られない場合、契約は無かったものとされます。
この『債権者等の利害関係人の同意』と『手付金の預かり』が任意売却特有の契約条件になります。
債権者の同意なければ任意売却は不可!
同意は契約前に得るものだが・・・
ここまでを見ると、なんだ債権者の同意を得ないまま、任意売却を進めたの!? と思いがちですが、そういう訳ではありません。
不動産を担保に2者以上から、お金を借りているケース、その他に税金の滞納による役所の差押がある場合などを主に想定しています。
任意売却では不動産を担保に最初に貸した者(1番抵当)が多くの金額を受取れ、それ以下は、わずかな金額しか受け取れません。
そのため、1番抵当以外も最初は任意売却に応じていながら、突然手のひらを返してくることもあります。
もっと多くの金額を受取れないと、任意売却に応じないとする後順位の債権者も現実には存在します。
万が一に備え、そういった売買の障害となる利害関係人の同意が得られなかった場合、契約は無かったものとされます。
例えば、売手が内緒にしていた借金が原因で、任意売却の契約後に不動産が差押えられて解除の見通しが立たなくなった時などが該当します。
※ 買手が一般消費者のケースとしておりますが、買手が不動産業者等のプロの場合、通常「1ローン条項」はありませんが、「2手付金の預かり」、「3債権者等の利害関係人の同意」は必須です。
任意売却は条件等を詳細に決めたうえで契約に臨む
任意売却の契約は買手の保護は最も重要
競売と隣り合わせの任意売却物件の売手は、買手のローンがパスしなければ契約は白紙解除、手付金は返還、おまけに貴重な時間も失います。
売手にとっては、不利な契約内容にしか思えません。
しかし、任意売却物件でも買手がある程度、安心して購入に踏み切れる条件でもあります。
その反面、債権者の同意が得られなければ、契約は無効にもなりますので、売手にとっても買手に迷惑を掛けずに済みます。
ある意味、売手も買手も弱い部分をカバーできる契約となっております。
条件は厳しいが成立すればWin Winの関係

厳しい条件でも成し遂げるのが任意売却に精通する業者
任意売却には特有の条件があるのは、前述の通りです。
このページでは、分かりやすく伝えるため簡単に説明していますが、もう少し細かい内容にも踏み込んで契約条件を決めていきます。
売手・買手双方の事情を考慮し調整しながら契約を成立させ、無事に取引を終えるのが任意売却業者の役割でもあります。
実際には上記3つの他に『契約不適合責任の免責(旧瑕疵担保責任の免責)』等、取引が終了した後のトラブルを未然に防ぐ内容の取決めもあります。
任意売却に精通する業者ならば安心して任意売却をお任せ!
遥か昔の任意売却
余談ですが、筆者が任意売却に取組み始めた2000年代初頭の話を紹介します。
任意売却物件と承知で購入を希望した、プロであるはずの不動産業者が『債権者の同意が条件となっているけど・・・』、契約の際に難色を示し、条件を外せないかと相談されたことがありました。
少し焦りましたが当然無理なので、その場で理由を一から説明し、事なきを得ました。
今でこそ、任意売却に多くの業者が取り組み、債権者の同意を条件にするのは周知の事実です。
当時はまだ、任意売却の認知度も低かったのか、この経験は懐かしい思い出となりました。
任意売却の取引は一般的になりつつある