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任意売却の時間は3か月だけど過ぎたら競売なの?
当事務所へ、相談される方の状況は実に様々です。
中でも「自営業者や零細企業の経営者」から、任意売却に関わる相談も多く寄せられます。
その際は、一般の方向けに戸建やマンションを売却して終わりの、単純な任意売却とはなりません。
小規模な事業者でも任意売却の相談ともなれば、借入先の金融機関が1社のみのケースは少なく、大抵2社以上の金融機関が不動産に抵当権を設定しています。
複数の金融機関(以下、債権者)と交渉が必要な任意売却であれば、当然ながら時間も余計にかかります。
しかし、時間を要するにも拘わらず、民間金融機関は概ね「3か月」が任意売却に許された時間となります。
問題なのは、「3か月を過ぎてしまった場合、もう競売は避けられないのか?」
そのあたりの事情を、任意売却に携わるFP&不動産コンサルの有資格者が解説します。
住宅ローンでお悩みの方、事業者向け不動産担保ローンでお悩みの方は、是非参考にしてください。
任意売却の時間は状況次第で延長もある
ストレートに書けば、難しい任意売却の案件は「3か月では足りない・・・」と感じながらも進めなければなりません。
その上で、進捗状況を勘案しながら「債権者に時間の延長を働きかける」ことになります。
債権者も任意売却ならば、わざわざ競売で費用を掛けるより、迅速に不良債権の処理ができるのは大きなメリットです。
1つハッキリしているのは、任意売却の時間延長を願い出るならば、債権者に対して「任意売却成立の兆しを示す」ことが重要です。
任意売却成立の兆しが見えれば延長も!
任意売却成立の兆しを示すとは
任意売却は不動産を売却して、債権者へ借入金を返済します。
そして不動産を売却するには、買手を見付けなければなりません。
任意売却成立の兆しを示すとは、債権者に対して「買手候補の存在を示してあげる」ことになります。
買手がいるけれど、購入のための準備中など、具体的に伝えなければなりません。
債権者も難しい案件となれば、時間が掛かるのは重々承知の上です。
そこで、任意売却成立の兆しが見えれば、時間の延長に応じてもらえる可能性は十分にあります。
買手候補の存在は時間延長の可能性は大!
買手候補までは見付からないときは?
任意売却をスタートさせても、都合よく買手候補が見付かる訳ではありません。
そのようなケースは、任意売却の現場では実際にはよくあることです。
対策は無いのでしょうか?
そんなことは、ありません。
しかし、ここから先はプロとしての「経験から培われた感覚」が必要になります。
その感覚とは、販売開始時の同業者(不動産業者)からの反応がポイントになります。
任意売却する不動産は
日本全国の不動産業者へ情報公開が基本!
任意売却する不動産が情報公開されると、同業者から問合せが寄せられます。
その件数や詳細な情報の確認など、買手候補が現れそうな場合、より具体的な情報を求める問合わせがあります。
また、1か月ほど経過しても問合わせが少なく、内見(建物内を見ること)も皆無であれば、現状を速やかに債権者へ報告することも重要です。
そのタイミングで「価格の引下げ交渉や販売期間の延長」を持ち掛けてみるのも、任意売却を依頼された業者の使命でもあります。
債権者には任意売却の現状を知ってもらう
ここまでは、難しい任意売却の案件で時間を延長する方法について解説しましたが、そもそも「難しい任意売却の案件」とは、どういったことでしょうか?
続いて解説します。
難しい任意売却の案件とは
ただ「難しい任意売却の案件」と書かれても、イメージし辛いと思います。
そこで当事務所において具体的に難しい任意売却の案件とは、不動産が自宅兼店舗(事務所も含む)として利用されているケースです。
不動産の登記事項を見れば、建物の種類が「店舗兼居宅」などと登記され、文字通り「普通の住宅ではない」ことが明らかです。
普通の住宅ではない=住宅ローンの利用不可
居住用の建物でなければ、買手が住宅ローンを利用して購入することは、ほぼ困難です。
そのため「店舗兼居宅」のような居住用部分が含まれる建物でも、住宅ローンを利用しての購入は難しいとなります。
更に、この店舗(事務所も含む)部分の利用状況によっても、任意売却の難易度が大きく変わってしまいます。
以下の2つのケースを紹介します。
〈店舗、又は事務所部分の利用状況〉
- 自己使用
- 賃貸中
1.自己使用
不動産の所有者が店舗部分を自己使用している場合、売却すれば店舗部分も含め買手が利用できる状況で引渡しができます。
この点は有利ではありますが、買主が自己使用で購入する際も、やはり住宅ローンの利用に制限があります。
少々細かい話になりますが、住宅ローンを利用するには店舗部分についても制約があります。
例えば、「店舗面積が居住部分の1/2以下とする」等、金融機関によって条件は異なりますが、一般的な住宅ローンよりも1つハードルがあがります。
自己使用はプラスだけど住宅ローンに制約あり
2.賃貸中
不動産の所有者自身が、収入を得るために「店舗部分を他人に賃貸中」のケースです。
※ この「店舗部分を他人に賃貸中」は、次の項で当事務所の具体的な実例で解説します。
購入する建物の一部に賃貸部分が含まれる場合「住宅ローンを利用しての購入は不可能」と言っても差し支えないでしょう。
一般的な住宅ローンは利用不可
一般的な住宅ローンの利用が困難となれば、買手となるターゲットが限られてしまいます。
最近では賃貸併用住宅なる言葉も耳にしますが、ハウスメーカーと提携している金融機関が新築の建設資金としての融資は比較的容易に借りられます。
しかし、賃貸部分も店舗や事務所ではなく、居住用として制限を設けていることもあります。
建物に賃貸部分が含まれるならば、投資用不動産として販売も検討する必要があります。
この場合、買手は投資家に限られ、販売価格については想定利回りがベースになります。
購入者が投資家相手となれば、債権者が認める売買価格と開きが生じてしまい、そもそも任意売却が成立しない可能性が大きくなります。
投資家の購入価格は非常にシビア
「店舗部分を他人に賃貸中」の任意売却の実例
上記の自宅兼店舗で紹介した、「店舗部分を他人に賃貸中」の任意売却ついて、実例をもとに解説します。
難しい任意売却の案件が、どういうことなのか多少理解が深まると思います。
〈任意売却する不動産〉
- 自宅兼店舗(店舗面積1/2以下)
- 店舗部分他人に賃貸中
- 債権者と残債
1番抵当ノンバンク 950万円
2番抵当ノンバンク 600万円
3役所(固定資産税滞納)の差押 50万円 - 任意売却に与えられた時間 3か月
諸費用を含めると、約1,650万円以上で購入する買手が条件となります。
しかし、そこまの価格では売れそうもないことは、当初から感じておりました。
そのため、2番抵当のノンバンクは満額回収には及ばないため、減額交渉をしなければなりません。
1番抵当のノンバンクには完済を条件に、任意売却に与えられた時間の引き延ばし交渉を何度となく繰り返しました。
1番抵当のノンバンクは当初の反応として、「3か月以上は待てないので」競売の申立てを行い、競売費用も回収の目途が立つので処理したいとの意向を示していました。
当事務所としては、諦めずに「状況を逐一報告し担当者と密に連絡」を取りました。
その結果、任意売却をスタートして2か月目に差し掛かったとき、「もう2か月待ってくれる」ことになりました。
債権者へは細かな状況報告!
任意売却の時間は延長できても買手不在では失敗
任意売却の時間は延長できたので、ひとまず安心です。
しかし、任意売却が長引けば1番抵当の遅延損害金が増えます。
その分「2番抵当の回収額が減る」ことを意味し、それはそれで交渉の難航が予想されます。
なかなか、具体的な進展が無いままでしたが、5か月目にしてようやく、2番抵当も満足する価格でA不動産業者(以下A社)を通じて買手が現れました。
買手が決まれば任意売却の可能性は大!
任意売却は簡単に終わらないことを常に念頭に
ところがこの物件、買手の住宅ローンが難しいことを思い出して下さい。
いくら欲しい、買いたいと願い出てもらっても、現金での購入でない限り住宅ローンを貸しだす金融機関を探さなければなりません。
実は、そうなることも予想して、ある程度の金融機関は目星を付けていました。
しかし、A社を通じてローンの申込を行ったものの、金融機関から返事はもらえないまま3週間ほど経過してしまいました。
そんな中、物件の地元B不動産業者(以下B社)から1本の連絡が入りました。
『申込が入っている御社の任意売却物件ですが、実は申込者(買手)が物件は気に入っているのでうち(B社)を通じて購入したいと言って、今来社しています。』とのこと。
記事を読んでいても、おそらく意味が分からないと思いますので、次の項で補足説明します。
補足説明
詳しく説明すると、任意売却物件の買手は同じ人物です。
〈任意売却物件の買手〉
A社を通じて、当事務所へ購入の申込み
↓
次にB社を通じて、当事務所へ購入の申込み
少々妙な展開ですが、なぜ、そのような事態となったのか?
聞けば、A社は住宅ローンが難しいのは認識していました。
そこで、普通の住宅として虚偽の登記(店舗兼居宅を居宅に変更)をして住宅ローンの審査をパスしようと画策していたようです。
買手が不審に思いB社に駆け込んだ!
A社はリフォーム費用も含めて、住宅ローンを申込んでいるとの説明を当事務所へしていました。
しかし、賃貸中の店舗部分がネックになり金融機関からいい返事が無いまま、実際は模索していたようです。
状況の説明を受けてみれば、納得できる内容です。
そして、申込者(買手)は同一人物です。
A社に対して申込者(買手)自身が、きちんとお断りを入れるなら、B社を通して話を進めることにしました。
申込から波乱続きの任意売却
債権者も一瞬戸惑う任意売却の交渉
数日後、B社から連絡がありました。
申込者(買手)自身がA社に連絡し、お断りしたとのことで仕切り直します。
まずは債権者へ連絡、『買手は同じですが・・・』
『間の不動産業者が変わりましたので、もう少し時間を頂けないでしょうか?』
1番抵当ノンバンクの担当者 『えっ!? すいません、もう1回説明して頂けますか??』
意味も分からず困惑するのも当然なので、再度、丁寧に状況を伝えます。
結局、すぐに返答できないので、上席と相談後に返答してもらうことになりました。
その後、1番抵当のノンバンクから連絡があり、何とか2か月の延長を認めてもらいました。
更に2か月の延長が認められた!
もう、これで最後のチャンスであることは間違いないでしょう。
その反面、任意売却が長引けば、2番抵当のノンバンクは回収額が減ってしまいます。
しかし、それまでも何度となく連絡を入れ、販売価格の調整等も細かく行ってきました。
幸いにも、2番抵当のノンバンクからも信頼され、結果的には協力してくれる運びとなりました。
時間の延長だけでは成立しない任意売却
最大の問題は買手の住宅ローン
債権者からOKがもらえても、買手の住宅ローンが決まらなければ、元も子もありません。
今度は、B社と連絡を取り合いながら住宅ローンの調整を行います。
しかし、A社のときと同様で自宅兼店舗(店舗は賃貸中)の住宅ローンに首を縦に振る金融機関は、中々見つかりません。
そこで頼ったのが、B社の担当者が懇意にしている金融コンサルタントでした。
余程の仲らしく、以外にもスムーズに金融機関を紹介してもらい、すんなりと買手のローンが決まりました。
その銀行のローンですが、若干金利も高めです。
しかし、その分は賃料収入で賄うことも可能なため、それほどの負担ではありません。
最終的に、債権者からは「任意売却の時間を2度延長」を認めてもらい任意売却を終えました。
特に触れませんでしたが、役所の差押え解除も済ませたのは、言うまでもありません。
〈与えられた任意売却の時間〉
- 3か月+2か月+2か月
- 合計7か月の任意売却期間
このように債権者が認める時間内で任意売却が成立しなくても、交渉を重ねて信頼を得られれば、条件を変えられることもあります。
最後まで諦めずに頑張ることが、任意売却業者の務めでもあります。
ちなみに、A社からは申込を頂いてから2か月ほど経過してローンがダメでしたと電話がありました。
無事に任意売却が成立し何よりでしたが、B社からの連絡後、速やかに対処していなければ任意売却の依頼者には大変な迷惑を掛けるところでした。
その場の判断が、状況を左右する典型的な例であるのは、言うまでもないことでしょう。
任意売却は状況の変化に迅速に対応する
任意売却は買手のローンが成否を分けることも
依頼者とは相談当初から、「必ずしも任意売却が成立するとは言い難い状況」と伝えていました。
ただし、諦める理由もないため、まずは任意売却を進めましょうと約束しました。
任意売却される不動産も、買手のほとんどが住宅ローン等の借入れを希望します。
そのため、購入資金の借入れが難しい不動産の場合、任意売却自体も買手が制限されてしまいます。
しかし、そういった事情に関して債権者も、交渉の当初は特に考慮してもらえないというのが実情です。
つまり、難しい任意売却だから販売期間を多く下さいと願い出ても、債権者は簡単に「ハイ、どうぞ」とは、なかなか言ってはくれません。
むしろ「3か月過ぎてもダメなら競売です。」となります。
そのため、債権者が認めてくれた任意売却の時間内で、取引を終えることを目標に突き進しかないのです。
だからこそ、任意売却については、専門知識を有する者へ依頼するのが重要となります。
任意売却は専門知識を有する業者への依頼が有利!