任意売却歴15年の知見がつまった

コラム
「任意売却大全」

投資用不動産の任意売却は競売申立後は更に高難度

 自分が住んでいない、投資用不動産を任意売却する理由は何でしょうか?

○ 競売になると、現入居者に迷惑を掛けてしまう


○ 競売になると、現入居者に敷金の返還義務が残ってしまい、気掛かり


○ 競売より高く売れるから(借金を減らせる)

 以上のような理由でしょうか・・・

しかし、投資用不動産の任意売却は、競売の申立前に取組まなければ、かなりの確率で任意売却は成立しないと考えておくのが無難でしょう。

任意売却では諸費用も増加

 投資用不動産を任意売却するには、一般の不動産では必要ない諸費用が発生します。

本来であれば、投資用不動産の所有者が賃貸人から敷金や保証金を預かっているのですが、消費していることがほとんどで、売却代金の中から差引いて、買主に引き継ぐ必要があります。

通常の任意売却よりも、余計な費用が発生するため、金融機関にすると更に回収額が減ってしまいます。

競売申立後の任意売却を成立させるには、裁判所から出される評価額に諸費用、競売の申立費用も加算された金額を軽く上回るような価格でなければ、任意売却に応じてくれない結果になります。

任意売却の費用について詳しく

競売申立後の相談は手遅れの可能性

 投資用不動産の任意売却は、投資家の購入希望価格と債権者が任意売却を認める価格が、全く折り合わないケース、いわば販売価格に大きな差が生じることがあります。

この販売価格の差は任意売却業者が、債権者と交渉を重ね、調整する必要があります。

そして、販売価格の調整を行うには、時間を要するため、競売の申立後では、到底間に合わないという事態が起きます。

販売価格の差は何故できる

 どうして投資家の求める価格と差が出るのか?

早い話、債権者の認める販売価格が高すぎるからです。

こればかりは債権者側の意向なので、これを否定しているだけでは任意売却は進みません。

一方で、投資家の購入希望価格は、どのようにして決まるかも考えなければなりません。

投資家が購入する決め手

 投資物件の購入者は投資家で、購入の目安は利回りです。

なかには新駅ができる予定や再開発等の発展を見込んで購入する方もいます。

実際、投資家は任意売却でも、そうでなくても、問題なく購入できれば関係ありません。

やはり、利回りが決め手となります。

投資家の判断は適正な賃料から

 投資家の判断する、利回りは現在の賃料が適正か?という判断から入ります。

それは、現在賃貸中の利回りではなく、現入居者が退去後、新たに入居者を募集する際の賃料を想定します。

もう一つの利回り

 新しい入居者を募集する、想定賃料から利回りを求める理由は、現入居者が新築から住み続けている場合など、次に募集して貸す場合の賃料が、現在と同じとは到底考えられないからです。

また、新築時でなくとも、現入居者が契約を何度も更新し、長期間住んでいる場合など、建物も古くなりますので、その入居者が退去してしまうと、同じ賃料で募集をするのは、都心部のような好立地を除いては難しいと考えるからです。

この想定利回りは、投資用不動産が空室時に売買するときの目安にしますが、入居中の売買(オーナーチェンジ)でも投資家は賃料を想定し、もう一つの利回りをしっかり計算しています。

不動産投資のような、レバレッジを効かせた長期の保有のリスクを考えると、誰しもそうすることしょう。

想定利回りが販売価格の差を大きくする

 販売物件の賃料が現在の適正な賃料と比較して、高すぎる場合、この差は利回りの差でもあるため、適正な賃料を基に価格を計算すると、かなりの価格差が開いてしまうことになります。

任意売却が特に難しい、ワンルームマンションを利回り8%で価格を計算してみます。

  計算式 年間家賃÷8%=価格


○ 月額家賃80,000円の場合   年間家賃960,000円

  960,000÷8%=12,000,000


○ 月額家賃60,000円の場合   年間家賃720,000円

  720,000÷8%=9,000,000

 仮に現在の賃料を80,000円、新たに想定した賃料を60,000円として、販売価格を計算すると、1200万円から25%も価格が低くなってしまいます。

通常の不動産売買で25%もの値引きは、売主に早く現金化したい等の理由がなければ、かなり難しい相談となるでしょう。

また、不動産の売買で販売開始早々に25%もの値引き交渉は、まず不可能で、それが適正価格でも調整していくのは時間が必要になります。

特にワンルームマンションは、同じマンション内の競合物件があったり、近隣にも似たような物件も多いため、現在の利回りが高くても、適正な賃料と開きがあれば、目先の利回りで手を出すような投資家は少ないでしょう。

管理費・修繕積立金の割合

 ワンルームマンションの任意売却が難しい理由の一つに、家賃に占める管理費・修繕積立金の割合も大きく関係します。

家賃が下落しても、管理費・修繕積立金の額は変わらず、ワンルームマンションの場合、管理費・修繕積立金は月額10,000円前後になります。

上記の例から月額家賃から管理費・修繕積立金を差引いて計算してみます。

計算式 年間家賃-年間管理費・修繕積立金(12万円)=収入


○ 月額家賃80,000円の場合

  960,000-120,000=840,000


○ 月額家賃60,000円の場合

  720,000円-120,000=600,000

 月額家賃80,000円と60,000円で利回り8%では価格に25%の開きが出ましたが、管理費・修繕積立金を差引いた家賃で計算すると、その差は年間収入240,000円で割合にすると28%以上の開きが生じてしまいます。

この管理費・修繕積立金は家賃が下落しても変わらないので、実際の家賃収入から支出する割合は増え、利回りは更に低下しています。

投資家の購入価格

 投資用不動産は、個々の投資家が独自に基準を設けて購入価格を割出します。

すべての投資家が皆、横並びに購入価格が同じではありませんが、やはり、投資額に見合ったリターンを求めることには変わりません。

従って、金融機関が認める価格と投資家の求める価格に開きがあれば、時間を掛けて調整が必要になります。

この点は通常の任意売却と同じですが、投資家の購入価格は、やはりシビアであると考えるべきです。

また、投資用不動産への金融機関の貸出額が過去最高を更新するなど、不動産投資が活発になっている反面、同時に人口減少と空き家問題も表面化し、自治体が対応をする動きもあります。

この先、投資用不動産の売却は投資家の資金調達が容易に可能なのかによっても変わりますので、先行きは少々不透明というような時期に差し掛かっているのかもしれません。

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